2012年06月15日

サントリーホールでコバケン先生指揮の日フィル定期を聴いてきた.

プログラムは,シューベルトの7番とブルックナーの9番という,いわゆる「未完成」2本立ての渋い内容.その渋さにもかかわらず,コバケン先生の静かな熱気が会場に充満する,熱く,感動的な演奏会だった.

シューベルトの最初の1音を聴いた瞬間,何か熱いものがこみ上げ,じわっときてしまった.オケを聴いて涙が出そうになったのは,昨年6月のカペレのヴェルレク以来.そういえば,これもコバケン先生の指揮だったなぁ.なんだろう,この胸の高ぶりは.うまく言葉にできないけど,そう,私はやっぱりこの人の音楽が好きだなぁ,という実感.目も耳もこの「小林研一郎」という存在に吸い付けられてしまい,ひとときも離れていたくない,そんな感じ.

前半のシューベルトが終わった時点で客席はかなりの盛り上がりを見せていたが,後半のブルックナーはそれ以上だった.

ブルックナー.朝比奈先生のブルックナーを何度かテレビで視聴したけど,いつも途中で挫折,「私にはブルックナーの耐性はないんだな」と思っていたぐらい,ブルックナーについては語るほどの知識を持っていないのだけど,今日の9番は素晴しかった.特に第3楽章.(この言い方が正しいのかどうかわからないが)和声の構築が実に難しい曲だが,それを乗り越えたところにある深く豊かな響き.そして,冒頭のvlnの短9度から始まるユニゾンに代表される厳しい響き.そして複雑な線の絡み合い----ふと,20代の前半にシェーンベルクの「浄夜」を聴いた時に胸に迫ってきた感情がよみがえってきた.この第3楽章のために第1,2楽章があるのだ,と言っても過言ではない気がする.

プログラムノートによれば,今回の演奏会はコバケン先生の「指揮者デビュー40周年記念」と銘打たれていたが,ブルックナーは初めて指揮する作品なのだそう.巨匠になってもとどまる所を知らぬ探究心がそこかしこに溢れ,円熟味が増し深化しているのになおみずみずしい音楽を奏でている.(音楽だけでなく身のこなしも実に若々しいのよね♪ そしてお声もとてもステキ♪)最後にスピーチがあったが,音楽に対して真摯かつ謙虚なコバケン先生ならではの温かいお言葉に再び涙がにじむ.ああ,この人は本当に音楽が,そして日フィルが心の底から好きなんだな.こんな素晴しい指揮者と同時代に生まれ,生で聴けることを幸せに思う.

日フィルはこれまでにも何度か聴いたが,今日は弦の透き通った響きが際立っていた.特に弱音の表現が素晴しかった.

・・・書いているうちにまたブルックナーが聴きたくなった.今度はテ・デウムにしようかな・・・
 


hikarifmhikarifm at 23:21│コメント(0)トラックバック(0)音楽 │

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