2015年06月20日

インドの行者4

今、私の目の前にいる行者は、
どうやら釈迦と同時代に生きていたようである。
そして、釈迦をライバル視しているようである。

というわけで、今回は、
釈迦とは一体どんな存在か。
そして、釈迦とこの行者の関係性について
調べてみようと思う。

とてつもなく大きい金色の大仏が目の前に現れた。
私は度肝を抜かした。
この大仏は、あまりにも大きすぎて、
くるぶしから上は雲の上に隠れて見えない。
もちろん顔も見えないし、この大仏が何を考えているか、
どういうことを言っているか、うかがい知ることもできない。
どうしたものか。
と私は考えた。
しかし、どうしようもない。
ここまでか。
と私は諦めかけた。
その時だった。
「もっと離れて見てみよう」
という声がした。
なるほど。
そこで、私は、この大仏から離れるように移動した。
と、ここで不思議なことが起こった。
私がどんなに移動しても、大仏の足は一向に遠ざからない。
これは困った。

そこで私は、ある物語を思い出した。
それは、西遊記の「孫悟空とお釈迦様の話」だ。
今まさに、これと同じ状態になっているようだ。
「さすが、お釈迦様だ」と私は思った。

私は観念した。
私は大仏の、山ほどもある大きな足に向かって、手を合わせた。

さて、いつもなら、私はここで満足して
帰ってしまうのだが、今回は違った。

私の宇宙人の人格が囁いた。
「宇宙からはどう見えるだろう」
なるほど。
と私は思った。
仏法はあまねく地球上に広がっている。
つまり、地球上であれば、どこまで行っても
お釈迦様のテリトリーなので、
お釈迦様にいいようにされてしまうのだ。
それでは果たして、宇宙はどうか。

私は地球を離れ、宇宙に飛び立った。

金色の大きな大仏が、
宇宙空間に浮いているのが見える。
今度は、大仏の全身を見ることができた。
やったぞ。

すると、大仏が静かに、胸の前で合掌した。
合唱した手を離すと、大仏の両手の中に、
ビーチボール大の地球が現れた。
地球と比べて、大仏の大きいこと大きいこと。
私は、改めて、釈迦の偉大さに息を飲んだ。

ビーチボールの地球が、大仏の胸の前で、ふわふわと浮いている。
大仏は、その大きな両手で、地球を抱きかかえるようにした。

すると、その地球の地平線から、太陽が登り始めた。
大仏の頭が、太陽と重なる。
太陽はまるで後光のように、大仏の頭を照らした。
放射状の鋭い光が、私の目を突き刺す。
とても眩しい。

この光景は何を意味するか。
私は尋ねた。
すると、答えが返ってきた。
釈迦の両手が、世界を救い、
 釈迦の栄光が、世界を照らす

これは、そういう構図である。

ははー。
私は感服した。
なるほど、宇宙から見ても、
釈迦の偉大さははっきりとわかる。

しかしながら、うたぐりぶかい私である。
「ちょっと待てよ」と私は思った。
私が今、見ている大仏は、所詮は皆に創られたイメージにすぎない。
この世とあの世の人間が、釈迦という存在に手を合わせ、
信仰の力によって作り出した偶像が、今見ている釈迦なのだ。
だいたい、今までの私の経験上、
神様や仏様などの、人々から信仰を集める存在は、たいへん大きく見える。
釈迦ほどの存在ともなると、地球と同じ大きさか、
それ以上の大きさに見える、ということなのだ。

しかし、所詮これは偶像。
これは幻想だ。
そもそも、幻視で見えているものは、本物ではない。
比喩的なものとして見えてくる場合もあれば、
誰かが書いた絵のように見えてくる場合もある。
もちろん大多数の人間が本物だと思っている偽物なら、
それはもはや本物だといっても差し支えないかもしれない。

