問題解決型不動産コンサルタント 伊藤英昭の事件簿|キャリア20年の独立系「問題解決型」不動産コンサルタントが仕事を通じて日々思うこと、感じた事を綴ります。

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2024年問題の問題。本年もよろしくおねがいします。

 令和6年になりました。本年もよろしくお願い申し上げます。
 また、新年早々の能登半島地震で被災された方々へのお見舞いと一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。私も微力ながらできることをできる範囲で支援していきたいと思います。        


さて、2024年問題という言葉を最近よく耳にすると思います。2024年問題とは、働き方改革関連法による労働時間の規制の問題で、企業の残業時間を法律で規制し、違反者には罰則を設けるというものです。すでに一般の企業は残業時間の規制が実施されていますが、業界の体質や労働環境、労働人口の減少などの観点から、すぐに残業の規制が難しい業界、特に運送業界や建設業界については一定期間の猶予が設けられていました。その猶予期間が来年終了し、20244月より、残業規制を守らなかった企業には罰則が設けられることになったのです。では、建設業の2024年問題が不動産に与える影響について考えてみましょう。

 建設業界は高齢化が進み、労働人口も年々減少しております。就業者の高齢化と若年層の減少によって、これから更に労働力不足が深刻になるのは明らかです。このようなことから建設業界の更なる人件費の上昇は避けられません。また、慢性的な労働力不足による時間外労働が常態化したなかで組まれている建築の工期も、残業規制によって大幅に伸びることが想定されます。更に、世界的な資源高や円安の影響による建築資材の上昇などを考えますと、来年以降の建築費の更なる上昇は避けられない環境といえるでしょう。

 昨今の地価上昇と建築費の上昇から、不動産業界ではマンション価格、新築戸建て価格は軒並み上昇してきました。価格上昇による消費者の購買能力や意欲が下がらないよう、価格の上昇を直接反映せず、マンションの専有面積や戸建ての土地面積、建物面積を目立たない程度に小さくするなどして販売価格を調整しているディベロッパーも多く見受けられます。しかし、いくら土地、建物の価格が上昇しているからと言って、販売価格を上げるのも面積を小さくするのにも限度があります。

 建築価格が上昇し、販売価格を上げるのにも限度があるとすると残るは土地の価格です。例えば新築戸建て住宅の販売価格が変わらない(上げられない、上げるにも限度がある)場合、建物価格が上昇すると、そのぶん土地の価格を抑えざるを得ません。要するにこれまで5,000万円の新築戸建て住宅の内訳が建物2,000万円、土地3,000万円だったものが、建物3,000万円、土地2,000万円になっていくという事です。もちろん、すぐにこのようになるわけではありませんが、建築価格が上昇し続ける以上、このような傾向になっていくだろうということは推測されます。ということは、建設業の2024年問題によって土地の価格、特に住宅地の価格はこれまでの上昇傾向から、横ばい、場所によっては下落に転ずるところも出てくるのではないでしょうか。鬼に笑われないよう先の予想もこれくらいにしますかね。

 建設業も運送業も若手1,000万円プレイヤーが続出し、報酬面だけでも魅力のある業界になるといいですね。その分、価格も上昇しますが社会全体で吸収するしかありません。





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価格転嫁と賃貸経営

最近の新聞やニュースでは、毎月初めの「今月の主な値上げ商品」と称する特集が恒例になり、いつの間にか商品の値上げにも耐性ができてきたように感じます。円安やら戦争やらの影響による原材料、エネルギー価格の上昇に、人手不足による人件費の上昇などが主な原因ですが、コストが上がれば商品価格、サービス価格もそれに合わせて値上げすることは企業活動とすれば当然のことだと思いますし、利益を削ってまで我慢して経営しなくても適正利潤は得るべきだと思います。その利潤が賃金に反映され、消費にまわれば経済は好循環となり、値上げもさほど気にならなくなることでしょう。

さて、賃貸経営においても前述の原材料費や人件費の上昇により建築費が年々上昇していることに加えて、管理に要する光熱費などの実費や点検、検査費用などの運営コストも上昇してきております。

更に都市部では、これらのコストに加えて、毎年支払う固定資産税、都市計画税が上昇しております。固定資産税は3年に一度、評価を見直し、その評価に応じて税金が計算されますが、評価は土地の価格に連動しているため、土地の価格が上がれば評価も固定資産税額も上がります。ここ数年、都市部の地価上昇のニュースが多く聞かれるように、直近の固定資産税評価の見直しがなされた令和3年も都市部の多くは固定資産税評価額が上昇しました。固定資産税は、評価が上がっても固定資産税負担が急に上昇せず、毎年少しずつ上昇するような調整措置が取られますが、今回はコロナ禍の影響により、令和2年から、評価替えの行われた令和3年は調整措置がされなかったため、本来は評価に連動して上昇すべき固定資産税が特例的に据え置かれることとなりました。その反動もあってか、令和4年、令和5年の固定資産税の上昇は大きな負担になっています。

さて、値上げの話に戻りますが、賃貸経営における建築費用はじめ管理費や固定資産税などの運営費用の上昇分を吸収するには賃料を上げるよりほかありません。経済活動も活発になってきているとはいえ、賃料の値上げは個別性が高く、相手があるので一方的に変えられるものでもありません。とはいいながらもこのように固定資産税の上昇している都市部では少しでも賃料の値上げをお願いすることが必要な時期にきているようです。特に賃貸建物の場合は、直近の更新や再契約などの賃料見直し時期を逃すと、次は2年後、3年後となってしまいますし、仮に値上げに応じてもらえたとしても、物件に付加価値をつけた上での値上げでもありませんし、コストの上昇割合と同じだけ上げられるとは限りません。  
 そんな中でもコロナ禍で賃料の減免や猶予に応じたオーナーは、事情を説明すれば比較的相談に応じてもらえる可能性も高いのではないでしょうか。


 こんなことを書いていると、管理会社から私の事務所家賃の値上げ要請が来るかもしれません。

いずれにしても賃料の値上げは、牛丼の値上げと違ってなかなかエネルギーのいる仕事ですね。




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容積率と資産価値

行政は、計画的な街づくりを進めるために、市街化を促進する区域と、市街化を抑制する区域などに街を区分し、市街化を促進する区域では更に、住宅を中心とする地域、商業施設を中心とする地域、工場などを中心とする地域、というように用途を区分しています。この区分を用途地域と言い、細かく13の地域に分け、それぞれ建築できる建物の利用用途、規模の制限などを定めています。

用途地域では、建築可能な規模の指標の一つとして容積率が定められています。容積率とは、その敷地に対してどれくらいの規模の建物を建てる事が可能かという指標で、用途地域によって異なりますが、50%から最大1300%と非常に幅があります。傾向としては、住居系の用途地域では容積率が小さくなり、商業系の用途地域では容積率が大きくなります。

土地活用や不動産投資という側面で見ると、容積率が高い方が多くの床面積を確保でき、その分だけ多くの賃貸収入を得る事が可能となりますので、必然的に価値は高くなります。

