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奥田英朗

【奥田英朗】マドンナ 4

 次に読む奥田作品はこれ、と思っていたのだが、思いがけず『サウスバウンド』が文庫落ちしたのでだいぶ遅くなってしまった。シリーズ物という訳ではないが、『ガール』『ララピポ』と合わせて「人生いろいろ三部作」と勝手に呼ばせてもらおう。

講談社文庫 2001/11/1 第 5 刷発行

 『ガール』は30代の働く女性たち、『ララピポ』は性別も年齢も様々な人たちが主人公だったのに対して、本書はそのタイトルと表紙とは裏腹に、40代のおやじ(つまりおいらの同類)たちが主人公である。

 表題作の「マドンナ」は、人事異動で自分の部下になった若い女性社員に恋してしまうという、まあ言ってみればたわいもない話ではある。でも…分かる。この話に限らずどの話も、とってもよく分かる。思わずにやり、時にスッキリ、あるいはしみじみしてしまう、そんなおやじのドラマが五話収められている。

 さて、『ガール』は40代のおやじにも楽しく読めたが、本書は女性読者の目にはどう映るのか。《「男性は、意外と私達のことをよくわかっているのかもなぁ」と、ちょっと怖いような気分にもなる、一冊なのでした》 というのが、解説の酒井順子さん(ちなみにこの解説を書いた時はぎりぎり30代)の感想。少なくとも奥田さんはわかっているのかもなぁ。

 40代のおやじは是非読むべし。その際主人公は自分で、その妻は黒木瞳でも黒田知永子でも、お好きな女優でアテ読みしましょう。(^^;

【奥田英朗】サウスバウンド 4

 次に読む奥田作品は『マドンナ』のつもりだったのだが、つい新しいものに手が伸びてしまった。

角川文庫 2007/8/31 初版発行


 二郎はちょっと勝気だが、どこにでもいるごくまっとうな小学6年生。両親と21才の姉、二つ下の妹と東京中野に暮している。だがその両親、特に父の一郎はちょっと…いや、かなり普通ではない。

 カストロとツーショットで写真を撮ったことがあるだの、沖縄米軍基地で戦闘機を燃やしただの、実は沖縄で大昔の英雄の末裔だという噂(かなり眉唾)もある父親は、「納税が国民の義務だというなら国民やめちゃおう」などと過激なことを言う、文字通りの元過激派にして琉球空手の達人(らしい)。

 そして母のさくらは実は四谷の老舗呉服店の娘であり、かつては「御茶ノ水のジャンヌ・ダルク」と呼ばれ、父と同じセクトで活動をしていたという経歴の持ち主。現在は喫茶店を切り盛りし、自称フリーライターで稼ぎのない一郎を支えている。

 そんなさくらが、ある朝大事な話があるという。「我が家は、沖縄の西表島に引っ越すことにしました」。二郎は友だちに満足な別れを告げる間もなく、成人の姉を東京に残し、翌日には沖縄へ。石垣島に住む地元の有力者のつてで、西表島のとある廃屋にで暮らし始める。

 しかし一家が住みついた土地は、東京のリゾート開発会社が既に買収済みであることが発覚。会社をやめた姉もやってきて同居をすることになるが――。

 上巻の半ばまでは、一郎の破天荒ぶりにやや辟易し、二郎が主役の子供のお話か…という感じでいまひとつのめり込めなかったのだが、その後俄然面白くなってきた。今まで読んだことのない感覚、愉快、痛快、極端、過激な物語だ。

 下巻カバー裏表紙側の説明によれば、こういうのは「ビルドゥングスロマン」(成長物語)というらしいのだが、どうもしっくりこない。これは「奥田小説」なんだと思う。

 余談になるが、単身住まいのマンションの名前は「ハウスナンプウ(南風)」という。今度人に聞かれたら「ハウスパイカジ」と言うことにしようかな。(^^

【奥田英朗】ララピポ 4

 な、なんじゃこら〜!?
 初めてこの本(の表紙)を見たのが誰のブログだったか定かではないが、恐らく下の写真より小さなものだったのだろう、「小さな男の子が振り向いている姿(上半身)」に見えたのである。先入観というのは恐ろしいもので、それ以来どこで見かけてもそういう絵にしか見えなかった。

 意味不明のタイトルからは内容を推し量るべくもなく、面白いという人が何人かいたので、何も考えずに図書館で借りてきた。その時はすぐにバッグにしまったのだが、家に帰って改めてその表紙を見て…な、なんじゃこら〜!?である。

幻冬舎 2005/9/30 第 1 刷発行

 6話から成る短編集で、タイトルの意味は "a lot of people" がそう聞こえたもの、ということが第6話で明らかにされる。これに合わせてなのか、各編にはすべての英語のタイトルが付けられている。

 普通の短編集ではない。こういうのも連作というのか、前の話の脇役/チョイ役が次の話では主役になり、さらに最終第6話は第1話とリンクする、という趣向である。

 で、その主役たちはというと、まあ一般的に見てまっとうとは言えない人たち。それぞれのお話は、単独の短編としてみれば、実にお下劣である。「三十路女のための爽やか応援歌」的な『ガール』とはまったく方向性が異なるように思える。

 が、一つの作品として読み終えた後は、どこか切なくほろ苦い。世の中ララピポ=たくさんの人がいる、人生いろいろ、だからくよくよしないで頑張ろうよ…って、結局『ガール』と同じようなメッセージを伝えようとしているのか。一見方向性が異なるようでも、見る角度を変えると同じ方向を向いているように見えるが如し、と一人勝手に納得。

【奥田英朗】ガール 4

 読んだことのない作家、あるいは女性の書いた本なら読もうとは思わなかったかも知れないが、「奥田英朗の『ガール』」、何となく以前から気になっていた一冊だった。
 賞味期限が切れた訳ではなかろうが、BOOK・OFFで「値下げしました」というPOPとともにワゴンに5冊ほど積まれていたので、状態の一番良さげなものをチョイス。500円也。

講談社 2006/4/6 第 4 刷発行

 買った本の帯は左のものとは違っていた。この帯だったら…買わなかったかな?(^^; 《30代。OL。文句ある?》 いえいえ、文句無い面白さでした。

 表題作を含め、いずれも「ガールとは呼べない」30代のキャリアウーマンが主役の短編5編、大笑いする面白さではなく、ついニヤニヤしてしまうような面白さ。単行本なので家に置いて併読していたが、これが文庫で電車の中で読んでいた日には、変なおじさんと思われたかも知れない。

 既婚者もいれば独身者もいればバツイチもいるが、共通するところは「みんな頑張ってます!」。だからおじさんも頑張って…ってことなのだと、良いように解釈しとこう。性別によって年代によって、見方は異なるかも知れないけど。

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