しかし、私はそれでは満足しない。
私は騙されない。

私が本当に見たいもの。
それは生前の、この地上を歩いていた
ひとりの人間としての釈迦だ。

すると、とたんに周りが暗闇になった。
その暗闇の中を、ひとりの男がこちらに向かって歩いてくる。
男がこちらに近づいてくるにしたがって、
その姿がだんだんと、はっきりしてくる。

痩せこけた行者だ。
見た目は、釈迦如来立像に似ている。
大きな布を、袈裟のように片方の肩から羽織っている。
それ以外は、何も身につけていない。
肌は驚くほど黒い。
背は150センチぐらいか、やや低め。
何か、ぬらぬら、ゆらゆらとした妖気を感じる。
そして「あまり歓迎されていない」ように感じる。
彼の半開きの目が、カッと見開かれた。
「何か用か!」
恫喝された。
怖い。
彼の目をよく見ると、
白目の部分が黒目になって、
黒目の部分が白くなっている。
なんだこれは。
もっとよく見る。
彼の瞳の中心が赤白く光っている。
私が彼を観察しているように、
彼もまた、私が何者であるか観察しているようだ。
怖い。

彼は人間の姿をしてはいるが、
人間ではないかもしれない。
彼は黒蛇、あるいは黒龍のような存在だ。
ナーガラジャと呼ばれる存在かもしれない。

彼が釈迦なのだろうか。
「ふん!」とそっぽを向かれてしまった。

よくわからない。

とりあえず、この目の前の存在が釈迦だと仮定してだが、
わかったことがいくつかある。
まず、私は前世で釈迦と直接会ったことはない、
もしくは会ったとしても、そこまで親しい間柄ではない。
そして、私は釈迦の直接的な弟子でも、
もちろんなかったということだ。

それ以上はよくわからなかったので、
私は「ありがとうございました」
と言ってその場を後にした。

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インドの行者3

それでは、禁欲と断食には、どんな意味があるのだろう。
彼によると、禁欲と断食には、以下の意味がある。
1、「欲を絶つことが、悟りと解脱の第一歩」
  欲に対する執着は、生への執着を産み、
  生への執着は、悟りと解脱を著しく阻害する。
  ゆえに、禁欲と断食によって欲を断つことが、悟りと解脱の第一歩である。
2、「禁欲と断食で、肉体の機能を著しく制限し、
   精神状態を極限に追い込む必要性がある」

  人間は欲を満たし、快楽を得ることで、現実を正しく認識できなくなる。
  しかし一方で、欲が満たされないと、ありとあらゆる苦痛が生まれる。
  ここで重要なことは、欲を抑制するではなく、初めから欲そのものを無くすことだ。
  欲というものは押さえ込もうとすればするほど、強く湧き起ってくるものだ。
  だから欲など微塵も感じられないほど肉体を極限状態に追い込む必要がある。
  人は殺生の恐怖に震えれば食欲がなくなるし、真理の静寂の前では眠気など吹き飛ぶ。
  覚りの悦びの前では性欲は消え去り、全ては一つという状態になれば独占欲など存在し得ない。
  そのためには禁欲と断食をすることで、肉体の本来の機能を著しく制限し、
  精神状態を極限状態に追い込む必要がある。
3、「己の求道の志がどれほどのものか、神仏に示す」
  真理の探求のための断食は、現代風に言えば、ハンガーストライキだ。
  生身の身体が滅びるギリギリまで、身を痛めつけることによって
  己の守護霊や、神仏を説得するのだ。
  苦行をする行者を見て、守護霊や神仏はこう思うだろう。
 「わかった、わかった。
  お前の固い決意はよくわかった。
  はっきり言って、この方法は邪道だ。
  君がやっていることは、「悟れなきゃヤダヤダ!」と子供が駄々をこねるのと同じだし、
  「悟れなかったら死ぬ!」というのは自殺となんら変わらない。
  しかし、苦行と断食により、何十年もその体を痛めつけ、この世の快楽を一切捨て、
  何度も死にかけるほど真理が知りたいか。
  まあ、そこまでやるのなら、仕方ない、協力しよう」となるだろう。
4、「肉体の底力や験力は、死の寸前で高まる」
 火事場の馬鹿力という言葉もある。
 苦行によって、自ら追い込まれた状況を作り出すことにより、
 肉体の潜在能力を極限まで高める。
 そうすれば、ありとあらゆる超能力が発現する。
 病気にもならないし、食べ物を食べなくても生きていけるようになる。
 空も飛べるし、瞬間移動すらできるようになる。
5、「何事も極めれば、意味がある」
 どんなに無駄に思えるようなことでも、どんなにアホらしいことでも、
 極めれば、それが貴重な経験になる。
 道を極めし者は、死後、天の家族たちに、温かく迎えられるだろう。
6、「自分のためだけでなく、世のため人のためという気持ちがあればなお良い」
 利己的な理由で苦行と断食を行う者は、
 それを利用してやろうという低級霊を呼び寄せるだろう。 
 一方で、個人的な欲望をすべて捨て、
 無私の心で世のため人のために尽くそうという人間には
 無条件の愛と慈悲で協力してくれる存在に寵愛されるだろう。

