4月24日、日本電子出版協会で行われた電子出版セミナー「EPUB25セルフパブリッシング狂時代」に登壇し、国内電子書籍市場の15年間の変化についてのプレゼンとパネルディスカッションをしてきました。

ウェブサービス開発者兼ダイレクト文藝誌編集者、プロのアルファブロガー、取次から電子書籍プロデューサーという異なったバックボーンをもった著者3人が、電子書籍の個人出版にハマるのはなぜなのか? なにがそんなに魅力的なのか? 「電書ちゃんねる」を主宰する「ろす」こと高瀬拓史氏を司会に、それぞれの立場や経験から、セルフパブリッシングの実体験を含む三者三様のプレゼンテーションとパネルディスカッションを行います。


「セルフパブリッシング狂」とは言えない私のプレゼン内容は2つ。縦書きの紙本を再現する日の丸電子書籍思想が国内電子書籍市場に与えた3つの影響と、その思想からの脱却を図ったブログパブリッシングの実証実験結果&今後の課題と可能性です。

日本電子出版協会でのプレゼンはおよそ7年ぶり。電子書籍バブル前だった当時は関係者も話題も少なく、聴講者がプレゼンテイターより少なかったこともしばし。今回は200人以上が集まっていて時代の変化を感じました。意外だったのは、著者や若手編集者ではなく出版社、印刷会社の役員やデジタル事業責任者の方々が多かったこと。セルフパブリッシングがいろんな意味で注目されていることを改めて感じました。

私自身も、出自がまるで異なるユニークな面子だなと楽しみにしていました。プレゼンのトップバッターは、私がセルフパブリッシングにチャレンジするきっかけとなった佐々木大輔さん(LINE株式会社の執行役員兼デジタル文藝誌発行人兼作家)。佐々木さんはアルファブロガー兼作家のいしたにまさきさんから勧められたことをきっかけにセルフパブリッシングを始めたそうです。登壇者3人をつなぐ縁があったわけですね。


ライターの鷹野凌さんのブログに会のレポートがアップされていたので詳しくはそちらで。

余談ですが当レポートにて、当連載が出版業界の賛否両論を呼んでいることが記載されています。経験則から言うと、Web連載時に反響がない物語はわざわざ本にしない方がいいのかもしれません。一般的に、読んだ全員が共感するのは宗教本やファンブック、よく出来ているマニュアル本ぐらいでしょうか。本は、読む人の立場や経験値等によって様々な反応を巻き起こす方が自然なのかなと思っています。


●ブログは単なるコンテンツマーケティングツールではない

登壇者の出自こそ三者三様だったものの、共通キーワードは「ブログの重要性」でした。

自ら、livedoorBlog事業責任者をしている佐々木さんもご本人のブログでこう書いています。

そもそも「セルフパブリッシング」というのは、狭義にとらえれば、「書いて、作って、売るという3つのプロセスを一人でやること」を意味します。原稿を執筆して、EPUBのファイルを制作して、本をプロモーションするという、それぞれに困難の伴う大変な作業が、実はブログを使うことによって解決する(あるいはその可能性がある)ということが、それぞれの立場から語られた会だったと言えると思います。
(中略)
執筆からプロモーションまでをウェブの延長として取り組む著者がどんどん登場してきています。勝間和代さんがやられている、ブログとメルマガとKindle本の間でコンテンツを自由に行き来させるやり方は、まさに代表的な事例だと思います。


セルフパブリッシング狂時代 [第二版]
セルフパブリッシング狂時代 [第二版] [Kindle版]


実際にやってみるとわかりますが、「書いて、作って、売るという3つのプロセスを一人でやること」は面白いものの大変です。作品の質と販売数に直接関係ない電子化コストと手間暇を最小限にし、誰でもカンタンに様々なチャネルで出版できるものにする必要がある。そんなことにいち早く気がついた佐々木さんは、作家として編集者として自らサービス改善に取り組み続けています。
かつて、ネット初心者がテキストと画像を複雑な知識いらずでアップするために存在したブログCMSは、文字通りコンテンツマネジメントシステムに進化したわけです。


ブログ黎明期から長い間活躍されているアルファブロガーのいしたにさんも、ブログとその延長戦上にあるセルフパブリッシングの成功の秘訣は継続し続けることなんだと。短期間で成功するのは難しく時間がかかる。諦めずに長い時間をかけて、フローではなくストックの情報を積み上げてコンテンツ資産を増やしメディア化することが重要。長いことやっていれば、どんな流れが次にくるのかどう動くべきなのかがわかってくる。ブログを長く続けることが電子出版で成功する条件なのだとおっしゃっていました。さらに、これからは本とWeb両方でプロモーションまで考え実行し続ける人が成功するだろうとのこと。私も同感です。

参考になったのは、多くの読者を集め続けるいしたにさんが特別な集客ノウハウを持っていないこと。書評やブログへのコメントなど、他者に期待することはまず自分でやってみることが大切だそうです。面白い記事や質の高い記事を書くこと、普段から良いコンテンツや面白い動きを紹介したりコメントを寄せ続けるだけなんだなと改めて。

ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である
ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である [単行本(ソフトカバー)]



異なる流れで進化してきた電子書籍とブログは流行り廃りに左右されずに継続すること、コンテンツや時間の蓄積が重要である点で似ていました。似ているものは一つにしてしまったほうが早い。ブログを始めて4ヶ月経っていない私でも、セルフパブリッシングを続けるのであればブログメディアは必須だなと改めて認識しました。

1人の人間が自分のブログメディアをベースに、本とインターネット双方のチャネルで企画から販促まで実行する時代の到来です。電子出版の時代は、コンテンツのワンソースマルチユース時代であり、セルフコンテンツマネジメントの時代と言えるかもしれません。

共通点があったとはいえ、はるかに先を行くお二人から刺激を受けました。司会をつとめたEPUBエバンジェリストの高瀬拓史さんも同様の刺激を受けていた様子で、さっそくご本人の個人ブログが更新されていました。


そして、セルフパブリッシングを成功させるもう一つの共通キーワードは「アウェイ感覚」かもしれないなと。

登壇者それぞれが感じた「アウェイ感覚」の理由を、会場では誰も口にしませんでしたが、何が「ホーム」で何が「アウェイ」だったのか。おそらく司会として登壇者が感じたアウェイ感を感じた高瀬さんが『日の丸電子書籍はなぜ敗れたか』から感じた渋みとはなんだったのか。

次回エントリーで改めて考察していきます。