セルフパブリッシングの実証実験のためのブログ連載、という位置づけで書き始めてから3ヶ月半経ったこのブログ。当初の目的を果たした後、いったいこのブログはどこに行こうとしているのか、自分でもよくわかりません(笑)。特に目的がないのでやめようかな、とぼんやり思う度に意外な反響があるので、継続してみるものかなと思ってみたり。

ポエムのような控えめな見出しをつけて呟いてみた前回エントリー「文章で飯を食っていくということ」にも、意外な反響がありました。

直接会って話した方が相互理解が早いと思うタイプなので、ふだんネット上で議論する習慣はありません。今回は、参考にしている面白いブログを書かれている方からの反応だったので、このブログで回答してみようかと。


前回のポエムで、電子書籍業界(電子化会社、制作会社を除いた事業会社)や電子書籍メディアの厳しい実情を呟いたところ、「意識が高い(笑)学生」アナリストとしても注目された大石哲之さんと、ライターの安田理央さんがそれぞれのブログに、ポエムに登場した私の後輩に対するメッセージを書いてくださいました。

大石哲之のnomad研究所
「電子書籍業界に入りたいんですけど」という後輩に贈る、電子書籍業界への入り方と生き残り方

どうか、ブログにでてくる後輩が、自分で電子書籍の業界を作り出すということをやりたくて「電子業界に入りたい」といっていることを祈ります。ちょっと意地悪な書き方をしてしまいましたが(ごめんなさい)、電子書籍に興味をもっているひとは、未来を見ている仲間です。
せっかく、電子書籍という未知のものに興味をもっているのですから、すこし意識から(笑)の部分を落として、起業家マインドで、電子書籍業界の成功のモデルをつくっていこうじゃないですか。一緒に未来をつくりましょう。


後輩の名誉のためにフォローしておくと、彼らは決して「意識が高い(笑)」文学青年ではありません。と書くと後輩をかばってるのか貶めているのかよくわからなくなってきましたが(笑)、勉強ばかりではなくスポーツや恋や遊びも経験してきた普通の本好き青年という意味です。

ただし、報道されがちな既存メディアの苦境に比べて、露出が少ないネットやデジタルコンテンツビジネスの苦境をまだ知らないだけ。彼らからすると、沢山の「優」や鬼ゴネがないと入れない既存媒体ではなく、これから有望と思われる電子書籍の世界で働いてみたいといったところなんでしょうか。

電子書籍業界で生き残るのは、実力のあるライターでも、編集者でもありません。最初に生き残って大儲けするのは、電子書籍の仕組みで生きようと考える実力のあるビジネスマンです。


大石さんのこの意見には同意です。amazonのジェフ・ベゾス氏はまさにこの典型ですよね。国内では、ただ語るばかりの「意識の高い」人がここ数年で激増したものの、仕組みづくりに取り組む人は圧倒的に不足している。電子コミックを売る仕組みの雛形はすでに作ってきたので足りてますが、書籍や雑誌等テキスト系の読み物を届ける仕組み作りに取り組む人は昔も今も少ないのです。

ちょっと異なるかなと思ったのは、下記です。

そこに、レールがあるとおもって、業界に入るには?と聞いてしまうところは残念です。つまり、その業界の社員になりたい。どこかで雇用されたいっていう意識なんですよね、たぶん。


その通り、最初は雇用されたいわけです。ただし私は、意識が高くない若者ゆえにとりあえずどこかに入ってノウハウを得ようと思う気持ちは理解できるのです。個人的意見ですが、私が20代前半の時も自分ひとりで電子書籍(当時は業界も市場もありませんでしたが)で食べていけるとはとても思えなかったから。へたれな私は、とりあえず出版業界で一番デカい会社に入って出版物を売る仕組みをまず学ぼう、と単純に考えて新卒で出版取次に入った記憶があります。

先天的に仕組みづくりの才能やセンスを持つ人もいれば、後天的な環境要因が必要な人もいます。親が自営業者ですが、私もまた後者のタイプです。電子コミックをたくさん売る仕組みを1人で考えたわけでは決してなく、出版流通の仕組みを作ってきた取次の先輩方や電子書籍ベンチャーを創業したかつてのボスたちなど先駆者から影響を受けました。そして、黎明期の電子書籍事業会社の同僚たちだけでなく、テレビや音楽、インターネットといった一歩も二歩も進んだ隣接業界の事業会社で仕組みづくりをしている友人たちから刺激やヒントをもらって参考にしてきました。

たまたま環境に恵まれた私が後輩に対して、若者時代の自分がやっていないことをアドバイスしたりプレッシャーをかけることができなかっただけなのです。むしろ先行事業者の役割は、ビジネスモデルづくりや営業経験がない新人でも創作力だけが突出した専業作家でも食べていける市場環境づくりかなと思ったりもします。うぶな後輩に比べて意識が高い(笑)のは僕なのです(笑)。


一方で、安田さんのコメントにも共感しました。

ダリブロ 安田理央Blog
ライターになりたいという若者がいたら

 僕も10年ほど前には「なんでこんなに楽しくて稼げる仕事なのに、みんなフリーライターにならないんだろう」と本気で思っていたけれど、今はライターになりたいという若者がいたら、「悪いことは言わないからやめておきなさい。文章書きたいなら、別に本職を持ってBlogとかで書けばいい」とアドバイスするでしょうね。
 鈴木氏は「まだ」と言っていますが、僕はライターという職業がこの先、またよくなるかもしれないという展望は持てていません。


実績豊富なプロのライターさんとして、いい時代も厳しい時代も経験されている安田さんならではのリアルな意見かと。

私が20代を過ごした取次時代、組織のしがらみから自由に見え遊んでるんだか仕事してるんだかわからないライターの友人を羨ましく感じました。ところが今、その友人がどこで何をしているかわかりません。Kindleダイレクトパブリッシングで初めて出版しただけの素人の私は、ライターさんの現状や未来について何かを語れるほどの見識を持っていませんが、今後の電子書籍において、ニッチな専門分野に通じた著者の需要は大いにあるのではないかと思っています。

どんな世界でもネットには決して出ないクローズドな一次情報をしっかり掴んで編集し、アウトプットの質をコントロールできるプロの良さと、粗削りの魅力はあるものの調子に波があるアマチュアの良さはそれぞれ違う方向で生きる気がするのです。

今はまだ市場自体が小さいので大きなことは言えませんが、将来的にはプロアマ問わず専門分野に関する膨大な情報を、独自かつユニークなコンテンツに編集して発信し続けられる人こそがヒトモノカネを動かすようになるんじゃないかと。

それではなぜ、電子書籍元年と言われて3年経ったのにも関わらず電子「書籍」が厳しい現状なのか。
現時点で確信がないのに、なぜ楽観的なのか。
これ以上続けて書くと柄にもなく意識が高まり過ぎてしまうので(笑)、その理由については一息入れた次回エントリーで説明していきます。