以上が、禁欲と断食とをする意味だ。


そんなわけで、彼は乞食に身をやつして、各地を放浪した。
このようなことを10年ほど続けた。

彼が40前後の頃。
ある麗らかな日のことだった。

一人の行者が、木の根元で瞑想している。
行者の体はガリガリにやせ細り、骨と皮ばかりだ。
体にはボロ布を一枚をまとっているのみで、
ほかには何も身につけていない。

もしかして、彼は死んでいるのだろうか。
私は彼に近づいて言って、顔を覗き込む。
顔の血色がとても悪い。
その無表は苦悶に歪んでいる。
肩を上下させ、静かに呼吸をしている。
一応は、生きているようだ。

彼は厳しい断食によって衰弱しきり、
よもや立って歩くことすらままならない。
座っている時も、何かに寄りかかっていないと、
自分の体重を保てない。
だから、彼は木に寄りかかっている。

私は周りを見渡す。
天気は晴れ。
季節は初夏。
場所はインドの北の方のどこか。
ここは風通しのよい原っぱだ。
周りには、木が何本か、ぽつりぽつりと立っている。
イメージ的には日比谷公園のような場所だ。

ここは苦行林と呼ばれた場所だろうか。
(少し説明すると、当時、苦行林と呼ばれる
 行者たちが集まって、苦行をする場所があったらしい。
 釈迦なども、その林で苦行をしたらしい。)
しかし、どうやらここは苦行林ではない。
「林の中は、薮や蚊が多い。
 そういう場所は瞑想に向かない」
そういうことらしい。

彼は木に寄りかかって、静かに目を閉じている。
彼の寄りかかっている木は、それほど大きな木ではない。
高さが4メートル、幅が40センチぐらいだ。
枝には緑の葉っぱが茂っている。
この木は菩提樹だろうか。
いや、多分違う。
頭の中に数珠が浮かんだ。
この木はどうやら、数珠の材料になる木かもしれない。
もしかしたら、この木は沙羅双樹かもしれない。

彼は今何を思うか。
私は彼の体の中に入った。

とても心地良い日だ。
風が気持ち良い。
日差しが暖かい。

とたんに、木漏れ日が、私の額を直撃した。
私の視界が開け、意識が明るくなった。
同時に、全身のすべてのチャクラが活性化した。
自分の体がどんどん大きくなり、空と大地よりも大きくなった。
同時に自分の体がどんどん小さくなり、砂粒よりも小さくなった。
私はこの世のすべての粒子に宿り、同時にこの世そのものになった。
なんという多幸感だろう。
なんという万能感だろう。
自分は悟ったんだという高揚感が脳天を突き抜けた。
しかしそれはほんの一瞬の慢心であった。
高揚感は瞬時にして霧散し、得も言われぬ悲しみが沸き起こってきた。
私は尻の下で踏みつぶしている、虫の叫び声を聞いた。
ついさっき食べた粥になった稲穂の、その無念を知った。
今着ている服を作るのに関わった人々の汗と涙が頬を伝った。
私は、自分が多くの犠牲の上に生かされていることを知った。
とても胸が苦しくて、辛くて涙が流れた。

