ピンクサイドを歩け

ピンク映画やストリップ・レビュー等、R-18系の文章を書いて行きます。

中村幻児

中村幻児『痴女昇天』

『痴女昇天』
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監督:中村幻児/製作:渡辺輝男/企画:渡辺忠/脚本:中村幻児/撮影:久我剛/照明:近藤兼太郎/編集:竹村編集室/音楽:多摩住人/記録:前田侑子/音楽:多摩零/助監督:高橋松広/効果:中野忍/美術:軽沢美術/スチール:津田一郎/製作進行:大西良平/製作担当;一条英夫/衣裳:富士衣裳/小道具:高津映画/タイトル:ハセガワプロダクション/ニューメグロスタジオ/現像:東洋現像所
製作:ワタナベプロダクション/配給:日活株式会社
公開:1977年11月26日


こんな物語である。ネタバレするので、お読みになる方は留意されたい。

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チンピラの兄貴(国分二郎)とダダ(楠正通)は、林の中にバイクを停めると仲間のペペ(高鳥亜美)を争って青姦した。事を終えた三人は、再びバイクで走り出した。
すると、エンストして立ち往生していたまり子(青山涼子)が車を見てくれと助けを求めて来た。

会社社長の竜崎(鶴岡八郎)は、妻・令子(杉佳代子)の誕生日に女中のめぐみ(中野リエ)を伴なって運転手・谷山(吉田一郎)の運転で別荘にやって来た。竜崎たちを別荘に送り届けると、谷山は仕事が残っているからと東京に戻っていった。
夫妻はセックスレスになっており竜崎は妻が不満を抱いていると思っているが、令子はそれを否定した。すると、風呂を沸かしに行っためぐみの叫び声が響いた。浴槽の中に全裸で目を閉じたまり子が入っていた。警察に連絡しようと言う妻を遮り、竜崎はまり子のところに行った。彼女は失神しているだけで、息はあった。竜崎は、まり子を抱き上げるとリビングに運んだ。
ソファに寝かされたまり子は意識を取り戻すが、恐怖の表情を浮かべて背後を指差した。三人が振り向くと、兄貴とダダがナイフを持って入ってきた。自分に乱暴を働いたのはこの二人だとまり子は言った。

ダダはめぐみに乱暴しようとするが、竜崎がやめてくれと懇願すると代りに令子を連れて行き、寝室で犯した。兄貴は、竜崎を椅子に縛り上げた。竜崎が目的を聞いても、彼は答えなかった。まり子は男の目を盗んで床に落ちた電話で110番通報しようとするが、飛び込んできたペペに阻止されてしまう。驚いためぐみは、失禁してしまった。

そこに、令子を担いでダダが戻ってくる。令子はひいひい言って悦んでいたと彼は嘲った。

陽が落ち、三人組は食料を貪った。兄貴は、竜崎たちをクソ豚となじりながら口に極太のソーセージを突っ込んだ。まり子は尿意を訴えるが、トイレに行かしてもらえずその場に漏らしてしまった。尻を剥き出しにした彼女をすかさずダダと兄貴が犯した。
事が済むと、ダダはまり子を風呂場に連れて行き尿にまみれた彼女の下半身にホースで水をぶっかけた。

相変わらず、竜崎は椅子に縛り付けられたままだ。ペペは令子とレズプレイを始める。兄貴は、めぐみにこれまで何人の男と寝たのかと詰問した。めぐみは一人だと答えるが、嘘をつくなと言われて二人だと訂正した。それを聞いた竜崎は、気色ばんで二度目の男は誰だと叫んだ。最初の男は竜崎ということだ。それを聞いた令子は、夫とめぐみをなじった。
何度も竜崎と兄貴に問い質されて、とうとうめぐみは二人目の男が谷山だと白状した。激怒する竜崎。

兄貴はめぐみを担いで寝室に運ぶと、あのクソ豚に毎晩ぶち込まれているのかと言った。めぐみが否定すると、ヴァージンを捧げたんだろうと彼は重ねて言った。だが、めぐみの処女を奪ったのは竜崎ではなかった。彼女は、これまでに七人の男とセックスしていた。竜崎は焦ってめぐみのアナルに挿入してしまい、肛門が切れて出血したのを勘違いしたのだ。
めぐみの話を聞き終わると、兄貴は酒を彼女の股間に吹きかけてから乱暴に犯した。

ペペに体を弄られて喘いでいる令子に、「芝居はよせ!不感症のお前が感じる訳がない」と竜崎は言った。この三年間、竜崎とのセックスで彼女がエクスタシーに達したことはなかったからだ。
それを聞いたダダは彼の言うことを否定した。事実、さっきダダが襲った時でさえ令子は感じまくっていたのだ。

竜崎は、ダダにこれまでのセックスについて語り出した。まるでダッチワイフを抱いているような令子とのセックスに失望して、竜崎はめぐみに手を出したのだ。彼は、めぐみを処女だと思い込んでいる。
竜崎の最初の妻は、カソリックの女学校を首席で卒業した女性だったが度を超えた淫乱だった。竜崎はまるで性具のような扱いを受けて搾り取られるだけ搾り取られたが、妻は先代社長の一人娘でだからこそ彼は社長になれた。二人の間には子供ができぬまま、20年が経ったときに妻は交通事故で他界した。竜崎は、大喜びした。
ところが、皮肉にも三年前に再婚した令子は先妻とは真逆でセックスの時マグロのようだった。竜崎は、今目の前で女に抱かれて喘いでいる令子に言葉を失っていた。妻はレズビアンだから、自分とのセックスにまるで感じなかったのか。

二人の妻から裏切られたと思い込んでいる竜崎にとって、心のよりどころはめぐみになっていた。彼は、何とか縛られているロープを解くと背を向けているダダにばれないようこっそり部屋を抜け出した。向かった先は、めぐみのところだ。だが、すでに彼女は兄貴に抱かれた後だった。意気消沈して、竜崎はリビングに戻った。ペペと令子のレズプレイが丁度終わったところだった。ソファにぐったりする令子に、彼はつかみかかった。

めぐみは寝室の窓から屋外に逃げ出すが、すぐにばれて連れ戻されてしまった。チンピラたちは、自分たちの見ている前でめぐみを抱けと竜崎に迫った。すると、あろうことか令子までがめぐみを抱く竜崎が見たいと言い出した。
兄貴は、竜崎がめぐみのアナルを犯して処女を奪ったと思い込んでいることを暴露して笑った。

めぐみと抱き合う竜崎を見ながら、令子は自分が不感症だなどとんでもないと言った。彼女は、夫とのセックスにただの一度も満足したことがなかった。竜崎と結婚する前、令子は銀座で名の知れたホステスだった。各界の名士が、彼女を口説くために何度も店に足を運んだ。彼らと比較すれば、竜崎のランクはずっと下だった。
竜崎の熱心さに負けて令子は妻になったが、彼女は結婚に失望した。竜崎は、恰幅こそよかったが短小包茎おまけに早漏だった。令子は、竜崎のセックスの稚拙さをなじり倒した。
さらに、令子は自分の谷山とセックスしていたことを吐露した。これには、竜崎もめぐみも絶句した。竜崎とめぐみは、全てを忘れるようにセックスに没頭した。

兄貴たち四人が二人のセックスに見入っていると、外で物音がした。まり子が車で逃げ出したのだ。慌ててダダがバイクで追いかけたが、追い付くことはできなかった。めぐみは、まり子が警察に連絡してくれるかもしれないと竜崎に囁いた。
金を奪って兄貴たちが逃げ出そうとすると、警官が訪ねてきた。兄貴はドアの陰に隠れてナイフを令子に突きつけると、彼女に警官の応対をさせた。近頃、別荘を荒らす三人組が出回っており巡回していると警官は言った。別に変わったことはないと令子が言うと、警官は帰っていった。
竜崎たちに口止めすると、三人組は別荘から出て行った。

めぐみは警察に知らせなければと言うが、世間体を気にして竜崎は止めた。今夜のことは忘れようと令子は言い、竜崎はこのことは谷山にも内緒にすると言った。竜崎は、めぐみに谷山との結婚を勧めた。令子も賛成した。自分は身も心もボロボロになってしまい、谷山と結婚などできないと言ってめぐみは泣いた。
何故か、竜崎と令子は互いの顔を見て薄笑いした。

翌朝、何ごともなかったように竜崎と令子はダーツに興じている。めぐみだけが、呆然としていた。谷山の車が迎えに来た。三人が荷物をまとめて出て行くと、警官の恰好をした谷山が運転席から出て来た。「君、もう終わったんだよ」と竜崎は言った。言葉を失うめぐみ。
三人が乗り込むと、谷山は車を出した。しばらく走ると、道路脇に兄貴たち四人が立っており車に向かって手を振った。

