さて、「もうええでしょう」とは、実在の事件をモデルにしたネット配信ドラマ「地面師たち」にでてくる名フレーズで、地面師とよばれる不動産詐欺師たちが、売主に対する疑念を抱く時間を与えないように煽った言葉です。このフレーズが逆に怪しさを増幅させているとも思いますが、不動産取引のリアル観と脚本、配役によってブームを起こしました。
私も仕事柄、原作はじめ、地面師界隈の関連書籍やドラマのモデルとなった被害企業の公表資料など大体目を通しましたが、いろいろな情報を収集し、整理するうちに、これは決して他人事ではなく不動産に携わるものであれば、金額の大小、事件性の有無を問わず、似たようなことは、いつどこで遭遇してもおかしくないというのが実感です。
不動産詐欺もしくは取引トラブルのポイントは、とにかく「本人かどうか」の徹底した本人確認と、「本人がどうか」という徹底した意思確認にあります。特に後者の「本人がどうか」については、本当に本人の意思なのか、が何よりも大事です。例えば、子供を通じて「親が不動産の売却を検討している」であったり、会社の従業員が「会社が不動産の売却を検討している」などといったりした場合など、さらに「ここだけの話」とか「まだ他には相談していない内々の話」などと特別感をもって囁かれると、購入欲と相まって思考が鈍ってしまいます。まずは、その売却話が所有者本人、代表者本人の意思なのかを、直接本人に会った上で確認しなければ、売買代金全部を騙し取られることはなくても、手付金や申込金を巡ってトラブルになりかねません。大規模なプロの詐欺集団ではなくても、このような地面師予備軍は意外と身近に潜んでいることもあるのです。
反対に、売主の立場に立つ場合は、子供などに任せるのではなく、意思決定はもちろん、条件交渉の場においても自身が立ち会って、明確に自身の意思を告げることが無用なトラブルを防ぐことになります。
いずれにしてもトラブル防止には、本人確認と本人の意思確認が重要であることは間違いありませんが、地面師詐欺に限らず、投資詐欺など詐欺全体に確実にいえることは「自分に儲け話なんてくるわけがない」ということを冷静に理解することです。もしかして、なんて色気を出したら詐欺師の思うつぼです。
そうです。「あなたなんかに儲け話はくるわけがない」んです。
といいながら、自分はあなたとは違うんです、と都合よく思い込み、どこかに儲け話が転がっていないか常にアンテナを張っている自分がいます。(笑)
今年もみなさまのご健勝をお祈り申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。
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