不動産を活用した相続対策には、大きく「税金の対策」と「遺産を分ける」という2つの対策があり、更に「税金の対策」には「評価の引き下げ対策」「財産の移転対策」「納税財源の確保対策」の3つの対策に分けられます。前回は、現金を土地や建物に替えることによって相続税上の評価方法が変わり、結果的に相続税の評価が引き下げられ、相続税が減少する「評価の引き下げ対策」について説明しました。今回は2つ目の対策である「財産の移転対策」のキホンのキとしての考え方、仕組みをお話ししたいと思います。

「財産の移転対策」とは、財産を配偶者、子や孫などの相続人(推定相続人)に贈与(移転)し、本人の相続財産を減少させることによって、将来の相続税を減少させようという方法です。要するに相続が発生する前に贈与によって相続人に先渡ししようということです。ただし、注意しなければいけないことは、財産を貰った人に贈与税が課されるということです。本人の財産が贈与によって減少することによって、その分、相続税は減少しますが、逆に受け取った側に贈与税が発生しますので、将来の相続税と、贈与税を比較検討したうえで、計画的に贈与を実行することが税金を考えるうえで大事なポイントとなります。

贈与税は、相続税と同じく超過累進税率、すなわち贈与を受けた金額が増えれば、それに応じて税率も上がる仕組みになっており、贈与を受けた人が、1年間に(11日から12月末まで)受けた贈与を翌年の確定申告で申告し、納税します。

では、はたして「どれくらいの財産」を、「いつ」、「誰に」贈与すれば、相続対策として有効なのでしょうか。となると何やら難しそうな理屈になりそうですが、考え方は至ってシンプルです。それは、「万一相続が発生した場合の推定相続税率より低い贈与税率の金額を、複数年にわたって、複数の子や孫などの推定相続人に贈与すること。」これがポイントです。よく、1年間の贈与税の非課税枠110万円を毎年、子や孫の複数人に贈与することによって相当の財産を非課税で推定相続人に移転できるという例えを耳にすると思いますが、贈与税を支払ったとしても、想定される相続税の税率より低い贈与税率での贈与であれば有効なのです。また、不動産を活用する場合、現金で贈与する場合に比べ、建物を建築してから贈与したほうが、建築価格より評価の低い固定資産税評価額をもとに贈与税が課されることになりますので、結果的に現金より多くの財産を贈与することが可能となります。これを応用し、アパートなどの建物を贈与した場合は、アパートから得られる賃料収入も併せて贈与されますので、本人の相続財産の増加を防ぐとともに、推定相続人の将来の相続税の納税財源が確保できることにもなります。

そのほか、配偶者に対する居住用財産の贈与の特例や、住宅資金贈与の特例、教育資金の贈与の特例などによって贈与税を軽減する制度がありますので、相続税の軽減に限らず、目的に応じて活用することも検討してみては如何でしょうか。また、勘違いしてはいけないのは、贈与、すなわち無償で与えることですから、贈与した財産を本人が管理したり、使い道を強制したりというのは贈与にはなりません。気持ちはわからなくもありませんが、贈与した財産の管理、処分などの意思決定は、きれいさっぱり受け取った子に任せる潔さが大事ですね。




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