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泣ける話

【映画】おくりびと 4

 ひ・さ・し・ぶ・りーの映画である。この三ヶ月、何だか映画を見に行く気になれなかったのだが、これはずーっと前から楽しみにしていた。なぜなら!――広末が出るから。(^^

 念願のチェロ奏者となったのも束の間、オーケストラ解散の憂き目にあい、大吾(本木雅弘)は妻の美香(広末涼子)を連れて生まれ故郷の山形に帰ることを決意する。そして好条件の(ほとんど詐欺まがいの)求人広告につられて就いたのは――納棺師という職業だった。

 旧友や妻にさえ「あんな仕事」と蔑まれながらも、いつしか納棺師という仕事に誇りを見出していく大吾。そして最初は「汚らわしい」とまで思った夫の仕事を目の当たりにした美香は…。

 大吾、そして美香の心の移り変わりを一切の台詞を排除して表現しているのが素晴らしい。結末間近の「夫は納棺師なんです」という美香のひと言に、一度は危機に陥った夫婦の絆の強さが表れている。

 序盤は案に反して結構笑える。しかし、美香が大吾の仕事を見直すきっかけになったある人の納棺の場面は…泣けた。(T^T) 本の感想に「泣ける」と書いても、実際に涙を流すなんてことはほとんどないのだが、この場面は不覚にも涙がこぼれた。そしてラストも。

 ただ、エンド・クレジットのあれは…劇中に出てきた業務内容紹介のDVDを見るようで、いささか興醒め。それから、広末ファンには5年前のつかこうへい演出の芝居以上に、ショッキングなシーンがありましたねぇ…ということで、広末ファン目線の感想としては★4つです。(^^;

【五十嵐貴久】For You 4

 『相棒』に続いて新本をゲットしたのだが、急遽実家に帰らねばならなくなり、数ページ読んだだけで泣く泣く返却。だが10日ぶりに戻ってきてチェックしたところ、何と市内に5冊しかないのに貸出可になっているではないか。ただし予約枠はいっぱいだったので、翌日曜日の朝再度チェックした後、電車なら一駅のいつも行く図書館のも一つ先の小さな図書館へ自転車を飛ばした。そんな苦労(でもないか)が報われる面白さだった。

祥伝社 2008/3/20 初版第 1 刷発行

 主人公は映画雑誌の編集部に勤める佐伯朝美、24歳(名前だけをボールドにしているのには当然訳があるのだが、それは読んでのお楽しみである)。母のように慕っていた叔母の冬子をくも膜下出血で失くしてひと月、冬子のマンションの整理をしていた朝美は、冬子の学生時代の日記を見つける。

 第二章以降、冬子の高校・大学時代のエピソードと、来日を控えた韓国の若手スターのインタビューの準備に奔走する朝美の話が交互に語られる。親子ほど年の違う二人の女性の話が最後にはどうなるのか、途中までは先が読めなかったのだが…。

 ある程度は予測はしていたし、冬子の物語はありがちな(フィクションとしては)べたな展開と言ってもいいくらいのものなんだけど。うーん、ミステリーではないのだがちょっとやられた感じ。読み終えたその日にちょうど50歳の誕生日を迎えたおやじとしては、声を大にして面白い!と言うのにはいささか抵抗はあるけれど。(^^; とっても爽やかなラストだった。おいらは泣かなかったけど、ほろりとする人もいるだろうと「泣ける話」にカテゴライズしてみた。

 ただ…どうにも年が…合わないよなぁ…。ミステリーではないから細かいところは目をつぶるべきかと思いつつ、やっぱりこれは減点対象、ということで★四つです。

 ところで章題が以下のようになっている。

    一章 MY MEMORIES OF YOU
    二章 SPARKLE
    三章 BLUE MIDNIGHT
    四章 永遠の FULL MOON
    五章 STORM
    六章 潮騒
    七章 YOUR EYES

