問題解決型不動産コンサルタント 伊藤英昭の事件簿|キャリア20年の独立系「問題解決型」不動産コンサルタントが仕事を通じて日々思うこと、感じた事を綴ります。

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それぞれの立場で出来ること(賃料の猶予、減免)

 先月の寄稿から1か月、新型コロナウィルス感染拡大も、事態はいよいよ深刻となってきました。緊急事態宣言、緊急事態措置の発令による、なかば強制的な営業自粛要請によって、さまざまな業種が甚大な影響を受けています。

このようななか、大きな固定費である賃料を一定期間、猶予または減免できないかという深刻な相談が現場では多く寄せられております。このような問題に、行政も何かしらの対応をと施策を検討しているようですが、スピード感のある対応は期待できません。それでも今月末の家賃は待ったなしです。

このような相談に対して、家主としてできることは、できる範囲で、賃料の支払いの相談に応じてあげることです。賃料の支払いの相談には、減免と猶予の2つの方法があります。

賃料の減免とは、賃料を減額するということです。もちろん恒久的に減額でも構いませんが、今回の事情を鑑みれば、まずは一定期間減額し、一定期間経過後は現行の賃料に戻すという方法が現実的です。

賃料支払いの猶予とは、期日に支払わなければならないものを先送りにするということです。例えば、「今月の家賃を半分にします。ただし本来支払うべき残り半分は半年後に支払ってください。」というように、家主が、借主からの支払い延期の相談に応ずる。言い替えれば家賃の一部を借主に貸すということです。したがいまして、一定期間後は、猶予した賃料を返してもらうこととなります。

賃料の減免や猶予について、借主の立場に立つと、減額が確定する減免の方が、直接的な経済的利益がありますが、猶予でも、資金繰りの事を考えると、支払いを先送りにするという意味ではメリットはそれなりにあるといえます。家主の立場ではこの逆の事が言えます。減免は収入が減少しますが、猶予は収入が先送りになることですので直接的な経済的ダメージはありません。しかも契約時には保証金などを預かっているケースが大半でしょうから、預かっている保証金の範囲内では賃料を猶予したことによる損失、デメリットは家主にほとんど無いと考えてよいでしょう。

賃料の減免にせよ、猶予にせよ、金額や期間は当事者の事情を鑑みて双方で取り決めることとなりますが、いずれも家主にとってはプラスの話ではありません。このような危機に家主として、応援、対応するためにも、経済情勢に応じた賃料設定、賃料改定、すなわち景気が良い時はそれなりに賃料を頂き、景気が悪くなったときには、減額、減免、猶予に応じるという機動的な経営が本来もとめられるところです。また、借入金の返済がある場合は、このような柔軟な対応はとれませんし、賃料の減額や、未払いが発生したときには借主どころか、家主本人の賃貸経営が行き詰まってしまいます。やはり過度な借入金による賃貸経営はこのような危機に対しては非常に弱いという事がいえるでしょう。

いずれにしましても我々が経験した事の無い未曾有の危機です。賃貸経営に関わらず、それぞれがそれぞれの立場で、できることをすることが一日も早い事態の鎮静化につながることは間違いありません。

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新型コロナ不安と賃貸経営(用途とリスク)

 日々、深刻な状況が伝わってくる新型コロナウィルス、イベントや人の集まる会合などの自粛要請で経済、社会に与える影響は計り知れません。東京オリンピックイヤーとして明るく希望に満ちた年の幕開けから、誰が今日のような事態を想像できたでしょうか。まさに明日の事は誰もわかりませんね。

 さて、このような状況が不動産に与える影響を考えてみますと、インバウンド需要を見込んだ観光業、飲食業、旅行業などのような直接的な影響はありませんし、リーマンショックの時のように金融システムが崩壊したわけではありませんので、不動産業界を直撃するほどのインパクトはありませんが、時間とともにじわじわと影響が表れてくるのは必至です。

 例えば、飲食店に人が入らなくなり、売り上げが激減します。短期間であれば、まだ持ちこたえられると思いますが、これが長期に渡るとお店を閉めざるを得なくなります。お店が退去した後は当然、新たなテナントを募集することになりますが、このような状況では新たなテナントが現れるまでには相当の時間を要するでしょうし、これまでの条件で貸すのはなかなか難しいでしょう。また、何とか店を維持する為に固定費である賃料の値下げ要求があるかもしれません。新たなテナントを見つけられるまでに相当の時間を要する可能性が高ければ、賃料減額の要求をのまざるを得ないかもしれません。

 事務所も同じです。景気が悪くなり、事業規模を縮小する。賃料の安いビルに移転する。賃料の減額を要求する。また、今回の問題でクローズアップされたテレワーク(在宅勤務)の普及により、事務所の存在意義自体が問われてくるようになるでしょう。

住宅はどうでしょうか。やはり景気悪化により、収入が減少する、または職を失うなどによって、賃料の値下げや、事によっては滞納という事態も増加することが考えられます。

 このような事から、景況悪化が続けば、不動産から得られる収入が減少することになりますので、じわじわと不動産の価値は下落せざるを得なくなります。

ただし、賃料に与える影響のスピードは用途によって異なります。やはり飲食店舗が最初に直接的な影響を受け、次に事務所、最後に住宅という順番です。ということは、賃貸経営においては利用用途によってリスクが異なるということが言えます。景気が上向きの時は、店舗も事務所も景気よく賃料を支払ってもらえますが、景気が悪くなると、店舗、事務所は撤退や賃料減額リスクが高いため、住宅に比べるとリスクが高いと言えるでしょう。別の言い方をすると、賃貸経営において、賃貸住宅は店舗、事務所に比べ、景気悪化時の影響の受け方が比較的少ない事業ということが言えます。

いつまでこのような状況が続くのか誰もわかりません。地域社会、日本、世界が一丸となって乗り越えなければならない危機です。お互い、協力できることは協力し合って、この難局を乗り越えたいものです。

まずは、手洗いうがいに加え、栄養と睡眠をよくとり、笑って免疫力を高めることからでしょうか。




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いい人

令和2年、明けましておめでとうございます。
本年も引き続き本ブログにお付き合いくださいますようお願い申し上げます。

 「いい人」になると、いい仲間が集まり、いい情報が集まってきます。あたりまえの事のようですが、こと、自分事となるとなかなか難しいですね。自分では、いい人のつもりでいても他人から見たら、決していい人ではないかもしれません。特に利害の絡む仕事の場面では、いい人でいることの方が難しいかもしれません。生き馬の目を抜くと言われる不動産業界ではなおのことです。

 私自身、不動産コンサルティングを生業として今年で27年目になりますが、本当にいい人、いいお客様(地主家主様)に恵まれて今日もご飯が食べられることに感謝しております。いいお客様には、決して損をさせないよう、全力で役務提供、情報提供をするよう自然に意識します。いい人(いいお客様)は、常に、関係者はもちろん、利害が反する相手の事も考えています。考えているというより尊重していると言った方が適切かもしれません。

