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エッセイ/対談

【東野圭吾】あの頃ぼくらはアホでした 5

 「秋の東野圭吾強調週間」のつもりがずいぶんと間延びて「冬の東野圭吾強調月刊」になってしまったが、実は読み終えたのはかれこれ2週間近く前のこと。

 お気に入り作家の書いたものなら何でも読みたいということはないが、東野のエッセイは『さいえんす?』、『ちゃれんじ?』と面白おかしく読めたので。加えてブックオフで例によって105円だったということもある。(^^;

あの頃ぼくらはアホでした (集英社文庫)集英社文庫 2004/6/6 第13刷

 最初に断っておくと、この評価は東野と同世代か「東野命!」を標榜して憚らない人(いるのか?)のみを対象としたものであり、裏を返せばそれ以外の人にはオススメしない、ということである。

 内容はというと、小学校・中学校・高校・予備校、そして大学を出て就職するまでの、東野の文字通り「アホ」の限りが書かれている。
 とうに時効だからにしても、スキーの費用を捻出するために万引きしただの定期券を偽造しただの、無謀にも慶応大学を受験したものの試験中(問題がさっぱり分からず)暇だったので問題用紙を配ってくれた女性の尻を見て勃起しただの、何とたわいもない話ばかりであることか。

 まあ、そんなたわいもないことを面白おかしく書けることも一つの才能であり、そんなものでお金が稼げてしまうことは羨ましい限りであり、それを(たとえ105円とはいえ!)買って面白がっている自分は…と思うと、ちょっぴり悲しくなったりもする。

 ただ、単行本が出たのは13年前のこととはいえ、遡ること数十年も前のことを、そんなに細かいところまで覚えているものか、というのは素朴な疑問である(ちなみに東野は早生まれなので学年こそ違え、おいらは同い年)。
 絶対多少は作ってるよな。もっとも記憶は作られるもの、という側面もあるので、それは決してウソを書いていることではないのだろうけど。

 さて、大学を出て志望する会社に就職した東野だが、最後に 《この時点では、まさか数年後にアホなことをやらかして、この会社から尻尾を巻いて逃げ出すとは、夢にも思っていなかった》 と述懐している。
 してみると、われわれが今、彼の作品を楽しめているのはアホのおかげなのか。うーん、なんだか複雑な気持ちだぞ。

【大森望・豊崎由美】文学賞メッタ斬り! 5

 この本は猛読酔書で知った。普通なら対談集などあまり食指の動かないところだが、かきつねえさんが「文句なしにおもしろい!」と絶賛するので興味をそそられた。

 で、読んでみた感想は…文句なしにおもしろい! (^o^)/ 拾い読みするつもりだったのが、しっかり読破してしまいました。

ちくま文庫 2008/1/10 第一刷発行

 直木賞、芥川賞をはじめ名だたる文学賞(あるいは聞いたこともない賞まで)を俎上に載せてメッタ斬り! さらにその選考委員までをも、斬って斬って斬りまくる! ここまで書いていいのか!? その恐れを知らぬ傍若無人ぶりには、読んでいる方が心配になるほどである。

 個人的に特に面白かったのは、「ROUND4 選考委員と選評を斬る!」。この後も何度か出てくるのだが、《ジュンちゃんは下半身担当、下半身御意見番なんですね》 と、某ベテラン作家(名前は書かずともお分かりだろう)をこき下ろす。

 東野圭吾がなかなか直木賞が取れなかったのはこいつのせいだー!と思っているファンの皆さんは、ぜひこれを読んで溜飲を下げましょう。(^^

 各章(ROUND)の最後に「文学賞の心得」という、その章を総括したひと言があるので、いくつかを紹介しておきたい。

 文学賞の心得――【一】 芥川賞は目利きじゃない。
 文学賞の心得――【ニ】 直木賞は、賞を与えるタイミングを間違えている。
 文学賞の心得――【三】 文学誌新人賞は、宝くじを買うつもりで読め。
 文学賞の心得――【四】 文学賞の選評は、選考委員にキャラ萌えして味わえ。
 文学賞の心得――【十ニ】文学賞は作家のためにある(読者のためにあるのではない)。
 文学賞の心得――【十三】文学賞は、いっそ博打にせよ。

 単行本が出たのは4年前で、「ROUND EX 第百三十回 芥川賞・直木賞受賞結果を緊急対談」が最後になっているが、それ以降のメッタ斬りはこちらをご覧下さい。本の方はもうじき「2008年版」が出るらしい。

【大沢在昌】エンパラ 新装版 旬な作家15人の素顔に迫るトークバトル 5

 対談集である。普段ならあまり食指の動くところではないのだが、以下の4つの理由で購入。
  1. ホストが大沢理事長であること
  2. 10年以上前の本だが福井晴敏との対談が新たに収録されたので
  3. 「ミステリー・カレッジ」の余韻に浸れそうな気がして
  4. 『明日の記憶』と並んで平積みされていて目についたから
光文社文庫 2007/11/20 初版 1 刷発行

 タイトルの「エンパラ」は「エンターテインメント・パラダイス」の略。名は体を表すで、とっても楽しい一冊だった。上に書いたように底本は1996年の発行なので、サブタイトルの「旬な作家15人」というのはいささか眉唾ではないかとも思ったのだが、以下に紹介する目次を見れば、今まだ「旬」な作家さんたちが多いことがお分かりだろう。
   船戸与一は石持て追われる夢を見る
   京極夏彦もまた、妖怪だった
   藤田宜永は旦那に憧れている
   瀬名秀明は恐竜の交尾が見たい
   宮部みゆきはキツネつきである
   北村薫は冒険小説家である
   綾辻行人は禁欲主義者?
   真保裕一はケバさに目覚めた
   小池真理子は司会も上手い
   白川道は自分に期待している
   志水辰夫は不器用である
   北方謙三は二十二の時からスターだった
   内山安雄は濃い取材をしている
   浅田次郎は読者に福音を授けたい
   福井晴敏は盛りだくさんを愛している

 この目次(=各対談のタイトル)を対談中に大沢さんが決めるというのも面白い(多少いい加減なものもあったりするが (^^;)。これを見ただけで読みたくなりません?