仮に200屬療效呂あるとすると容積率100%の地域では床面積の合計で200屬靴建築できません。これに比べ1000%の地域では、床面積の合計で2000屬盞築する事が可能となります。単純比較は出来ませんが、この例では収益力に10倍の差が生じますので、同一地域だとすると、理論上は土地の価値に10倍の差が生じると考えられます。

平成バブル後の不良債権処理と規制緩和による経済活性化の政策として、特定の地域、要件によって容積率を緩和してきた結果、高層ビル、マンションが林立し、不動産価格の上昇と経済の好循環を招いたといえるでしょう。

では、容積率が小さいと、不動産価値が低いといえるのでしょうか。住環境という側面で見ると、容積率が小さい地域の方が、敷地面積に対する建物の規模が必然的に小さくなり、庭などの空間が広くなりますし、高い建物が無い分、空も広くなり、ゆったりとした閑静な住宅街が形成されます。日本の高級住宅地と呼ばれている地域のほとんどは容積率が小さい傾向にあります。いわば行政が、そのような住環境を作ろうと用途地域や容積率を定めた結果、住宅地としての環境価値、資産価値を高めたともいえるでしょう。

日本の土地、および建築物は私有財産でありながら公共的な側面を持ち合わせています。法令の範囲だから、収益が得られるからといって、好き勝手に大きな建物を目いっぱい建てることによって、閑静な住宅街などでは、しばし問題になることもあります。何が良い悪いではありませんが、地域にはそれぞれの歴史があり、文化があり、町並みがあり、コミュニティもあります。その蓄積が現在の不動産の価値に少なからず反映しています。住宅もオフィスもまだまだ新規の供給は続きますが、収益力だけではない不動産の本当の価値を考えることも、供給が足りているからこそ、これからは更に必要と思われます。

とはいいながら、空き地を見つけると、つい、何階まで建つのか想像してしまいます。




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不要な土地を国が引き取る制度がはじまりましたが

  相続によって不動産を取得したけれど、利用する予定もないし、遠方で管理するのが煩わしいなどの理由で、取得した不動産を手放したいというニーズは昔から多くあります。安くても売却できれば問題ないのですが、安くても売却できない、タダでも引き取り手がいないという不動産を一定の条件のもと国が引き取るという「相続土地国庫帰属制度」が今年の427日より開始されました。新たな制度がどの程度利用されるのか注目したいところです。

 国も、売れない、活用できない、管理が煩わしいなど誰も引き取り手のない土地を引き取るわけですから、何でもありというわけにはいきません。引き取る要件の主なポイントは、建物がないこと、地中埋設物や土壌汚染がないこと、隣接地との境界がはっきりしていること、抵当権などの権利が設定されていないこと、隣接地などと紛争がないこと、などです。これらの物理的な要件を満たしたうえで、国に承認されると、一定の負担金を納めて、晴れて自分の手元から離れて国庫帰属完了です。簡単に書きましたが実際、申請してから承認されるまでは、それなりの手間と時間と費用がかかることがわかります。また、本制度の利用は、原則、所有者本人のみの申請ですので、一般の人にしてみれば、それなりの労力が必要となり、片手間ではできそうにありません。

まず、本制度を利用するしない以前に、そもそも不要な土地を手放したいという理由を考えてみますと、所有することによる負担が一番に上げられます。管理の負担と費用の負担、それらを併せた精神的な負担です。具体的には老朽建物の維持修繕や土地の草刈り、樹木の剪定などの管理にともなう費用負担や、固定資産税の負担、別荘地やリゾートマンションなどの管理費用の負担などがあげられます。なかでも負担が大きいのは別荘地やリゾートマンションなどの管理費用ですが、そもそも本制度では建物は対象外ですし、土地であっても別荘地などの管理費の発生するものは対象外となっています。となると、固定資産税(都市計画税)の負担のある、利用できない、引き取り手のない土地(更地)が制度利用の主な対象となりそうです。しかしよく考えてみますと固定資産税は価値の低い土地(課税標準額30万円以下)には課税されません。固定資産税が課されているという事は、それなりの客観的な価値があるということですので、売れないまでもダダであれば隣の人などが引き取ってくれそうなものです。と、いろいろと考えてみますと「相続土地国庫帰属制度」の利用対象となる土地は、固定資産税が課されない程の価値のない土地ということになりそうですが、そういう土地というのは実は所有者にとっては殆ど負担にもなっておらず、手間暇かけて国に引き取ってもらうより、特段負担もないので、そのまま放っておいてもいい、という事にもなりそうです。とはいっても所有するというストレスから解放されるだけで精神衛生上良いのかもしれません。

本音のところ、みんながいらないものは、国もいらないですよね。

 私も自宅の駐輪場に乗らなくなって埃をかぶりタイヤの空気も抜けたまま数年放置した自転車がいつも心の隅に引っかかっていました。駐輪場利用料が発生しないので経済的負担はないのですが思い切って処分したらスッキリしました。

 案外そんなものかもしれません。




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残暑お見舞い申し上げます。

残暑見舞いは、二十四節気の処暑である823日を目途に、遅くとも8月末までにというのが一般的な礼儀のようですが、二十四節気の白露である97日あたりまでという説もあるようです。いずれにしても近年は10月あたりまでは残暑が続いているイメージですね。 

さて、改めまして、暦の上では秋とはいうものの、まだまだ厳しい暑さが続いておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか。私は8月初旬にコロナに罹患してしまいました。熱が上がったり下がったり、咳が出たり、のどが痛くなったりという症状が約1週間続き、その間ほぼ寝ていましたので体力も体重も落ちてしまいました。味覚、嗅覚がなくなるということはありませんでしたが、洗剤や芳香剤など特定の化学物質の臭いを強く感じるようになり、それを嗅ぐと気持ちが悪くなる感じが何日か続きました。お陰様で今は元気に仕事、ゴルフ、ジョギングの生活に戻っていますが、もともと飛ばなかったゴルフの飛距離が更に落ち、ジョギングも走っては歩き走っては歩きと、体力的にはまだまだ戻っていないのが実感です。もちろん個人差はあるとおもいますが、コロナは単なる風邪とは違うなというのが私の実感ですね。やはり健康第一です。


 夏休みは、世の中も自分もコロナ明けということで4年ぶりに青森県十和田市の実家に帰省しました。車での帰省ということもあり、途中、山形の銀山温泉にて1泊しました。大正時代からという古い温泉郷ですが、ひなびた感じはなく大変賑わっており、街並みも、温泉も自然に囲まれた環境も期待以上に良いところでした。ちなみに銀山温泉は、おしんのお母さんが出稼ぎにでたところだそうです。