東京も大きな被害を蒙った東日本大震災の直後、自粛ムードで飲食店などはしばらく閑古鳥が鳴く状態の時、「大変な時はお互い様。」と言って、テナントの賃料を半額にしたオーナーがいました。まさに「いい人」です。その後、将来のビル建替えに向けて、契約形態を普通借家から定期借家に切り替えを進めていますが、ほぼすべてのテナントが切り替えに応じてくれました。また、子育てで大変だろうと言って、借地の更新料や、地代を減額する地主さんもいました。のちにお世話になりましたと言って土地を地主に、ほぼ無償で返還しました。なかなかこのような対応はできるものではありませんが、「いい人」には意識せずとも結果的に経済的な利益もついてくる好例です。

「いい人」は私たちの仕事も適正に評価していただき、報酬も値切りませんし、速やかに気持ちよく支払っていただけます。当然、問題が起きたら直ぐに全力でサポートしますし、いい情報があれば率先して提供します。「いい人」の周りはすべてが好循環です。

 何かいい情報があったらくれ、良い物件があったら譲ってくれ、儲かる話をくれ、また、費用の話になると口癖のようにもっと安くしてくれ、という人もたまにいます。まさに、くれくれ星人です。このような人には、いい情報はなかなか集まりませんし、仮に取引をしたとしても長続きはしませんね。

 と、偉そうなことを言っておりますが、いろんな意味でゆとりがなければ、「いい人」になるのは難しいですね。私自身いつも自問自答、自戒の念も込めて新年冒頭のコラムとさせていただきます。

さて、これから滞納地代の督促に更新料の請求、賃料の値上げ交渉と、まだまだ私は「いい人」にはなれそうにありません。

本年も皆様のまわりに「いい人」が集まり、「いい年」になりますよう心よりお祈り申し上げます。




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不動産の共同所有のかたちと将来

 不動産を共同で所有すると、共有者単独の意思では、利用、処分が難しいことから不動産の共同所有はなるべく避けた方がいいことは誰しもが理解していることです。しかし、さまざまな事情により、共同所有にせざるを得ない、また、今後の管理、処分の事を深く考えずに共同所有するケースはまだまだ多くあります。最初は良かれと思って、また、深く考えずに共同所有したとしても、最終的には売却してお金で分けたり、共同所有者の一人が持分を買い取ったりするなどして、共同所有状態はいつか必ず解消することになります。

 共同所有は、相続によって生じるケースが大半ですが、隣り合った第三者同士が、それぞれの小さい土地を最大限有効に活用する為に、互いの土地を一体利用し、共同でビルを建てる(建てた)というケースも意外と多く存在します。第三者同士で建築した建物の老朽化によって、所有者同士の意思が統一できず、売却も建替えも一向に進まず、ビルがスラム化してきた、という事例も増加しております。まさに、一緒に建てて良かった、と感じたのは最初だけです。

 ここまであえて共同所有という言い方をしましたが、不動産の共同所有の形態は、共有と区分所有があるということを理解する必要があります。共有は全員合意によらなければ、その不動産の利用、処分ができませんが、区分所有の場合は、建物の独立した区分(共同住宅の住戸部分やオフィスのフロアなど)を区分所有者の単独の意思で利用、処分が可能です。巷に溢れている分譲マンションがその典型です。まさに画期的で実用的な権利のはずなのですが、最近では老朽化したマンションの増加とともに、なかなか建て替えが進まないことが問題となっております。今後、この問題は更に増加し、深刻な社会問題となるでしょう。

 マンションの建て替えが進まない理由は沢山ありますが、権利者が多いこと、それに伴いそれぞれの考えが異なること、加えて、それぞれの財布の事情が異なることなどが大きな要因です。このような事から、そもそも全員一致は難しかろうという前提で、区分所有法では、共有と異なり、全員一致ではなくても多数決によって、修繕や、建て替えが可能なルールを定めております。しかし、現実には前述した事情によってマンションの建て替えはほとんど進んでおりません。それは、区分所有といえども、やはり実態は一つの建物を多くの第三者で所有する共有と変わりがないからです。

 同じ共同所有でも、かたや共有は全員一致によらないと利用処分できないということから、最も望ましくない権利形態と言われておりますが、共有状態を解消するためのルールが法律により定められており、共有者は裁判によって共有を解消するための手続きをとることが可能となっております。裁判では最終的に不動産を物理的に分けるか、難しい場合は強制的に売却(競売)することによってお金で分けるという方法がとられます。これを共有物分割請求といいます。このような事から考えると共同所有の解消を実現するためには、区分所有より、共有の方が確実ということが言えるでしょう。

共有は望ましくないといって、便宜上、建物をフロアごとに区分し、親家族、息子家族、娘家族などの同族間でそれぞれ区分所有しているケースを見かけたりしますが、本質を理解していない安易な権利形態といえます。やむを得ず、共同所有せざるを得ない場合、いつか必ず到来する共同所有状態の解消を考えると、共有にすることは大事な選択肢です。

 人生100年時代、年金の事は気になっても、頑張って買った憧れのタワーマンションの50年後はそれほど気にならないようです。




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人間関係と資産価値

貸宅地を保有している地主に不動産会社から連絡がありました。「土地を借りている借地人から、借地権の売買の依頼を受けたので、承諾料はいくらか」あるいは「借地権を売却することになったので譲渡承諾してほしい」との内容です。言いたいことの意味はよく理解できます。借地権の譲渡には地主の承諾が必要ですから、手続き的にも法的にも対応に誤りがあるとは言えません。

ただし、何かすっきりしないものがあります。そう、順番が違うんじゃないの?ということです。本来あるべきは、借地人自らが地主に連絡し、できれば出向いて、「借地権を譲渡しようと考えている、ついては知り合いの不動産会社にお願いしたのでよろしくお願いします。」最低限、ここからスタートしなければ物事は円滑にすすみません。

特に地主の立場で考えると、住宅難の時代に権利金も受けとらずに土地を貸した、それがいつの間にか還ってこなくなった、必要が無いのなら土地を還してほしい。というのが偽らざる本音です。このように相手の立場になって筋道を立ててよくよく考えることで、お願いの仕方も相手に与える心証も大きく変わります。この順番をはき違えて頭書のような不動産会社任せの対応をとってしまうと、承諾いただけるものもいただけません。これによって自身の借地権という資産価値を大きく毀損してしまうのです。借地権を取り扱う不動産会社にもこのことは良く理解していただく必要があります。逆に、地主は、このようなことを理解していない借地人(不動産会社)には承諾する必要はありません。「法律に従って借地非訟なり進めてください。」と、ひとこと言えば大丈夫です。

 

 別の場面で、貸宅地を円滑に管理する為、また、将来、相続が発生した場合に貸宅地を売却、あるいは物納などの検討をしている場合には、権利関係、契約関係を事実にあわせて整備する必要があります。具体的には、測量をして借地の範囲を特定し、実測面積に合わせて契約書を差し替える作業などです。これには借地人の理解と協力が必要です。このようなケースでは、地主といえども測量会社やコンサルティング会社に丸投げするのではなく、地主自らが借地人を訪問し、「このような事情で測量と契約関係の整備をします。ついては彼らに作業をお願いしたのでご協力お願いします。」という最初の挨拶からスタート出来れば、借地人の協力が得られ、円滑な整備が可能です。