我々の人生は何者かの犠牲の上に成り立っている。
悟ることで得る万能感や多幸感など、まやかしに過ぎない。

そして、たとえ、悟ったところで、
この肉体を持って生きている以上、
犠牲と殺生の苦しみからは、決して逃れられない。
「真実を知ることは、とてもつらいことだ」
と私は思った。

これが彼の悟りだった。


つづく。

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インドの行者2

さて、話を戻そう。
とにもかくにも、彼が30前後の時、彼は全てを捨てて出家した。
その時の彼には、財産や地位や名誉や欲望など、なんの意味もなかった。
それらは、ただ、虚しいだけだった。

彼は身につけていた装飾品を、かなぐり捨てて、
裸一貫、宮殿から飛び出した。
そして死体から剥ぎ取った糞掃衣(ふんぞうえ)を身にまとい、
喉が渇いては濁った川の泥水を飲み、
腹が減っては糞の中の未消化のトウモロコシの粒を拾って食べた。
トウモロコシを噛み締めたとき、彼の頬を涙が伝った。
「生きていて本当に良かった!!!」
それは、彼が宮殿にいたときには考えもしなかったことだった。
「ありがとうございます!!!」
そう、心から思った。

しかし、やはり、虚しい。
そして「生きることはとても辛く苦しい」
と心底実感した。

彼の心底には「人は何故、苦しまなければならないのか」
という思いがあった。
「なぜこんなに苦しいのに、生きなければならないのか」
彼は考えた。

彼はまず、バラモン教にすがった。
彼はバラモンの僧侶たちから、以下のことを学んだ。
それは輪廻転生と因果応報(カルマ)、そして運命についてだ。
バラモン教の考え方によると、
人は輪廻転生をして、何度も生まれ変わる。
そして、前世の行いによって今生の運命が決まり、
また今生の行いによって来世の運命が決まるのだ。
「だから、今生の運命は前世の自分の行いによって
 決まってしまっているので、もはや変えられない。
 それよりも、来世の人生をよくするために
 今をよりよく生きなければならない」
彼は絶望した。
「今生の運命は既に決まってしまっている。
 つまり、今生でどうあがいても、
 過去に起こってしまったことは変えられない。
 したがって、この苦しみからも、決して逃れられない」
そしてまた、彼は思った。
「僧侶たちは、運命を嘆くより今を生きて来世をより良くしろ、と言う。
 しかし、来世でまた生まれてこなければならないなんて、もうたくさんだ!
 もうこんな世の中に、二度と生まれてきたくない!」
そのためには解脱するしかない。
「私は輪廻の輪から解放されて自由になりたい」

それから、修行の日々が始まった。
彼はヒンドゥー教の老師の下で、厳しい苦行を始めた。
それは徹底的な禁欲と断食だった。

そこで私は思った。
「苦行など何の意味があるのか」と。
釈迦も若い頃、ありとあらゆる苦行に励んだ。
しかし彼は、最終的には苦行をやめた。
なぜなら彼は、あるとき、気がついたのだ。
いくら肉体を痛めつけても、悟りには到達できない、と。
そして中道こそ肝要だという結論に至ったのだ。

