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【貴志祐介】硝子のハンマー 4

 初読みならば敬遠しそうな厚みだが、以前『青い炎』を読んだことがあり、《防犯探偵が暴く密室トリック! 日本推理作家協会賞受賞作》 という帯のコピーに惹かれて購入。

角川文庫 2007/11/15 再版発行

 「本格」という呼び方は好きではない。そうでないミステリーはつまり「本格でない」ということであり、それは言葉本来の意味からすればまるでレベルが低いといった語感があるからだ。とは言うものの、そう呼ばないと分かりづらかろうということで言えば、本書は紛れもなく「本格ミステリー」であろう。

 巻末の法月綸太郎との対談で、法月氏は 《完全な本格ミステリーですね》 と言い、著者も 《一回はど真ん中の本格を書いてみたいなと思っていまして》 と答えている。

 前半の「I 見えない殺人者」が起・承、後半の「II 死のコンビネーション」が転・結に当たる。後半の出だしはいきなりそれまで登場しない人物が出てきて、一瞬別な物語が始まったのかと錯覚してしまったが、少し読み進めると彼が犯人なのだと分かる。

 いわゆる倒叙形式で、犯行の動機、トリックを思いつく過程、犯行の詳細が犯人の視点で語られる。単行本が出た当時、「絶対にこのトリックは見破れない」という著者コメントがあったらしいが、確かにこりゃ無理だわ。

 捜査する側の立場・視点でこのトリックを解明させようとすると、きっと不自然さが出てしまうのではなかろうか。著者も対談で 《犯人がトリックを発想したところから書いていけば、わかりやすくなるんじゃないかと思った》 と語っており、その試みは成功していると思う。

 帯のコピーにある「防犯探偵」は、防犯コンサルタント(あるいは単に防犯ショップの店長)の榎本径。事件解決に至る過程が不自然にならないように考えた職業かと思えるが、味のある良いキャラである。彼に事件を依頼する弁護士・青砥純子とのコンビも良い。この二人が登場する短編があるらしいのだが、ぜひそれも読んでみたい。

by higeru  at 21:01
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1. 硝子のハンマー⇔貴志祐介  [ らぶほん−本に埋もれて ]   2008年02月06日 15:08
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2. 硝子のハンマー[貴志祐介]  [ 読書ノート ]   2008年02月20日 17:49
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5. 「硝子のハンマー」貴志祐介  [ 日だまりで読書 ]   2008年10月15日 15:23
久しぶりのミステリーらしいミステリーでした。 何ていったって密室殺人! ★★★☆☆ 見えない殺人者の、底知れぬ悪意。異能の防犯探偵??.
コメント
1. Posted by らぶほん   2008年02月06日 15:15
こんにちは。
記事を読んで、「ああ、そうか」と納得しました。
たしかに視点が逆だったら、不自然さが残っていたかもしれませんね。
介護ロボットは、今では医療の現場にも実際に一部利用しているところもあり、時代をうまく取り入れていると、思いました。
2. Posted by higeru   2008年02月07日 01:48
らぶほんさん
 倒叙を用いた作品はずいぶん久しぶりな気がします。その点新鮮でもありました。
 相当に取材もしたのでしょうが、ロボットやら防犯カメラやら、トリック自体はものすごく考え抜かれていたと思います。
3. Posted by よしふ   2008年02月20日 17:56
こんにちは。
トラックバックさせていただきました。
こちらで紹介されているのを見て、「硝子のハンマー」を読みました。
確かに絶対に見破れないトリックですね。最後まで方法が分からなかったです・・・
続編?の「狐火の家」も読んでみたいですね。
4. Posted by higeru   2008年02月21日 00:18
よしふさん
 こんばんは。
 本格はあまり読みませんが、たまには良いですね。

 榎本と青砥のコンピが出るやつですね。>『狐火の家』
 これはどこで知ったのだっけ…と思ったら、文庫の巻末の対談に書いてありましたわ。
 
5. Posted by なな   2008年06月05日 09:46
なるほど、こういうのを「本格派」って言うんですね。
後半、これは誰?って思ったけど
途中からあぁ、彼がやったのね…って。
すごく面白かったです。
6. Posted by ちきちき   2008年06月05日 21:41
こんばんは。
トリックとか本当細かかったですよね〜。
確かに榎本とかが解き明かすには無理があるなあと思ってすごく腑に落ちました。
1章と2章の雰囲気が違ってちょっとビックリしました。
7. Posted by higeru   2008年06月05日 23:50
ちきちきさん
 トリック細かい!絶対に分からないですよねー。
 2章は上にも書きましたが、ホントびっくりしました。
 
8. Posted by そら   2008年10月15日 15:21
>捜査する側の立場・視点でこのトリックを解明させようとすると、きっと不自然さが出てしまうのではなかろうか

たしかに,「こいつが犯人?」と疑ってかからなきゃ,トリックも分かんないだろうね〜。
ふむ。なるほど。ちょっと読みにくいなと思った構成は,もしかしたら考えられた構成だったのかもと思い直しました(*^_^*)

9. Posted by higeru   2008年10月18日 00:20
そらさん
 うんうん、思い直したか、それは良かった…って、考えてない構成であるはずがないでしょう〜。(^^;

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