不動産を売却するときも同じです。隣地との境界が確定できなければ不動産の価値は大きく毀損してしまいます。この場合も不動産会社や測量会社任せではなく、最初に隣地などの関係者にあいさつに回ることが重要です。

 お願いする立場、される立場、事情によって立場は変わりますが、何事も円滑な人間関係が不動産の価値を維持向上させることは間違いありません。とはいっても誰しもが聖人君子ではありませんので、それがなかなか難しくもあるのですが。

まずは気持ちの良い挨拶からでしょうか。






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売りやすい活用と契約形態を考える

 賃貸経営のキーワードは「分けやすく」「売りやすく」「早期回収」という点が重要である。というお話を前回させていただきました。今回はその一つである「売りやすく」をもう少し掘り下げて、「売りやすい賃貸経営」について考えてみたいと思います。

 賃貸経営は賃料収入を得ることを第一とし、将来、売却することまで視野に入れて計画することは、ほとんど無いようです。しかし、相続税納付や遺産分割などの事情により売却せざるを得なくなった場合に、売りやすい物件か売りづらい物件かによって換金のタイミングを逃してしまったり、目論みどおりの金額で売却できなかったりなど不利益を被る可能性があります。

 では、売りやすい賃貸物件とはどのようなものでしょうか。その前にまず、売りやすい不動産について考えてみましょう。売りやすい不動産の代表例は更地です。その理由は、土地の上に何の制約(負担)もなく、購入者が自由な用途で利用できるという事です。住宅に限らず、アパートでも店舗・事務所でも駐車場でもかまいませんので、購入者のターゲット層が広いということも言えます。その点から賃貸物件を考えてみますと、賃貸物件は土地上の建物および建物の賃借人という利用上の制約(負担)があることから、おのずと賃料収入を目的とした投資物件という用途に限られてしまします。この場合の購入者はある程度の資産や収入を背景にした層に限られてきます。

この事から考えますと、売却しやすい賃貸物件とは、制約(負担)が少なく、購入者層が広がる可能性のあるものということが言えます。具体的には賃借人による制約(負担)を少なくするための契約形態の検討が必要です。賃借人は借地借家法で保護されており、正当な事由が無ければ退去を求めることができません。また、明け渡しには多額の立退き料も必要になります。しかし「定期借家契約」を締結することにより、正当な事由なく期間満了とともに明け渡しを求めることが可能となり、賃借人による利用上の制約(負担)を軽減することが可能となります。この方法により、一定期間後は購入者の自由意思での土地利用が可能となることから、投資目的以外にも購入者層の幅が広がることにつながり、売りやすさが増すといえるでしょう。もちろんオーナー自らが定期借家契約による期間の満了とともに明け渡しをもとめ、更地で売却する事も可能となります。要するに定期借家契約の導入によって物件の価値が高まると考えてもいいでしょう。

ただし、定期借家契約は当事者の合意が必要であり、通常の賃貸借契約からの変更は難しいため計画段階からの導入を検討することが必要です。特に店舗や事務所などに賃貸する場合は明け渡しを求める際に多額の立退き料(営業補償など)が必要となるため、将来の売却、建替えなどの可能性までを考えると、定期借家契約によって将来のリスクを軽減することが重要です。

令和となり、平成の30年間もあっという間に過ぎてしまいました。これから新たに賃貸経営をはじめても、気が付いたら20年、30年すぐに経過しています。分けやすく、売りやすく、早期回収という視点で今一度、賃貸経営を見つめなおしてはいかがでしょうか。






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分けやすく、売りやすく

 賃貸経営を取り巻く環境は時代とともに変わってきています。20年前、30年前と現在では社会経済情勢も大きく変わり、当然、土地活用の考え方も時代とともに変化しています。

 現在における賃貸経営のキーワードは「分けやすく」「売りやすく」「早期回収」の3つです。「分けやすく」とは、相続の際に分けやすい土地活用です。既にご承知の通り、不動産は現預金と異なり、分けづらい財産です。相続人が複数存在する場合は、将来の遺産分割を考慮して土地を活用する必要があります。例えば相続人である子が2人の場合、一つの敷地に1棟建築した場合は、相続の際に賃貸物件を2人で共有するか、あるいは1人が賃貸物件を相続し、もう1人が他の財産を相続する方法があります。賃貸物件の他に適当な財産があれば紛争も避けられるかもしれませんが、適当な財産が無い場合は、2人の共有となり、単独では処分、活用が出来なくなってしまいます。また賃貸物件の運営をどちらがするのか、また、次の相続が発生した場合は、共有持ち分が細分化し、当事者が増えることによって、更に財産の管理、処分が困難になってしまします。一方、2棟建築した場合は、それぞれ単独で、賃貸物件を管理運営、処分することが可能となり、将来の無用な相続紛争を回避することが可能です。これは、相続人単独の意思で売却等を判断できることから「売りやすく」とい観点でも有効です。売りやすい土地活用とは、意思決定のしやすさ、という人の問題に加えて、どのようなものを建築するかという物理的な問題や、市場環境、法規制など、多くの要素が関係してきますので、次回以降、この「売りやすさ」という点についてはもう少し掘り下げてお話しさせていただきます。

 3つ目の「早期回収」とは投資効率、投資利回りという観点です。かつては鉄筋コンクリートなどの堅固な建物を、法令で建築できる限度いっぱいに小さな部屋をとれるだけたくさん建築するようなことを多く見かけました。賃貸需要も旺盛で貸し手主導の時代は、このように目いっぱい建てて、目いっぱい収益を得るという考え方で良かったのかもしれません。しかし、現在は供給過多による借りて主導の時代であり、賃貸経営においてはこれから先の明るい要素はなかなか見当たりません。時代の変化は目まぐるしく10年後20年後の社会経済、ライフスタイルがどのようになるのか、どのような物件や間取りが入居者に支持されるのかは想像できません。このような事から、いかに事業として早期に投資回収を図れるかが、このような先行き不透明なリスクを回避する重要なポイントのひとつになります。かつての最大収益ではなく投資効率を重視する時代です。また、建築資金の調達についても借入金に多くを依存しないことが重要です。賃貸経営の破たんの多くは借入金過多です。借入金がなければ、賃料下落も空室リスクも命とりにはなりません。

 新たに賃貸物件の建築を検討しているかたは、今一度立ち止まって、「分けやすく」「売りやすく」「早期回収」という観点でじっくり検討してみては如何でしょうか。

何も急ぐ理由はありません。




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地面師考

 昨年、大手ハウスメーカーの地面師による巨額の詐欺事件が発生いたしました。事件の書籍も販売され、改めて詐欺の手口の概要が見えてきました。悲しいかな、不動産業界は昔から魑魅魍魎が跋扈する業界と呼ばれていますので、取引の安全性を考えるうえで、今一度、この問題について考えてみたいと思います。

