トップページ » 水原秀策
水原秀策

【水原秀策】黒と白の殺意 3

 第3回『このミス』大賞の大賞受賞作『サウスポー・キラー』を読んだ際、「秀策」というペンネームはひょっとして…と思って調べたら第二作は囲碁ミステリーだった、ということを思い出し、図書館で借りた。

宝島社 2006/12/18 第 1 刷発行

 主人公・椎名弓彦は「殺し屋」の異名を持つ天才プロ棋士。一勝三敗で迎えたタイトル防衛戦の第五局、打ち掛けとなった第一日目の夜、対局場のホテルの庭園を散歩していた弓彦は、日本囲碁協会理事であり今回の対局の立会人でもある大内九段の死体を発見する。

 その後別件で逮捕された弟・直人に殺人容疑がかけられていることを知った弓彦は、直人の勤める会社の経営者・桐山千穂と協力して事件の真相に迫る――。

 調査を進める過程で暴かれる日本囲碁協会(これは架空の団体)の不正、この不正の裏付けとなるデータにかかったガードのカラクリが最も囲碁ミステリーっぽいところ。ただ碁を知らない人にはチンプンカンプンだろうと思うのだが、いくつかのブログを見た限りでは、作品自体の評価は悪くないようだ。

 ただしこれも概ね共通した意見のようだが、殺人事件の動機となった背景というかある事実は、なんだかなぁである。囲碁用語で言えばとっても「筋ワル」「味ワル」である。前作の主人公・沢村とも通じるところのある爽やか&ちょっぴりハードボイルドな弓彦のキャラにもそぐわない。

 なお、「1 布石」に始まり、「2 左右同形中央に手あり」、「3 一間トビに悪手なし」といった具合に、章題――目次は無く、章としてはかなり短いので節と言う方が妥当だろうけど――には囲碁の格言や囲碁用語が付いている。碁を打たない人にはさっぱりだろうが、この辺りも囲碁ミステリー…と思ったのだが、最初の「布石」はともかく、それ以降はどう考えても相当に直感的に、さもなくば適当に付けているとしか思えない。

 とりあえず囲碁好きにはオススメか。弓彦のニックネームもそうだが、彼の師匠・蒲生は実在の棋士を思い出させる(年配の碁好きでないと分からないかもだが)。ちなみに本記事の冒頭部分も碁好きでないと意味不明かも知れないので、蛇足ながら書いておくと、「秀策」というのは江戸時代の碁の大名人である。

【水原秀策】サウスポー・キラー 4

 第3回『このミス』大賞の大賞受賞作。第1,2回の受賞作6冊はすべて読んでいるが、これまでで一番、大賞に恥じない面白さだった。

宝島社文庫 2007/2/15 第2刷発行

 主人公は人気プロ野球チームの若手ピッチャー沢村航(わたる)。ある日、彼が暴力団と関係があって八百長試合をやろうとしているという告発メールが、球団とマスコミに送り付けられる。いわれない誹謗で自宅謹慎、さらに二軍降格の処分を受けた沢村は、自らの潔白を証明すべく調査を開始する!

 沢村を陥れようとしたのは誰か? その正体が分かってしまった人もいるかも知れないが、私はさっぱりでした。が、分かった瞬間にタイトルの意味も含めて納得。

 沢村のセリフにはかなり笑える。が、決してコメディではなく、またシリアスになり過ぎず、かつミステリーっぽさを損なっていないのが良い。ちょっとしたラブロマンスもあり、ラストはおしゃれ。

 ただ、事件がほぼ解決した後、監督との約束を果たすために沢村が取る行動――部分的に陳腐なスポ根モノに成り下がったような、プロ野球をなめてるような――には、いささかテンションダウン。ここでもう一ひねりあったら完璧だった。

livedoor Readerに登録
RSS
livedoor Blog(ブログ)