実家では母や兄弟と久しぶりに墓参りに行きました。私の父は52歳のときに糖尿病に端を発する脳梗塞で倒れて以来半身が不自由になり、人工透析などを経て体も弱り59歳で他界しました。私も若かったですし、東京で働いていたこともあり、父とはじっくり話をすることはできませんでしたが、そういう私も現在54歳、「お陰様で大病することもなく元気で過ごせています」と墓前に報告することができました。ちょっぴりノスタルジックな夏休みと近況の報告でした。




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空き家問題、所有者不明土地問題の問題

 空き家問題、所有者不明土地問題、何年も前から取り上げられてきた不動産の問題です。

適切な管理がなされていない空き家が増加することによる、防犯、衛生、景観等が地域生活に与える深刻な問題を解決するために、一定の条件を満たす特定空き家を行政が指定し、所有者に対して建物の除却や修繕に関する、助言、指導、勧告、命令、最終的には行政による除却等の代執行が可能となる「空き家等の対策の推進に関する特別措置法」が整備されました。

空き家の問題を整理すると、ほとんど価値のない空き家を相続して処分も利用もできず放置しているケースと、価値はあるが、相続により複数人の共有になっており(更に相続が進み血縁も地縁も離れているなど)処分や活用の意思決定ができない(容易でない)ケースに大別されます。更に、前者の価値のない空き家は、価値がないがゆえにわざわざ相続登記などの名義変更をしないで放置していることも多く、そのうちに更に相続が発生し、権利者が増え、ひいては時間とともに所有者が特定できなくなり、処分や活用の意思決定ができないという悪循環に陥っています。この問題を、所有者不明問題とよび、相続や住所変更時の登記の義務化や、共有に関する民法の改正、今年4月から施行される、相続した土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属法」などの法整備が進みました。

いずれもこれら多くの問題の本質は単独で意思決定できないという「共有」にあります。所有者不明土地問題にかかわる今回の民法改正でも、不明共有者がいる場合の法手続きの改正など、共有解消のための法制度は整いつつありますが、根本的に問題を解決するためには、そもそもの共有を予防する方向に、当事者も、専門家も意識を強く持つことが求められます。やはり、どう考えても不動産の共有は一時避難であり、とりあえず遺産を分けるのには便利な手法かもしれません。しかし、不動産共有の意味はほとんどなく、遠くない将来には売却や、持ち分買取りなどによって解消することは、ほぼ決まっています。賃貸用不動産などを共有にして賃料収入を分けるという方法もありますが、相続人である子供たち兄弟が元気なうちはいいものの、相続を重ねることによって管理の負担などを巡って、結局は共有解消の方向に向かうのは目に見えています。場合によっては当事者間で円滑に共有を解消できず、裁判になるケースも少なくありません。

共有は問題の先送り、これは相続における基本のキであり、誰しもが頭では理解していることです。専門家はもちろん、当事者も、不動産が共有にならないような遺言を残したり、相続後の換価(売却)を指定したり、場合によっては元気なうちに換金して分けやすくしておくというように、将来の争いの種を極力少なくするような意識や努力も重要です。

とはいいながらも、親の心配をよそに子供たちは「親に万一のことがあったら不動産は全部売ってお金で分けよう」と示し合わせているかもしれません。





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モノを大切にするこころ

令和5年も早半年を過ぎようとしています。さて、昨年あたりから目に見えて多くの食品、衣料品、工業製品など生活に必要な多くのものが値上げされました。これは世界的な原材料高、原油などのエネルギー高や円安が主な原因とされております。このように物の値段が上昇することをインフレーション、いわゆるインフレと呼びますが、物価とともに賃金なども上昇し、消費も上向いて経済全体が活性化すれば、適度なインフレは歓迎すべきですが、残念ながら今の状況は、物価は上がるものの、賃金は上がらず、消費も進まず生活は苦しくなる、という悪い経済循環に陥ってきているようです。

私たちが仕事でよく耳にするのは建築費の高騰です。これは既に何年も前から言われてきたことで、東日本大震災や東京オリンピックによる建設需要による原料高、人件費の増加による建築費の上昇、その流れに今回の原料高、円安による建築費の上昇が加わりました。

一般財団法人建築物価調査会の資料によりますと202110月から202210月までの1年間では、建物構造によって若干の違いはあるものの建築価格は約10%上昇しているとのことです。もう少し遡って10年前の2011年と比較すると約40%もの上昇です。要するに2011年に1億円で建築できていたものが今建築すると14000万円になるという計算です。不動産経営という観点で考えますと、前述した物価も賃金も上昇する良いインフレのように、建築費とともに建物から得られる賃料も上昇すれば十分に建築費の上昇分を吸収できるのですが、残念ながら賃料は10年間ほぼ横ばいとなっています。ということは要するに建物に対する収益率、投資利回りが少なくともこの10年低下し続けているということです。これまでの建築費と賃料の相関関係を見ますと、今年よりも去年、去年より一昨年に建築していれば、投資効率の高い賃貸経営ができていたと言えますし、今後同じような傾向が続くと予想すれば、来年より今年に建築したほうが少しでも高い収益性が得られるとも考えられますが果たしてどうでしょうか。

別の角度から需給という観点で建築費を考えますと、需要が減れば価格は抑えられるとも言えます。原材料などにしても人件費にしても理論上は需要がなくなれば価格は落ち着くもしくは下落します。それを考えると、原材料需要、建築需要が旺盛なこの時期に建築するより、適切な修繕をしつつ大事に使って世の中の様子を見ながら建物を建築することも選択肢の一つといえます。建築を先送りすることは短期的には経済活動にプラスの影響を与えないかもしれませんが、長期的な地球環境の事を考えるとこれからの大事な視点かもしれません。「モノを大切に」小さいころに教わったことですね。

ずいぶん大きな視点で偉そうな事を書いてしまいました。我が家の車も冷蔵庫も、もう少し大切に長く使おうかと改めて考えているところです。




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評価方法見直しの議論もありますが

記憶に新しいところですが、昨年、1棟収益マンションの相続税評価をめぐる最高裁判決がありました。要するに実際の時価と相続税評価額との乖離が大きすぎ、他の納税者との公平性に欠けるので、不動産鑑定による時価で評価しなさいということでした。これは国が決めた財産評価のルールを国みずからが否定したという何とも不可思議な判決です。

この判決を受けて何かと問題とされてきた、いわゆるタワーマンションを利用した節税も見直しが入るのでは、と何年も前からいわれておりますが未だ具体的な見直しはされておりません。要するにタワーマンションは時価と相続税評価額の乖離が大きすぎて節税効果が非常に高く、不公平だ、けしからん。という事です。不動産の相続税評価上、土地は路線価、建物は固定資産税評価額をもとに計算しますが、マンションは土地の持ち分が少ないため、必然的に相続税評価額は低くなります。特にタワーマンションは、中高層マンションと同じ敷地面積でも建物が高く積まれ戸数も増える分、土地の持ち分は更に少なくなるため相続税評価額は必然的に低くなります。この評価ルールに加え、タワーマンションが高値で取引されている昨今では時価と相続税評価額の乖離は非常に大きくなっており、その分相続税の節税効果が際立っているのが問題とのことです。