 「地面師」とは、他人の土地を所有者になりすまして売却し、その売却代金を搾取する詐欺集団のことです。これまでも地面師詐欺事件は度々発生していましたが、被害者の多くは不動産を専業とするプロが多いのも事実です。言葉巧みに、土地の購入、転売(事業化して売却)を生業とする不動産会社の購入欲を煽り、加えて、所有者の実印、印鑑証明書、身分証明書。権利証(登記識別情報)などを偽造し、本人役はもちろん、弁護士や司法書士などの専門家なども加担しているとなると、なかなか表面的に見破るのは大変だろうと想像できます。一にも二にも所有者の本人確認が重要なのは当然ですが、取引に至るまでの過程や当事者を注意深く考察することによって、多くは未然に防ぐことが可能です。やはり怪しい取引は、そこに至るまで、必ず怪しい臭いがあり、我々プロは、その臭いを嗅ぎ取るのが仕事といえます。登場人物、取引背景、取引理由、顔つき、話ぶり、そこかしこに気になる臭いが漂っているものです。

 まず、詐欺の基本は儲け話である、ということです。土地が安く手に入る、一等地が売りに出ている、など、そんな儲け話はそうそう転がっておりません。何より、その儲け話が何故、自分のところに舞い込んできたのか頭を冷やして考える必要があります。

 また、取引に急ぎの事情がある場合、中間金の受領を求める場合、司法書士が売主指定の場合、中間省略や取引にSPCなどのペーパーカンパニーが登場するような場合は、より一層の注意が必要です。

更に、情報が持ち込まれた経緯と登場人物にも気をつけなければいけません。情報に至るまでの登場人物が多いと信憑性は低くなります。所有者の親戚筋、銀行OB、顧問税理士、弁護士など、もっともらしい登場人物の名前がでてきても、何故そのような人を介した情報なのか、売却の事情は何なのか注意深く考察しなければいけません。登場人物に政治家や秘書の名前が出るようでは、まず疑ってかかるべきでしょう。また、大なり小なり何かを誤魔化そうとしている人は往々にして雄弁であり、聞いてもいない事をもっともらしく上手に話します。要するに、喋り過ぎの人は要注意です。

一番大事なのは、信頼のおける人をブレインにすることです。信頼のおける人には信頼のおける人や情報が集まります。怪しい情報であっても、精査する能力があります。逆に、怪しい人には怪しい人や情報が集まり、そして、怪しい情報を好む人、儲け話に目が無い人のところへ持ち込まれます。まさに類は友を呼ぶとはこの事です。

このコラムを読まれている人は地面師には縁のない人ばかりだと思いますが、振り込め詐欺や投資詐欺などの特殊詐欺が後を絶たないどころか、むしろ形を変えて増えてきております。世の中そうそう儲け話は転がっておりません。詐欺被害防止の啓蒙のようになりましたが、まずは、私だけは大丈夫、という過信を改めることが被害防止の第一歩でしょうか。



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賃貸経営は儲からない

「賃貸経営は儲からない」というより、あまり儲かりません。特に借入金でアパートなどを建築した場合は意識したほうがよいでしょう。既に何十年も賃貸経営をしてきた方々はそのような実感があるのではないでしょうか。

 建築当初は比較的安定した収入を得られたとしても、築年数が10年、15年と経過するにつれ、供給過剰による空室の増加や、賃料の下落、修繕費の増加など収入が減り、経費が嵩むのは昨今の情勢から、わざわざこのコラムを読まなくても誰でも理解できることです。

 ここでお話ししたいのは、そのような事ではなく、税金の仕組みそのものが、そもそもあまり儲からない仕組みになっているという事です。ご承知のように賃料収入に課される税金は、収入から経費を引いたものに税率をかけて算出します。税金の計算上、差し引ける経費の主なものは、土地建物の固定資産税、都市計画税や、不動産会社の管理手数料、建物の維持管理費用、水道光熱費、修繕費などです。そのほか建物の減価償却費、建物に要した借入金の金利なども経費に含まれます。

実はこの借入金利が、「賃貸経営はあまり儲からない」という大きなポイントなのです。一般的に個人が利用するアパートローンなどの場合は元利均等返済が利用されます。元利均等返済とは、元金、金利併せた返済額が月々定額の方式です。月々一定の返済額ですので、事業計画が立てやすいというメリットがありますが、長期的に見た税金の支払いという観点では、年数を負うごとに税金だけが増えていくという仕組みになっているのです。

前述したとおり、元利均等返済は元金、金利を併せた返済額が定額になりますが、一定の返済額のうち、借り入れ当初は金利が大部分を占め、年数の経過とともに金利部分が減少し、元金部分が増えてくるという特徴をもっています。例えば、月の返済額が元金、金利併せて30万円とすると、返済当初は、その30万円のうち、金利が25万円、元金が5万円というイメージです。これが年数の経過とともに、金利が5万円、元金が25万円と徐々に逆転してきます。

このことから、返済額そのものは一定でも、税金の計算上、借り入れ当初は経費となる金利が多くなるため、その分、税金が減少しますが、年数の経過とともに、経費となる金利が少なくなってくるため、税金の負担は年々増加してきます。そもそも収入と支出が新築当初から変わらなかったとしても、税負担だけは増える仕組みなのです。加えて、昨今の賃貸経営は、年数の経過とともに、空室の増加、賃料の下落、修繕費の増加は避けられませんので、新築当初は儲かっているような実感があったとしても、10年、15年と経過すると、税負担の増加もあり、なんだかあまりお金が残らないな、ということになるのです。(かつて定率法で建物を減価償却していた人は、税負担の増加はより顕著です。)


 しかしながら、アパート建築によって、その間、固定資産税が軽減されたり、相続税評価額が引き下げられたり、という効果も得られますので、賃貸経営は、損はしないけど、あまり儲かる商売でもないな、というのが多くの実感ではないでしょうか。

そして、やっと借入金の返済が終了する頃には、「そろそろ建替えませんか」という案内が、あちらこちらから届く仕組みになっています。すごい仕組みですね。





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遺言の功罪

昨年、相続法が大幅に改正されました。中でも自筆証書遺言の方式の緩和や、自筆証書遺言の保管制度の創設によって、改めて遺言の重要性が注目されております。方式の緩和により、不動産のように分けづらく評価が難しい財産がある場合や財産の殆どが不動産の場合は、相続人間の遺産分割争いを回避するための、「遺言」の活用が今後ますます増えることになるでしょう。

 相続争いの殆どは相続による財産配分をめぐる争いであり、この争いを予防するための方法の一つが「遺言」です。「遺言」の主な役割は、故人が生前に子供たちの財産配分を指定することです。「遺言」の存在が明らかな場合、財産配分については原則、「遺言」で指定されている分け方、すなわち故人の指示に従わなければなりません。すなわち、財産を引き継ぐ子の意思に関係なく、半強制的財産配分が決められることになります。(相続人全員の合意によって別途遺産分割協議によって分けることも可能です)

 遺言書の存在によって、遺産の分け方をめぐる時間の浪費と、争いになった場合の精神的な負荷を避け、すみやかに自分の財産に名義を変更することができるため、預貯金を引き出すことも財産を処分することも可能となります。
 しかし、これはあくまで速やかに名義変更が可能であるという手続き上の話であって、子供たちが「自分亡き後も助け合って仲良くする」というのとは別問題であるということは認識しておかなければなりません。

