猫越山
猫越山 [単行本]

本書は、天城湯ヶ島の出身で、若い時代にアメリカはテキサス州オースチンに留学し、帰国後は短大で教鞭をとりながら翻訳や小説の発表をしていた著者、つまりは私の父、が1971年から2012年の間に発表した小説作品6編を集めた短編集である。

この著者の作品の特徴は3つある。まずは。私小説のような、事実とフィクションの境界が曖昧な内容。本書を読むと、どこまでが著者の真実の姿なのかわからず、困惑するくらいである。

次に、著者の第二の故郷とも言える
アメリカはテキサス州オースチンを舞台にして、アメリカへの憧れと落胆を描いている事。本書の中の作品でも、「庭園にて」「かわあそび」「I♡TEXAS」「ぼくのヒッピー」の4編がテキサスでの話であり、1960年代というアメリカが圧倒的に輝いていた時代にアメリカに留学した著者の羨望と、冷めた視線の両方が描かれている。

最後に、著者
の出身地である伊豆の天城湯ヶ島(映画「わが母の記」の舞台)と、著者が6歳の時に若干37歳で他界した著者の父親に対する思いである。実際、本書中の「メリケン屋敷」と「猫越山」は天城湯ヶ島が舞台になっている(本書のタイトルである「猫越山」も、天城湯ヶ島に実在する山の名前)。また本書の冒頭を飾る「庭園にて」は、実際、謎に満ちていた著者の父親の死亡理由に関するミステリーであり、本書の結びである「猫越山」では著者は自分の故郷で既に幽霊になった著者の父親と再会を果たしていたりする。

極めて私小説的なので、著者を直接的・間接的に知っている方以外には響きにくい内容だが、アメリカに対する羨望など、輝いていた頃のアメリカを知っている方や、60年代にアメリカ留学をしていた方には、共感する箇所も多いかもしれない。

参考までに、著者の他の作品のリンクを貼っておく。


果てしなく美しい日本 (講談社学術文庫)
果てしなく美しい日本 (講談社学術文庫) [文庫]

努力の証―第八代国連事務総長 潘基文物語
努力の証―第八代国連事務総長 潘基文物語 [単行本]
 
雑記帖のアメリカ
雑記帖のアメリカ [単行本]

人物アメリカ史(上) (講談社学術文庫)
人物アメリカ史(上) (講談社学術文庫) [文庫]