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荻原浩

【荻原浩】ママの狙撃銃 3

 あまり評判はよろしくはないようだがそのうち…と思っていたら文庫落ちしたので購入。

ママの狙撃銃 (双葉文庫 お 23-5)双葉文庫 2008/10/19 第1刷発行

 「ママの狙撃銃」というより「ママはスナイパー(狙撃手)」といった内容なんだが…うーん、微妙だなぁ。荻原さんお得意のほんのり笑えてちょっぴり泣けるお話だが…主人公がスナイパーってのは頂けない。

 カバー裏のあらすじの最後に「“読み出したら止まらない” サスペンス・ハードボイルド」とあるが、前半はともかく後半は大嘘です。

 そもそもこのカバーがいかんだろ。単行本のはコミカルな内容を想像させる「ママ」のイラストだったが、「血塗られた服を着て銃を持つ少女」というこのイラストはぞっとしないし、話の内容とも合ってないぞ。荻原ファン以外にはオススメしません。(>_<)

【荻原浩】さよならバースディ 3

 荻原さんの文庫新刊ということで、どんな話か何の予備知識も無いままカバーも見ずに無条件購入だったので、変なタイトル、なんて思いながら読み始め、書き出しの一文に面食らった。

集英社文庫 2008/5/25 第1刷

 《バースディはご機嫌ななめだった》 って、なんか日本語おかしくねえ?と思ったら、どうやら「バースディ」は誕生日のことではなく、なにものかの名前らしい。そして数ページ読み進んだところで明らかになるその正体は、別名ピグミー・チンパンジーとも言われる「ボノボ」――なるほど、カバーのイラストに描いてあるこれな訳だ。

 そのバースディは、東京霊長類研究センターの類人猿言語習得実験プロジェクトで訓練を受け、今や人の言葉や文字まで解する能力(もちろん幼児並みのだが)を持つ天才ザル。主人公はプロジェクトの実質的リーダーである助手の田中真。

 しかしそのプロジェクトには 〈プロジェクトの創始者の安達助教授の自殺〉 という忌まわしい過去がある。そしてまた 〈真の恋人の由紀がプロポーズされたその夜に窓から身を投げる〉 という痛ましい事件が起き、〈真は、目撃したバースディから、真相を聞きだそうと〉 する。

 と、こんなネタバレになるようなことを沢山書いてしまっていいのか?と思うのだが、実は上の文章で 〈 〉 の部分はカバー裏のあらすじからの引用なのである。でもこれは…やっぱり書きすぎだろうと思うのだが?

 ちなみに 《長編ミステリー 彼女は、なぜ死んだのか? サルだけが知る愛する人の真実》 というのが帯のコピー。うん、これはなかなかよろしいようで。

 で、なんで彼女は死んだんだっけ? 荻原さんのこれの前の作品は『明日の記憶』らしいが、いやそれは関係無いのだが、読み終えてから一週間経っていないのにもう覚えていない。(^^;

 どうもその理由が希薄なのか納得できなかったんだろうと思う。最後の「仕掛け」もいささか凝りすぎな感じがして涙腺の刺激も抑制されてしまった。

【荻原浩】あの日にドライブ 3

 タイトルからファンタジーっぽいものか、はたまたとっても爽やかな物語かと思ったりもしたのだが、表紙のこの車は流星ワゴンではないな。タクシーでドライブかぁ?

光文社 2005/10/25 初版一刷発行

 てな訳で、主人公の牧村伸郎は43歳のタクシー・ドライバー。かつてはエリート銀行員だったが、支店長に放ったひと言で将来を棒に振ったという経歴の持ち主にして、妄想おやじである。

 その妄想の対象は基本的に「来し方」。あの時こうしていれば、あそこでこう言っていたら…誰しも少なからず、いや大いに経験のあることだろうけど、伸郎のそれはかなり激しい。

 当然のことながら収入は激減、家族からも冷たくあしらわれる身になれば、伸郎の気持ちも分からなくはないが、そこは荻原作品であるからして、その妄想はちょっぴり笑えて感情移入を受け付けない。まあ書く方にしても感情移入なぞして欲しいとは思っちゃいないだろうけど。

