『だまされてペロペロ わかれて貰います』(原題『別れさせ屋 紅』)
監督:池島ゆたか/プロデューサー:あぶかわかれん/脚本:五代暁子/撮影監督/清水正二/撮影:海津真也/音楽:大場一魅/編集:山内大輔/録音:小林徹哉/助監督:出縄来太/監督助手:木村龍二/撮影助手:宮原かおり/照明助手:広瀬寛巳/仕上げ:東映ラボ・テック/制作協力:Abukawa corporation LLC./スチール:津田一郎、山口雅也
制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画
公開:2018年3月16日
こんな物語である。ネタバレするので、お読みになる方は留意されたい。
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エピソード1
姉のキミエ(松井理子)が経営しているスナックを手伝っていた時、客として来ていた尾崎慎一(フランキー岡村)と知り合い、半年の交際期間を経て三年前に結婚したカスミ(佐山愛)。慎一は、ルックスも彼女の好みではなく、真面目なだけで面白くもない上にセックスも下手。単に経済力だけに引かれた結婚生活に、カスミはすっかりうんざりしている。
夫の財産はそっくり頂いて、いい加減離婚したい。わがままなだけの妹の言い分に呆れつつ、キミエは離婚を請け負う別れさせ屋「紅工房」のことを教え、紹介手数料として100万円を要求した。妹も妹なら、姉も姉だ。
早速、カスミは紅工房に仕事を依頼する。紅工房の女社長・紅(神咲詩織)は、偶然を装い慎一に接近すると巧みに浮気を仕掛けていく。
なかなか紅と慎一が肉体関係にまで至らぬことにじりじりしつつ、カスミは年下のセフレ南トモヤ(間瀬翔太)を自宅に呼び込んではセックスを楽しんでいた。カスミは、近々夫とは離婚する予定だから、そうしたら家賃なしでこの家の二階に住んで欲しいと誘った。もちろん、トモヤは二つ返事で快諾した。
トモヤは、そのことを恋人のサクラ(八ッ橋さい子)に伝えるが、彼女は気分を害してトモヤの部屋から出て行ってしまう。
慎一と関係を持ったという報告に沸き立つカスミだが、紅から激しいセックスだったと聞かされて耳を疑う。彼女は、夫とそんなに燃えるセックスをした経験がなかったからだ。紅から送られてきた証拠のDVDには、自分の知っている夫とは別人のような激しさで紅の体を貪る慎一の姿があった。おまけに、慎一の方から離婚を切り出させる始末。
自分の狙い通り金も手に入り離婚も成立したカスミだったが、そこには何とも言えない割り切れなさが残った。
一方の慎一は、バーで紅にプロポーズするが、紅は婚約指輪と一緒に姿を消した。
エピソード2
還暦を過ぎた高木健太郎(GAICHI)は、たまたまゴミ捨て場で出逢ったマイ(篠田ゆう)とささやかな交流を持つようになる。マイは若くして夫を亡くした未亡人で、夫との思い出が詰まったマンションで暮らすことがつらくなり、この町に引っ越してきたのだった。
偶然、彼女の引っ越した家は健太郎が暮らす一軒家の近所だったことから二人は親しくなり、いつしか彼女は健太郎の家を訪ねて家事をしてくれるようになった。健太郎にとって、妻のいなくなった家はあまりにも広すぎて手に余った。
そんなある日、健太郎は風邪で寝込んでしまう。連絡しても返事のないことを心配したマイは、寝室で高熱を出して苦しんでいる健太郎を発見して徹夜で看病した。その甲斐あって彼の熱は下がるが、彼女の姿に忘れていたものを思い出し、思わず抱きしめてしまう。
我に返った健太郎は慌ててマイの体から手を放すが、帰りしな振り返ったマイから「もう一度、抱きしめてくれませんか」と言われ、再び彼女の体に腕を回すのだった。