 一般的に「遺言」を書いたほうがいいケースというのは、子供の一方に数量的に偏った配分をしたい場合、せざるを得ない場合や、長男の嫁、世話になった知人など、相続人以外に財産を遺したい場合などです。別の言い方をすれば「遺言」とは親の子に対する思いを数量にあらわすということともいえます。例えば、「面倒をみてくれた、孫を良く連れてきた、病気がちだ、生活が大変そうだ」など遺言に影響を与える理由は様々です。

しかし、その「遺言書」の内容、親の気持ちを知るのはほとんどの場合、親の死後です。相続人である子供たちが親の遺言を目の当たりにしたとき、遺産の配分が親の気持ち(評価)と自分の期待(気持ち、自己評価)と乖離がある場合には複雑な心境に陥ることもあるでしょう。さらに「遺言」の形式によっては、有効、無効を巡って兄弟間で争うような残念な事態も起こりかねません。せっかく争いを予防するために遺した「遺言」が、逆に争いの種になる場合もあるのです。

望ましいのは残された家族が納得し、仲良く助け合って暮らすことです。家族のことを思い、「遺言」を残すのであれば、子供たちに財産配分の内容と理由を生前に伝えること、あるいは、元気なうちに自分の意思に従って子に贈与することも考えられます。また、揉める種を減らすために分けづらく評価のしづらい不動産などを生前に処分する事や、思い切って財産を遣いきってしまうことも考えられます。

「遺言」は故人の最後の遺志であり、故人による財産処分の権利です。しかし「遺言」は故人の一方的な意思であるということから、手続き上の問題は解決しても、残された子供たちが故人の遺志をどう捉えるか、仲良く円満な関係を築いてくれるか、とは別問題と理解したうえで「遺言」を書くべき、すすめるべきと思います。

もちろん、子供が過度に親の遺産を期待してはいけない、ということは言うまでもありません。




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2019年の不動産市況雑感

新年あけましておめでとうございます。
本年も本ブログにお付き合いの程よろしくお願い申し上げます。

 年頭ですので、今年の社会、経済の動向が不動産市況に与える影響を考えてみたいと思います。今年、不動産市況に影響を与えそうな一大イベントは10月に迫った消費増税です。

不動産の場合、土地は非課税ですが建物は課税です。これまでの消費増税の例から、今回も、もれなく住宅や共同住宅の駆け込み需要とその後の反動が見られるでしょう。住宅のような高額商品は課される消費税も高額となり、2%とはいえ大きな負担増となります。住宅購入や建築を検討している人の意思決定に、消費増税がきっかけとなり、更に建築会社や住宅事業者の強力な営業が大きな後押しとなるのは必然です。

政府も増税後の景気後退を防ぐために、さまざまな施策を打ち出しておりますが、どれほどの効果が見込まれるは期待薄です。

個人的には、何度となく経験してきた過去の例からも、皆に歩調を合わせて無理に駆け込まずとも、増税後に消費増税分、あるいはそれ以上値引きしてくれそうな気もしますし、反動で少し冷え込んだくらいが顧客として手厚く扱われると思うのですが、さて今回はどれくらいの人が駆け込むのでしょうか。

また、今年は総務省統計局が実施する5年に一度の「住宅土地統計調査」の結果が発表される予定です。前回調査時の平成25年は空家数が820万戸、空家率が13.5%と、ここにきてようやくクローズアップされましたが、調査開始以来、数十年、空家は増加の一途をたどっており、今回の結果も間違いなく記録を大幅に更新することになるでしょう。このような状態でも新築住宅は年間100万戸前後供給され続けており、根本的な解決策は見当たりません。超長期で見ると市場原理によってこの状況も変化してくるのでしょうが、新築重視の政策、産業構造、日本人の新築好きの価値観が変わってこないと、この傾向はまだまだ続くことになりそうです。

それにしても年間
100万戸もの新築住宅を買う人、売る人がいるということに市場の逞しさを感じます。

 昨年、シャアハウス問題に端を発した一部の銀行による不動産の不正融資問題や、地方銀行、信用金庫の不動産に偏重した融資が問題となり、昨年来、金融機関の不動産に関する融資審査が厳しくなってきました。特に投資用の収益不動産に対する融資は厳しめとなり、(といっても本来あるべき姿勢になったと思いますが)それによって収益不動産の価格は下落基調です。収益不動産の価格が下落基調という事は、逆に利回りが上昇することですので、土地資産家等、信用の高い人たちにとっては、適正価格(適正利回り)で購入する機会が増えることになるでしょう。逆に、築古のアパート、マンションを手放そうと検討している人は、早めの対策が必要かと考えます。

 いずれにしましても、後で振り返ってみると、今年、あるいは去年が、不動産価格のひとつの山だった、ということになるのではないか、と、なんとなく感じます。

 以上、今年もいろんな事があると思いますが、皆様にとって本年が良い年でありますよう心よりお祈り申し上げ、年頭のご挨拶とさせていただきます。









「貸宅地は不良資産か?」換金性から見た視点

前回は「貸宅地は不良資産の代表格である」という論調に対し、「収益性」の観点からは決して不良資産ではないというお話をしました。今回は貸宅地の「換金性」について実務的な視点から考えてみたいとおもいます。

貸宅地は「借地権」という法律に守られた権利の負担(制約)がついている土地です。従いまして、何の負担の無い未利用の土地と比較すると、借地権の負担が付いている分、価値は低く評価されます。相続税の土地評価では制約の無い土地(自用地)を100とすると貸宅地は30から40という評価です。貸宅地の時価については必ずしも相続税の評価割合に従う必要はありませんが、やはり、相続税の評価の影響を少なからず受け、都市部では自用地の40前後が概ねの相場といえるでしょう。

この貸宅地の価値を実現(換金)するための方法の多くは、貸宅地を利用している借地人に売却するか、借地権を有している借地人と貸宅地を共同で第三者に完全な負担の無い所有権として売却し、その代金を話し合いによって分け合うかのいずれかです。しかし、いずれの方法によっても地主自らの意思のみで換金することはできません。借地人に売却しようと考えても借地人に資力がなければ換金できませんし、借地人と共同で第三者に売却しようと考えても、借地人に売却の意思がなければ、やはり換金できません。そういう意味では貸宅地の換金性は低いと言わざるを得ないでしょう。

このように貸宅地の換金性は低いものの、売却のタイミングや方法によっては換金、または換金と同様の効果を得ることが可能となります。

貸宅地の売却を検討する理由は様々ですが、その多くは、相続に伴う相続税の納税資金を確保しなければならない事情が発生した時です。前述したように貸宅地を借地人に売却しようとしても借地人に資力がなければ換金化できません。また、このような場面では、借地人に足元を見られ、買いたたかれるのではないか、という不安もあります。しかし、相続税の納付については、現金の代わりに土地そのものを納税資金の代わりとして国に納める「物納」という制度があり、貸宅地も一定の要件を満たすことにより物納が可能です。その場合の評価は相続税評価額となります、すなわち相続税評価額を現金の代わりとして引き取ってくれる、いわば国が買い取ってくれるようなものですので、相続税評価額を下回る価格で借地人に無理に売却する必要もありません。

