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今野敏

『隠蔽捜査』 裏と表

小説新潮 2009年 11月号 [雑誌] 一つ前の記事で「裏隠蔽捜査シリーズは表と同期しているので今更まとめて刊行という訳にはいかないのかも」と書いたのだが、21日に出る『初陣―隠蔽捜査3.5―』がまさにそれ。表題作は小説新潮2009年11月号に掲載されたもの。それにしても「3.5」ってのはどうなのよ。(^^;

 そして「表」の方はシリーズ四作目『収斂 隠蔽捜査4』が22日に出る小説新潮の6月号から連載開始である。さて、何が収斂するのか、あるいは何に収斂するのか、楽しみだ。

【今野敏】ST 警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル 3

 シリーズ一作目の『ST 警視庁科学特捜班』から『毒物殺人』『黒いモスクワ』、そして第二期「色シリーズ」の『青の調査ファイル』『赤の調査ファイル』と刊行順にこだわって読み進めてきたのだが、ここへきて間違えた。地元の図書館にあった唯一未読のシリーズ本を借りてきたのが、「黄色」の方が先だった。ちょっとショック。

ST 緑の調査ファイル (講談社ノベルス)講談社ノベルス 2005/1/10 第1刷発行

 不可解なすり替え盗難事件!バイオリンが招く密室殺人!STが真相究明に挑む!
 「緑」の調査ファイルとくれば活躍するのはSTグリーン・結城翠、というのはお約束だが、彼女の特殊能力が事件の解決に直接的に役立ったかというと…そうでもない。

 5人のメンバーの中でも結城翠と黒崎勇治は、とりわけ超能力ともいえる特異な能力の持ち主なのだが、いつも「二人合わせて人間嘘発見器」というのではいささかマンネリである。たまには「普通の人間には絶対無理」な謎を解決するようなぶっ飛んだ働きを見せてくれないものか…と、毎回似たような感想を書いている気もするが。

 それにしても菊川が実はクラシックファンだったという衝撃の事実?が明らかになるのだが、どうにも取って付けたような印象が否めない。

【今野敏】朱夏 3

 師走とくれば…忘年会。というのは多少言い訳だが、このところ更新が滞りがち。必然的に読み終えてから感想をアップするまでの間が開いてしまい、そうなると印象の薄い作品は、はてどんな話だったっけ、となってしまう。

朱夏新潮文庫 2007/10/1 発行

 シリーズ一作目の『リオ』『隠蔽捜査』の次に読んだ今野作品ということもあって「このシリーズはパスだなぁ」という印象だったのだが、『ビート』が評判通りの面白さで、三作のシリーズで最初と最後を読んだからにはやっぱこれも読んどかないと、と思ったのだが…。

 はて、どんな話だったっけ?(^^;
 という訳で今日はカバー裏のあらすじを思いっきりカンニング――あの日、妻が消えた。何の手がかりも残さずに。樋口警部補は眠れぬ夜を過ごした。そして、信頼する荻窪署の氏家に助けを求めたのだった。あの日、恵子は見知らぬ男に誘拐され、部屋に監禁された。だが夫は優秀な刑事だ。きっと探し出してくれるはずだ――はい、確かにそういう話でした。評価は★★★で、『リオ』★★と『ビート』★★★★の間である。

 ところで、恥ずかしながらこのタイトルはてっきり造語かと思っていたのだが、結末近くでその意味を知った。
 《青春の次には朱夏が来る》 ――なるほど、「青春」という言葉が五行説に由来するとは知らなかった。さしずめおいらは「白秋」であり、季節は「玄冬」なのである。

【今野敏】白夜街道 3

 先月作家デビュー30周年のパーティを開いたという今野さん。最近文庫本が出まくりだが、昔の作品を改題したり、えらく古い本の文庫落ちだったり、ガンダム好きという訳でもないので(福井晴敏の『月に繭 地には果実』は面白かったけど)「宇宙海兵隊」シリーズというのもあまり食指が動かないところ。

 これはどうなのかと思い、まずは奥付の前のページをチェック。単行本は2006年7月の刊行。てことは『隠蔽捜査』よりも新しい作品だな、ということを確認してお買い上げ。

白夜街道 (文春文庫 こ 32-2)文春文庫 2008/11/10 第1刷

 ヴィクトル・タケオビッチ・オキタ――それは警視庁公安部の倉島には忘れられない名だった。
 かつてKGBに所属し、日本とロシアのハーフで見た目も日本人に近いことを利用して日本で諜報活動を行っていたヴィクトルだが、4年前に再び日本に潜入、暴力団組長を殺害し、その後足取りがつかめなくなっていた。