 映画か歌の名前だろうと当たりを付けて調べてみると、タイトルの『For You』を含めてすべて山下達郎の曲名らしい。できればすべて横文字にこだわって欲しかったな。

【乃南アサ】しゃぼん玉 5

 久方ぶりの乃南アサ、数少ないお気に入り女性作家である。

新潮社文庫 2008/2/1 発行

 伊豆見翔人、23歳。三浪してようやく入った大学にも行かずに、自転車やバイクで通行人のバッグをひったくる、そんなことを繰り返していた無軌道な若者が、ひょんなことから宮崎――ちなみに翔人は、宮崎が九州にあることも知らないようなアンポンタンである――の山奥で、老婆と二人暮しを始めることになる。

 《自分は生涯、しゃぼん玉のように、ただ漂って生きていく。そしていつか、どこかでパチンと弾けて消える。それだけの存在のはずだ》 と思っていた翔人だが、老婆をはじめ村の人々と触れ合ううちに改心していく…と、ビルドゥングスロマンというのもはばかられるような、下手をすれば陳腐な話になりかねない、そんな物語である。

 序盤は盛り上がりも少なく、ひょっとして上に書いたような陳腐なストーリーなのかぁ?と思いつつ読み進める。だが、そこは乃南アサのうまさゆえか、最後は、年とともに弱くなった涙腺を大いに刺激された。(T^T)

 Amazonレビューを見たところ、思った以上に評価が高いのに驚きつつも、なんだかホッとした、というのはちょっと大げさか。勧善懲悪もツボにはまるが、こういう話もやっぱり日本人の、いや人の心を震わせるのである。

 読み終わったのは電車の中、あくびをするふりをしてごまかしました。(^^;

【東野圭吾】赤い指 5

 『使命と魂のリミット』、『夜明けの街で』とも残念ながら「このミステリーがすごい! 2008年版」ではBEST10入りならずだったが、本作は2007年版第9位、久々の泣けるミステリーであった。まだ感想をアップしていない本が4,5冊あるのだが、この感動が冷めぬうちに書いてしまおう。

講談社 2006/7/25 第一刷発行

 認知症の母親と同居する前原昭夫・八重子夫妻。中三の息子が7歳の少女を殺めてしまう。息子に甘い八重子の説得に折れた昭夫は、事件隠蔽のために少女の死体を近所の公園に捨てに行く。しかし警察の捜査が進むにつれ隠し切れないと悟った昭夫は、恐ろしい計画を思いつく――。

 所轄は練馬署、といえばご存知加賀恭一郎の登場である。従兄弟でもある本庁の松宮と組んで捜査に当たることになる。そしてついに計画を実行に移した昭夫からの連絡を受け、二人は前原家へ向かう。

 先輩刑事の小林から 《しっかり、加賀君のやり方を見ておくんだぞ。おまえはこれから、すごい状況に立ち会うことになるからな》 と言われる松宮。さらに加賀が松宮に言う。 《刑事というのは、真相を解明すればいいというものではない。いつ解明するか、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ》。

 当然のことながら加賀は昭夫の計画を看破して真犯人に迫る。うん、やっぱ加賀君はすごいね、でも★四つだなぁ…と思った後のラスト10ページと少し、小林の言う「すごい状況」を目のあたりにすることになる。思わず泣ける。

 さらにその後のしめくくりは事件とは関係の無い話なのだが、ここでまた…一度ならず二度までも泣ける。もちろん泣けりゃいいってものではないけれど、ここは迷わず★一つアップである。それにしても東野よ、あんまり同い年のおっさんを泣かすなよぉ…。

 ところで本作は、もともと「小説現代」に掲載された短編で、『嘘をもうひとつだけ』に収録されるはずだったものを、書き終えた時点でこれは短編じゃないと思い、長編に書き改めたものなのだそうだ。実は『嘘をもうひとつだけ』は初めて読んだ東野作品なのだが、短編集だったこともあり、個々のお話はおろか、加賀恭一郎が出ていたことすら覚えていないのである。いつか再読してみようと思う。

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