このような事から、相続税を納付するという場面においては、借地人に資力がない場合でも、物納制度を活用することにより換金と同様の効果を得ることが可能となります。ただし、物納にあたっては相続税の金銭一括納付が困難であり、かつ延納(分割払い)によっても困難である事、この条件をクリアした上で、借地契約面積、実測面積、登記簿面積が一致していること等、借地人の協力が必要不可欠となりますので、相続を機に貸宅地を納税財源に充てようと検討している場合は、専門家と相談の上、事前の準備が必要となります。また、事前準備の段階で、借地人の購入の意向を把握しておくことも、いざという場面で、スムーズに納税を行うために必要な準備といえるでしょう。

 以上の事から、貸宅地の換金性は低いものの、相続という場面では、換金および換金と同様の効果を得ることが可能です。

 実務を通じて感じることは、借地人は、機会があれば何とかして土地を購入したいという意向が非常に強いということです。地代の支払いや、更新料、承諾料などの経済的な負担に加え、他人の土地を借りているという精神的な負担が少なからず影響しているようです。

 いずれにしましても、貸宅地は適正な管理をすることにより、資産価値を維持保全することが可能な立派な財産ということが言えるでしょう。





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「貸宅地(底地)は不良資産」という専門家たち

「貸宅地は不良資産の代表格である」と一般的に言われております。特に不動産のプロと称する人にこのような論調が多いように感じます。このような事から「貸宅地は売った方が良い、優良資産に組み替えたほうが良い」とのアドバイスが多く見受けられます。

不良資産と呼ばれる主な理由は「収益性が低い」「換金性が低い」この2つです。今回は貸宅地の収益性について実務家の視点から考えてみたいと思います。


 首都圏の地代の相場は土地の固定資産税額の3倍〜5倍程度です。相続税評価額(貸宅地評価)を基準に地代利回りを換算すると、都市部で概ね1.5%前後です。(地価の低い郊外になると利回りはもう少し高くなります。)この数値を見ますと確かに利回りが低い、収益性が低いともいえますが、これはあくまで相続税評価額ベースでの利回りであり、投資額に対する利回りではありません。

よくよく考えてみますと、現在、貸宅地を保有している地主の大多数は先代から相続で取得しており、貸宅地の投資額という観点で考えますと限りなくゼロに近いというのが実態です。もう少し厳密に言うと、その土地を相続する際に支払った相続税相当額が投資額、取得額といえるでしょう。そのような考え方に立つと貸宅地の取得額に対する地代利回りは、決して低くはありません。

加えて、貸宅地の場合、20年(30年)に一度、更新の機会がおとずれ、その際に更新料を受領することが一般的です。その他、借地人が借地権を譲渡する場合は、譲渡承諾料を、借地上の建物を建替える場合には建替え承諾料を受領することが可能です。更新料、建替え承諾料についてはその地域の慣習や、地主の考えにもよりますが、一般的には、借地権評価額の10%前後、自用地評価の5%前後と考えると、20年(30年)に一度とはいえ、大きな収入となります。借地権譲渡の承諾料については一般的に譲渡価格の10%前後が相場です。実務的には、借地権の譲渡と建替えは同時期に行われることが多いので、このような場合は多くの臨時収入が期待できます。(借地の更新料は法的根拠がないことから、支払いを巡りトラブルになるケースも散見されますが、借地権の譲渡、借地上の建物の建替えについては地主の承諾事項であり、承諾の対価として事実上、受領することが可能です)

 

次に、維持管理の観点で考えますと、貸宅地の運営にかかる費用は実質、土地の固定資産税、都市計画税のみであり、建物のように老朽化に伴う、維持修繕費用は発生いたしません。また、空室のリスクや賃料の滞納リスクも殆どありません。

以上のことを鑑みますと、貸宅地は、決して収益性が低い不良資産ではなく。安定した収入が確保可能な優良資産という事が言えるでしょう。

このような事から、本当の意味で貸宅地に精通した実務家および、貸宅地の特性をしっかり理解し、適正な管理をしている地主さんは、貸宅地の事を、安易に「不良資産」とは呼びません。

次回は「換金性」という観点から貸宅地を考えてみます。






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残暑お見舞い申し上げます

酷暑が続いておりますが、皆様おかわりございませんでしょうか。 

私はほぼ毎朝ジョギングをしておりますが、大量の汗をかくと足の筋肉がつることがわかりました。

今さらながら身をもって水分、塩分が体に与える影響に気付いた訳です。私がサッカー少年だったころは、水は飲むな、足がつるのは走り込みが足りないんだ、という鬼監督、コーチの指導があたりまえの時代でした。

忘れもしない中学1年の真夏の部活でのことです。私たち1年生は先輩の蹴ったボールをダッシュで拾いに走らなければいけないのですが、下手くそな先輩の蹴ったボールが大きくゴールを外し、田んぼ方向に飛んでいきました。ダッシュでそのボールを拾いに行った私は、途中、真夏の太陽に反射してキラキラと輝く農業用水路を発見してしまいました。

猛烈にのどが渇いてフラフラの私は、清流のささやきに導かれ、思わず用水路の水をこっそり飲んでしまいました。砂漠にオアシスとはまさにこのことです。その水の美味しかったことと練習中に水を飲んだという罪悪感は今でも忘れません。以来、練習中は率先してボール拾いに励み、こっそり用水路の水を飲んで、熱中症予防にとりくんでいました。

今考えると何とも不衛生なはなしですが、そのせいか、大人になってからピロリ菌がみつかり、1昨年、苦労してなんとか除去できました。お心当たりのある人はピロリ菌検査を受けることをお勧めいたします。

そんな少年時代を過ごした私ですが、不動産でお悩みのあるとき、今度お会いしたとき、街で見かけたときにでも一声かけていただけると嬉しく思います。






セミナー講師「NPO法人日本地主家主協会」主催

NPO法人 日本地主家主協会様主催 セミナーの講師を務めました。

テーマ「視点を変えた相続対策」不動産を活用した相続対策の勘どころ


180728協会セミナー



不公平な路線価

先日、今年の路線価が発表されました。路線価とは相続税、贈与税を算出する際の基礎となる1屬△燭蠅療效呂硫然覆如国税局が毎年11日時点の価格を7月上旬に発表します。

全国平均では3年連続の上昇とのことですが、首都圏は上昇、地方圏は横ばい、一部下落となっています。この傾向はここ数年変わりませんし、今後もこの傾向はしばらく続くでしょう。要するに地価の2極化は年々顕著になり、今後も続くということです。この状況で、全国を平均すること自体が、ほとんど意味が無いともいえますね。

 

相続税の観点から考えますと、路線価の上昇した都市部に不動産を保有する人は相続税負担が増えた、と、一義的には言えると思いますが、路線価と時価は連動しているため、資産価値の観点からは、資産価値(換金価値)が上がった、とも考えられるでしょう。