 そのヴィクトルが、ロシア人貿易商と連れ立って本名で入国したという。そしてその貿易商と接触した外務省の役人が急死。その死に方はKGBが使った手口によるものと酷似していた。ヴィクトルと謎の貿易商を追って、倉島はモスクワへ飛ぶ――。

 てな感じでサクサク読めて、前半は結構スリリングで面白かったのだが、後半は次第に失速した感があり、結論としては可もなく不可もなし。カバー裏のあらすじには「アクション・ノヴェルの傑作」などと書かれているが、これで「アクション」はないだろう。

 ところで「4年前の事件」がなかなかに気になる描かれ方をしているのだが…その事件を書いたのが『曙光の街』であり、これはその続編なのだということを、感想に書く段になって知ったのであった。アイタタ。

【今野敏】ST 警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル 4

 今野さんのシリーズ物としてはしばらく安積班シリーズを読んでいたが、久しぶりにSTシリーズに帰ってきた。第二期シリーズ、別名「色シリーズ」第二弾は「赤の調査ファイル」、つまり赤城左門が主役である。

ST警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル (講談社文庫)講談社文庫 2006/8/11 第1刷発行

 インフルエンザの処方をされた男性の容態が急変、搬送先の大学病院で死亡する。医療ミスを訴えたものの民事裁判で敗訴した遺族が刑事告訴をしたことで、STが捜査に乗り出すことになる。

 死亡した男が搬送されたのは、奇しくも赤城が研修医をしていた京和大学病院だった…。

 捜査の過程で明らかになる、一匹狼で女性恐怖症の(はずの)赤城の過去は結構意外だったりするが、結末もまた意外性のある医療ミステリーに仕上がっている。その反面、これまでのリーズ作品と比べて「ST色」が弱いが、十分に面白い。

 さて次は「黄色」か…と思ったが、別の今野作品二冊が長いこと積読状態なので、これを片付けないとな。そういや、今読んでるの(『白夜街道』)も今野さんだったっけ。(^^;

【今野敏】心霊特捜 3

 垣根さんに続いて、今度は今野さんが「食道に潰瘍ができてしまい、水を飲んでも痛いという状態になってしまい」入院中です。もっとも入院9日目にして「毎日、漫画の一気読みをしています。なんと、幸せ」だそうですが。(^^;

双葉社 2008/8/25 第一刷発行

 タイトルからして分かるように系統としては『ST』の近い。心霊現象が絡む事件を担当する神奈川県警本部の「R特捜班」(Rは「霊」を意味する)の4人のメンバーと、彼らの連絡係であり語り手となる岩切大悟がレギュラーの連作短編が6話。

 だが、『ST』のメンバーがそれぞれに異なる能力を持ち、かつそれが「ありえね〜!」というものであるからこそ面白いのに対して、R特捜班の面々はキャラこそ違え、その能力には(紅一点の比謝里美巡査にはいささか異なる能力があるものの)似たり寄ったりの感がある。

 ここに大悟が加わって、ほんのりユーモラスな味を醸し出しているのは、意識して『ST』とは違う色を出そうとしてのことだろうか。こういうテイストの作品は、少なくとも今まで読んだものには無かったな。

 ただ今野さんの作品を読んだことのない人には、オススメしたいとは絶対に思わない一冊かな…って、死人ならぬ病人に鞭打つようなコメントでごめんなさい。(^^;

『隠蔽捜査3』完結――小説新潮 2008年 10月号

小説新潮 2008年10月号 垣根さんが休養ですべての雑誌連載が休載中、残る楽しみは…と思った矢先、その残る楽しみの『乱雲―隠蔽捜査3』が終わってしまいました。もともと「短期集中連載」ということでしたが、よもや5ヶ月で完結しようとは。

 毎月のページ数は他の連載に比べて多かったものの、(初回は100枚をオマケしてもらって)トータル470枚らしい。それでも一冊にはちと短いと思うのだが、これに加筆をし、さらに外伝の『試練』30枚分を加えて…ということになるのかしらん?

