2006年05月12日

五人家族 その21

   このすぐれた特集記事は五日間にわたって連載されたが、さらに二つ大きな現代の問題点を指摘していた。一つは、「平成の大合併」という〈地方自治における効率優先が「公助」を縮め、自治体間の「優勝劣敗」を加速した〉点だ。この「しまなみ海道」の両側、広島県は自治体数減少率第一位だし、愛媛県は第二位なのでその「公」の縮小も顕著だ。(この2県だけで113の自治体が減り、20の村はすべて消えたのだ!)特に〈今治市は周辺の山間地、離島など十一町村を抱え込んだ〉ので、先に書いた「朽ちたアーケードの駅前の再開発」どころではないのだ。離島や山間地の荒廃は予想をはるかに超えていた。〈トイレは自分で月1回くみとる。「バキュームカーを呼べば5万円かかるから。港の突堤も崩れかけだが2人だけの島に、国はもう何もしてくれんわな」
   新規の公共事業は約十年前が最後。港と家の間の道も荒れたままだ。かって採石場があり、100人以上が暮した時もあったが、次々に島を離れた。それでも90年に町のリゾート構想でテニスコート付きの保養施設ができ、近くの島でも鉄鋼大手などがゴルフ場やリゾートの用地買収に走り回った。だが、バブル崩壊後、潮が引くようにお金の流れは消えた。
   年金と月4万〜5万円の漁業収入も紙おむつや光熱費、漁船の燃料代でほぼ消える。月1回、妻を因島の行院に連れて行く。1日2便の町営船は事前に連絡しないと通り過ぎるので、因島に住む長男の漁船で往復する。「介護サービスは離島だと高うなると言われたから使わん。介護保険料を払うとるから、どこでも同じサービスが受けられるのが本当じゃろうに。いまは自分が元気だから何とかなるが」〉
   山間地はこんな具合だ。
  〈(リウマチで寝たきりの妻は)「最近はほとんど手足が動かせず、飯も食べさせとる」。風呂にも入れないので、湯につけたタオルで体をふいてあげる。車の免許がないので、買い物は10キロ離れたスーパーまでバスで行く。朝10時の便に乗り、昼過ぎの便で帰るが、逃すとさらに2時間半待つ。夜の便はかな前になくなった。「以前は毎夕、軽トラックの移動スーパーが来てくれたのに」。採算が合わなかったのか、現れなくなった。〉

   さて、瞠目すべきはもう一つの問題点の方だ。まったく自分には想像もできなかったことだが、この同じ地域でバブル期をはるかにしのぐマネーゲームが進行中なのだ。
   〈瀬戸内海航路の要衝だった今治地域には外航海運会社が約50社。保有線船は日本の外航船の3割前後にあたる約600隻〉なのだが、〈中国経済の急成長を背景にした荷動きの増加に「投機」も加わった〉のだ。〈一昨年から用船代が急騰して一時、三年前の1日1万5千ドル程度の3〜4倍に。新造船の単価も、中古船も高騰中だ。〉〈用船時に、借り手が望めば事前に決めた額で船を買い取れるという契約を結ぶことが多い。船価上昇に伴って、この権利を行使する借り手が増えた。
   「要はマネーゲーム。借り手は、買うとさらに高く転売してもうける」
買い取られると億単位の利益が出るが、「表面化先送りのため」また借金して船を造る。〉   こういう事情で〈世界の造船ドッグは09年まで満杯〉なのだ。〈海運市況の急落や円・金利の暴落があれば奈落の底だが「4年先のリスクは誰もわからない。船は金融商品という感じだ」〉

hida_2005 at 02:39│Comments(0)TrackBack(1)

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