不動産の相続税評価方法がどのような方向で見直しされるのかはわかりませんが、不動産の相続税評価額と時価との乖離がこの問題の本質ですので、その差を極力小さくし、時価に近づけたいというのが見直しの方向性だと思います。しかしながら不動産は個別性が強く、流動性も低いため、時価の算定は非常に難しいのが現実です。そもそも不動産は時価の算定が難しいため、相続税を評価する上で、路線価(建物は固定資産税評価額)という一定の物差しをつくっています。しかも相続税評価額が時価を上回ってしまうと、実際の財産価値に対して多くの税金を支払うという著しい不利益を与えてしまうため、そのような不利益を与えないよう路線価は時価の8割を目安としています。(国の言うところの時価である公示価格の8割水準)大なり小なり路線価と時価の違いはあるにせよ、時価の目安である公示価格の8割程度にしておけば相続税評価が時価を上回ることがないだろうという一定の配慮、割り切りがあったのかもしれません。この考え方が基本にあるとすれば今後、不動産評価の見直しがなされたとしても時価を上回らない程度のルールに変わりないと思います。

したがいまして今後、不動産の相続税評価の見直しが行われたとしても時価を上回る評価方法にはなりえないと考えられるため、効果が少なくなる可能性があるにせよ、相続税対策の要は不動産であることに今後も変わりないと思います。

不動産を多く所有する方は、定期的に時価と相続税評価額を見直すことにより、時価との乖離が大きいのか小さいのか、場合によっては逆転しているのかを把握することが、不動産を活用した相続対策を検討する上で重要なポイントです。



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責任と負担

不動産売買における売主、買主それぞれの責任と負担は明確にしなければいけません。責任と負担とは、取引の条件として、物件の引き渡しおよび代金支払いの期日までに、やらなければならないことを誰の責任と費用負担でやるのか、ということです。言い換えれば、それができなければ売買が成立しないという条件ですので、その責任は重大です。

不動産売買では売主に責任を課すことの方が一般的であり、売買契約書では「売主は本物件引き渡しの日までに、その責任と負担において〇〇を完了させるものとする」という条文が入ります。何を取引条件とするのかは当事者で取り決めますが、一般的に売主に課される条件としては土地の場合、地積を確定するための測量、土地境界標の設置、隣接土地所有者から境界に異議がない旨の確認書の取得、道路境界の証明書の取得、加えて、隣接地との地上や地下越境物の確認、また、前面道路が私道の場合は、私道所有者から、対象物件から公道に通じるまでの通行、掘削の無償承諾の取得などがあげられます。

これらの作業にはそれなりの時間と費用がかかりますので、特に隣接地権者など相手のある確定測量などは売却の意思決定をした段階から早め早めに取り掛かることが取引を円滑に進めるためのポイントです。とはいっても現実には、買主が決まってから、売買契約書にこれらの条件を盛り込んで、「売主は引き渡しまでに、その責任と負担で○○を行うこと」という取引も多いのが現状です。何が良い、悪いではありませんが、そこで売主が注意すべきは、万が一、引き渡し日までに売主がやるべき条件を整えられなかった場合にどうするかです。

例えば、引き渡し日を延長できる、延長しても条件を整えられなかった場合は白紙とするなどといった条件を付さなければ、契約違反となり違約金や損害賠償のリスクを負うこととなります。前述した隣地に協力をお願いしなければならない地積確定測量や、共有者の多い私道の承諾などが条件になっている場合は、作業に要する期間と費用も心配ですが、円滑に関係者から同意を得られるまでは安心できません。

隣接地などの関係者が多かったり私道所有者が多かったり円滑に条件を整えられるか心配な場合は、確定測量も私道の承諾も取得せずにあくまで現状で売却するということを条件にすることも検討の一つです。当然、そのリスクや負担は買主が追うことになりますから、金額は相応に減額されることとなりますし、すべての買主がそのような条件を承諾するとは限りません。売買価格が想定より下回ったとしても、確実な時期に確実な売買代金を受け取ることを優先しなければならない場合はこのような条件も選択肢の一つです。

いずれにしましても売買契約書には標準的な約款があるものの、当事者に心配な事、やって欲しい事がある場合は、それを契約書に盛り込み、それぞれの責任と負担を明確にすることがトラブルを未然に防ぐ大事なポイントの一つです。



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下げても戻しやすくする工夫を

 マスク着用がそれぞれ個人の判断となり、スポーツの声出し応援解禁、5月には5類引き下げと3年続いたコロナ騒動も徐々に落ち着きつつありますが、この3年で価値観や生活様式、行動様式はすっかり様変わりし、コロナ前、コロナ後といわれるようにかつてと同じ世の中には戻らないといわれています。今では当初の飲食店の営業自粛が嘘のように町の飲食店も賑わいを取り戻しているようですが、コロナ禍ですっかり家呑みと早寝早起きに慣れた人たちは2軒目、3軒目までは体ももたず、ましてや午前様ということはなくなったようです。お店の従業員に聞いても、早い時間は込み合っているが、21時、22時となるとめっきり人が少なくなるそうです。要するにコロナ前は2回転、3回転していたものが、今は1件目で帰る人が多くなったとのことです。それはそうですよね。自分がそうですから。

 賃貸経営においてもコロナの影響はまだまだ続いているというのが実感です。飲食店に限らず、コロナ前の水準に売り上げが戻らないという業種は多くあります。ビルオーナーもこれまではテナントの事情を考慮し、たびたび賃料の猶予や減免に協力してきましたが、そろそろテナントにも頑張ってもらって、これまでの賃料の減収分を少しでも家賃にプラスできるよう本音では増額改定したいところです。しかしながら前述したような飲食店などの事情から賃貸借契約の更新時期、再契約時期に賃料減額のお願いをしてくるテナントがまだまだ多いというのが実感です。

 ビルオーナーとしてはテナントの事情を考えると少しでも減額要請に協力してあげたいところですが、契約更改時に減額してしまうと2年、3年、場合によっては5年という契約期間中は確定的に収入が減ってしまいますし、その次の契約更改時に現在の賃料に戻す、もしくは増額改定することはなかなか難しいと言わざるをえません。やはり一度下げたものは、増額はもとより元に戻すことであっても非常にハードルが高くなります。

 このように、コロナ禍という特殊事情から回復途上にあっての契約更改時に減額改定の要請があった場合は、単純に減額に応じるというより、本来の賃料(現賃料)を原契約とした上で、特殊事情によって一定期間は一定額を減免もしくは猶予する。という契約の建付にすることによって、同じ賃料の減額であっても、今は特別な事情で一定期間減額しているが、一定期間後は、本来の賃料(現賃料)に戻るという意味にかわります。一定期間後に状況が変わらず再度、減額の要請があるかもしれませんが、契約期間中の一定期間ごとに賃料を元に戻す機会が訪れるような内容にすることによって、減額改定による契約期間中の確定的な収入減少を少しでも回避する可能性を残すこととなります。