 タイトルページに大沢さんとのツーショット、中にゲスト作家の写真が挿入されているのだが、対談が行われたのは1995〜1996年にかけて(福井晴敏のみ2003年)なので、当然皆若い。京極さんは…えっ?これがあの京極さん? 今や好々爺の感のある北村さん…髪が黒い! 北方さんは…あんまり変わんないみたい。(^^

【東野圭吾】ちゃれんじ? 4

 お気に入りの作家のものなら何でも読むということでもないが、昨年子供と書店に出かけた際、普段滅多に本など読まない次男が何やら立ち読みしているので何かと思ったら『さいえんす?』であった。

 息子に触発されてちょいと読んでみたところ面白そうなので、買ってみた。当然息子より先に読んだ。面白かった。なのでこの本も文庫で出たら読んでみようと思っていた。

 なお、なぜかAmazonでは『さいえんす?』も文庫本の『ちゃれんじ?』もヒットしないので、下の表紙は単行本のものである。

角川文庫 2007/6/25 初版発行

 何にちゃれんじ?するかというと、スノーボードである。もともと学生時代はスキーに親しみ、スノボもかつては「やってみたい」と思いつつもいつの間にか年を取り、「やってみたかった」スポーツとなっていたらしい。

 ところが、《運命(大げさだが)というのはわからない。ある夜、銀座で飲んでいたら、隣の席にいた人物から話しかけられた。私より年上に見えるその男性は、『スノーボーダー』という雑誌の編集長だった》 《これは自分にとって最後のチャンスではないか、と突然閃いたのだ。私はその編集長のM氏に、ぜひスノーボードに挑戦したいのだ、といってみた》。

 かくしてM氏にボードをプレゼントされ、さらに偶然なことに、当時執筆中だった『レイクサイド』の担当女史はかつてM氏の部下でスノーボーダーとしてもなかなかの腕前で、彼女に『レイクサイド』の校了打ち上げをかねたスノーボードツアーというニンジンをぶら下げされ、《その日から『レイクサイド』の執筆に全力を投入した》 東野氏は、予定通りに原稿を仕上げたその翌日にスノーボード初体験を果たすこととなった。

 といったいきさつ『おっさんボーダー誕生秘話』やら、『おっさんスノーボーダー奮闘中』『おっさんスノーボーダーのあくなき戦い』といったスノーボードへのハマリ具合を、2002/3月から2年間にわたって雑誌に連載したエッセイである。

 もっとも当初は、当時まだあったザウスに通いつめたらしいが、基本的に冬のスポーツとなればネタも続かないか、ワールドカップ観戦記やらカーリングにちゃれんじ?して大怪我をした話などもあり。

 また連載されたものとして『ザウスの恋』というエッセイ風味妄想和えの小説、『小説「おっさんスノーボーダー」』というユーモア小説があり、さらに最後は書き下ろしの『おっさんスノーボーダー殺人事件』というミステリーのおまけ付きで、これら3つの短編のいずれにも、東野氏本人が登場するのが嬉しい。

【余談】 以前『容疑者Xの献身』で、東野氏は小説の舞台になっている下町に住んでいるのでは?と書いたが、本書の中に、ザウスまで車で 《うちからだと片道ジャスト30分で行ける》 という一文がある。うーむ、ますます怪しい?

ことば遊びの楽しみ 5

 先週末、こちら(千葉県)ではほんのいっとき雪が降(舞)った。天気予報によると、明日は東京でも初雪が降るかもということだが―

 ♪ゆーきーが降る、荒川区内

 空耳アワーではありません(といっても元歌が分からない人もいるか?)。第一章「日本語とことば遊び ―少ない音、大らかな耳―」の冒頭に紹介されている「駄じゃれ」の一つ。

 この本についてとやかく書くのは野暮な気がするので、章題を列挙するにとどめる。興味をもたれた方はぜひお読み頂きたい。200ページの薄さ(その割に高いのは岩波新書だから?)なので気軽に読めます。

 第二章 文芸のなかのしゃれ・比喩 ―古典に現代小説に、息づく遊び心―
 第三章 若い脳みその中へ ―私のことば遊び遍歴―
 第四章 漢字の感じを忘れるな ―単純な遊び、高度な遊び―
 第五章 なぞの構造 ―二段なぞから無理問答まで―
 第六章 回文という怪文 ―アナグラムは発展途上?―
 第七章 いろは歌は文化遺産だ ―七語調のリズムに乗せて―
 第八章 舌を走らせ早口ことば ―落語・歌舞伎に『マザー・グース』に―
 第九章 ユーモア辞典のすすめ ―目から鱗の“天使の辞典”を―
 第十章 落ち穂拾いから ―折り句、記憶術、替え歌―

岩波新書 2006/7/25 第 2 刷発行 阿刀田高

 話はそれるが、小学校での英語の授業には反対だ。英語を教える前にもっと日本語を教えて欲しい。紋切り型の「国語」の授業を増やせということではない。

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