 ちなみにタイトルの「乱雲」は、捜査現場に立ち込める…というよりも、竜崎の心模様を表したもの、といった内容になってます。

小説トリッパー 2008年秋季号 さて、『隠蔽捜査3』は終わったが、10日ほど前に出た「小説トリッパー」2008年秋季号から『天網―TOKAGE2』が連載開始です。ぶっちゃけ一作目はいまひとつな出来だったが、今度は楽しませてくれるかな。残念ながら近くの図書館には置いていないので本になるまで待ちます。(^^;

【今野敏】神々の遺品 3

 シリーズ作品の多い今野さん。これも今のところわずか2冊ながらシリーズ物である。

双葉文庫 2008/7/10 第3刷発行

 冒頭、米国国防情報局特殊任務責任者のジョーンズ少将が国防長官の依頼でシド・オーエンなる人物と会う、というくだりから物語は始まる。シドはオーパーツを研究する「セクションO」なる研究機関の責任者であり、そのセクションOの秘密を守るための実働部隊を組織することをジョーンズに要求する。

 それから数年後、所変わって東京では、主人公の石神達彦の探偵事務所に、ある男性を探して欲しいという依頼が舞い込み、石神はその男のアパートを訪れる。しかし、居合わせた刑事に連行された石神は、連れていかれた警察署で知り合いの刑事から、捜し求める男が殺人事件の重要参考人であることを知らされる。その事件の被害者は、著名なUFOライターなのだという…。

 「宇宙と人類の歴史を紐解く、超伝奇ミステリーの黄金傑作!」というのはいくら何でも大げさにすぎるが、古代文明だの火星のピラミッドだの、その手の話が好きな人なら、結構楽しめるだろう。
 米国がイラクにこだわる理由、そしてSDI構想の真の狙いとは、さらに『ディープ・インパクト』や『アルマゲドン』といった映画が製作された目的は…なんて話は失笑すれすれだが面白い。

【今野敏】虚構の殺人者―東京ベイエリア分署 4

 『二重標的(ダブルターゲット)』に続く第一期安積班シリーズ第二作である。なぜかハルキ文庫では三番目の刊行になっているが、ここは発表順にこだわってみた。

ハルキ文庫 2008/2/8 第三刷発行

 ベイエリア分署の管内でテレビ局プロデューサーの落下死体が発見される。捜査に乗り出した安積たちは、現場の状況から他殺と断定し、容疑者をあぶり出す。しかし、その人物には鉄壁のアリバイが――。

 《小説というのは、読み終えるまでどんな内容であるか分からない、結果の見えない特殊な形態の商品だ》 《商品価値を見きわめるための重要な要因として、作家の信用度と名前を高めなければならない》

 これは解説の関口苑生氏が、かつて著者が語った忘れられない言葉として紹介しているものである。関口氏はこれを、「この作家の本なら間違いはない、どんな作品でも安心できて、不見識で購入していい。(中略)その作家の新刊が出ると、無条件で買ってくれる読者を開拓するべく、自らを研鑽していこうという」姿勢であると解説している。

 本シリーズも間違いなくそういう著者の姿勢が表れた作品であると思う。手堅い面白さがある。ただその手堅さには、ともすればマンネリになりかねない危うさも潜んでいる気がする。なので、次作を読む前に、久しぶりに「STシリーズ」でも読んでみようかと思っている。

 ともあれ、ほぼ一年前に『隠蔽捜査』を読んで以来、おいらにとって今野敏は、まさしく新作が出ると、無条件に「読みたくなる」(「買う」のではなく「借りる」のだが (^^;)作家の一人となったことは間違いない。

【今野敏】ビート ―警視庁強行犯係・樋口顕― 4

 祝 『果断―隠蔽捜査2』 第21回山本周五郎賞&第61回日本推理作家協会賞受賞!

なんだけど、後者は分かるとして山周賞ってのはどうなのよ?と思って調べてみると、「すぐれた物語性を有する小説・文芸書に贈られる文学賞」ということで、なるほど納得である。

 一作目の『隠蔽捜査』では吉川英治文学新人賞受賞。となれば次も期待してしまおうというものだが、第三弾『乱雲―隠蔽捜査3』は小説新潮6月より短期集中連載開始である。

 前置きはこれくらいにして、本書『ビート』もシリーズ物であり、警察小説である。一作目の『リオ』は『隠蔽捜査』の次に読んだ今野作品だったこともあってかビビッとくるものが無く、「このシリーズはパスだなぁ」なんて書いたのだが、少し前から書店に平積みされているのを見て、実は何だかとっても気になっていた。

新潮文庫 2008/5/15 二刷

  ではあるのだが、『リオ』のことがあって買おうか買うまいかうじうじしていた。そこへ通りすがりのo-tさんから「今野作品の中でもベスト5に入る」というコメントがあり…買った。読んだ。面白かった。やっぱきっかけってのは大事だよね。(^^

 主人公はシリーズ名にもなっている警視庁強行犯係の樋口顕―…と言いたいところだが、本書の面白さは、その樋口が主人公でないところにあるような気がする。(^^;

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