路線価と時価の関係とその傾向は、路線価の高い地域、上昇した地域、いわゆる都市部と、路線価の低い地域、横ばい、もしくは下落の地方部(郊外)では大きく異なります。大まかにいうと前者は路線価の1.2倍から1.5倍程度の時価であるのに対し、後者は路線価と同等、あるいは路線価以下の時価という傾向が見られます。これは時価の変動に対して、評価は後追いであるこということが主な原因のひとつです。

 

この傾向を踏まえて、改めて相続税と時価のことを考えますと、都市部に不動産を保有している人は、時価に対して相続税は過少に評価されるのに対して、地方部(郊外)に不動産を保有している人は、時価より相続税が過大に評価されているといえます。極端な例ですが、前者は不動産時価3億円なのに対し、相続税評価額は2億円、後者は不動産時価2億円なのに対し、相続税評価額は2.5億円という現象が起きているのです。まさに、相続税の観点から考えますと都市部に不動産を保有している人には相続税は有利に働き、地方部(郊外)に不動産を保有している人には相続税は不利に働いているといっても過言ではありません。このように2極化が顕著な昨今、不動産を保有している場所によって相続税に大きな不公平が生まれているといえるでしょう。

また、万一の場合の相続税納付の場面でも、都市部では相続税評価額以上で不動産を売却し、納税できるのに対し、地方部では相続税評価額では売却できず、納税に苦慮するという現象も多く見受けられます。

 

このような事から、地方部に不動産を保有している人の相続対策として、地方部から都市部に不動産を組み替える方法や、相続税の納付方法として、不動産の売却ではなく、相続税評価額で納付できる不動産の物納ができるよう準備をしておくという方法が考えられます。

しかし、地方部から都市部に不動産を組み替える動きが増加することによって、更に2極化、不公平感が進むのはいうまでもありませんし、相続税評価額で売れない不動産を、物納によって国が引き取るというのも、なんとも皮肉な話です。

 

路線価の発表を受けて、夏休みにはご家族で相続のことを少しお話してみるのもいいかもしれません。







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サブリース問題から考える賃貸経営

「サブリース問題」が一種の社会問題として取り上げられています。

「サブリース」とは、ハウスメーカーや不動産会社がオーナーから賃貸物件を一括して借上げ、入居者に転貸する手法で、入居者の有無に関わらず、約束した賃料を一定期間支払う(保証する)賃貸借の形態のひとつです。このようなことから一括借り上げ、家賃保証とも言われています。

 サブリース契約によってオーナーは一定期間、一定額の賃料を受け取ることができ、安定した賃貸経営ができる。と、言われてきました。また、金融機関もサブリースによる賃料収入を裏付けに事業収支を評価し、資金を融資してきました。いわば、サブリースは賃貸物件の建築を受注するために考え出された、安心を売るための手法だったのです。

 しかし昨今、約束された賃料が支払われない、あるいは当初、保証した賃料が減額された。加えて、減額に応じなければ、サブリース契約を解除する。などと半ば脅しをかけられているといった問題が増加しています。この問題によって、賃貸事業計画が狂うどころか、場合によってはローンの返済に窮するオーナーも少なくないようです。

この問題に対し、事業者は、「賃料の変更については契約書に記載している。説明している。」とし、これに対し、オーナーは「当初の説明が不足している。聞いていない、納得いかない。」としながらも、最終的にはオーナーが事業者の条件変更を呑まざるを得ないというのが多くの現実です。

事業者の立場で考えますと、事業である以上、利益を出さなければいけません、その原資である賃料が下落したり、空室などが増えてきたりした場合、オーナーに対する賃料の減額請求は、ある意味、やむを得ない要求と言えるでしょう。

 また、最近では、事業者自らのリスクを軽減する為、「新規募集時、空室時などの一定期間は保証賃料を免責する」というような内容も増えてきました。事業者の気持ちも分からなくもありませんが、これでは、空室時も安定した賃料を得られる、というサブリース本来の目的から少しずつずれてしまっているように思えます。現在の賃貸住宅市場をみれば、相続税増税に端を発した賃貸住宅の過剰な供給に伴い、空室は増加の一途をたどり、賃貸経営には不安な要素ばかりです。このようなことから、事業者としても、賃料の減額や、空室のリスクをできるだけオーナー負ってもらいたいのが本音です。まさしくサブリース問題は起こるべくして起きたと言えるでしょう。

もはや賃貸経営は限られた入居者を奪い合うゲームと化し、サブリースによって、サブリースによらずとも、安定した賃貸経営ができるとは限りません。ましてや「うちだけ満室経営」という幻想は捨てなければいけません。

これからは、サブリースに頼らなければ賃貸経営に不安があるような事業は見直すという判断も必要です。何を建てるか、どこで建てるか、というより前に「建てるか、建てないか」ということを真剣に考えること、そして、オーナーの立場で一緒に考えるコンサルタントの存在がより重要になってきます。







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「相続対策で不動産を購入」に潜む危険なワナ!?

「相続対策で不動産を購入する」これは不動産の時価と相続税評価額との評価の乖離を利用した対策であり、相続対策の王道、イロハのイです。

相続税を算出する際の財産評価にはルールが定められており、現預金はその残高、有価証券などの金融資産はその取引時価で評価します。不動産も本来は時価が望ましいのですが、不動産は個別性が高く、時価の算定は非常に難しいという観点から土地の相続税評価額を算出する際には、国が定めた1屬△燭蠅硫然福箆線価)を道路に設定し、路線価に土地の面積を乗じて算出します。なお、建物は固定資産税評価額が相続税評価額となります。また、賃貸用不動産の場合は、その制約上の理由から土地建物ともに相続税評価額が軽減されます。

 

一方、不動産の時価は、その時々の経済情勢、不動産の個別性によって常に変動しておりますが、一般的には相続税評価額を上回る傾向にあります。更に不動産の上昇局面、また、都市部においてはこの傾向は顕著になり、その価格差も大きくなります。このような事から、相続税評価額と不動産の時価とを比較して、時価が上回る場合には、その時価と相続税評価額との価格の差に相当する相続税が減少するという効果が得られるのです。当然、その差が大きければ大きいほど、相続税の節税効果は大きくなります。例えば、現金で1億円保有しているより、1億円で不動産を購入し、その不動産の相続税評価額が5,000万円であれば、その差額の5,000万円に課せられる相続税相当額は節税できたと言えるでしょう。

 

このような理屈をもとに、相続対策を目的とした不動産投資の斡旋が、不動産市況の上昇と相まって不動産ビジネスおよび相続ビジネスを盛り上げています。

 

さて、ここで注意すべきは、時価と相続税評価額の乖離が大きければ大きいほど、相続税の節税効果が大きいということから、相続対策に重点を置きすぎて、適正な時価より高く購入してしまう危険が潜んでいるということです。特に相続税対策で賃貸用不動産を購入する場合には注意が必要です。昨今の不動産価格の上昇を背景に都市部の賃貸用不動産の価格は上昇し、投資金額に対する賃料収入の割合を示す投資利回りは低下傾向にあります。中には利回り2%、3%の不動産投資商品を販売している会社もあり、利回りより、相続税評価額との乖離が大きいことによる節税効果を全面に打ち出し、事実、売れているようです。

 

しかし、よくよく考えてみると、投資元本の保証のない不動産の投資利回りが2%、3%というのは適正な評価なのでしょうか。賃料の変動や、空室リスク、不動産の価格変動リスクを考えると、投資という観点では、適正とは言い難い割高な評価と感じざるを得ないのが正直なところです。1億円で購入した利回り3%の賃貸用不動産が、将来、売却する場合に利回り6%でしか売却できなかったと想定すると、その時の価値は半分の5,000万円となってしまうのです。これでは表面上の相続税の節税効果はあったとしても、その損失の方が大きいという事にもなりかねません。もちろん、市況の変化はなかなか予測しづらい部分がありますが、購入時の不動産の価値そのものが割高かどうか、という判断がこのようなリスクを軽減することに繋がるのです。

 

したがいまして、不動産を購入する場合には、その価格が適正価格であるか、その投資が事業として成り立つかが第一のポイントであり、相続税の節税効果は、副次的な効果であるということを認識しなければ、不動産投資および相続対策の本質を見失ってしまいます。







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借地の更新料、支払い義務はない?

