『ダンシング・チャップリン』('11)
監督・構成:周防正行
原作『CHARLOT DANSE TO AVEC NOUS(チャップリンと踊ろう)』
振付:ローラン・プティ
出演:ルイジ・ボニーノ
草刈民代
ジャン・シャルル・ヴェルシェール
リエンツ・チャン
ナタナエル・マリー
マルタン・アリアーグ
グレゴワール・ランシエ
ユージーン・チャップリン
ローラン・プティ
コリオグラファー(振付家)のローラン・プティがチャップリンへのオマージュとして作った作品『CHARLOT DANSE TO AVEC NOUS(チャップリンと踊ろう)』を映像化した映画作品。
第一幕 「アプローチ」 クランクイン前から60日間の舞台裏の記録
第二幕 「バレエ」 『CHARLOT DANSE TO AVEC NOUS』を再構成したバレエ
演目 1.チャップリン〜変身
2.黄金狂時代 映画『黄金狂時代』より
3.二人の警官
4.ティティナを探して 映画『モダン・タイムズ』より
5.チャールストン 映画『犬の生活』より
6.外套
7.空中のバリエーション 映画『モダン・タイムズ』より
8.小さなトゥシューズ 映画『ライムライト』より
9.警官たち
10.キッド 映画『キッド』より
11.街の灯 映画『街の灯』より
12.もし世界中のチャップリンが手を取り合えたら
13.フィナーレ
いや、面白い。バレエの動きってすごい。
弱っちいなりに高校で柔道をやっていたので、人の動きには重心が付随するものであるという認識があるのだけど、そんな概念を吹き消すかのように、スイスイと動く動く。
ルイジ・ボニーノの椅子を使ったダンス。
黄金狂時代の草刈民代のステップ。
何じゃこりゃ!?と衝撃だった。
鍛え抜かれた正に筋張って見える筋肉。
トウで立つ脚。外側に向ける姿勢。
どう考えても普通の人間のポーズじゃない。
不自然な立ち姿。
それが何とも言えず、美しかった。
ルイジ・ボニーノさんがとても、60歳とは思えない。
これでも、最盛期の動きよりは格段に衰えているそうだし、実際舞台ではもう『CHARLOT DANSE TO AVEC NOUS』を通して踊ることは出来ないけど、映画ならばということで実現した企画なんだそう。
でも熟練した動きや目を引く存在感は培ってきた時間を感じさせる。
時間は残酷でもあるけど、裏切らない確かなものでもある。
何より、それだけの素晴らしいダンサーである彼に対する尊敬と愛情の念が感じられる作品だった。
もちろんチャップリンに対しても。
奥泉光『滝』(集英社)読了。
『その言葉を』『滝』収録。
今まで読んだ奥泉作品の中では一番読みやすかった。
『その言葉を』は作者の趣味なのであろう、ジャズに対する愛情が感じられた。
『滝』は組織に置ける人の役割、暗黙の了解というような陰陽、理論的に説明された神秘、そしてその理論を越して人間の心を襲う神秘の恐怖、それらの見えない力が少年たちを苦しめ、成長させる姿が描かれていて面白かった。
まあ、決して結末は明るくないけど、妙な清涼感の残る作品だった。