愛媛県伊予市双海町
午後6時半
瀬戸内の海はもうすぐ日没です
予讃線の小さな駅をいくつもこえて
「上灘」駅に降り立つと
友人が笑顔で迎えてくれました
遠いところ
ほんとうにきてくれたんだね
はい
あの
お元気でしたか
はい
もちろん
わたしですから
(笑)
久しぶりに会った
彼女の表情は
東京にいた時よりも
心なしか
ふんわりと
やわらかになっていたように
思えました
10年以上はたらいた福祉の仕事をやめ
「田舎の景色のよい場所で
しごとをして暮らしていきたい」
そんなことをあなたはいっていましたね
心と体のケアをする場所
「ゆっくり」と対話しながら
「心の内面に気づいてゆける空間を
つくりたい」
その想い一筋で
動き出した彼女は
願いを形にとうとうしました
今年のはじめに
仕事をやめますと
連絡をくれ
それからは
もう
あっ
という間に
移住する場所を決めてしまい
四国に移り住みましたね(笑)
そう
世間からみたら
無謀と思える行動かもしれませんが
人生には
こんなふうに何者にも左右されず
自分の意志で
思い立つ時が
一度や二度
あってもいいのかもしれませんよね
今、彼女は
双海の役場に通い
お祭りやイベントの手伝いなどのボランティアをしながら
土地の人との絆を
つむいでいっています
何事に対しても謙虚にふるまい、その中で
他人を大切にする気持ちに溢れていれば
夢は叶っていく
それは
けしてひとりではないから
ひとは
かならず
助けてくれるから
夢は
人間と人間が
繋ぎながらつくっていけば
いくほど
楽しいですよね
そしてそれは
それだけの
価値の夢になる
人が本当の意味で
時間にしばられず
集える場所
そんな夢は
ゆっくりと
ゆっくりと
だけれども
彼女なら
確実に
つくっていけるのではないかと思います
双海名物の
「しらす丼」をふたりでほくほく食べ
海に沈んでゆく夕陽を黙ってみつめました
友情ごっこではない友情は
オレンジ色に染まる
波間をみながら
再会されます
こんなときは
無言ではありますが
われわれは
さすがに大人(笑)
ただ
これから進む
道を
互いに
つつみこみながら
遠く
彼方まで
夕日をみつめていました