しかし、私の目の前にいるこの乞食は、黙って首を横に振った。
「確かに、一見、何の意味もないように思える苦行もある。
 例えば食糞や自傷、特定の動作を繰り返すなどの苦行だ。
 しかし、これはこれで、良い。
 ひとつの人生を棒に振ってでも極める価値がある」
いや、それ、だめじゃん。
人生を棒に振ってるじゃん。
「もし、我々がこれらの苦行に何の意味もないというのなら、
 我々の人生それ自体に、なんの意味もないことになる。
 なぜなら、私や釈迦の認識では、人生そのものが苦行であるからだ。
 例えば、我々が生きるためにはどうしても殺生をしなければならない。
 そして生きていれば病気にもなる、他人とのいざこざもある、
 そこからありとあらゆるカルマ(業)が生まれ、輪廻の輪という足かせになる。
 カルマの報いも必ず受けなければならない。
 これが苦行と言わずなんという」
でも、生きていれば楽しいこともあるでしょ。
「ある意味ではそうだ。
 欲を満たすことによって得られる快楽によって、
 我々は生かされている。
 快楽が一切なく、人生が苦しいことだけならば、
 そもそも誰も生まれて来ようと思わないだろう」
そうそう。
人生は苦しいこともあるけど、楽しいこともある。
だからみんな、どんどん生まれ変わりましょう
と、そういうことになってますよね。
「私が言いたいのは、快楽とは所詮、幻想だということだ。
 まず現実という名の苦痛が初めにあって、
 その苦痛はあまりにも強く、その痛みだけでは人間は死んでしまうから、
 その痛みを感じなくさせるための麻酔が必要で、それが快楽なのだ」
なるほど。
「そう、快楽は麻酔のようなものなのだ。
 そして、苦行は、快楽による麻酔を取り去って、
 欲という幻想をすべて捨てることで、
 人生の痛みをあるがままに受け入れることを意味する」
そんなの嫌です。
麻酔なしで手術なんてしたら、気が狂ってしまうでしょう?
苦行とはそれと同じことです。
「その通り。
 だから真理の探求者は、気が狂ってしまう人間が多い」
ですよね。
「しかし、麻酔で脳を麻痺させて眠っていては、
 いつまでも覚醒することはできない

はい。
「ここまでをまとめると、
 人生は本来苦痛で満ちている、まさに苦行である。
 しかし苦痛の中では人間は生きていけないので、
 バランスをとるために、あらゆる欲が存在し、
 その欲を満たすことで、快楽が得られる。
 しかし所詮、快楽は幻想。欲も幻想。
 だから徹底的な禁欲をし、自らの体に苦痛を与えることによって
 幻想を取り去り、現実を正しく認識できるようになる。
 そのために苦行をするのだ」
はい。
でも、快楽は幻想ですが、苦痛もまた幻想ではないですか?
「そうだ。最終的にはそういう結論になるだろう。
 しかし、真理を知ろうと思うのなら、
 まずは徹底的に苦痛を体験するところから始まるのだ」
うーん。
「そして、苦行の中でも、特に禁欲と断食は、とても意味のあることだ。
 だから、私は生涯を通して、禁欲と断食を続けた」
へー。
「一方で、釈迦は35歳で、6年間続けた苦行をやめてしまった。
 これはとても残念なことだ。
 釈迦は断食中にもかかわらず、欲に負けて、
 スジャータの差し出した乳粥を飲んでしまった。
 その言い訳として、釈迦は、苦行には何の意味もないとのたまった」
はあ。
「そこが釈迦の中途半端なところだ。
 そして、これこそが私と釈迦の違うところでもある」
なるほど。
わかりました。
あなたは釈迦をバカにしていますね。
「とんでもない。
 しかし、私もプライドが高いのでね。
 釈迦には負けたくないという気持ちがあるのだ」
はあ。
「それでは、なぜ釈迦は苦行をやめてしまったか。
 それは、釈迦には世界宗教を作るという使命があったからだ。
 彼は、苦行の末に死ぬという運命ではなかったのだ。
 具体的には、彼の守護霊が、苦行はもうこれで十分、
 これからは宗教団体を作る使命を遂行しなさい、という結論を出したからだ。
 だから、私は決して、釈迦をバカにしているわけではない」
はい。
「ともかくも、私は釈迦と違い、宗教団体を作ることにはこだわらなかった。
 そして、苦行を最後の最後まで続けた。
 そして、私は断食をしたまま衰弱して死んだ」
それはそれでどうかと思いますけどね。
それに、それって単なる自殺と同じじゃないですか。
人として、最悪ですよ、自殺ってのは。
「確かに、自殺は愚かしい行為だ。
 例えどんな理由があったとしてもだ。
 しかし、私の場合の、断食による衰弱死は、自殺ではない。
 私は、自分の寿命を知っていたのだ。
 だから、その日に向けて、食を絶ったに過ぎない