 そんな伸郎だが、いっぱしのタクシー・ドライバーになるべく努力をし(その動機は多少不純ではあるけれど)、でもある日見てはいけない現実を目の当たりにし…と、まあその辺りの展開は予定調和かも。

 結局著者の言いたいことは、ラスト間近の次の2行に集約されているのだろう。
 曲がるべき道を、何度も曲がりそこねた。迷ったし、遠回りもした。
 でも、どっちにしたって、通りすぎた道に、もう一度戻るのは、ちっとも楽しいことじゃない。
 でもやっぱり、できることなら「あの日」に戻りたいぞ。(^^;

【荻原浩】なかよし小鳩組 4

 何か忘れてると思ったら、ひと月くらい前に読んで感想書きを忘れていた…ということを少し前にも思い出しはしたのだが、このところ図書館の予約本が順調に回ってきていて、そっちは期限が切られているため、ついつい購入本の感想は後回しになってしまうのである。

集英社文庫 2007/6/6 第 12 版

 『オロロ畑でつかまえて』はどちらかというと牛穴村の青年たちが主役だったので、シリーズ物に分類するのはいささか微妙な気がするが、とにかくあの「冴えない・売れない・でも潰れない」ユニバーサル広告社の面々再び登場の巻である。

 潰れない、でも年中潰れそうなユニバーサルの社長・石井がつてを頼りに取ってきた仕事は、何とCIだという。発注先はタイトルにもある「小鳩組」。誰しもが建築業者だと思ったその会社は…てな訳で、今回も笑える話である。

 でもって荻原さんの笑える話の常として、ちょっぴり泣ける話でもある。だが、ぐうたら社長の石井、アル中バツイチのコピーライター・杉山とバンド命の赤毛のアートディレクター村崎の三人で泣ける話になろうはずもなく、そこに登場するのが杉山の7歳になる元・娘の早苗である。

 この可愛くも憎たらしい元・娘のために、のんだくれ親父が頑張る父ちゃんに変身すべく奮闘し、最後は…という辺りが見どころの一つであり、笑えて、そして泣けるんだよね。

【荻原浩】さよなら、そしてこんにちは 3

 荻原浩とくれば当然長編、と勝手に思い込んでいたのだが…短編集でした。

光文社 2007/10/25 初版一刷発行

 7話の短編の最初が表題作「さよなら、そしてこんにちは」。主人公は葬儀社に勤める陽介。彼は笑い上戸だった。とくれば、葬儀の際にとんてもない大失態を演じるのでは?と良からぬ期待をするのだが…。

 荻原浩といえば、時にしんみり、ホロリとさせつつもツボを押さえた笑いを期待するのだが、こと「笑い」についてはいささか肩透かしを食らった感がある。

 二話目の「ビューティフルライフ」は、有機農法の農園経営を夢見た父親が突然「本当の空がある場所」へ引越しをすると言い出す。夫を応援する母親といい家族構成といい、『サウスバウンド』を彷彿させるが…その後はだいぶ違う。これも大笑いできる箇所は少ないが、最後は何だかほっとする。

 この他、売上を上げようと奮闘するスーパー(に勤めるサラリー)マン、子供向け番組に出演するイケメン俳優に熱を上げる子持ち主婦、腕は良いがちょっと癖のある寿司屋の親父など、いろいろな人々の有りそうで無さそうな、無さそうで有りそうなお話。荻原版『ララピポ』といったところか。ただ、荻原作品としては、ちょっと中途半端な感じがするんだよねぇ。

【荻原浩】オロロ畑でつかまえて 4

 荻原浩を読むならこれはおさえとかないと――ということで、今更ではあるが第10回小説すばる新人賞受賞のデビュー作である。

集英社文庫 2007/6/6/ 第 16 刷

 《奥羽山脈の一角、日本の最後の秘境といわれる大牛山(2238メートル)の山麓に、サルノコシカケのようにはりついた寒村》 で 《人口はわずか三百人》、 《主な産物は、カンピョウ、人参、オロロ豆、ヘラチョンペ》 の牛穴村。

 そんな超過疎の村の青年会―といってもわずか8名、大半は30過ぎ―の面々が、村おこしのために立ち上がる。しかし手を組んだ相手は倒産寸前の広告代理店、ユニバーサル広告社。彼らが考えた村おこし作戦「牛穴村 新発売キャンペーン」とは――!?