「誕生日のプレゼント、気に入ってくれたかい?」と竜崎が言い、「とっても満足しましたわ」と令子が返した。後部座席を振り返り、めぐみは「旦那さま!それじゃ、昨夜のことは…どういうことなんですか?旦那様」と尋ねた。竜崎と令子は、ただ笑うばかりで何も答えなかった。

「あなたも あやつられて いませんか?」

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「あなたも あやつられて いませんか?」って、知らんがな(笑)

どうなのよ、この一発ネタみたいなオチは。
あまりにも強引な持っていき方だが、それより何よりめぐみが可哀そうすぎる。やられ損だし過去の性遍歴まで暴露させられるし、おまけにおしっこまでちびらされるし。酷い…。


とにかく、ラストありきのストーリーテリングだから物語の随所に破綻が見え隠れするのも困りものだ。
一番意味不明なのが、まり子のエンストから浴槽で失神しているくだりである。竜崎夫妻が見てないところで小芝居する必然性ゼロだし、兄貴たちが別荘に踏み込むきっかけを作るのであれば、襲われたまり子が別荘に逃げ込んでくるのを追いかければ事足りる。

濡れ場はふんだんに盛り込まれているし、役者陣は皆達者な演技を見せてくれるしとそれなりに充実はしているのだが、やはり何かと過剰なのも気になってしまう。兄貴が竜崎たちをブルジョアジーのクソ豚みたいになじるところは、いつの時代だよと突っ込みを入れたくなった。

ビリングでは杉佳代子がトップだが、実質的な主役は中野リエである。やや垢抜けないが、ルックスもスタイルもいいし演技も悪くない。大好きな女優である。
脇を固めるベテラン勢の杉佳代子鶴岡八郎国分二郎もテッパンだし、気怠くクールでスレンダーな青山涼子(愛染恭子)もいい。高鳥亜美楠正通もこの時期のヘビーローテーション役者である。
ポスターに名前はあるがノークレジットの吉岡一郎は、製作の渡辺輝男であり企画の渡辺忠である。早い話が、後の代々木忠だ。

本作は、良くも悪くもこの時期ならではの日活買取作品。
内容はともかく、役者陣の充実ぶりを味わうべき一本である。

中村幻児『売春グループ 欲情する人妻』

『売春グループ 欲情する人妻』
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監督:中村幻児/製作:真湖道代/企画:渡辺忠/脚本:奥出映/撮影:久我剛/照明:石部肇/助監督:岡孝通/編集:竹村編集室/音楽:多摩住人/記録:平侑子/演出助手:広木隆一/撮影助手:宮本勇/照明助手:佐々木哲/効果:ムービー・エイジ/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東洋現像所
製作:ワタナベプロダクション/配給:株式会社にっかつ
公開:1979年7月21日


こんな物語である。ネタバレするので、お読みになる方は留意されたい。

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ラブホテルで、売春している人妻。

スナック「窓」におしぼりを配達した「TTオシボリ」の従業員・真一(鶴岡修)は、マスター(松浦康)からおしぼりに縮れ毛が付いていたとクレームをつけられる。公衆電話で会社に電話を入れ、クレームがあった旨を社長に報告する真一。
電話を終えて彼が隣を見ると、先ほどまで電話していた陽子(笹木ルミ)が赤い手帳を忘れて行ったことに気付く。中を見てみると、本人の写真とチラシが挟んであった。

ピンクサロン「日の丸」で、風俗嬢たちが開店前の準備をしている。マネージャーに声を掛けられる千鶴(渚りな)。真一が来ていて「店終わったら、一緒に飯食おう」と誘ってくるが、千鶴は冷たくあしらった。

陽子が売春を終えて帰宅すると、「今日の男はどうだった?感じたか」と車椅子に乗った夫(市村譲)が、手にした杖を彼女の股間に突きつけた。その刺激で、喘ぎ声を上げる陽子。

千鶴の家では、真一がもう半年もセックスしていないと不平を言った。ピンサロを始めたことが原因ではないかと勘繰る真一に、「ピンクサロンに入ったのは、お金が欲しいからだわ。理由は言えない」と彼女は言った。千鶴は、半年間だけと期間を決めて「日の丸」で働いている。真一が帰った後、千鶴は嘔吐する。

真一は、手帳の持ち主を探そうと電話ボックスに入り、住所録の一番上に書かれていた村上照代(豪田路也留:新人)に電話してみた。経緯を話すと、照代はスナック「窓」で真一と会ってくれた。
だが、手帳を見ても挟んであった写真を見ても照代は陽子という女性のことは分からないと言って店を出て行った。
次に、真一は手帳に載っていた細川隆一(土居三郎)と公園で会った。真一が写真を見せると、「知らないな。君は、あの女のヒモだろ。あまり小細工するな」と言って二万円渡してきた。真一には、さっぱり訳が分からない。

真一は、また「日の丸」に行った。千鶴は、ソファーの上でお客にサービスしている。彼は、お客として千鶴を指名した。だが、彼女は別のお客とフロアで踊っている。苛ついた真一は、強引に千鶴を連れて行ってしまう。
「今日は客だから、サービスしろ」と言う真一を「バカよ」と言って彼女は引っ叩いた。

真一は、またしても「窓」のマスターにクレームをつけられた。今回は陰毛が三本もついており、もう取引を止めるとマスターはカンカンだ。さんざん頭を下げた後、営業車で走っていると照代と細川が「美苑」というラブホテルから出てくるのを目撃した。「浮気してたから、知らんぷりされたのか」と真一は二人の態度が腑に落ちた。
二人が別れると、真一は照代の方をつけた。「奥さん、村上さんの奥さん。ず~っと見てたんです。あれ、細川さんでしょう」と団地の廊下で彼は照代に声を掛けると、そのまま彼女の家に押し入った。
真一に押し倒された照代は「主人が帰って来るわ」と言うが、お構いなしに彼は照代を犯した。真一は、彼女を突きながら手帳の持ち主について尋問した。「陽子なんて、本当に知らない。仕事で一緒になったことはあるけど、本当に知らないの」と言いながらも、照代は感じて喘いだ。

出勤途中の千鶴に、真一が声を掛けてきた。彼は、陽子の手帳に挟まっていた写真を見せると、田舎の親に勧められた見合い相手だと嘘をついた。写真を一瞥すると、ムッとして千鶴は歩いて行った。
真一は、照代から教えられた美容室「ベラミ」を訪ねた。オーナー(泉ユキ)に写真を見せると、「前にお客さんで見えた気がするけど、最近はお見えになりませんわね」と言った。

真一が店を出ると、従業員の由美子(浜恵子)が、「あんた、陽子さんを探してるの?私、知ってるわ。あんた、刑事さんじゃないわよね。うちに来ない?」と声を掛けてきた。

由美子は、自分が住んでいる団地に真一を連れて行った。部屋にいた自分の子供を外に出すと、彼女はいきなり服を脱いで「あんた、運がいいわ」と言った。陽子は、由美子や照代と同じ人妻売春組織のメンバーだった。
話の筋道を理解した真一を布団に誘う由美子。二人は、セックスした。由美子は、管理売春の元締めをしている「ベラミ」のオーナーにマージンを取られることが不満で、独立するつもりだと話した。彼女は客を取ったつもりで真一に代金を請求するが、真一は金を持っておらず部屋から叩き出された。
真一が近くの公園に立ち寄ると、由美子の子供が砂遊びしていた。真一は男の子に小遣いをやった。

また「日の丸」にやって来た真一に、「こんなところで、無駄なお金を使わないで」と千鶴はたしなめる。指名が入り、龍村(今泉洋)のソファーに行く千鶴。龍村は、一本だけ成人映画「女の迷い道」と監督してクビになり、今は細々とブルーフィルムを撮影しているエロ事師だった。
千鶴は、龍村からブルーフィルムへの出演を打診されてオーケーした。千鶴は、真一のところに行くと「ポルノ映画の撮影あるから、今夜の吉牛は今度にしよう」と言った。

龍村の事務所兼スタジオにやって来た千鶴は、龍村、男優ケン(岩手太郎)と龍村が撮ったブルーフィルムを見ている。絡んでいる女の顔を見た千鶴は、「あ~、写真の子だわ」と言った。
そこに、千鶴のことを心配した真一が入って来る。「おっ、あいつだ。手帳の女だ」と言うと、真一は龍村にモデルのことを尋ねた。「千鶴君と一緒で、僕の映画に出てもらったんだ」と答えると、龍村は「ケンちゃん、いってみようかぁ」と言った。
千鶴とケンの絡みを8㎜カメラで撮影する龍村。本番をやろうとする二人に割って入ると、真一は千鶴を連れ出した。「真似事でしょ」と言う千鶴に、「そんなことしてまで金が欲しいのか」と真一。「そうよ。真一は、どうせあの女と結婚するんでしょ」と責めるように言う千鶴に、真一は本当のことを白状した。