その日を境に、二人の関係はさらに親密さを増した。年のせいかもはや健太郎の股間が硬くなることはなかったが、彼は指でマイの体を満足させてた。
健太郎から、好きな女性と再婚して残りの人生を過ごしたいと言われて、娘のゆかり(上久保慶子)は大反対する。父が亡くなれば遺産はすべて自分のものだと信じて疑わなかった彼女にとって、自分より年下のマイは財産をかすめ盗る泥棒猫のような存在にしか思えなかった。
慌てたゆかりは、よく当たると評判の占い師(山ノ手ぐり子=五代暁子)の元を訪ねるが、占い師は「二人の相性は最高だ」などと役立たずなことしか言わない。ゆかりのすごい剣幕に押され、占い師は紅工房の存在を教えた。
紅から仕事を任された部下のシュンスケ(細川佳央)は、マイの夫の元部下を騙り偶然出会った風を装って彼女に接近した。そして、とある機会に自分のマンションで媚薬入りの睡眠薬を飲ませ、マイを犯して写真を撮った。
その写真を手に父に結婚を思い直すよう迫るゆかりだったが、それが彼女の姦計であることなど健太郎はお見通しだった。彼は、すごい剣幕でゆかりを追い出すと二度とこの家の敷居を跨ぐなと言った。
そして、健太郎はマイに求婚した。シュンスケとの一件があり彼女は健太郎の申し出に何か言おうとするが、その言葉を健太郎が遮った。マイは頷いた。
すると、健太郎は自分の股間が硬さを取り戻していることに気付き、そのまま二人は初めて体を交わす。マイの手には健太郎の精力を蘇らせた薬の小瓶が隠されていた。
ホテルの一室。自分の仕事がクライアントの意に沿わなかったことを気にしているシュンスケに、やるべきことはやったのだから、あとは顧客の側の責任と言って紅はシュンスケとセックスするのだった。
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ユーザーに対して、それなりの誠実さで作られたピンク映画だと思う。巨乳の女優四人が演じる濡れ場を相当数挿入して惜しげもなくエロを見せる姿勢は、同じあぶかわプロデューサーの『えろぼん! オヤジとムスコの性春日記』(この作品はピンク映画ではないが)と同様の方向性とも言える。
ただ、相も変わらずというか何というか五代暁子の脚本が詰めを欠いており、それを監督の池島が修正できていないことに不満が募る。とりわけ、それは「エピソード1」に顕著である。
ガッツリ慰謝料をふんだくりたいから夫に浮気させるよう紅工房に依頼しているカスミが、日中自宅に若い男を連れ込むというのには頭を抱えるレベルである。少なくとも、離婚が成立するまでは別の場所で浮気するくらいの展開にしておくのはピンク映画と言えどちゃんとしておくべきだろう。
また、トモヤとサクラの描写が濡れ場を見せるサービス・シーンだとしても、あまりに中途半端で物語の流れを削いでいる。
最後に慎一が紅に指輪を渡すシーンも、蛇足だろう。
それに比べると、「エピソード2」はなかなか悪くないと思う。還暦を過ぎた男と30代前半の未亡人のある種夢物語のような出逢いは、ピンク映画としてはまさしく王道だろう。GAICHIと篠田ゆうの演技がとてもいいから見ていて気持ちがいいし、ラストのオチにしても気が利いてると思う。
それだけに、あまりにもあからさまで安っぽいゆかりの行動が頂けないし、それに輪をかけてシュンイチの行動がお粗末だ。そもそも、この手の稼業をやっている人間がこともあろうにターゲットをレイプしてしまうのは論外だろう。ただの犯罪である。
エンディングにおける紅とシュンイチの濡れ場は、ピンク映画的ボーナス・トラックのようなものだろうが、ストーリー的には全く要らないし据わりも悪い。
個人的な感想を言わせてもらえば、健太郎とマイの描き方に満足していた気持ちに水を差されてしまった。
余談ではあるが、スクリーンいっぱいに映し出される山ノ手ぐり子のどアップは、一体誰得なのだろうか?