 どのような業種においてもコロナ前の水準に戻すのは大変だと思いますが、かつての活気を取り戻すためには、それぞれがそれぞれの立場で出来ることをするしかありません。

さて、これから私は積極的に2軒目も行くことにしますかね。



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無断譲渡とは気づかずに無断譲渡

地代の振込名義が変更します、との連絡を受けて、何事かと確認したところ、土地を賃借している法人(借地人)が地主に無断で「会社分割」を原因とし、借地上の建物の所有権の移転をしておりました。借地人に説明を求めたところ、顧問税理士を伴い「経営戦略上の判断で会社分割を行った。支配権その他実態は変わらない」との事です。要するに実態は変わらないので無断譲渡ではないとの主張です。

いずれにしても理由はともあれ地主に無断でこのような取引をすることは賃貸借の基本である信頼関係の観点から問題といわざるをえません。賃貸借契約は人と人との約束事ですから、相手が誰であるか、ということが重要であり、相手方との信頼関係のもと成り立っています。したがって借地借家法では勝手に相手方である借主が変更されては困るので賃借権の譲渡は必ず地主の承諾が必要となっているのです。

本件はまず、借地権の無断譲渡に該当するのかが問題となるわけですが、賃貸借契約の基本を考えますと、確かに相手方が実質的に変わらなければ(連続性が保たれれば)譲渡には該当しないという解釈が成立すると考えられます。(個人の相続等がこれに該当すると思います)会社の場合、実質的支配権、すなわち株主が変更されなければ商号変更や役員変更があったとしても意思決定機能は変更ありませんので、実質的には変更ないとも解されます。

しかし、会社分割に伴う賃借権の譲渡について、東京地裁平成10223日の裁判例によると「会社分割の当事者間は密接な関係があることが多いことから実質的には賃借人の変更がないとの考えもあるが、たとえ密接な関係があるにしても別法人に変わりがないことから賃借権の移転があったと認められる。したがって賃貸人の承諾なくして分割範囲に賃借物件を含む会社分割を行った場合、賃貸借契約の解除を主張することができる」との判断が下されました。このことからも法的には「無断譲渡」であり、借地権の解除事由にもなりうるとも考えられますが、現状では堅固な建物が存し、地代などの遅延もないことから現実的には解除ではなく、承諾料の請求という事が実務的な妥協点です。

 これは会社分割に限らず、合併や株式譲渡(M%A)なども同じことがいえます。表面上の商号が変わらず実質的な支配権が変わるケースでは客観的な判断が難しいところです。また個人では相続対策と称して子や孫に借地上の建物を生前贈与したり譲渡したりすることも同じです。いずれにせよ悪気はなくとも事前に地主に相談することが第一です。

本件も、順番さえ間違わずに事前に地主への説明さえあれば形式的な承諾で済んだと思われる事案です。

また、税、会計の専門家も節税や経営戦略以前にこのような基本的な法解釈と取引実務を理解していないとお客様の財産を毀損させることにもなりかねません。昨今のMAブームによる資産移転でも注意が必要な点の一つですね。




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不動産は収益価格とはいうものの・・・プロとエンドユーザー

物価も不動産価格も永遠に下がらないと皆が信じて疑わなかった1980年代後半の不動産バブルの崩壊によって、不動産価格も物価もいろんな要因によって上がったり下がったりするということがわかり、その教訓から、特に不動産投資は不動産の値上り益ではなく、家賃などの安定収入に重きを置いた収益力が不動産の価値を決めるという事がもはや常識となりました。

収益不動産を対象とした過度な相続対策による税務トラブルや、金融機関の不正融資など、取引の加熱とともに問題も生じつつも、それでも不動産取引の現場では、本業以外の副収入や老後の年金替わり、楽々家賃収入、資産形成、はたまた、早期リタイアメントなどという魅力的なセールストークによって収益不動産の売買は好調です。いうまでもなく収益不動産売買の指標は物件から得られる収益を基準とした利回りです。

現在の不動産投資は値上がり益期待ではなく、収益力期待であるということは前述したとおりですが、それはあくまでエンドユーザーでの視点です。では、不動産のプロである不動産業者はどうかというと、今も昔も変わりなく値上がり益重視なのです。かつては世の中の流れによって土地価格そのものが上昇し、そこで値上がり益を得ておりましたが、収益価格重視の現在は、利回りの差によって値上がり益を得ているのです。例えば年間賃料収入1000万円の物件を利回り8%である12,500万円にて購入し、利回り6%の16,666万円で売却できれば値上がり益(転売益)は4,166万円です。仮に利回り4%で売却できれば、なんと、倍の25,000万円です。このように収益価格に着目すると、利回り1%の差によって不動産価格に大きな影響を与えることがお分かりいただけると思います。

この考え方では周辺の土地相場や賃料相場、土地価格や賃料の増減は価格に大きな影響を受けす、物件の個別性や取引相手の個別性が非常に強くなります。不動産のプロは利回りが何%であればエンドユーザーが購入するかを想定したうえで、いくらで物件を購入するかが値上がり益を享受するための重要なポイントになっています。

このような取引の流れや仕組みを考えますと、エンドユーザーはその名の通り、最終消費者であって、最終消費者であるがゆえに不動産の値上がり益は、そもそも期待する立場にはない。という悲しい現実を知ることができます。

とはいいながら適正価格、適正利回りで購入しなければ、特に借入金を活用する場合は安定した賃貸経営はできません。




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風が吹けば桶屋が儲かる。今年もよろしくお願いします。

「風が吹けば桶屋が儲かる」 強い風が吹くと砂ぼこりが舞って、多くの人の目に入り、盲目の人が増える。盲目の人は三味線で生計を立てる人が多いので三味線を作るために多くの猫の皮が必要になる。そうすると猫がいなくなって猫を天敵とするネズミが増え、増えたネズミがたくさんの桶をかじるので桶屋が儲かるという、一見なんの関係のなさそうなところから意外なところに影響が出る、ということわざです。

昨今のコロナ禍では、外出自粛の影響でネット通販やゲーム、ウーバーイーツや出前館などの食事宅配が伸びましたが、意外なところではプロテインや小麦粉、入浴剤、除草剤、ホースなども売れたようです。不動産分野では飲食ビルなどは撤退や賃料減免の影響で収益が減り、テレワークの影響かマンションや戸建てが売れまくり、撤退した飲食店舗あとには無人フィットネスやゴルフレッスンスクールが入る、などなど意外なところに影響がありました。株式市場では日々変わる社会経済情勢の中、まさに「桶屋の株」をめぐって市場が動いていますね。

毎年行われる税制、法制などの制度改正は、風と桶屋のような遠回りの影響ではなく、社会経済に直接的な影響を与える明確な目的をもっています。たとえばNISAの拡充、恒久化については金融業界が沸き立ち、相続土地国庫帰属法の施行では測量士や土地家屋調査士業界が、相続登記の義務化においては司法書士業界が、東京都における太陽光パネルの設置義務化では太陽光パネル業界が盛り上がってくるでしょう。いわば国や地方自治体は、さまざまな制度改正によって「風」を吹かせているとも言えます。