「お金貯めなきゃならないから、ピンサロ辞められない。赤ちゃんができたから」と千鶴はようやく訳を話した。彼女は、自分一人で子供を生むつもりだった。「そんな勝手なこと、一人で決めやがって」と言う真一に、「私、生むわよ」と千鶴は宣言した。
「分かった。俺が何とかする」「私の子だから」「俺の子だろ」。千鶴は、真一を叩いた後でキスした。そのまま、抱き合う二人。真一がセックスしようとすると、「真一、しちゃ駄目よ。これで我慢して」と言って千鶴はフェラチオした。
「こんなの嫌だよ。我慢できないよ」と真一が言っても、彼女は頑なに拒否して「帰ってよ」と言った。「お前の気持ち、分かんねえよ」と言うと、真一は出て行った。

「やっぱり、金何とかしなくちゃな」と真一は言って「TTオシボリ」の社長に電話するが、喧嘩になって会社を辞めると啖呵を切ってしまった。真一は、歩道橋の上でばったり陽子と遭遇した。真一から手帳を渡されて、「どうもありがとう」と礼を言い去ろうとする陽子。「売春してんだろう」と真一は言うが、彼女は笑いながら歩いて行く。彼は、陽子について彼女の自宅に行った。
寝室には、車椅子が置いてあった。「あんたらの秘密、亭主に知られたくなかったらさぁ」と恐喝しようとする真一に、動揺することもなく「どうしたらいいのかしら?」と陽子は言った。彼女は、さっさと服を脱いだ。
「こりゃ、話が早いや!」と言って、真一は陽子をベッドで抱いた。いつの間にか彼女の夫が、杖で体を支えて二人の痴態を見ていた。陽子と夫は目配せした。陽子の夫は、車椅子に腰かけた。夫に気付いた真一に、「気にしなくていいの。もっと愉しみましょうよ」と陽子は言った。「君、儂は交通事故であっちの方は…。妻を愉しませてくれ」と彼女の夫も言った。
「失礼しましたー!」と言うと、逃げるように真一は出て行った。

閉店時間に「ベラミ」を訪れた真一は、売春をネタに「金が欲しい」とオーナーを脅した。口止め料を要求すると、レジの金を奪いオーナーを突き飛ばした。腰を強打してうめき声をあげるオーナー。真一が襲い掛かり、彼女は必死に抵抗するがバックから挿入されるとよがり声を上げた。
スキップして営業車に乗り込む真一。だが、ワゴン車の前に二人の男(日高進也、矢野健)が立ちはだかった。「どけ」と言う真一を車から引っ張り出すと、二人は暴行を加えた。「ベラミ」のオーナーの用心棒だった。
男たちが去った後、「千鶴~!元気なガキ生めよ~!」と叫んで真一は倒れた。

鏡台で髪をとかしていた千鶴は、「千鶴~!」という真一の声が聞こえたような気がした。

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あまりにもストーリーテリングが雑なにっかつ買取ポルノの残念作である
話の焦点がブレブレで、最初から最後まで散漫なまま投げやりにエンドマークが出てしまう。

千鶴と真一は半年もセックスレス状態で、彼女が真一の子供を妊娠しているとしたらすでに妊娠6ヶ月である。つわりが起こるのは通常妊娠5~6週目だから、千鶴が嘔吐するという伏線はどう考えても不自然だろう。人によっては、そこそこお腹も目立ち始める時期である。
そもそも、子供を妊娠した段階で真一に告げることなく早々に自分で子供を生む決心をすると言うのも千鶴と真一はどういう関係なのか。しかも、シングルマザーで子供を生んだから風俗で生活費を稼ぐというならまだしも、妊娠が分かったと同時にピンクサロンに入店するというの行動もどうかと思う。

そこに人妻売春組織の話が絡んでくる訳だが、二つのエピソードが上手く噛み合わないから、ひたすら話の進め方が強引になっている。
おしぼり配達の陰毛クレームネタもほぼ機能してないし、千鶴のブルーフィルム出演も場当たり的に過ぎる。

千鶴の妊娠を知った真一の行動も、一瞬いい話に向かいそうで結局は衝動的な犯罪行為に走ってっしまい開いた口が塞がらない。唐突な幕引きも、話をまとめることを諦めたような象徴である。

キャストはそれなりに豪華で、渚りな笹木ルミ豪田路也留泉ユリ浜恵子と5人の濡れ場が登場するが、演出が雑で不完全燃焼である。
というか、そもそも新人の豪田路也留って誰だよ?読み方は、「ごうだろーやる」なのか。言うまでもなく、これは豪田路世留(ごうだじぜる)の誤りである。
おまけに、ポスターに出ている川口朱里は登場しないという駄目押しのようないい加減さ。
男優は、今泉洋松浦康市村譲という歴戦のピンク映画男優のあくが強すぎて、メインの鶴岡忍が完全に押され気味である。

本作は、全てが空回りする大雑把な作品。
良作も多いが、中村幻児の監督作品はムラがあり過ぎて困る。

中村幻児『ウィークエンド シャッフル』

『ウィークエンド シャッフル』
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監督:中村幻児/製作:渡辺正憲、中村幻児/企画:すずきもも/原作:筒井康隆/脚本:中村幻児、吉本昌弘/撮影:鈴木史郎/照明:三膳惣計/録音:伴利也/美術:細石照美/編集:田中修/音楽:山下洋輔、ジューシイ・フルーツ/助監督:白石宏一/製作主任:原重福蔵/記録:森田溶子/美粧:小沼みどり/スタイリスト:日向ひとみ/スチール:井上一真/監督助手:広木隆一、石川均/撮影助手:遠藤正史、守屋保久、富田伸二、志村敏雄、宮本良博、田村裕一、岡田次雄/照明助手:小沢文明、国本正義、菊地亘/録音助手:米山英明、入谷勝/効果:原尚/選曲:新井明美/編集助手:阿部嘉之/美術助手:萩原卓児、宮崎朗、大島ルーシー、荒井祐子/製作デスク:小松真里子/製作進行:平井正信、榎本靖/衣裳:富士衣裳/装飾:高津映画装飾/小道具:芸美/録音スタジオ:東映東京撮影所仕上げセンター/録音機材:光映新社/照明機材:関東照明、NK特機/車輌:松崎光雄、藤巻光朗、関東照明ロケリース/カーアクション:スーパー・ドライバーズ、神宮司/操演:リバティ ハウス/現像:東映化学/協力:プロデュースハウス“アミューズ”、三映プロダクション/主題歌:夢見るシェルター人形/唄:ジューシイ・フルーツ(コロムビア・レコード)/撮影協力:ノースウェストホームズ、田中京子、銀座博品館TOY PARK、サントリー、ジェーエス ビデオ、クロガネ自動車、セルコン・近藤忠商事、西船ロイヤルホテル/衣裳協力:ハナエ・モリ、森陽子 フルール、ZEL DA、ヴォンドーム・青山、M・D・M、I・M・M、ダイアナ、MAIE、池袋 かほる、スキャッティ・オーク、チャイルド、京都 高三、アトリエ・リトルモー
製作:幻児プロダクション、らんだむ はうす/配給:ジョイパックフィルム
公開:1982年10月28日

スクリーンショット (8551)
スクリーンショット (8552)


こんな物語である。ネタバレするので、お読みになる方は留意されたい。

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とある土曜日。斑猫茂(尾口康生)は高台の公園の砂場に仔犬を埋めて遊んでいる。彼の母・暢子(秋吉久美子)は、新築の我が家で今日遊びに来ることになっている短大時代の友人のためにサラダを作っている。彼女の夫・章(伊武雅刀)は、パターゴルフをやっている。
公園の横に軽トラックを停めて昼寝していたチリ紙交換(新井康弘)は、公園で遊んでいた子供たちに叩き起こされ腹を立てて子供たちを追いかけた。チリ紙交換がふと砂場を見ると、茂が犬を埋めている。自分の玩具を食べたから犬柱にしていると言う茂をたしなめ、彼は犬を逃がしてやった。
茂がいないことに気付いた暢子は、部屋の中を探し始める。章が床屋に行こうとすると、ついでにマヨネーズを買ってきて欲しいと彼女は頼んだ。
犬の代わりにおもちゃを弁償してやると言ってチリ紙交換は茂と一緒に玩具屋に行くが、犬が食べたのはマイコンだと茂は言い張る。そんなものは、誕生日に父親に買って貰えと言うチリ紙交換。茂は、パパはお金持ちだと言った。それを聞いたチリ紙交換は偽装誘拐を思いつき、茂を軽トラに乗せた。お小遣いが貰えるとあって、茂もこの計画に賛成した。

