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ハードボイルド

【大沢在昌】ダブル・トラップ 4

 読了本は50冊を下らないが、まだまだあるぞ大沢在昌。これもそんな一冊。

集英社文庫 2007/3/25 第 33 刷

 政府機関の諜報員(『アルバイト探偵』風に言うと「行商人」)だった加賀哲が罠に嵌められ、裏切り者として組織を追われて5年。高級レストラン・クラブの経営者に納まっていた彼のもとに一本のカセット・テープが届く。再生されたテープから流れてきたのは、かつて加賀とともに組織を追われた同僚の救いを求める声だった――。

 何やら初々しさの漂う作品である。奥付を見るに第1刷は1991年だから、その数年前に単行本が出たとしても『悪人海岸探偵局』よりは後の作品かと思っていたのだが、調べてみるとデビュー2作目。1981年(その年「謙ちゃん」がハードボイルド作家としてデビューした)、弱冠25才の時の作品とのことである。

 決して面白くなくはない。面白くないから売れなかったということではなく、要するにまだまだ無名であり、そんな若造の書いたハードボイルドなんて…てなこともあったんじゃ無かろうか。さあ、次は「新刊」の『標的走路』を読む予定である。

【樋口有介】枯葉色グッドバイ 4

 以前から気になっていた作家なのだが、カバー裏を見るに「青春ミステリー」なぞと書かれているものが多く、いい年してそんな青臭いもん読めるかいと思って敬遠してきた。が、これは「ハートウォーミングな長篇ミステリ」らしい。これなら良いかということで、樋口有介初読みである。

 解説によれば、単行本が出た2003年当時のインタビューで、《これはたぶんデビュー以来最高傑作じゃないかと思う》 と著者自身が語っているらしい。

文春文庫 2007/8/15 第 3 刷

 いきなり「ハートウォーミング」とは程遠い、短いが残虐な殺人シーンから始まる。この事件の犯人探しをすることになるのが、かつての捜査一課の敏腕刑事にして今はホームレスの椎葉明郎。

 椎葉がねぐらとする代々木公園の近くで別の殺人事件が発生し、冒頭の事件を担当している女性刑事・吹石夕子がその現場を訪れて椎葉を見かける。彼女は警察学校時代に椎葉の指導を受けたことがあり、そんなこんなで椎葉を(日当2000円で)雇い、捜査が行き詰まっていた事件を解決に導くというお話。

 椎葉はハードボイルド…とはちょっと違う気がする。「ああ言えばこう言う皮肉屋さん」という感じ。だが悪くない。それに劣らず夕子のキャラが良い。上司がある刑事のことを 《私とちがって尻の穴の小さい男でねえ》 と言えば、《それならわたしが指をつっ込んで、尻の穴を大きくしてあげましょうかね》 ときたもんだ。

 で、どこが「ハートウォーミング」かというと…その点に関しては、ぜひ本書をお読み下さい。(^^;

 久しぶりの勝手にキャスティングは、椎葉明郎は目一杯ヒゲを伸ばしてちょっと長めの髪をボサボサにした竹野内豊、吹石夕子は田中麗奈でどうでしょ。

【原リョウ】愚か者死すべし 4

 近いうちに図書館で借りるつもりでいたところ、思いのほか早く文庫落ちした。『さらば長き眠り』から実に9年ぶりの新・沢崎シリーズ第一弾である。ハードボイルドはかくあるべし。

愚か者死すべし早川文庫JA 2007/12/15 発行

 前作から9年、これまでと同様にそれだけ沢崎も齢を重ねているとすれば、既に50代後半と思われるが、沢崎未だ健在なりである。

 物語の方は、頭の悪いおいらでもこんがらがらない程度に二つの事件がほどよくからまり、結末もそこそこ意外性あり。山田正紀の「オペラシリーズ」に登場する〈検閲図書館〉黙忌一郎を思い起こさせる人間離れしたじいさんが出てきたりして、楽しませてくれる。

 レギュラーの錦織はパリの国際会議に出席しているという設定で、本編には直接は出てこないのは寂しいが、巻末のショート・ストーリーにはしっかり登場してくるあたりも心憎い。

 ところで前作からの9年間、いったい著者は何をしてしていたのかというと、以下に「後記」の一部を引用する。
著者は第二期の新シリーズを書くにあたって、ただひたすら、それら(注:第一期長篇三作のこと)より優れて面白い作品を、それらより短時間で書くための執筆方法と執筆能力の獲得に苦心を重ねておりました。本作がより優れて面白い作品になっていることに、読者のご賛同を得られれば、欣快のいたりであり、短時間で書くことができたことは、本作につづく新シリーズの第二作、第三作の早期の刊行をもって証明するつもりです。
 ちなみにこれが書かれたのは、単行本の出た2004年の秋。「優れて面白い作品」になっていること」には十分賛同できるのだが、はてさて第二作はいったいいつ出ることやら。(^^; 現時点で沢崎は還暦を過ぎていると思うのだが…。

【東直己】探偵はバーにいる 2

 病み上がりレビュー第一弾は最近新刊が出た「ススキノ探偵シリーズ」。かなり前に「日本推理作家協会賞受賞」というコピーに惹かれて衝動買いした『残光』が東直己の初読み作品だが、このシリーズはずっと気になっていた。

 シリーズ物とあればやはり一作目から読みたいところだが、さほど古い本でもないのにかかわらず、これが意外と置いてない。ようやく見つけた時には、『残光』を読んでから実に4年の月日が過ぎていた(半分以上は忘れていた、というのが実態ではあるけど (^^;)。