 解説によれば、井上ひさし氏が小説すばる新人賞の選評で、「文章は軽妙にしてユーモアに満ち、話は風刺の力にあふれて爽快であり、近ごろ稀な快作である。こういう作品に余計な選評は不要、とにかくお読みになって、読者それぞれの立場でたのしんでいただければよい」と絶賛したのだとか。

 こんな選評を引用した日には、もうこれ以上書くことは無い。ユーモア小説というよりはスラップスティックな感じだが、荻原浩の原点がここにある!

 青年会の中心となって活躍するのは会長の米田慎一と幼なじみの富山悟、37才。年はだいぶ違うのだが、今回はタカアンドトシの二人でアテ読みしてみた。

【荻原浩】明日の記憶 4

 『君たちに明日はない』とともに第18回(2005年)山本周五郎賞を受賞した作品である…と書いたところで、その『君たちに〜』の感想の冒頭に同じような書いていたことに気付いて、いきなり焦る。(^^;

光文社文庫 2007/11/20 初版 1 版発行

 《誰だっけ。ほら、あの人》、《俳優だよ。あれに出てた。外国の俳優だ》 という主人公・佐伯雅行の何気ないセリフ(そんなのしょっちゅうだよ〜!)で始まるのがにくい。映画になったこともあり、若年性アルツハイマーがテーマという予備知識はあったので、多少の心構えはできていたものの、佐伯と同年代(というかほとんど同年)のおいらには、かなりホラーである。(>_<)

 読み進むにつれ(=佐伯の症状が悪化するにつれ)、佐伯の視点で語られることにいささか違和感を感じる。かといって三人称ではドキュメンタリーになってしまいそうで、その点これは映像向きの作品なのかも知れない。

 ただ、佐伯に日記を書かせるということでこの違和感も少し薄れる。その日記の中で何気に前に書いたことと同じことを繰り返し書いていたりするのが、ちょっとおかしく、また余計に怖い。

 最後は…こういう終わり方しか無いのかとも思うが、あくまでフィクションなのだからもう一ひねり欲しかった。また、妻の枝実子がいかにして佐伯の行き先を突き止められたのか、その説明が無いことがやや不満(映画では伏線が張られているようだが)。

 今回は勝手にキャスティングは無しで、映画に出演した渡辺謙(佐伯)と樋口可南子(妻・枝実子)でアテ読み。小説では枝実子が4つ年下ということになっているが、実際は樋口さんの方が一つ上。実は彼女は同い年どころか小学校の同級生である。ん?この話、いつだったか書いたような気がするが…思い出せない…き、記憶が…。

【荻原浩】サニーサイドエッグ 3

 動物探しを得意とする私立探偵・最上俊平が活躍する『ハードボイルド・エッグ』の続編である。図書館納入直前に予約を入れられたので、非常に良い状態で回ってきた。畳と何とかと本は新しい方が良い。

東京創元社 2007/7/31 初版

 今回こそダイナマイト・ボディの秘書が登場し、前作で俊平が引き取ることになったチビ(という名の小さくはないシベリアンハスキー)が相棒…という展開になるかと思いきや、残念ながらその期待は叶えられず。

 物語は一匹のロシアンブルー(ネコ)を探すことにほぼ終始する。なのでネコの生態についてかなり詳しい描写があり、「これを読めばあなたも三日でネコ探しの名人に」とでもサブタイトルを付けたいくらい。

 序盤の犬探しのエピソードが終盤にもからんでくるあたりは無駄が無い。デビューして間もない頃の前作に比べてこなれた感じはするが、期待通りの出来ではあっても期待以上の面白さでは無かったかな。

 俊平がいつ何時もめげずにハードボイルドしてるのは、とってもナイスである。さらなる続編を期待させるようなラストであり、ぜひ次回作こそはダイナマイト・ボディの秘書を…。(^^; ゆで玉子、玉子焼きときたら、次は「スクランブル・エッグ」か?