章は、家族でドライブに出かけようとしている近所のご主人(武藤樹一郎)に挨拶すると公園に寄った。彼がベンチに座ってタバコを吸っていると、火を切らした百科事典のセールスマン(泉谷しげる)が火を借りに彼の隣にやって来た。ついでにセールスマンが百科事典の営業を始めようとすると、「床屋、行かなくちゃ」と言って章は去って行った。
ベンチで昼寝していたセールスマンの足に、駆け込んできたヤクザ(草薙良一)がつまずいて転んだ。頭にきたヤクザは彼の襟首をつかむが、先を急いでいるため走り去った。セールスマンは、ヤクザが落していったドスを拾い上げる。

夢ヶ丘派出所では、覚醒剤常習者の女(梓ようこ)が半裸で暴れており、二人の警官(飯島洋一、飯島大介)が必死に止めている。派出所の周りをやじ馬たちが取り囲んでいる。巡査が戻って来ると、彼女は全裸になって巡査を押し倒した。
そこに、女の亭主であるヤクザが飛び込んできた。ヤクザはドスを抜こうとするが、肝心のドスはなかった。

チリ紙交換は電話ボックスから暢子に電話するが、茂にけしかけられて思わず500万円要求してしまった。暢子が仰天すると、動揺したチリ紙交換は「また電話する。絶対、警察には知らせるな」と言って電話を切った。茂は、「大きく出たね。5万円のつもりだったのに」と完全に誘拐犯ごっこの感覚で楽しんでいる。
一方の、暢子は警察には言えず、夫は外出しており、この家を建てるために貯金は使い果たし途方に暮れている。章の実家に電話しようとするが、義父母(入江正徳、北川博子)との折り合いが悪いことを思い出してそれもやめた。
その斑猫家に、先ほど章と会ったサラリーマンがやって来る。呼びかけても誰も出てこず、鍵が開いていたので男は家に上がり込んでしまう。人気がないのをいいことに、彼が家探ししていると電話が鳴ったので暢子が寝室からリビングにやって来てセールスマンと鉢合わせになった。

自分は百科事典のセールスマンだと言い訳するが、暢子は茂を誘拐した誘拐犯だと勘違いしてしまう。500万なんかないと暢子が縋りつくと、男はドスを出して500万とはどういうことだと言った。

そんなこととはつゆ知らず、章は暢気に床屋「カットサロン ダン」(店主は今泉洋、従業員は美保純:友情出演)で髭を剃ってもらっている。そこに、シャブ中女が乱入してくる。彼女に続いて、ヤクザと三人の警官も入って来た。
ひと騒ぎ起こした後、ヤクザ夫婦はパトカーを奪って逃走。警官たちは後から到着したパトカーで夫婦を追いかけた。
その頃、セールスマンは暢子をレイプした。
ヤクザが運転していたパトカーが、豚を輸送中だった山川畜産のトラックに接触。トラックは横転し、乗っていた豚が逃げ出してしまう。警官たち(池島ゆたか、今泉厚、五月マリア、亜希いずみ)は、とりあえずヤクザを追いかけた。ヤクザのパトカーは一般車両とも接触して横転。警官たちは一度パトカーに近付くが、すぐに逃げ出す。その直後、パトカーは爆発してヤクザ夫婦は焼死した。

セックスした後、暢子の様子がおかしくなっていた。セールスマンは、戸惑った。彼女は、自分に何が起こっていたのか思い出すことができない。
ヤクザ問題が片付いたので、警官たちは逃げ出した豚を追いかけている。そこに、暢子の家に向かっている三宅とも子(秋川リサ)、木谷由香(池波志乃)、住之江淑(渡辺えり子)の車が通りかかった。仕方なく、彼女たちは迂回した。
セールスマンが帰ろうとすると、とも子たちがやって来てしまう。行きがかり上、彼は暢子の夫としてふるまう羽目になり逃げだすことが出来なくなった。
そこに電話がかかって来るが、セールスマンは暢子に「電話には出るな」と命じた。連絡がつかず、チリ紙交換は途方に暮れる。

章がスーパーでマヨネーズを買っていると、以前付き合っていた女(風間舞子:友情出演)とばったり会い、彼女の息子もつれた三人で喫茶店に行った。
何とかセールスマンは出て行こうとするものの、今度は新聞の集金人(春風亭小朝:友情出演)がやって来て、何故か2ヶ月分の新聞代を払わされる羽目になった。今度こそ逃げようとするセールスマンに、電話がかかって来たと由香が言った。チリ紙交換からの身代金要求の電話だったが、事情が分からないセールスマンがのらくら会話していると一方的に電話は切れてしまった。
チリ紙交換は、要領を得ない男の受け答えを逆探知のための時間稼ぎと誤解して電話を切り、軽トラを発進させた。
喫茶店で、章は「この子さあ、あなたに似てると思わない?」と以前の恋人に言われて動揺する。章がレシートを取って出ようとすると、「暇な時、遊びに来て」と彼女は言った。

喫茶店を出た章が考え事しながら歩いていると、サイレンを鳴らした救急車に跳ねられてしまう。救急隊員(大杉漣、諏訪太郎、楠正通)たちは、章を抱きかかえると救急車に乗せた。救急車には、愛犬とセックスして膣痙攣を起こし苦しんでいる女性(水月円)が乗っていた。
チリ紙交換が海の近くを走っていると、茂の友達・渡辺ユカ(永井英里)とテルオ(森茂紘)にバッタリ会った。ユカは自分も誘拐ごっこをやりたいと言って軽トラに乗り込んでくる。茂は、テルオのことは拒否して軽トラを発車させた。

結局、セールスマンは逃げ出すことができず、暢子の友達三人の酒の相手をさせられている。斑猫家の裏にある草むらでは、警官二人が豚を拳銃で撃ち殺した。
斑猫家では、全員に酔いが回り妖しいムードが漂い始めている。そのうち、今度は乱痴気騒ぎが始まった。
ユカは、公衆電話から母親に電話をかけて誘拐されたと言った。全然信じない母親は「お土産があるから早く帰ってきなさい」と言い、ユカもすぐ帰ると言った。一緒にいた茂がユカに乱暴すると、そのやり取りを聞いたユカの母親は動揺した。チリ紙交換が電話ボックスに入って来て電話を切ると、もう付き合い切れないと言って二人をおいて軽トラで行ってしまった。

セールスマンは、由香に誘われて寝室でセックスした。とも子は風呂に入り、淑は飲み過ぎて洗面台で嘔吐している。暢子は、全てがどうでもいいと言わんばかりに無気力状態になっている。
ユカの母親から電話があり、「うちのユカがそちらにお邪魔してないかしら?」と切迫した声で言った。「ユカちゃんならね、今二階でお医者さんごっこしてます」と暢子は答えた。絶句するユカの母親。暢子は、電話を叩き切った。すぐにもう一度電話がかかって来るが、「いい加減にしないと、警察呼ぶわよ!」と言って彼女は電話を切った。
電話の向こうでは、病院のロビーから電話をかけていた章が首を捻った。

相変わらず、セールスマンと由香はセックスを続けている。暢子は、ロフトの子供部屋でぶつぶつ独り言を言っている。淑が懲りずに酒を飲んでいると、窓の外を豚が横切って行った。とも子はバスタブで歌を唄いご機嫌だったが、そのうち彼女は眠り込んでしまう。
淑が豚を追いかけて庭に出ると、そこに章の上司・小池課長(村上不二夫)がやって来る。淑を章の妻と思い込んだ小池は、章が自分の印鑑を使って会社の金を2000万円使い込んだと訴えた。このままでは自分が責任を取らされると言って小池は淑に襲い掛かり、気付いた時には彼女を絞殺していた。その様子を見物している暢子。

事が済むと、由香はセールスマンが暢子の夫でないことなどとっくに分かっていたと笑った。そこに、パトカーのサイレンが聞こえてくる。動揺するセールスマン。彼は慌てて服を着ると、由香にドスを突きつけた。
「奥さん!奥さん!」と淑を揺り動かしている小池に、「死んでるわ、その人」と暢子は冷たく言った。「あ、あなたは?」「2000万円横領したあなたの部下の奥さん」「じゃあ、この人は!?」「私の友達」。小池は、言葉を失う。
寝室では、由香が恐れおののいている。部屋から逃げ出そうとする由香に、セールスマンは再びドスを突きつけた。
「斑猫君、いるんだろう」と言うと、小池は気を取り直して二階に上がって行った。

ドアホンが鳴り、暢子が出てみると二人の警察官(野上正義、芦川誠)が海岸通りで迷子になっていた茂とユカを連れて立っていた。暢子は、茂を抱きしめた。

小池が寝室のドアに体当たりすると、その拍子にセールスマンの突き付けていたドスが由香の喉元に突き刺さってしまう。
警官が立ち去ろうとすると、家の中から男の叫び声が聞こえた。「強盗がいます」と暢子が言った。警官二人は、慌てて家の中に入って行った。暢子は、子供二人を連れて家から離れた。
まず、一階のリビングに淑の死体が転がっていた。上司は、若手警官に署への緊急連絡を命じると自分は拳銃を構えて二階に上がった。寝室から、刺された小池とドスを持ったセールスマンが出て来た。小池はその場に崩れ落ち、パニック状態のセールスマンははずみで警官まで刺してしまう。