前回は、「借地人は強いのではなく、弱いのだ。弱いがゆえに法律で保護している。いかに地主との関係を良好に保つかが借地権という財産価値を毀損しないための基本である。」というお話をしました。今回は、地主と借地人との関係を大きく左右する「更新料」について実務的な観点からお話ししたいと思います。

 

借地契約における更新料の意味、目的は、低い地代を補完する対価、または20年、30年の長期にわたって土地を貸すという権利設定の対価、などの考え方がありますが、法律上は、更新料の支払い義務はありません。したがいまして、更新料を支払わなくても建物が存在する限りは法律によって借地契約は存続することになります。

この「法律上、支払い義務はない」ことを理由に、更新料の支払いを拒む借地人や、そのようにアドバイスをする専門家が少なからず存在します。当然、誰しも、支払わなくて良いものは支払いたくありませんし、更新料を支払わなかったからといって生活が脅かされることはありません。しかし、更新料を支払わない事によって、地主との関係に良くない影響をおよぼすのは事実です。

前回もお話ししましたが、借地権の譲渡、建替えには地主の承諾が必要となります。当然、更新料の支払いを巡って関係が悪化した借地人に対して、地主はすんなりと承諾は与えてくれません。裁判所に地主に代わる許可を求めたとしても、借地権の価値が大きく毀損してしまうのは目に見えています。

したがって、実務家として借地人にアドバイスすべきは、「更新料は法律上の支払い義務はないものの、地主との良好な関係を基盤とする、借地権の価値の維持、向上の為にも、借地権を引き継ぐ次世代の為にも、支払うべき」ということです。支払うことを前提に、金額や、支払方法について地主にお願いする。これがあるべき姿であり、結果、自身の財産を守ることにつながるのです。

 

そもそも、更新料は受領しなければいけないものでもなければ、支払わなければならないものでもありません。更新料の算出方法も、地域というより地主によってそれぞれ異なりますし、反対に、今まで更新料を請求、徴収したことがないという地主が存在するのも事実です。

しかし、よくよく考えてみると、現存している多くの借地は、契約開始にあたり、権利金などの授受がないこと、その後の法改正により、土地を返還する必要がなくなったこと、それにより、事実上、借地権の価値が自用地の半分以上となったこと、借地権の返還を求めるには、多額の立退き料(借地権の買い戻し)が必要になることを考えますと、地主と借地人との間には経済的な不均衡が生じているといっても過言ではありません。このような事から、20年または30年に一度の更新料の請求は、地主にとって当然の要求ともいえるでしょう。

逆に、借地人の立場で考えますと、「更新料」は意味のない支出ではなく、「更新料」を支払うことによって自身の財産価値が守られ、借地権の売却時(地主への返還時)には支払った更新料以上の価値が実現するという事をよくよく理解しなければいけません。いわば、更新料は地主に預ける預金や投資のようなもので、借地権売却時にその預けたお金には、多くの利息が付いて還ってくると考えるべきです。

このような事から我々実務家は、一時の損得ではなく、常に、将来、次世代を見据えた考えを持つよう心掛けなければいけません。







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「借地人は強い」は本当か

「借地人は強い」というお話を耳にすることも多いのではないでしょうか。ここでいう「強い」というのは、何も肉体的、精神的に強い、ということではなく、「権利が強い」ということです。では、何をもって権利が強いというのでしょうか。

借地権は、他人の土地を借りて建物を所有し、契約期間を定め、その土地利用の対価として地代を土地所有者(地主)に支払うことで成り立っています。

 借地権が強いと言われる理由のひとつは、契約期間が満了しても建物が存在する限り、借地契約が存続される、すなわち更新されることを法律で約束していることです。要するに、建物が存続する間は、期間が満了したとしても借りた土地を返還しなくて良いのです。では、建物が朽ち果てたら借地が返還されるのかと言えば、理屈上はそのようになりますが、借地人が建物の再築を望んだ場合、地主の承諾を得た上で、建て替えが可能となります。仮に地主が承諾を与えてくれない場合でも裁判所に申し立てることにより、裁判所は地主に代わって再築の許可を与えてくれます。このように借地上の建物の再築が法律によって認められていることから、事実上、建物の朽廃による土地の返還がなされることはありません。いわゆる貸した土地は還ってこない、借りた土地は還さなくて良い。これが「借地権は強い」といわれる一番の理由です。

このように借地権は、半永久的に返還しなくてもよい土地利用の権利ですから、資産として一定の価値が認められており、地主の承諾を得ることによって借地権を第三者に譲渡することが可能となっております。この場合も、地主が譲渡の承諾を与えてくれなかった場合は、裁判所に申し立てることにより、裁判所が地主に代わって譲渡の許可を与えてくれます。

 以上の事から、借地権は、その権利の存続と価値実現のための権利の譲渡を法律によって約束しているのです。

しかし、ここで着目すべきは、借地上の建物の建替え、借地権の譲渡いずれにおいても一義的には地主の承諾が必要であるという事です。ということは、地主の立場で考えますと、承諾を与えないという選択も当然ありうるのです。特に、借地権の譲渡の場面で考えますと、結果的に裁判所による譲渡の許可を得られるとしても、裁判所の許可を得てまで購入しようとする人は現実的には多くありません。裁判所の手続きによる、ということは、いわば地主との関係が良好でない係争中の借地であることは明らかであり、長きにわたって地主との関係を続けなければならない借地という性質を考えると、何もわざわざそのような係争物件を購入する必要はありません。また、仮に裁判上の手続きを経て購入する人が現れたとしても、それは机上で目論んだ売却価格より大幅に下がることは目に見えております。一般的に借地権の価値は、所有権としての価格(更地価格)の6割から7割と、いずれにしても所有権価格の半分以上は借地権の価値といわれておりますが、これはあくまで地主との関係な良好な場合の机上の価値なのです。この事を借地人はよくよく頭に入れておかなければなりません。いかに地主との関係を良好に保つかが借地権という財産価値を毀損しないための基本なのです。

したがいまして、借地権実務の現場では「借地権は強い」ではなく「借地権は弱い」のです。弱いから法律で保護している、ということを理解することが問題解決の第一歩です。






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