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笹本稜平

【笹本稜平】ビッグブラザーを撃て! 3

 「笹本稜平」としては『時の渚』がデビュー作だが、本書はその前年に「阿由葉稜」という名前で出した『暗号―BACK‐DOOR』を改題、文庫化したものである。

光文社文庫 2005/1/20 2刷発行

 ソフト開発会社社員の石黒悠太は、目の前で変死を遂げた友人から1枚のディスクを託される。中には、世界最強の暗号ソフト 〈クロノス〉 のプロトタイプが。友人の遺志を継いで 〈クロノス〉 の完成を目指す悠太と家族に、謎の国際的謀略組織 〈ビッグブラザー〉 の魔手が、迫る――。

 「圧倒的なリアリティ! 冒険小説界の大器、衝撃の処女長編!」というのが、カバー裏のあらすじの最後の一節なのだが、冒頭こそ国際謀略小説を予感させるものの、舞台が日本に移ったとたんに、スケールの大きさやらリアリティやらいろんなものがシュリンクしてしまったような印象を受ける。

 (ふとウィル・スミスの "Enemy of the State" を思い出し)いっそアメリカを舞台にした方が、まだしも「一人の会社員が巨大組織の陰謀に立ち向かう!」という点ではリアルであり、ハリウッド映画にしてもそこそこ面白いものが出来上がるのは、と思うのだが。

 身も蓋もない言い方をすると、改題などせず、「幻の処女長編」のままそっとしておいても良かったのではないかと。(^^;

【笹本稜平】太平洋の薔薇 5

 『ワイルド・ソウル』(垣根涼介)とともに第7回(2004年)大藪春彦賞を受賞した作品。そして『ワイルド・ソウル』に勝るとも劣らない面白さ。「ページを捲る手が止まらない。でも読み終えるのがもったいない〜!」、久々にそんなジレンマを感じた作品である。

 ちなみに厚さも『ワイルド・ソウル』並みの上下二巻。そういえば、『亡国のイージス』(福井晴敏、2000年)、『スリー・アゲーツ』(五條瑛、2001年)、『邪魔』(奥田英朗、2002年)、『犯人に告ぐ』(雫井脩介、2005年)と、歴代の受賞作には大作が多い。その点『サクリファイス』はかなり例外的な薄さだな。

光文社文庫 2006/3/20 初版1刷発行

 映画『パーフェクト・ストーム』を彷彿させるカバーには何とも不似合いなタイトルだが、実はこの荒波に翻弄される貨物船の名前が 〈パシフィックローズ〉 なのである。

 40年近い船員生活の掉尾を飾る航海としてパシフィックローズに乗り込んだ伝説の名船長・柚木静一郎だが、スマトラ島から横浜への帰路、罠にはまりハイジャックの憂き目にあう。しかし、海賊たちの目的は積荷でも身代金でもなかった。

 一方、世界一周航海中の超豪華客船 〈スターライト・オブ・シリウス〉 では、船医の藤井が、不治の病に冒され長年船上生活を送っている老紳士レオン・ザカリアンが生涯を賭して守り抜いてきた秘密を知ることとなる。

 そして洋上の二隻から遠く離れたイルクーツクでは、究極の生物兵器 〈ナターシャB〉 が盗み出され、FSB(ロシア連邦保安局)のビクトル・ステパーシンが捜査を開始。NSAのロナルド・フィルモアはCIA時代から10年以上追い続けてきたテロリスト 〈ティグラネス〉 の携帯電話の通話を傍受して色めき立つ。

 ナターシャBの行方は? ティグラネスの正体は、そしてハイジャックとの関係は? さらに海上保安庁から派遣され、パシフィックローズを執拗に追跡するの巡視船 〈かいもん〉 の乗組員たち。果たして彼らは柚木らを救えるのか――!?

 何ともスケールのでかい、面白さてんこ盛りの冒険小説である。さらに、《大沢在昌が目頭を熱くした》 という上巻帯のコピーの通り、ラスト間近のロシアの潜水艦乗りの心意気に、おいらの目頭も熱くなったぞ!

【笹本稜平】時の渚 4

 二週間ほど前のある日、ヒゲを刈ろうと(おいらの場合、ヒゲは「剃る」のではなく「刈る」のである(^^)古新聞を1枚広げたところ、目に飛び込んできたのが警察小説の特集ページ。

 中段に西上心太氏と誰だったか(失念)の対談、上下に『犯人に告ぐ』とか『警官の血』とかの広告があって、そんな中で目に止まったのが『越境捜査』。タイトルは…見たことがあるような。著者は笹本亮平…見たことも聞いたこともない。

 さっそくAmazonとWikipediaをチェック…おお、大藪賞(と略すと、何だか情けない賞に思えるが)受賞作を物しているではないか。しかも垣根君の『ワイルド・ソウル』と二作受賞である。てことはつまり、『ワイルド・ソウル』と同じくらい面白いってことだな。

 なんだけど、その大藪賞受賞作『太平洋の薔薇』は上下二巻であることと、これも面白そうじゃんということで、デビュー作でもあり今はもう無くなったサントリーミステリー大賞の第18回(2001年)大賞・読者賞をダブル受賞した本作を購入した。

文春文庫 2008/2/15 第15刷

 主人公はヤメ刑事で私立探偵の茜沢圭。末期癌に冒された老人から、35年前に生き別れた息子を探し出すよう依頼される。その矢先、刑事時代の上司から、最近起きた殺人事件の犯人のDNAが、ある事件の犯人のそれと一致したとの情報がもたらされる。
 その事件とは、茜沢から妻と子を奪い、彼が警察を辞めるきっかけとなったものだった――。

 となれば、依頼された人探しと過去の事件とが絡みあってくるのであろうことは、容易に想像が付く。問題はどんな風に絡んでくるのかだが、いささかご都合主義的な結末…と思わせて、最後はかなりのどんでん返しである。

 ケガの功名ならぬ「ヒゲの功名」だったかな。(^^ 大藪賞の『太平洋の薔薇』は既に図書館で借りて待機中である。

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