署に連絡を入れた警官が階段を上がって来て、上司が刺された現場を見てしまう。セールスマンは警官が持っていた拳銃を奪い、二人がにらみ合いをしているとシャボン玉が飛んでくる。警官がバスルームを見ると、バスタブから二本の足を出したとも子の溺死体を見た。
セールスマンは階段を駆け下りると、一発威嚇射撃をして家から飛び出した。警官が、背後から彼に発砲。
撃たれたセールスマンは宙を舞い、彼の首は胴体から離れた。セールスマンの体は、アスファルトにめり込んだ。暢子と茂がその光景を呆然と見ていると、ユカの母親(杉佳代子)がやって来て娘を連れて帰った。

何が起きたのかさっぱり分からない章が、頭に包帯を巻いて帰って来た。暢子にマヨネーズを手渡し、茂を抱き上げる章。「あなた~」と言って、暢子は章に抱きついた。
章は、地面に突き刺さったセールスマンを見て「一体、何があったんだよ?」と尋ねた。「何でもないの。終わったの」と暢子は言った。

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中村幻児が監督した初の一般映画である。
だが、ナンセンスなスラップスティック・コメディーが滑った時の救い難さを実感する失敗作になっている。

そもそも、上映時間が104分というのが長過ぎる。どう考えても、70分くらいで畳みかけるべき内容である。余計なエピソードや無駄な心理描写が多過ぎるため、観ているうちにうんざりしてくる。一番要らないのは、逃げ出した豚を警官が追いかけ回すシーンである。
おまけに、豚が空を飛ぶ場面に至っては「ピンク・フロイドの『アニマルズ』かよ!」と突っ込みの一つも入れたくなった。完全に無駄なネタである。
ジューシイ・フルーツが「恋するシェルター人形」(フランス・ギャル「恋するシャンソン人形」の替え歌)を歌うシーンも完全な横道だろう。

ひたすら物量作戦とドラッグでハイになったようなキャラクターが暴走していくストーリーは、果てしなく空回りするスタンドアップ・コメディアンの面白くないネタを聞き続けているような苦痛である。
よくもまあ、この作品で秋吉久美子池波志乃秋川リサも脱いだよなと変な関心をしてしまった。
中途半端に予算が掛けられているが故に、同じ筒井康隆原作で自主映画だった内藤誠監督の『俗物図鑑』(1982)のようなアナーキズムより却って見劣りする。

この作品唯一のお楽しみは、どこにピンク映画(ロマンポルノも含む)の役者が登場するかである。本当に、その興味だけで最後まで何とか見続けることができた。
一応、列挙しておくと梓ようこ美保純五月マリア亜希いずみ風間舞子杉佳代子武藤樹一郎草薙良一飯島洋一飯島大介今泉洋池島ゆたか今泉厚大杉漣諏訪太郎楠正通野上正義といった面々である。

それにしても、何なんだ。この内容の空っぽさは…。

本作は、ピンク映画を主戦場にしていた監督が一般映画に進出した時の典型的なダメ作品。
この映画を観るくらいなら、中村幻児が70年代に撮ったピンク映画を観た方がよほど満足できると断言しておく。

中村幻児『痴漢電車 発射オーライ』

『痴漢電車 発射オーライ』
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監督:中村幻児/企画:才賀忍
/脚本:佐伯京介、才賀忍/撮影:遠藤政史/照明:出雲静二/編集:竹村編集室/助監督:広木隆一/監督助手:石川均、高原賢一/制作進行:柏田憲一/色測:黒沢時雄/撮影助手:下元哲/照明助手:佐藤才輔/音楽:PINK BOX/挿入歌:岩瀬厚一郎/録音:銀座サウンド/効果:内田音響企画/現像:東映化学(株)
製作:幻児プロダクション ’81 6.作品/配給:新東宝興業株式会社
公開:1981年7月


こんな物語である。ネタバレするので、お読みになる方は留意されたい。

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雨が降る中、ミニパトに乗って巡査の山下勉(今泉厚)とみゆき(五月マリア)が麻薬取引の現場に向かっている。みゆきは、「どうして交通課の私と派出所勤務の勉が行かなきゃいけないのよ?」と当然の疑問をぶつけて来た。ハンドルを握りながら、勉は「大がかりな取引だからだよ」と言った。だが、現場に到着しても誰もいなかった。
「事件なんて、何も起きてないじゃない」と言うみゆきに、「事件はこれから起きる」と言って勉は拳銃を抜いた。「騒ぐな。一度、パトカーの中でおマンコやりたかったんだよ。ここなら、警察は来ない」と勉は言った。仕方なく、みゆきは制服を脱いだ。
「おい、みゆき。しっかり濡れてるじゃねーか」と言う勉に、「何よ、本当に犯罪者ぶったりして」とみゆきは言った。早速やろうとする勉に、「ちょっと待って。私、今日アンネなの。口でしてあげるから」と言ってみゆきはフェラチオを始める。
「残念だなぁ。今日なら童貞捨てられたのに」と言いながら、勉はしゃぶられている。余りの気持ちよさに、「出ちゃう!」と言いながら勉は空に向けて三回発砲した。

制服で電車に乗っている勉。目の前に立っていた女学生の良枝(青木三枝子=織田倭歌)が、「お願い!やめてください」と勉を睨みつけて場所を移動した。「僕じゃないですよ」と言いながら、勉は「可愛い子だなぁ」と思った。
新宿駅で電車を降りた勉は、西口地下道の公衆トイレで私服に着替えると公衆電話から部長に電話した。不良少女を補導した後に迷子を保護したので交代時間に少し遅れると告げると、みゆきと落ち合って二人は目黒エンペラーに行った。

部屋に入ると、二人は妙にぎこちなくなった。「4回も来たのに、私達進展しないのよね」と不満を漏らすみゆき。勉が「如何にもやりましょうって雰囲気に、どうしても馴染めないんだよなぁ」と言うと、みゆきは「同じこと、もう4回聞いた」と切り返した。
二人とも服を脱いで裸になった。「みゆきちゃん!」と抱きつく勉に、「乱暴にしないで。お願い」とみゆきは言った。彼女の体にむしゃぶりつく勉。「みゆきちゃん、出来そうだ!」「勉君」。ソファに横たわるみゆきにいざ挿入しようとすると、またしても勉の息子は萎んでいた。
「おかしいなぁ」「どうしたの?」「何でもないよ」。勉は洗面所に駆け込み、「勃て。こら、勃て」とペニスをしごく。その様子を覗き見たみゆきは、深い溜息をついた。

悦子(梨沙ゆり)は、思いつめた表情で夫の博志(野上正義)が勤めている会社に出向くと夫のデスクの前に立った。「悦子、どうしたんだ?」と驚く博志に封筒を差し出すと、悦子は「別れてください。中に離婚届が入っています」と言った。「離婚届?」と言いながら博志が中を改めると、良枝との浮気写真と離婚届が入っていた。
「悦子」と言う博志に「あなた、お元気で」と言うと、悦子は出て行った。会社を出た悦子を追いかける博志。「悦子、待てよ」「あなたの浮気が治るまで帰らないわ」「あの女とは関係ないんだよ」と二人が路上で揉み合いしていると、目黒エンペラー帰りの勉が歩いて来た。
勉は二人の間に割って入ると、博志を投げ飛ばした。その隙に悦子はタクシーを停めると、勉も乗せて走り去った。

ギター弾き(岩瀬厚一郎)が演奏するスナックに入ると、悦子は夫婦喧嘩だったことを勉に白状した。「浮気するわ、怒ると暴力振るうわ。帰りたくない」と彼女は言った。男と女は理解し合えないこともあるかも知れないとつぶやく勉に、「あなたも、何かあったの?」と悦子は聞いた。「ええ、大したことじゃないですけどね」「今夜は、ジャンジャン飲みましょうか」「ええ」。
勉は一度席を立つと、また部長に電話して「迷子を保護した後、食事をしてから下痢が止まらなくて。帰ってもいいですか?申し訳ありません」と言った。

二人は、かなり酔って勉のアパートに行った。悦子は部屋に倒れ込むと「お水ちょうだい。苦しい」と言った。勉が水を持って行くと、彼女はすでに眠り込んでいた。「参ったなぁ」と言って、勉はコップの水を飲み干すと悦子のスカートの中を覗き込んだ。
「今なら、出来るかもしれない。この女になら、あげてもいい」と言って勉は悦子の服を脱がせ始めた。「どうして浮気ばっかりするんだろう。何か、変な気持ち」と彼女は寝言を言った。
勉が悦子のパンティを脱がせて股間を覗き込んでいると、ドアが何度もノックされた。「おい、勉。いるんだろう!」と玄関先で勉の幼馴染・アキラ(高井戸欣太)が大声を出した。彼は義妹のヒロミ(沢田多絵)を連れている。