コロナ禍、ウクライナ危機をはじめ、物価高、資源高、円安、金利上昇、実質賃金の低下、老後の2000万円問題、少子高齢化など先行き不透明な世の中だからこそ、国には、きちんと桶屋まで潤う風を吹かせてほしいものです。

かくいう私は、このブログを通じて仕事につなげて潤いたい、桶屋でありながら自分で風を吹かせるという、自作自演のいやらしいそよ風を吹かせています。

さて、今年もみなさまの不動産に関する問題解決のパートナーとしてお役に立てると嬉しく思います。もちろん相談、雑談無料です。(笑)

また皆様と元気にお会いできる日を楽しみにしております。

くれぐれも風邪などひかぬようご自愛さいませ。



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配分に固執しすぎて損をする

 貸地の権利調整手法のひとつである借地権付き建物と土地(貸地)を第三者に完全な所有権で売却するという所謂、共同売却という方法では、地主と借地人との配分をどうするかが大きなポイントとなります。

特に、借地人にとっては、土地と併せて完全な所有権として売却するか、借地権付き建物として売却するかでは売却価格に大きな影響を与えます。地主が積極的に土地を売却したい場合は、売却価格や配分について大きな問題になることはありませんが、地主に積極的な売却理由もなく、借地人が売るなら一緒に、というような消極的な理由の場合、借地人が価格や配分に固執しすぎると話は纏まりません。

そもそも借地権と土地は別々の財産であり、それぞれが売る、売らないという意思決定権がありますので、地主が、配分や金額に納得がいかなければ売却を中止するということも十分ありうるのです。

売却先が見つかり、契約の直前でこのような配分をめぐるトラブルにならないためには予め配分に関する取り決めをしておくことが重要です。地域や取引慣習にもよりますが、路線価による借地権割合を配分の基本としつつも地主側にプラスアルファすることが多く見受けられます。それは、単に地主が強いから、頑固だからではありません。地主が協力し、一緒に売却することによって完全な所有権となり、結果、借地権の価値も最大に発揮されるということ、また、借地権単独で売却した場合は、地主に譲渡承諾料として売却価格の一部(一般的には一割)を地主に支払わなければならないこと、加えて借地権の設定当初は権利金などの一時金を受け取っていないこと、そもそも借地権割合は国税局があくまで相続税の評価をする上での指標として決めたものであり、必ずしも売却価格の配分として用いる必要がないことなどを鑑みると、売却価格の配分には地主に対して相応の考慮が必要であることが理解できると思います。

また、地主の立場に立つと、配分の取り決めに加えて、土地(貸地)価格の下限を定めることも検討する必要があります。想定より高く売却できそうな場合は問題ありませんが、思った金額以上で売却できそうにない、価格を少し下げてでも借地人が売却を急ぎたい場合などは、下がった金額の割合に応じて一緒に金額を下げる理由はありません。

繰り返しになりますが、地主には借地人に合わせて土地を売らなくてもいい、売る、売らないという意思決定は自由であるということを、借地人は基本として理解しておかなければなりません。要するに、土地も一緒に売却するという事自体、借地人に相当程度配慮しているといえるのです。このようなことを理解しないで、あまりに配分割合に固執するなどの権利主張が強いと、地主の心証も害し、最悪の場合、一緒に売却しない、借地の譲渡承諾もしない、など、折角の財産価値を大きく毀損することにもなりかねません。




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管理費、共益費という曖昧な費用

 賃貸経営における収入は当然ながら「賃料」です。しかし、「賃料」とは別に「共益費」「管理費」などの名目を受領しているケースも多く見受けられます。

「共益費、管理費」とは、建物の共用部分を維持管理するための実費です。例えば共用部分の清掃費、水道、光熱費などがこれに該当します。しかし、複数のテナント(入居者)が入る賃貸物件では、管理費、共益費がテナントによってまちまちなケースも見受けられますし、入居時期によっては管理費を取らずに賃料に含めたりしていることも珍しくありません。テナントの入居時期によって賃料の額、単価がまちまちな事はよくあることですが、維持管理する上での実費であるはずの管理費、共益費が部屋ごと、フロアごとでバラバラなのはあまり気持ちのいいものではありません。

管理費、共益費を本来の主旨に照らすならば、月々、あるいは半年や一年に管理費明細を明らかにしてテナントから実費のみを請求するのが本来の姿だとおもいますし、仮に暫定的に管理費、共益費を徴収したとしても一年に一度、実費との差額を精算するということがあるべき姿だと思いますが、現実は管理費、共益費をそのように開示して精算することは殆どありません。

賃貸オーナーは、管理費、共益費をテナントから受領するしないにかかわらず、共用部分の水道光熱費など、ビルを維持するための実費を支払います。これは要するに、賃貸オーナーにとって管理費、共益費は受領名目にかかわらず賃料の一部であり、テナントにとっても賃料の一部なのです。よくよく考えると、それを賃料と共益費に分けることの意味がほとんどありません。あえて言うなら、賃料と共益費を分けることによって、賃料をベースに計算する敷金、保証金、礼金、仲介手数料などの金額は変わるということでしょうか。これも単に見せ方と計算の問題です。

このようなことから管理費、共益費とは、その名目の割に、オーナー、テナントにとって実は非常に曖昧な費用であり、場合によっては無用な説明、誤解を生む材料にもなりかねません。無用な疑義を生じさせないために、受け取るものは、実態に合わせてすべて「賃料」とする検討も必要です。

 一時期話題になった更新料の有効、無効の問題についても、本質は「意味不明」「説明不能」な金銭であることが問題の発端です。管理費、共益費についても同様、場合によっては実費を開示し、清算してくれ、返還してくれ、などという争いに巻き込まれるのも余計な時間と費用がかかるだけです。

一部の法律専門家が主導、扇動した「更新料無効、返還訴訟」に次いで「管理費、共益費の返還」というのは考えすぎかもしれませんが、何事も、突っ込まれないように武装するにこしたことはありません。とはいいながら、まずはテナントとの信頼関係が基本ですね。




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やりすぎはダメ、ではどこからがやりすぎか?