 一週間後に死ぬことが分かっているのに、
 殺生をしてまで食事をする必要はない。
 今日死ぬことがわかっているのに、水を飲む必要はないのだ」
はあ。


つづく。

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インドの行者1

ガリガリに痩せた乞食が目の前に現れた。
服は、麻製の大きな一枚布で、
それを袈裟のように肩にかけ、下半身まで覆うようにしている。
胸の部分は半分露出している。
布は、まるでボロ雑巾のように灰色に薄汚れて、
ところどころに穴があいている。
身体は痩せてガリガリで、足は驚く程細く、
体重を支えられているのが不思議なほどだ。
腹は内蔵が入っていないのではないかと思うほど凹み、
胸にはアバラ骨が浮き出ている。
髪の毛は白髪で、毛の量は少なく、ほぼ禿げている。
あるいは剃髪している。
頬は痩せこけ、顔は黄土色で、血色がとても悪い。
目の周りは驚く程に陥没しており、頭蓋骨の形がくっきりとわかる。
また、ひどいクマがあり、まるでタヌキのようだ。
その目はいつも半開きで、
常時瞑想をしているかのようだ。

彼は一体何者なのだろう。
彼が普段、どのような生活をしているか調べていこう。

彼は毎早、近くの川に沐浴をしに行く。
この川は、中洲などを入れると、幅が200メートルほどで、
水量はかなり多く、いつも茶色い濁流が流れている。
川の周りには、緑がほんの少しある程度で、
ほとんどは黄土色の痩せこけた大地が広がっている。
この川は、おそらくガンジス川だ。
ただし、わりと上流の方で、
ガンジス川とは呼ばれていない川か、もしくは支流だ。
彼は、その川で沐浴をするのが日課だ。
そう、彼は乞食であるが、決して不潔ではない。
もちろん、ガンジス河自体、泥で濁った川なので、
そんな汚い川で沐浴したところで、体が綺麗になるとは到底思えない。
現代人の価値観からすれば、清潔からは程遠い。
ただし、彼が生きていた時代のガンジス河は
今ほど汚くはなかったようだ。
死体や糞尿も、そんなには、流れて来ないようだ。

そう、彼の生きた時代は、紀元前500年頃だろう。
あの釈迦の生きた時代と同じ時代だ。

そういえば彼は、雰囲気がどことなく、
釈迦に似ている。
しかし、彼は釈迦ではない。
しかし、どうやら釈迦との共通点が沢山あるようだ。

まず釈迦との共通点、その一。
彼はもともと、王家の出身だった。
彼はインドの北の地方を治めたクシャトリヤの出身だ。
彼はその王家の分家か、あるいは次男として生まれた。
ちなみに、その王家は、釈迦よりも権力がある王家だったので、
正直、彼は王子としての釈迦のことは、内心で、バカにしている。

王であった時の彼の姿を見てみよう。
年齢は14歳ぐらい。
体格は中肉中背で、背は平均より少し低い。
肌の色は浅黒く、かなり日に焼けている。
顔は丸顔で、ずんぐりむっくり。
眉毛が太くて濃く、まつげも濃い。眼力が強い。
全体的な印象は「調子に乗ったクソ生意気なガキ」といった印象で、
これが先ほどの乞食と同じ人間とは到底思えない。