勉は、慌てて玄関を開けた。「アキラちゃん!久しぶり。この人は?」「妹」「アキラちゃん、妹いたっけ?」「二年前からね。こいつの親父と俺のお袋が結婚したんだ」。奥の部屋にいる悦子に気付いたアキラは、「結婚したんなら、言ってくれよ」と言った。
「アキラちゃんたち、旅行の途中?」と勉が尋ねると、「俺たち、駆け落ち」とアキラは言った。「義理でも兄妹だろ」と勉が言うと、アキラは「俺たち、出来ちゃったんだ。しばらく泊めてくれ」と言った。
アキラは、ヒロミに「こいつ、マッポなんだ」と教えた。「マッポ?」「おまわり」ヒロミは如何にも意外だと言うように笑った。勉はムッとした。
仕方なく、勉はソファで寝てアキラとヒロミに寝室を使わせた。寝室では、悦子も寝ている。しばらくすると、アキラとヒロミはセックスを始める。勉は二人のセックスを覗きながらオナニーした。

翌朝、アキラとヒロミは新聞を隅から隅まで見ている。二人は、親たちが心配して帰って来てくれという三行広告を出していないか探したのだが、そんなものは掲載されていなかった。悦子が起きてきて、二人に挨拶した。
「勉も水臭いなあ。結婚したこと言わないんだから。年、いくつなんですか?」とアキラは言った。「主人より、4つ下です」と悦子が答えたので、「えーっ!?」と驚くアキラ。勉の妻にしてはおかしいと思ったアキラが「勉とは?」と聞くと、彼女は「昨日、知り合いました」と答えた。「あなたたちは?」「駆け落ちです」「まぁ、ロマンチックねぇ」。
悦子は、冷やし中華を作り始めた。

勉とみゆきはミニパトで巡回中。「勤務やめて、ドライブ行かない?」と言う勉を、「バカなこと言ってないで」と一蹴するみゆき。勉は、偶然通りかかった良枝のことを目で追った。
良枝は、ラブホテルで博志とセックスしている。彼女に聞かれて、博志は悦子とは学生結婚だったと言った。自分は妻のことを自由にさせていたが、自分の方が自由じゃなかったような気がすると彼は言った。

勉が夜回りしていると、労務者風の男(沢木毅彦)が路上に座り込んで酒を飲んでいた。勉は男を抱き起すと、家に帰るように言った。

悦子が夕飯の支度をしていると、寝室から喘ぎ声が聞こえてきた。覗いてみると、ヒロミがオナニーしていた。アキラが部屋から出てきて、「奥さん一緒に遊びましょ~」と言って、彼女に襲い掛かった。「やめてください」と拒む悦子。そこに、ヒロミも参加してくる。
「ヒロミさん、やめてください」と悦子は言うものの、彼女はアキラとセックスしてしまう。「アキラ~、頑張って~」と煙草を吸いながらエールを送るヒロミ。悦子は感じてしまう。

「窓に明かりがあるっていいなぁ」とアパート着いた勉はしみじみ言うが、部屋の中では悦子とヒロミがレズっている真っ最中。煙草を吸いながらアキラがそれを見物している。
「山下巡査、ただいま帰宅しました」と言って部屋に入った勉は、愕然とする。「悦子さん!」と彼が叫ぶと、今度はアキラとヒロミがセックスを始めた。「あなた、お巡りさんだったの。人は見かけによらないものね。お世話になったから、してもいいわよ」と悦子は迫って来た。「やめてください」と勉。
「家に戻ったらどうですか。ご主人が心配してます。お願いだから、出てください」と勉が言うと、「だから、一緒に出ましょう」と言って悦子は抱きついた。
思わず、勉がセックスを始めようとすると「あら、出来るじゃな~い」と悦子は言った。「あれ、勉。やってるじゃな~い」とアキラに言われて、勉は我に返る。「本官としたことが!本官の生活は滅茶苦茶だ」と勉は言った。

スナックにやって来た四人は、ギター弾きの曲に合わせて踊り出す。そのうち、悦子とヒロミは服を脱ぎブラを外してトップレスで踊った。慌てた勉は、二人をとめようとするが無視された。やけくそになり、勉はでかい声で歌い出した。
酔っ払った四人は、ご機嫌で騒ぎながら夜道を歩いている。

電車内、勉は以前乗り合わせた良枝が目の前に立っていることに気付く。「あの子となら、出来るかもしれない。あの子にならあげてもいい」と思いつつ、勉は良枝をガン見した。彼は、全裸の良枝を痴漢する自分を妄想する。

電車を降りた良枝の後を勉はつけた。しばらく歩くと、彼女はアパートに入って行った。そこは、博志のアパートだった。
「今、何て言ったの?」と驚く博志に、良枝は「別れましょうって言ったの。婚約したのよ。代わりに、いい子紹介する。彼女、ギリシャ旅行行きたいんでお金欲しいの」と言った。
「今日で終わりなのか。どんな男なんだ、その婚約した男って」と博志が息巻くと、「乱暴すると、帰っちゃうわよ。しつこいんだから」と良枝。「寂しすぎるよ~」と言いながら、彼は良枝を抱きしめた。

勉は、ベランダに忍び込むと窓から中を覗いた。博志を見て「あの男はどこかで見たことがあるぞ…。あっ!あの男は、あの女の亭主。それより、なぜあの子はあの男のマンションに」と勉は首を捻って考えた。
そして、勉は良枝が博志の娘で父親に無理やりセックスさせられていると思い込む。それが原因で、悦子が家出したのだと。「あの子が可哀そうだ。許せん!」と勉はつぶやいた。「俺が守らずして、誰が守る。俺が正義だ。俺が法律だ」と自分に言い聞かせると、彼は拳銃を抜いて部屋に押し入った。
「もう、大丈夫だ。君は、この悪夢から逃れられるんだ。わはははは」と勉は言い、良枝と博志は唖然とする。勉は良枝に電話を差し出し、「お嬢さん、ダイヤルを回してください。341-6333です」と言った。ダイヤルし始める良枝に博志は「110番回せ!」と言うが、「うるさい!」と勉は一喝した。

勉の部屋では、心中しようとするアキラとヒロミを悦子が必死に止めている。「遺書を書いて、どうしても心中する。心中して新聞に載って、親に知らせる」と叫ぶアキラ。そこに、電話がかかって来る。
悦子が出ると、「僕だ。君の亭主の浮気相手が見つかったよ」と勉は言った。「そんなことより、二人が心中するって騒いでるの」「そんなこと、放っておけよ。それより、あなたたち母娘を救ってやりますよ」。電話中の勉に、博志が「ちょっといいかな。小便が漏れそうなんだ。もう、我慢できない」と言った。しょうがないと勉が許可すると、博志は突然走り出した。

「逃げる気か!」と叫ぶと、勉は発砲した。弾は博志の胸に当たり、彼は即死した。「当たった!すげ~」とはしゃぐ勉。電話の向こうから銃声が聞こえて、悦子は「何、今の音は!?どうしたのよ」と尋ねるが、向こうの受話器は放りっぱなしになっている。
「私の夫がどうかしたの?もしもし!」と言っても、勉からの返答はない。慌てて悦子は部屋から出て行こうとする。「奥さん、どこに行くんですか?」「私たち、死んじゃうんですよ」と言うアキラとヒロミに、「勝手に死ねば」と言い捨てて悦子は出て行った。

怯え切った良枝が「ねえ、お願い。助けて。助けてよー!」と言うと、「お願いがあるのは、僕の方ですよ。僕の童貞を奪ってください。僕の童貞をあげる」と言って勉は良枝の股間に顔をうずめた。
「何も怖がることはない。僕が助けてあげたんです。悪い奴は死んだんだ。さあ、やりましょう」と言うと、勉は良枝に挿入した。「出来てる!」と叫ぶ勉。良枝の方も感じ始める。
そこに、悦子が飛び込んできた。胸から血を流して床に倒れている博志を見つけると、彼女は「あなた、どうしたのよ。お願いだから、目を開けて。起きてよ、あなたー!」と言って泣き出した。

悦子は、布団の上でセックスしている二人を睨みつけると床に投げ出されたホルスターから拳銃を抜いて勉に銃口を向けた。「お母さん、僕この子と出来たんですよ。お母さん、この子をお嫁にください」と腰を振りながら勉は言った。銃を構えている悦子に「それ、本物だから気を付けて。出る、出る~!」と勉が言った瞬間、悦子は引き金を引いた。