池島ゆたかの新作としてはアヴェレージ作だと思うが、彼が作家性を感じさせてくれるようなピンク映画をまた観ることができるのだろうか…という一抹の寂しさもあった。
監督:池島ゆたか/プロデューサー:あぶかわかれん/脚本:五代暁子/撮影監督/清水正二/撮影:海津真也/音楽:大場一魅/編集:山内大輔/録音:小林徹哉/助監督:出縄来太/監督助手:木村龍二/撮影助手:宮原かおり/照明助手:広瀬寛巳/仕上げ:東映ラボ・テック/制作協力:Abukawa corporation LLC./スチール:津田一郎、山口雅也
制作:セメントマッチ/提供:オーピー映画
公開:2018年3月16日
こんな物語である。ネタバレするので、お読みになる方は留意されたい。
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エピソード1
姉のキミエ(松井理子)が経営しているスナックを手伝っていた時、客として来ていた尾崎慎一(フランキー岡村)と知り合い、半年の交際期間を経て三年前に結婚したカスミ(佐山愛)。慎一は、ルックスも彼女の好みではなく、真面目なだけで面白くもない上にセックスも下手。単に経済力だけに引かれた結婚生活に、カスミはすっかりうんざりしている。
夫の財産はそっくり頂いて、いい加減離婚したい。わがままなだけの妹の言い分に呆れつつ、キミエは離婚を請け負う別れさせ屋「紅工房」のことを教え、紹介手数料として100万円を要求した。妹も妹なら、姉も姉だ。
早速、カスミは紅工房に仕事を依頼する。紅工房の女社長・紅(神咲詩織)は、偶然を装い慎一に接近すると巧みに浮気を仕掛けていく。
なかなか紅と慎一が肉体関係にまで至らぬことにじりじりしつつ、カスミは年下のセフレ南トモヤ(間瀬翔太)を自宅に呼び込んではセックスを楽しんでいた。カスミは、近々夫とは離婚する予定だから、そうしたら家賃なしでこの家の二階に住んで欲しいと誘った。もちろん、トモヤは二つ返事で快諾した。
トモヤは、そのことを恋人のサクラ(八ッ橋さい子)に伝えるが、彼女は気分を害してトモヤの部屋から出て行ってしまう。
慎一と関係を持ったという報告に沸き立つカスミだが、紅から激しいセックスだったと聞かされて耳を疑う。彼女は、夫とそんなに燃えるセックスをした経験がなかったからだ。紅から送られてきた証拠のDVDには、自分の知っている夫とは別人のような激しさで紅の体を貪る慎一の姿があった。おまけに、慎一の方から離婚を切り出させる始末。
自分の狙い通り金も手に入り離婚も成立したカスミだったが、そこには何とも言えない割り切れなさが残った。
一方の慎一は、バーで紅にプロポーズするが、紅は婚約指輪と一緒に姿を消した。
エピソード2
還暦を過ぎた高木健太郎(GAICHI)は、たまたまゴミ捨て場で出逢ったマイ(篠田ゆう)とささやかな交流を持つようになる。マイは若くして夫を亡くした未亡人で、夫との思い出が詰まったマンションで暮らすことがつらくなり、この町に引っ越してきたのだった。
偶然、彼女の引っ越した家は健太郎が暮らす一軒家の近所だったことから二人は親しくなり、いつしか彼女は健太郎の家を訪ねて家事をしてくれるようになった。健太郎にとって、妻のいなくなった家はあまりにも広すぎて手に余った。
そんなある日、健太郎は風邪で寝込んでしまう。連絡しても返事のないことを心配したマイは、寝室で高熱を出して苦しんでいる健太郎を発見して徹夜で看病した。その甲斐あって彼の熱は下がるが、彼女の姿に忘れていたものを思い出し、思わず抱きしめてしまう。
我に返った健太郎は慌ててマイの体から手を放すが、帰りしな振り返ったマイから「もう一度、抱きしめてくれませんか」と言われ、再び彼女の体に腕を回すのだった。
その日を境に、二人の関係はさらに親密さを増した。年のせいかもはや健太郎の股間が硬くなることはなかったが、彼は指でマイの体を満足させてた。