早川文庫JA 2005/3/15 七版
 結論から言うと、おいらの好みに合わず、あきまへん、期待外れ。

 主人公はススキノで便利屋をなりわいにする28才の〈俺〉(名前は明らかにされない)。腕っ節は強いが部屋の中はめちゃくちゃの片付けられないED(注:作中では「イ○ポ」という用語が使われている)野郎。これでハードボイルド気取られてもなぁ。

 しかも身長175cmで体重80kgほどらしく、ここで思い浮かんだパパイヤ鈴木(年も体重も全然違うんだが)が頭から離れなくなってしまい、もうダメ。

 今回〈俺〉が依頼されるのは人探し。これに殺人事件がからんではくるのだが、ほとんどススキノのごく限られたエリアの中で話が進み、出てくる人物は何やらみんなつながってるみたいな感じ。ある意味リアルだが、何だか地味。

 この点は解説によれば、次作以降は徐々に主人公が関わる領域が広がっていくらしいのだが…ごめんなさい、このシリーズはパスです。

【大沢在昌】亡命者ザ・ジョーカー 2

 3年ぶりのシリーズ第二弾。前作『ザ・ジョーカー』は短編集で、次はぜひ長編で読みたいと思っていたのだが、今回も短編集である。

講談社ノベルス 2007/9/6 第 1 刷発行

 着手金は100万、仕事は「殺し」以外のすべて。根城にする六本木裏通りのバーに持ち込まれる難題を解決するトラブルシューター・ジョーカーの物語が5編。

 いかにも大沢在昌的なダーク&クールなヒーロー…だったはずなのだが、まったくもって物足りない。ワクワクもハラハラもドキドキもほとんど感じないままに読了。

 佐久間公シリーズは終わり、隆&涼介親子は帰ってきたと思ったらどこへ行ったのか、残るは鮫、お前だけなのか〜? 日本推理作家協会理事長の奮起を期待する。

【荻原浩】サニーサイドエッグ 3

 動物探しを得意とする私立探偵・最上俊平が活躍する『ハードボイルド・エッグ』の続編である。図書館納入直前に予約を入れられたので、非常に良い状態で回ってきた。畳と何とかと本は新しい方が良い。

東京創元社 2007/7/31 初版

 今回こそダイナマイト・ボディの秘書が登場し、前作で俊平が引き取ることになったチビ(という名の小さくはないシベリアンハスキー)が相棒…という展開になるかと思いきや、残念ながらその期待は叶えられず。

 物語は一匹のロシアンブルー(ネコ)を探すことにほぼ終始する。なのでネコの生態についてかなり詳しい描写があり、「これを読めばあなたも三日でネコ探しの名人に」とでもサブタイトルを付けたいくらい。

 序盤の犬探しのエピソードが終盤にもからんでくるあたりは無駄が無い。デビューして間もない頃の前作に比べてこなれた感じはするが、期待通りの出来ではあっても期待以上の面白さでは無かったかな。

 俊平がいつ何時もめげずにハードボイルドしてるのは、とってもナイスである。さらなる続編を期待させるようなラストであり、ぜひ次回作こそはダイナマイト・ボディの秘書を…。(^^; ゆで玉子、玉子焼きときたら、次は「スクランブル・エッグ」か?

 ところで前作からずっとなのだが、どうにも俊平のキャスティングが決まらない。ぱんどらの本箱のぱんどらさんの(前作の)妄想キャスティングは劇団ひとりということで、試しに演じさせてみたのだが、残念ながら早々に降板頂いた。ユーモア路線を強調するならこれもありかとは思うのだが。

 候補としては柏原崇、稲垣吾郎、キムタク、谷原章介とかいろいろ考えたのだが、いずれも年齢的にいまいちフィットしないし、イケメンにすぎるような。もうちょいガタイが良くてタフなイメージがあるんだけどな…。

【原リョウ】さらば長き眠り 3

 前作『天使たちの探偵』から実に5年ぶりの《沢崎》シリーズ第四弾、1996 年版このミス第 5 位の作品。

ハヤカワ文庫 2005/11/15 2刷

 400日ぶりに東京に帰ってきた沢崎は、元高校野球選手の魚住から調査を請け負う。11年前、夏の甲子園での八百長試合疑惑が発端で、彼の義姉が自殺した真相を突き止めて欲しいというのだ。調査を開始した沢崎は、やがて八百長事件の背後にある驚愕の事実に突き当たる――。

 往々にしてシリーズ物の主人公は年をほとんど取らないように思うが、本作では過去の事件が 6 年前、4 年前の出来事として語られており、つまり沢崎は確実に年を重ねている(ちなみに、ちょうど現在の私とほぼ同年齢のはず)。そのせいか、あるいは立て続けにシリーズ本を読んだために麻痺してしまったか、沢崎のセリフにかつてのキレが無い。

 また過去の長編二作でもそうだったが、かなり最後の方まで〈皆目見当がつかない〉みたいな雰囲気なのに、章が変わったとたん沢崎が「犯人はお前だ」みたいなことを言い出し、「実はそうなんです云々」と犯人もしくは重要人物がとうとうと真実を語り始めるみたいなパターンで、さすがに三回続くとこれは頂けない。

 前作からリアルタイムに 5 年の時を経てこの本を手にしていたなら、もっとありがたみが増したかも知れないが、ここはいつか読むだろう『愚か者死すべし』に期待して厳しく評価する。

 ところでその『愚か者死すべし』、《さらに》長き眠りを経て、単行本が出たのが 2004年。《新・沢崎シリーズ》という触れ込みなのだが、沢崎はいよいよ藤竜也が似合いそうな年になっているはず。大丈夫か沢崎? ちょっと不安…。



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