 既に少し前の話題となりましたが整理するために所感をブログに纏めておきましょう。
 今年の4月に相続に携わる業界が注目した相続税の評価をめぐる最高裁の判決が出ました。詳細は新聞その他いろいろなところで解説しているので細かく触れることはいたしませんが、要するに「やりすぎは駄目よ」という国の最上級司法機関の判断です。相続税評価のルールに沿って申告したものが、具体的な指標が示されることもなく「やりすぎは駄目、他の納税者と比べて不公平」と言われても消化不良のような気もしますが法治国家なので、この判断が判例となり今後いろんな所で判断の物差しとなるのでしょう。しかし、どこまでいっても「どこからがやりすぎか」という議論に立ち戻り、具体的な物差しが示されなければ、あるいは相続税法や相続税の評価通達等が改正されなければ同じような争いは続くでしょう。

 そもそも相続税上、財産の評価は相続発生時点の時価が原則です。現預金や上場株式など取引市場があり、相場が成り立っているものを評価するのは何も問題はありませんが、不動産は二つとして同じものがないうえに個別性が強く、同じ土地が頻繁に取引されるわけではないため評価が非常に難しい資産です。このように評価の難しい資産を客観的に評価する物差しとして「路線価」が登場したのです。しかも時価のわかりづらい土地に国が値段を付けるわけですから、時価より高くなってしまうと、それこそ公平ではなく問題になりかねません、そこで国は時価より概ね2割ぐらい下げれば大丈夫だろうという割り切りで路線価を付しています。加えて、より実態に近づけるために、道路付けや間口、奥行きや土地の形などによって細かく加算、減算するという現在の相続税評価のルールがあります。この方法は土地については非常に合理的で実際の取引価格に近いものといえるでしょう。しかし前述したように不動産は土地だけではありません。

 今回の裁判で問題になったのは収益マンションです。収益マンションの実務上の取引指標は土地がいくら、建物がいくらではなく、そこから得られる収益をもとに期待利回りで算出され取引されます。そこに前述した路線価による相続税の評価方法との決定的な違いが生じています。結果的に時価と相続税評価額との乖離が大きくなりやすく、その乖離が大きければ大きいほど相続税が減少するのです。相続に携わる人であれば昔から、誰でもわかる理屈です。ここでの問題の一つは、相続税の評価をするルールには土地、建物の評価方法は細かく規定されていても土地と建物とが一体となって収益を生む収益不動産を評価するための物差しがないということです。物差しがないがために、それを逆手に取って、とりあえずある国に与えられた物差しで測ったという納税者等の気持ちはわからなくもありません。

収益不動産の評価は還元利回りを何%とみるか、と一見単純そうですが、その還元利回りをどうするかは、絶対的な利回りの指標はありませんし、建物の立地、構造、規模、経過年数、用途などによっても非常に難しい部分です。

今回の問題を受けて、もしかしたら今後は利回りを基本とした収益不動産の相続税評価上の物差しができるかもしれません。これができれば一つの指標として不透明な不動産取引市場にも好影響を与えるのではとも思います。

それにしてもどこまでがやりすぎなのでしょうか。もやっとしています。




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誰のための契約か?

「第三者のためにする契約」とは、不動産の売買契約形態の一つで通称「さんため」とも呼ばれています。日本語の通常の解釈としては、「第三者の利益のために自己犠牲を払って契約をする」という崇高なイメージがありますが、実際の不動産取引ではどのような意味合いで用いられ、どのような場面で利用されるのでしょうか。

第三者のためにする契約とは、不動産転売事業者による売買手続きの手法で、AからBへの売買、BからCへの売買(転売)の流れのなかで、間に介在する転売事業者Bの登記手続きを省略することで、中間省略登記とも呼ばれます。もちろん法律で認められた手続きであり脱法的な要素はありません。登記手続き上、本来このような取引ではAからBBからCへと実態に即した登記手続きがなされるのが望ましいのですが、登記にはそれなりの費用が発生することから、その転売事業者Bの取得経費の削減を主目的としてこのような手続きがとられることがあります。(転売事業者Bはあくまで第三者の為になした契約であって自身は取得していないという法解釈のようです)

取得経費が下がる分、売主や買主である第三者に、その浮いた経費分を間接的に還元できるという大義ですが、本音は、転売事業者である自社の利益を少しでも多く確保することです。言葉は悪いですが、先に第三者である転売先を見つけたうえで、売主と限りなく安く交渉し、間に入って転売利益を得る。業界用語で、一瞬だけ取得するワンタッチ(実際はノータッチ)とも呼ばれます。もちろん合法手続きですし、経済活動として転売は全く否定するものではありません、ただ、このような手続きを用いての転売は、一言でいうと「あまりきれいな取引ではない、胸を張れる取引ではない」というイメージでしょうか。売主から見ても、買主であるはずの不動産事業者が、さらにその先の転売先名義で登記しますというのも、みすみす安く買いたたかれたようであまり気持ちの良いものでもありません。まさに「第三者のための契約」とはいいながら、第三者を利用して自分が多くの利益を得るという「自分のための契約」というのが実態です。

不動産登記は取引の原因や所有者などの当事者を記録した公の証明ですから、お客様の利益、取引の安全性、ひいては公共の利益という観点から、限りなく実態に即し、消費者に分かりやすく説明できるものが望ましいと言えます。特に魑魅魍魎が蠢く不動産業界だからこそ、特殊な説明が必要な取引は極力避けるのが本来あるべき方向ではないかと思います。転売利益が見込めるからこそ、登記費用など不動産取得に要する費用はお客様に安心していただくため、説明しやすくするための必要経費という考えもあります。

第三者のため契約について説明しましたが、多くの不動産事業者は転売目的であっても登記を省略せずに手続きをしているのが実態です。もちろん不動産取得に関する費用が軽減されればこのような説明の難しい手続きもなくなるのですが。




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良かれと思って安い家賃で。。。

 賃貸建物の老朽化に伴う建て替えを検討する際に一番頭を悩ますのが借家人(テナント・入居者)の立ち退き問題です。計画的に定期借家契約などを活用して運営している場合は大きな問題はありませんが、昔からの普通借家契約の借家人の場合は、立ち退き交渉に相当の時間と費用など大きな労力が必要です。

結論から申し上げると、立ち退きのほとんどは金銭で解決します。ただ、その金銭が100万円か1000万円かでは大きな違いですし、立退料の多寡によっては建て替え計画に大きな狂いが生じてしまいます。では、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。まず、立退料の算定、交渉の際に一番大事なポイントとなるのは賃料です。相場より安く貸しているのか、適正な相場で貸しているのかによって、相手が求める立退料、すなわちこちらが支払う立退料は大きく変わります。

 借家人の立場になって考えるとわかりやすいと思いますが、借家人が立ち退くには当然、移転先がなければ立ち退くことはできません。移転先を検討する際の条件は、基本的に賃料や広さ、環境など現在と近い物件となります。同等の物件、移転先候補がそれなりにあれば、立ち退きも立退料の交渉も難易度が低くなりますが、同等の物件が周辺になければ立ち退きは難航します。その際に特に大事なポイントとなるのが現在の賃料です。適正相場で貸している場合と、相場より安く貸している場合とでは、後者の方が移転先候補を見つけるのに苦労します。借家人は現在支払っている安い賃料をもとに生活をしたり商売をしたりしています。現在貸している家賃が相場に比べ安すぎて、同程度の賃料の物件が見つからない場合は、移転先の賃料と現在の安い賃料との差額の一定期間分を立退料として要求される可能性が高くなります。

