昨年、大手ハウスメーカーの地面師による巨額の詐欺事件が発生いたしました。事件の書籍も販売され、改めて詐欺の手口の概要が見えてきました。悲しいかな、不動産業界は昔から魑魅魍魎が跋扈する業界と呼ばれていますので、取引の安全性を考えるうえで、今一度、この問題について考えてみたいと思います。

 「地面師」とは、他人の土地を所有者になりすまして売却し、その売却代金を搾取する詐欺集団のことです。これまでも地面師詐欺事件は度々発生していましたが、被害者の多くは不動産を専業とするプロが多いのも事実です。言葉巧みに、土地の購入、転売(事業化して売却)を生業とする不動産会社の購入欲を煽り、加えて、所有者の実印、印鑑証明書、身分証明書。権利証(登記識別情報)などを偽造し、本人役はもちろん、弁護士や司法書士などの専門家なども加担しているとなると、なかなか表面的に見破るのは大変だろうと想像できます。一にも二にも所有者の本人確認が重要なのは当然ですが、取引に至るまでの過程や当事者を注意深く考察することによって、多くは未然に防ぐことが可能です。やはり怪しい取引は、そこに至るまで、必ず怪しい臭いがあり、我々プロは、その臭いを嗅ぎ取るのが仕事といえます。登場人物、取引背景、取引理由、顔つき、話ぶり、そこかしこに気になる臭いが漂っているものです。

 まず、詐欺の基本は儲け話である、ということです。土地が安く手に入る、一等地が売りに出ている、など、そんな儲け話はそうそう転がっておりません。何より、その儲け話が何故、自分のところに舞い込んできたのか頭を冷やして考える必要があります。

 また、取引に急ぎの事情がある場合、中間金の受領を求める場合、司法書士が売主指定の場合、中間省略や取引にSPCなどのペーパーカンパニーが登場するような場合は、より一層の注意が必要です。

更に、情報が持ち込まれた経緯と登場人物にも気をつけなければいけません。情報に至るまでの登場人物が多いと信憑性は低くなります。所有者の親戚筋、銀行OB、顧問税理士、弁護士など、もっともらしい登場人物の名前がでてきても、何故そのような人を介した情報なのか、売却の事情は何なのか注意深く考察しなければいけません。登場人物に政治家や秘書の名前が出るようでは、まず疑ってかかるべきでしょう。また、大なり小なり何かを誤魔化そうとしている人は往々にして雄弁であり、聞いてもいない事をもっともらしく上手に話します。要するに、喋り過ぎの人は要注意です。

一番大事なのは、信頼のおける人をブレインにすることです。信頼のおける人には信頼のおける人や情報が集まります。怪しい情報であっても、精査する能力があります。逆に、怪しい人には怪しい人や情報が集まり、そして、怪しい情報を好む人、儲け話に目が無い人のところへ持ち込まれます。まさに類は友を呼ぶとはこの事です。

このコラムを読まれている人は地面師には縁のない人ばかりだと思いますが、振り込め詐欺や投資詐欺などの特殊詐欺が後を絶たないどころか、むしろ形を変えて増えてきております。世の中そうそう儲け話は転がっておりません。詐欺被害防止の啓蒙のようになりましたが、まずは、私だけは大丈夫、という過信を改めることが被害防止の第一歩でしょうか。



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