健太郎から、好きな女性と再婚して残りの人生を過ごしたいと言われて、娘のゆかり(上久保慶子)は大反対する。父が亡くなれば遺産はすべて自分のものだと信じて疑わなかった彼女にとって、自分より年下のマイは財産をかすめ盗る泥棒猫のような存在にしか思えなかった。
慌てたゆかりは、よく当たると評判の占い師(山ノ手ぐり子=五代暁子)の元を訪ねるが、占い師は「二人の相性は最高だ」などと役立たずなことしか言わない。ゆかりのすごい剣幕に押され、占い師は紅工房の存在を教えた。
紅から仕事を任された部下のシュンスケ(細川佳央)は、マイの夫の元部下を騙り偶然出会った風を装って彼女に接近した。そして、とある機会に自分のマンションで媚薬入りの睡眠薬を飲ませ、マイを犯して写真を撮った。
その写真を手に父に結婚を思い直すよう迫るゆかりだったが、それが彼女の姦計であることなど健太郎はお見通しだった。彼は、すごい剣幕でゆかりを追い出すと二度とこの家の敷居を跨ぐなと言った。
そして、健太郎はマイに求婚した。シュンスケとの一件があり彼女は健太郎の申し出に何か言おうとするが、その言葉を健太郎が遮った。マイは頷いた。
すると、健太郎は自分の股間が硬さを取り戻していることに気付き、そのまま二人は初めて体を交わす。マイの手には健太郎の精力を蘇らせた薬の小瓶が隠されていた。
ホテルの一室。自分の仕事がクライアントの意に沿わなかったことを気にしているシュンスケに、やるべきことはやったのだから、あとは顧客の側の責任と言って紅はシュンスケとセックスするのだった。
--------------------------------------------------------------------------------
ユーザーに対して、それなりの誠実さで作られたピンク映画だと思う。巨乳の女優四人が演じる濡れ場を相当数挿入して惜しげもなくエロを見せる姿勢は、同じあぶかわプロデューサーの『えろぼん! オヤジとムスコの性春日記』(この作品はピンク映画ではないが)と同様の方向性とも言える。
ただ、相も変わらずというか何というか五代暁子の脚本が詰めを欠いており、それを監督の池島が修正できていないことに不満が募る。とりわけ、それは「エピソード1」に顕著である。
ガッツリ慰謝料をふんだくりたいから夫に浮気させるよう紅工房に依頼しているカスミが、日中自宅に若い男を連れ込むというのには頭を抱えるレベルである。少なくとも、離婚が成立するまでは別の場所で浮気するくらいの展開にしておくのはピンク映画と言えどちゃんとしておくべきだろう。
また、トモヤとサクラの描写が濡れ場を見せるサービス・シーンだとしても、あまりに中途半端で物語の流れを削いでいる。
最後に慎一が紅に指輪を渡すシーンも、蛇足だろう。
それに比べると、「エピソード2」はなかなか悪くないと思う。還暦を過ぎた男と30代前半の未亡人のある種夢物語のような出逢いは、ピンク映画としてはまさしく王道だろう。GAICHIと篠田ゆうの演技がとてもいいから見ていて気持ちがいいし、ラストのオチにしても気が利いてると思う。
それだけに、あまりにもあからさまで安っぽいゆかりの行動が頂けないし、それに輪をかけてシュンイチの行動がお粗末だ。そもそも、この手の稼業をやっている人間がこともあろうにターゲットをレイプしてしまうのは論外だろう。ただの犯罪である。
エンディングにおける紅とシュンイチの濡れ場は、ピンク映画的ボーナス・トラックのようなものだろうが、ストーリー的には全く要らないし据わりも悪い。
個人的な感想を言わせてもらえば、健太郎とマイの描き方に満足していた気持ちに水を差されてしまった。
余談ではあるが、スクリーンいっぱいに映し出される山ノ手ぐり子のどアップは、一体誰得なのだろうか?
池島ゆたかの新作としてはアヴェレージ作だと思うが、彼が作家性を感じさせてくれるようなピンク映画をまた観ることができるのだろうか…という一抹の寂しさもあった。