 よく「相場より安い家賃で貸していたから立ち退きにも応じてくれるでしょう」という大家さんもいらっしゃいますが、実はそうではなく、相場より安い賃料で貸していたから、同等の安い賃料の移転先が見つからず、結果的に立退料が高額になるのです。良かれと思っていたことがまったくの逆効果ということにもなりかねません。

 したがいまして、前回もお話ししましたが、賃貸経営においては「相手の足元をみる」とまでは露骨ではなくても、定期的に賃料を見直し、適正賃料を維持することが、将来の立退料負担を軽減することにもつながり、安定経営の基礎となります。もっとも借家人の入れ替え時などに定期借家契約を導入する、もしくは更新時に定期借家契約に切り替える等の検討が重要なのはいうまでもありません。




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足元をみる

 「足元を見る」とは、相手の弱点をみつけて付けこむ、という意味です。テレビドラマのビジネス交渉などのシーンで「足元を見てきやがったな」と、主人公が苦虫を嚙み潰したような顔をする場面が頭に思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。言葉の由来は、むかし、宿屋や籠屋が、旅人の足元から、草鞋が擦り切れていたり、汚れていたり、足元がおぼつかないほど歩いて疲れ切っている様子を見て、高額な宿賃や籠賃を吹っかけるという、まさに相手の弱みに付け込むということからきた言葉です。狡猾な感じで、あまり良い意味でつかわれませんね。

 とはいいながら世の中の商売は、大なり小なり「相手の足元をみる」ことが基本になっています。それが露骨かどうかで今後の取引に与える影響や信用が変わってくるのだと思います。特にコロナ禍においてはマスク不足や消毒薬不足を足元に見た高額販売などが横行しました。あまりに露骨すぎますが、購入者がいるから成り立っているのも事実です。

 不動産業界もやはり足元を見る商売です。足元を見るといっても販売価格の決まっている住宅やマンションを購入しようとしているお客様の足元を見て値段を吊り上げることはできませんが、事業者とは反対に、購入希望者は意識せずとも売主の足元をみて、少しでも安くならないか価格交渉するのはもはや当たり前になっているようです。不動産の売買の場合は、売主、買主互いに足元を見ながらも条件が合わなければ取引不成立となり、他をあたることになりますが、賃貸の場合はなかなかそうもいきません。特に既に契約を継続している貸主借主間の契約更新や、再契約における賃料の条件については互いに足元を見られたくないものです。オーナーは、テナントに出て行ってほしくない、もしくは出て行ったとしても直ぐに条件の良いテナントがみつかる。または、テナントが儲かってそうかどうかも賃料の改定の判断材料となります。テナントはその反対で、うちに出て行ってもらったら困るだろうと考えれば強気の減額交渉になるかもしれません。特にコロナ禍では営業自粛要請などにより店舗や事務所がおしなべて苦戦しております。言葉は悪いですがオーナーの足元を見て賃料の減額や減免が多く行われています。この状況がしばらく続くとも考えられませんので、コロナ禍が落ち着いて、お店も会社も元気になったらその時はテナントの足元をみてそれなりに賃料を増額してもらえばいいのです。住宅も考え方は一緒です。少し家賃を上げても引っ越しはしないだろう、とか、逆に出て行ってもらいたくないから家賃は据え置きもしくは少し減額しようとか、感覚としては高額な賃料のほうが賃料の増額が受け入れられやすい傾向が見られます。高額帯の住宅は、住環境さえ気に入っていれば多少の賃料の増減は気にしない傾向にあるようです。

 このように特に賃貸事業では相手の足元を見て機動的に条件改定することが経営の良し悪しを左右することになります。相手の足元を見るとは、まさに相手を日ごろから良く観察することです。観察の過程で相手の弱点をみつけたとしても、露骨に相手の足元をみるような態度だけは慎みたいものですね。「足元を見る」やはり気持ちのいい言葉ではありません。



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売った後も住み続けられる・・・

 近年、自宅を売却しても住み慣れた自宅に住み続けられます。という不動産会社の宣伝を多く見かけるようになりました。これは何も最近開発された売却手法ではなく大分前から活用されてきた手法で、売却して借り受けるという意味でセールアンドリースバック、またはリースバックとよばれています。かつては企業の財務体質改善のために本社ビルを売却して、そのまま引き続き賃借人として利用するような場合に用いられるケースが主流でしたが、最近では老後の資金不足問題などを背景に住宅でも活用が増えてきているようです。

 リースバックというと何やら難しく感じますが、要するに自宅の売却です。その自宅の売却資金をもって近所の賃貸住宅に引っ越すか、もともとの自宅に家賃を支払って住みつづけるかということです。したがいまして、大事なポイントは、リースバックするかどうかはひとまず置いておき、好条件で売却できるかどうかです。住み続けられるという言葉に魅せられて、単純に売却した場合に比べて相場より安く売却したとすれば、老後資金の確保という意味では本質を見失ってしまっていると言わざるを得ません。また、売却金額や売却後の賃料などの諸条件に納得しても賃貸契約の内容が継続性がある契約なのか、定期借家など一定期間で終了する契約なのかも重要なポイントです。

 そもそもリースバックの事業者である不動産業者は福祉事業ではなく営利目的でこの事業に取り組んでおります。したがってリースバックで購入した物件は、いずれ第三者に売却して、その売却益を見込んでいます。定期借家契約により元の所有者である賃借人が出ていく時期が明確で転売の時期が見込めるものと、普通借家契約で賃借人が出ていく時期が不明で転売の時期が読めない物件とでは自ずと購入価格も賃料条件も変わってきます。もちろん短期で事業利益が見込める方、すなわち比較的短期で明け渡してもらえる契約形態の方が、利用者にとって好条件を引き出せることにはなりますが、居住の安定が見込めなければ、そもそもリースバックにて自宅を売却する必要もありません。

また、資金調達の観点から考えると、売却して纏まった資金が入ってきたとしても、その資金を取り崩しながら毎月の賃料を支払わなければなりません。同じ資金調達でも、例えば自宅を担保にした不動産担保ローンの場合は毎月の借入金の返済が生じますが、賃料の負担はありません。また自宅を手放すこともありませんので、毎月の返済額が、想定される賃料並みか、それ以下であれば何も不安定なリースバックを選択する必要もありません。最近では金利のみの支払いや死亡後に自宅を売却することを前提とするリバースモーゲージという融資方法もありますので、それらも含めたうえで、資金調達による老後の資金と居住の安定をどうするか検討する必要があります。

土地資産家には特に縁のない老後資金調達の話題かもしれませんが、事業者の視点を持つことによってリースバックを上手に活用することも可能です。例えば、高齢の借地人で相続人が身近にいないケースなどは借地権付き建物である自宅を買戻し、亡くなるまで建物を賃借してもらうことによって、その後は自己の所有地として活用することが見込めます。

リースバックやリバースモーゲージなどの普及は超高齢化社会がもたらしたビジネスモデルです。老後も健康で安心して程よく長生きしたいものですね。





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