彼は今、あぐらをかいて、王座に座っている。
王座はレンゲか、あるいは蓮の花をモチーフにしたもので、金色に輝いている。
体にはシルク製の布を纏っている。
その布は布自体が白銀色のまばゆい光を放っている。
首には数珠をかけている。
もしくは金の装飾品をたらしている。
その装飾品は、法輪(チャクラム)をモチーフにしたもので、
これぞ匠の技といったような細工が施されている、高価な代物だ。
頭にはターバンを巻いている。
あるいは金色に輝く王冠をかぶっている。
その王冠は純金製で、その時代の粋を結集したかのような造りで、
至る所にルビー(赤)とサファイア(青)が散りばめられている。
それから、手に何か持っている。
右手には羽ペン、左手には如意宝珠を持っている。
全体的に、まるで菩薩坐像に色をつけたかのような外見だ。

そして、おそらく、彼のこの外見が、
彼が何者なのかということを示している。
特に、彼の持っている羽(ペン)と如意宝珠、
そして首から下げている数珠と法輪、
そして金の王冠に散りばめられた二種類の宝石、
この辺が特に重要だと思われる。

王である彼。
彼はさしずめ地上に降臨した菩薩のようにもてはやされた。
彼の煌びやかな生活は、さしずめこの世の極楽浄土だった。
それではなぜ、彼はこのような何不自由ない生活を捨てて、
乞食になったのか。

もう少し時間を進めてみよう。

おそらく彼が30歳前後の時、決定的な何かが起こった。
それは彼の人生を180度変えてしまうようなことだ。
それは、彼がその時、手に入れていたものを
すべて捨てて、出家してしまうような一大事だった。

彼は今、王座から降りて、
身につけていた装飾品を片っ端から捨て始めた。
そう、彼はすべてを捨てた。
金も、女も、土地も、地位も、名誉も、
家族も、欲望も、プライドも、こだわりも、何もかもだ。

彼は自分を着飾る装飾品を全て捨て、
裸一貫の乞食へと身をやつすこととなった。

彼に一体、何があったのか。

思い出せない。

なぜすべてを捨てたのか。

わからない。

彼はなぜ、至れり尽せりの贅沢三昧な生活を捨てて、
乞食になって地べたを這いずり回ることを選んだのか。

わからない。

考えられるのは、例えば最愛の人の死だ。
私に出家を決意させる理由としては、
決定的に、これしか考えられない。
しかし、実際に何があったかはわからない。

ともかく、これは思い出したくもないほどショックなことだったのだ。
どれほどショックかというと、この世の極楽浄土のような生活を捨てて
乞食になるぐらいショックなことだ。
それは相当ショックなことに違いない。

そして末恐ろしいことに、
これと同じことが今後、
私の人生においても起こる可能性がある。
だから、私は、このことを絶対に知りたくない。

このことについて考えていて、私は戦慄した。
本当に、世の中には、そして自分の運命には、
知らない方が幸せなことが、たくさんある。

つづく。

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2015年06月01日

神楽鈴の巫女9

神楽鈴の巫女と、幼馴染の若者は、
ありていに言えば、幸せな結婚生活を送りました。
たくさんの子にも恵まれて、末永く幸せに暮らしました。

めでたしめでたし。

でも、まだ物語は終わりません。

少女と若者が結婚してから、数十年の月日が流れました。
ある冬の寒い日のことでした。
少女は今、年をとり、衰弱し、布団に寝かされています。
たくさんの子供たち、孫たちが彼女の周りに集まってきました。
今、彼女はたくさんの家族に看取られて、あの世に旅立ちました。
彼女の人生は、とても豊かで実りあるものでした。