この映画に登場する団体は実在する組織とは、何ら関係ありません。

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アナーキーな悪ふざけが炸裂する、中村幻児のスラップスティック・ピンク・コメディである。
ラストのテロップは取ってつけたような免罪符だが、とにかく警官をおちょくりまくったあまりにバカバカしい素っ頓狂な展開がもはや痛快の極みだ。

ミニパトの中で勉が拳銃を突きつけてみゆきにセックスを強要しようとするシーンに始まり、勉が拳銃と警棒を携帯したままアパートに帰ってくるところややたらめったらに発砲することも含めて、端から真面目に作っていません感を思い切りアピールしている。
博志のアパートに押し入って彼を銃殺した後、すぐに勉は良枝とセックスに突入したはずなのに悦子がやって来ると拳銃がホルスターに戻っているのも不自然極まりない。

突っ込みどころ満載のいい加減な童貞喪失ピンク映画だが、『セミドキュメント 名器づくり』(1981)と地続きの作風である。
濡れ場がふんだんに挿入されるところはピンク映画として誠実だが、アキラとヒロミがあまり物語的に機能していないことが気になる。

主役の今泉厚と人妻役梨沙ゆりの演技がいささか硬くぎこちない。高井戸欣太はセカンド助監督石川欣の変名だが、観ていて全く気付かなかった。野上正義は、さすがの達者さである。
女優では、何といっても青木三枝子がキュート。五月マリアのコメディエンヌぶりもいい。沢田多絵は、1982年2月8日未明に起きたホテルニュージャパン火災により亡くなっている。

本作は、シニカルな諧謔精神に満ちたナンセンスなブラック・コメディ的ピンク映画の怪作。
今となっては、まず提供会社の腰が引けること請け合いの一本である。

中村幻児『セミドキュメント 特訓名器づくり』

『セミドキュメント 特訓名器づくり』
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監督:中村幻児/製作:渡辺忠/企画:才賀忍
/脚本:吉本昌弘、伊東智司/撮影:倉本和人/照明:出雲清二/編集:竹村編集室/音楽:PINK BOX/助監督:岡孝通/演出助手:広木隆一、山岡博美/撮影助手:水野真/照明助手:堺一郎/効果:西武千/録音:銀座サウンド/現像:東洋現像所
製作:ワタナベ・プロダクション/配給:株式会社にっかつ
公開:1981年2月20日


こんな物語である。ネタバレするので、お読みになる方は留意されたい。

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和田家の長男・総一郎(広田性一)は、2階のベランダから庭でパットゴルフの練習をする父・賢一郎(野上正義)の姿を見ている。
和田家の朝食。母の帯子(杉佳代子)と長女の泉(蘭童セル)は総一郎の祖父の墓参りに行くという。賢一郎も行くはずだったが、新人歓迎式があり急遽出勤することになったと言い出す。総一郎は、予備校で試験があった。賢一郎は、朝飯は米だろうと文句を言った。

墓参りに向かう途中、泉は「バイちゃ!」と言ってこっそり逃げ出した。その頃、総一郎は答案用紙を前にして欠伸をかみ殺している。「俺も墓参り行けばよかったなぁ。試験になると眠くなるんだよ」とつぶやいた直後、彼は寝落ちした。

泉は、先祖の墓に喪服の胸をはだけさせた帯子を縛り付けている。総一郎が墓にやって来ると、「お兄ちゃん、手伝って」と言って泉は薔薇の枝で帯子の体を打った。総一郎は、母の股間を弄った。
…という夢を見ているうちに、試験時間は終了。答案用紙を集めるようにと試験監督員が言った。総一郎が周りを見回すと、隣の席の加藤(釜田千秋)の答案には「死」と大書きされていた。

加藤と一緒に予備校を出た総一郎は、「付き合ってくれよ」と言われてビニ本屋「昭和書店」に立ち寄った。加藤は、お目当ての本「岡まゆみ 微笑」を探している。手持無沙汰で店内を見回していた総一郎の目に、会社に行っているはずの賢一郎がセーラー服もののビニ本を買う姿が飛び込んできた。
賢一郎は、息子に気付かずその足で部下の村山静江(水月円)と落ち合い、ラブホテルにしけ込んだ。嬉々としてピンポン玉を静江の股間に入れている賢一郎。「部長さん、もう入らないわよ」と言う静江に、賢一郎は「もう少し入るよ。凄い名器だよ。どんどん吸い込まれていく。よしよし」と言った。
静江の股間から出てきたピンポン玉は潰れており、「凄い名器だよ。潰れてるよ」とはしゃぐと、彼はクンニしてからセックスした。

墓参りをバックレた泉は、友達で高校の同級生アケミ(五月マリア)を呼び出した。アケミは、「泉、自立するのかと思ったよ」と言った。「自殺なら、いくらでも考えるのになぁ」と泉はぼやき気味に言った。
すると、下の道をバイクがやって来る。アケミの彼氏(村井浩)だった。「ごめんね、お仕事~」と言うと、アケミはバイクの後ろに乗って去った。

墓参りから帰宅した帯子は、「うちは、日曜日でも家族全員そろってくれないわね。このままでは、私たち夫婦ダメになってしまうわ。近頃は、お父さんこんな風にちっとも立派に立ってくれないんだから。ちょっとしてみようかしら」と言うと、手に持ったバナナを股間に出し入れした。
そこに、総一郎が帰ってくる。慌てて股間からバナナを抜いてテーブルに置く帯子。総一郎は、何も知らずにそのバナナにかぶりついた。それを見て固まる帯子。
そのまま、総一郎は自分の部屋に入っていった。

「泉、逃げろ!お父さんがお前を狙ってるぞ!」と叫ぶ総一郎の目の前で、ビニールに包まれた裸の泉を賢一郎が弄っている。机に向かって居眠りしていた総一郎の淫夢だった。
隣りの部屋にいた泉は、鏡に自分の陰部を映して「自立しようかなぁ」とつぶやいた。

帯子は、イボ付きのバイブを手にしている。「いい加減にしろよな。知らんぞ、癖になっても」と賢一郎は苦言を呈した。「あなたがダメなら、これでやってもらいます」と言われて、賢一郎は仕方なくバイブを手にした。悶える妻を見て、彼は溜息をついた。
「あなたが欲しい!」と叫ぶ帯子と69の体勢で買ってきたビニ本を見始める賢一郎。そして、ようやく賢一郎も妻の股間に顔をうずめた。

総一郎は、自分の部屋でルービック・キューブをやっているが上手くできず苛ついて叫び声を上げた。兄の叫び声が聞こえてきて、泉は「お兄ちゃんも大変ね~」と言った。
総一郎は、金属バットを手にすると「このままじゃ、俺はダメになる!」と言って振り回した。
賢一郎と帯子がセックスしていると、2階から物音が聞こえてきた。「あの野郎、家ぶっ壊すんじゃねえだろうな」と賢一郎は言った。気が散ったせいで、賢一郎のペニスが萎えてしまう。「明日にしよう。寝よ、寝よ」と言って、彼は背を向けて寝てしまう。

朝、帯子を残して3人とも出かけた。総一郎が予備校に行くと、加藤が飛び降り自殺していた。倒れている彼の横には、「岡まゆみ 微笑」が落ちていた。

総一郎の高校時代の担任教師・浜倉(大杉漣)が保健室に入って来ると、「キョウコ先生、タンポンかナプキンありませんか?うちのクラスの生徒が初潮を迎えまして、そのお祝いに」と言った。キョウコ(香川留美)の隣には総一郎がおり、キョウコは彼から夢精の相談を受けていた。
総一郎の目の前で、いきなり浜倉とキョウコがセックスを始める。

ハッとする総一郎。また、彼は勉強中に居眠りしていた。人の気配がしてベッドを見ると、キョウコがおり自分の胸を揉みしだきながら「いらっしゃい。夢精を治してあげるわ」と言った。「キョウコ先生~」と言って総一郎は彼女とセックスするが、それもまた夢だった。
「重症だ~!!あ~あ」と溜息をつく総一郎。

その頃、泉は自分の部屋でオナニーしている。総一郎が泉の部屋のドアを開けると、妹のオナニー姿を見てしまう。「泉、おやすみ」と言って総一郎はドアを閉めた。「俺の妹もオナニーを覚えたか」と感慨深げに総一郎はつぶやいた。

ベッドで、ビニ本やら洋物のエロ本などを広げて見ている賢一郎。そこに妻が入って来て、彼は慌ててエロ本を片付けた。帯子は「明日からセックスヨガに通うことにしましたの」と言うと、パンティ一枚の姿でストレッチを始める。「膣が緩んでましたの」と彼女は言った。