 ところで前作からずっとなのだが、どうにも俊平のキャスティングが決まらない。ぱんどらの本箱のぱんどらさんの(前作の)妄想キャスティングは劇団ひとりということで、試しに演じさせてみたのだが、残念ながら早々に降板頂いた。ユーモア路線を強調するならこれもありかとは思うのだが。

 候補としては柏原崇、稲垣吾郎、キムタク、谷原章介とかいろいろ考えたのだが、いずれも年齢的にいまいちフィットしないし、イケメンにすぎるような。もうちょいガタイが良くてタフなイメージがあるんだけどな…。

【荻原浩】ハードボイルド・エッグ 3

 新刊の『サニーサイドエッグ』をタイミングよく予約でき、すぐに借りられそうな状況だったのだが、ひょっとしてこのタイトルは…と思ったら案の定、未読本の続編ということで、慌ててブックオフで購入。

講談社文庫 2003/3/15 第 1 刷発行

 この本は、まだ荻原作品を読んだことのない頃に書店で見つけ、その時はいかにもなタイトルに似非ハードボイルドな話なんじゃないかと思い、結局これまで読んでいなかったのだが…なんのなんの、面白かった。フィリップ・マーロウを信奉する主人公の探偵・俊平は、結構ハードボイルドしてる。

 ただ基本的コメディ路線なせいか、ある程度読み進んだあたりでそのハードボイルドにもマンネリ感を覚える。これは連作短編集にした方が良かったんじゃないか…と思ったあたりで物語が動き、ミステリっぽくなってきた。

 最後はちょっとホロリとさせるが、決して悲しいだけの結末ではなく、荻原さんらしい。ただこれまで読んだ三冊に比べると、完成度というのかいろいろな点で見劣りする。デビューして三作目ということもあるのだとすれば、『サニーサイドエッグ』は期待大かな。

【荻原浩】神様からひと言 4

 荻原作品三冊目は、『噂』とは打って変わって、同じ人が書いたとは思えない笑えるお話。

光文社文庫 2006/6/5 16 刷発行

 主人公は佐倉凉平、チキンハートで 《脳味噌と直結した口》 を持つ27才。長い間一緒に暮らしていた女性リンコが何も告げずにいなくなり、業界最大手の広告代理店から珠川食品に転職した凉平だが、役員出席の会議で失態を演じ、《リストラ要員の強制収容所》 と陰口を叩かれる総務部「お客様相談室」に異動させられる。

 お客様相談室には、一癖も二癖も三癖も四癖もありそうな面々が揃っているのだが、中でもひと際濃ゆいキャラが、篠崎薫――若い女性でもお局様でもない、《趣味の悪いネクタイをした、むさ苦しくてだらしのないぐうたら社員》 の男だった。

 そんな篠崎だが、苦情を寄せるお客様の扱いのプロであり、いちゃもんをつけてくる客をやり込めるくだりが、笑えてかつ痛快である。現実にはとても無さそうな話だが、ドラマなら十分ありそう。

 実際、昨年末WOWOWでドラマ化されたとのこと。その時の出演者は、凉平=伊藤淳史、篠崎=陣内孝則らしいが、陣内はともかく伊藤淳史はないだろう。ちなみに今回のおいらのキャスティングは、凉平=妻夫木聡、篠崎=竹中直人だ。

 タイトルは 《お客様の声は、神様のひと言》 という珠川食品の三波春男的社訓から来たものだが、もう一つの意味がある。凉平にはお客様ではない、自分だけの神様がいた。ようやく捜し当てたリンコと再会を果たし、その神様から授かったひと言を口にしたところで物語は終わるのだが…このひと言が期待外れ。これがやったー!って思えるような気の利いたものだったら、★五つでも良かったかも。

 とにかく笑えるが、もちろん面白おかしいだけの話ではない。著者の言によればこんな深いメッセージが込められているらしい。

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