「相続対策になります。」特に収益不動産の販売広告では何十年も前からの常套句です。確かに、現金で不動産を購入することによって、不動産の相続税評価計算方法の特性から、大幅に相続税評価額が引き下げられるケースも多く、相続税を減少させることが可能です。

先日来話題となっているタワーマンションの評価見直しによって改めて不動産を活用した相続対策が注目されていますが、今後も現金より不動産のほうが相続税の評価上有利であることに変わりはありません。ただし、注意点をあげるならば、相続対策になるということのみに着目し、本来の不動産の価値より割高で購入することです。例えば1億円で購入した不動産が相続税評価額では5000万円となり、結果5000万円も評価が下がったのでその分、相続税を節税できたので良かった、めでたし。これだけみると確かに一面から見れば嘘ではありません。しかし不動産の実際の価値が1億円ではなく、5000万円、もしくはそれ以下だったとすれば、それはもはや相続税の節税ではなく、単なる損失でしかありません。

最近よく広告等で見かける「リースバック」という不動産売買の手法があります。自宅を不動産会社に売って、売った後は賃借人として家賃を支払って自宅に住み続けられるという売買形態です。自宅を売って引っ越しするか、そのまま家賃を払って住むかの違いですが、なぜか魅力を感じる人も多いようですし、不動産会社も売った後も住み続けられるということを最大の魅力として営業しています。最近では「相続対策」ブームにあやかって、リースバックが相続対策になるという事を前面に出している企業もあります。何をもって相続対策なのか広告を見てみると、「評価の高い不動産が現金にかわることで、相続税が減少する、不動産だと納税に苦慮するので現金化したほうがよい。不動産がお金にかわることによって遺産分割しやすくなる。」ということのようです。あまりにも乱暴な広告にあきれてしまいますが、そもそもリースバックを利用してまで現金が必要な状況の人は相続税とはほぼ無縁と考えてよいですし、仮に相続税が課税される恐れがあるとしても、現金より不動産の方が相続税評価は引き下げられる傾向にありますし、自宅の場合、誰が相続するかにもよりますが、小規模宅地等の評価減の特例を活用できれば土地の評価を最大80%も減額するとも可能です。仮に相続対策をうたうとするならば、自宅を売らずに持っている方が有利です。本来、このリースバック取引で注意すべきは、意味不明な相続対策などではありません。リースバックの本質はあくまで自宅の売却ですので、重要なのは売買価格が適正であるか、その後の賃料が適正であるか、居住の安定が図れるかということです。

最近では高齢者宅に狙いをつけ、リースバックにより今後の居住の安心をうたい文句に自宅を不当に安く購入する「押し買い」による消費者相談も増えているようです。リースバック自体は違法取引ではありませんし、不当に安いかどうかを証明することは非常に困難です。まずは、よくわからないカタカナ語は日本語に訳してもらうことが重要ですね。



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