賢一郎は、また静江とホテルでセックスしている。彼女は、「営業の伊藤さんと結婚話があるんです。別れてくれます?」と切り出した。「別れることないじゃないか。伊藤なら、ばれやしないよ」と賢一郎が言うと、静江はムッとして「私、帰ります!」と言った。「怒ってるのか?」「誠意のない人ね」。静江は、ホテルの部屋から出て行ってしまう。
静江に袖にされた賢一郎がとぼとぼ歩いていると、バイクに乗ったアケミの彼氏が通りかかり「女高生買ってみない?」と声をかけてきた。賢一郎は、彼のバイクの後ろに跨った。

賢一郎が連れてこられたのは、すぐ近くにあるアケミの彼氏の自宅だった。家の中に入ると、待っていたアケミは「彼の両親は、共稼ぎでいないの」と言った。彼女の着ている制服を見て、賢一郎は「うちの娘の制服によく似てる」と言った。
すると、泉がアケミの彼氏の家にやって来る。玄関先にいる彼氏に「学校、つまらなくて早退してきちゃった。アケミ、中?」と言った。「オタクさ~、そんなに可愛いのに何で自立しない訳?」「色々ね」とそのまま二人はしゃべり続けている。
家の中では、やたらと前戯の長い賢一郎に、アケミは「しつこいな~もう」と不平を言っていた。「君、学生だろう」と言う賢一郎に、彼女は「サイドビジネス」と答えてセックスした。
家から、賢一郎が出てくるのを泉は目撃して「まさか、お父さんが…」とつぶやく。賢一郎は泉に気付かなかった。

浜倉の自宅前にある公園で、浜倉は竹刀で素振りをしている。そこに総一郎がやって来て加藤が自殺したことを告げた。浜倉は、素振りをやめると総一郎を家に招いた。
彼の部屋の壁には日の丸の旗が掲げられており、その横には全日本プロレスの興行ポスターが貼られている。
浜倉は、一升瓶を取り出すと二人炬燵で差し向かいに座った。浜倉は「お前、週に何回オナニーやってるんだ?夢精を治したいなら、センズリをしろよ」と言うと、二人は乾杯する。
「ちょっと待ってなさい」と言うと、浜倉は炬燵から出て本棚に行った。彼は、本棚の奥から「おとこの星」という薔薇族雑誌を取り出し、総一郎に見せた。唖然とする総一郎に襲い掛かる浜倉。

そこに、キョウコがやって来る。二人の様子を見た彼女が、「一体、これはどうしたことですか!?」と騒ぎ出した隙に、外に飛び出す総一郎。ちょうど家の前を通りかかった警官(飯島洋一)にどうしたのかと聞かれ、彼は「この家の人が狂ってるんです!」と訴えた。
警官は、浜倉の家に入っていく。すると、家の中では浜倉とキョウコがセックスしていた。警官は、「狂ってるとか出鱈目言うんじゃない」と総一郎をたしなめる。
すると、浜倉は「お巡りさんもどうですか?なかなか、ハッとしてグーですよ」とキョウコを抱くことを勧めた。
警官は「それでは、お言葉に甘えて」と言って、キョウコとセックスを始める。総一郎に気付いた浜倉は、「和田君、また来てくれたんだね!」と言って彼にキスして押し倒した。もはや、阿鼻叫喚だ。

浜倉が和田家を訪ねてくる。出迎えた帯子に「どんな様子ですか?」と彼は尋ねると2階の総一郎の部屋に向かった。部屋の前で浜倉が呼びかけると、何も言わず総一郎が部屋から出てきてそのままどこかに行ってしまう。

泉は、とうとう自立することにした。彼女は、アケミの彼氏の寝室でロスト・バージンした。

浜倉は、「登校拒否児童の家庭では、夫婦間に問題があることが多いんです」と帯子に言いながら、彼女の手を握って来た。
そこに、賢一郎がキョウコを連れて帰宅する。賢一郎は賢一郎で、キョウコに息子の登校拒否を相談したのだ。二人が家に入ると、浜倉と帯子がセックスしていた。呆然とする賢一郎とキョウコ。「めまいがする…」と頭を抱える賢一郎。彼は、2階で休むと言って階段を上がっていった。キョウコも、彼の後をついて行った。
賢一郎が泉の部屋に入ると、キョウコは「分かりますわ~」と言った。彼女の膝に縋りつく賢一郎。そのまま、彼はキョウコを押し倒した。

浜倉と帯子がセックスしていると、2階から物音が聞こえることに帯子が気付く。「お母さん、気を散らさないでくださいよ」と言って、浜倉はセックスを続けた。2階では、賢一郎とキョウコがセックスしている。
「やっぱり、2階で音がするわ。きっと、泥棒よ」と帯子。二人はセックスを中断すると、2階に行ってみた。泉の部屋から喘ぎ声がしている。部屋の中を見ると、賢一郎とキョウコが裸で抱き合っていた。浜倉に気付いた賢一郎は、「あっ、どうも」と言った。

総一郎が河川敷で凧揚げしていると、学校帰りの泉がやって来る。二人は、凧揚げした。

和田家では炬燵を囲んで賢一郎と帯子に、浜倉が「僕たち、今年の秋に結婚するんです」と話している。4人は下ネタ談議に花を咲かせて、先ほどの件を水に流した。
おまけに、またしても二組はスワッピングを再開した。

「お兄ちゃん、勉強大丈夫?」と心配する泉に、総一郎は「大学だけが人生じゃないさ」と言った。兄妹が帰宅すると、父とキョウコ、母と浜倉がセックスしていた。総一郎と泉に気が付くと、浜倉とキョウコは家を飛び出していった。あまりにもショッキングな光景を目の当たりにした泉は、気がふれてしまう。
総一郎は金属バットを手にすると、両親に向かって思い切り振り下ろし「夢も現実も狂ってる」と言った。血しぶきが飛び散った。へらへらと笑いながら、「嘘みたい」と泉は言った。

合掌!!

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ひたすら暴走しまくるナンセンスなスラップスティック・ポルノの怪作。
よくもまあにっかつが買取りを拒否しなかったものだと思うが、それはふんだんに盛り込まれた濡れ場ゆえだろうか。

本作のノリをそのまま一般映画に持ち込んだのが、中村幻児初の一般映画『ウィークエンド・シャッフル』(1982)ということになるのだろう。脚本も本作の吉本昌弘と監督本人が担当している。

「セミドキュメント」と冠されたのは、1980年11月29日に起きた神奈川金属バット両親殺害事件を本作のモチーフにしたからだろう。

それにしても、中村幻児監督作品とは思えないハチャメチャぶりに唖然としてしまう。執拗に繰り返される夢オチの連続は、前半はまだある種の整合性がギリギリ保たれているが、浜倉とキョウコが登場してからはもはや夢と現実の境界すら曖昧になってしまう。

一応は、若者が内包する思春期特有の不安定な心情とか浪人生の焦燥感、親の不貞といった要素がちりばめられているものの、それがことごとくカオスとスクラップの方向に突き進んでいく。
加藤の飛び降り自殺も唐突だし、当時最盛期だったビニ本をネタに仕込んだのもほとんど何の意味もない。ちなみに、加藤が購入した「岡まゆみ 微笑 第1集」(NKプランニング)の岡まゆみは、ミスワールド ヌードコンテスト第2位という触れ込みで当時大人気だったビニ本モデルである。

スクリーンショット (1190)
スクリーンショット (1191)

それにしても、一番頭のおかしい奴は誰なんだという煙に巻くような展開である。総一郎もおかしいし、泉も最後には完全におかしくなってしまうし、加藤もおかしいし、賢一郎も帯子もまともとは言い難い。
だが、スラップスティックに拍車をかける張本人は浜倉の存在である。学校教師にして右翼的、おまけに両刀遣いという破天荒ぶりで、総一郎が彼の家を訪れるくだりから物語は完全に調和を失ってしまう。
あの、警官も加わった浜倉家での乱交からして、そもそも現実なのか総一郎の夢なのか判然としない。

予備校生の総一郎を、元担任の浜倉と養護教諭のキョウコが登校拒否児童として総一郎の両親から相談を受けて家庭訪問するのもおかしな話である。
ビニールに包まれた泉が賢一郎に犯されるという総一郎の夢は、彼がビニ本屋で目撃した賢一郎の行動のメタファーだろう。

エンドクレジットが「合掌!!」なのはさすがに笑ったが、それ以外は笑えない冗談のようなポルノ映画である。

野上正義杉佳代子大杉漣香川留美はさすがの存在感だが、如何せん広田性一がオッサン過ぎて予備校生には見えないし、蘭童セルもいささか無駄遣いされているのが残念だ。
五月マリア水月円は、安定の濡れ場要員と言ったところか。

余談ではあるが、「バイちゃ」や「ハッとしてグー」、松田聖子のポスターや田原俊彦のプロマイドに昭和ノスタルジーを感じてしまう。

本作は、ひたすら迷走するスラップスティックで珍妙なにっかつ買取ポルノ。
観ていて思考停止に陥る一本である。
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