しかし、彼女は、あの世で必死に探していました。
そう、あの少年のことを。


裏山の頂上にある神社、その神社にある梅の御神木、
その御神木の幹の上に、あの少年が座っていました。
「やあ」少年は少女を見つけると、手を振りました。
「ずっと、さがしていたのよ」
神楽鈴の巫女は、はいつの間にか、少女の姿に戻っています。
「君の今回の人生は、どうだったかな」
「とても幸せな人生でした」
「うん、それは良かった」
「でも、ずっと心残りでした。
 それはあなたのこと。
 私はあなたのことがずっと好きでした。
 最初は生意気な子供だとしか思っていなかったけど、
 次第にあなたの想いを知り、私の心を見透かされ、
 いくつもの奇跡を見せつけられ、
 私が崇敬してやまないその神様だと知らしめられるうち、
 あなたのことが気になって気になって仕方なくなりました」
少年は無言で頷きます。
少女は続けます。
「でも私は人間で、あなたは神様だったから、
 絶対に結ばれないことも分かっていました。
 そのことを考えるとき、私は身が引き裂かれる思いでした」
「・・・・・・」
「でも、私はあなたと結ばれなくても構わないと思っていました。
 たとえ結ばれることがなくても、私はあなたに身も心も捧げる。
 神社の境内を掃除し、社を守ることを通して、一生神に仕えよう。
 そう考えていました」
「そう。あの火事さえなければ」
「でも、あの火事があったからこそ、君は巫女であることをやめ神社を離れ、
 あの若者と結婚できた」
「そして、彼との結婚は、私が生まれる前に決めたこと」
「そう。全て、運命だった。
 しかし、運命に誤算があったとすれば、
 それはツインソウルである僕と君との絆が強すぎたってこと。
 君は放っておけば、いつまでも僕のことを考え、
 僕に仕えるため神社に閉じこもり、無為に一生を過ごしただろう」
「だから、お社を燃やした」
「そう、社に放火することを許した」
「ああ、お社に放火したのは、私の旦那だったのね」
「そうだね」
「でも、それでもいいの。
 あの人はそういう人だから」
「そう、彼の君を思う気持ちは、そんじょそこらの男とは違った。
 君のためなら放火もするし、神にも歯向かうってんだから、たいした男だよ」
「あはは」
「だから、彼こそ、君の旦那にふさわしかった」
「うん」
「だけど、君を愛する気持ちなら、僕だって負けていない。
 僕は君を、心の底から愛している。
 なんせ、僕は君のツインソウルだから」
「うん」
「僕は君の幸せを、心から願っていた。
 だからこそ、君には彼と結ばれ、幸せになって欲しかった」
「でも、どうして、私とあなたは現世では結ばれなかったの。
 そうして、二人で巡り逢えるように、生まれ合わせなかったの?
 こんなにお互いを想い合っていたのに」
「それは『大いなる秘密』というやつさ」
「それじゃあ納得できない」
「それじゃあ、少し長くなるが、説明するよ。
 ツインソウルは、一般的に、同じ時代に生まれないことのほうが多いし、
 例え同じ時代に生まれていても、親子や兄弟、もしくは敵同士だったりする。
 仮に同じ年代の男女だったとしても、恋仲になることは、全くと言っていいほどない。

 なぜだかわかる?」
「わからない」
「なぜなら、別れた魂が再び融合しようとする力は、とても強い。
 そのせいで、ツインソウルが現世で出逢うと、様々な不都合が生じる。
 例えば、強く惹かれ合う二つの魂の前では、
 肉体は魂の融合を妨げる壁でしかない。
 だから、もしそんな二人が現世で出逢ってしまったら、
 肉体を捨ててでも、一つに戻ろうとするだろうね

「・・・・・・」
「それに、そもそも、それでは魂を二つに分ける意味がない。
 魂を二つに分ける目的は、男と女、善と悪、光と影、
 全く別の価値観や立場で学ぶためだ。
 だから、せっかく二つに分けても、二人とも同じような環境で、同じような価値観を持ち、
 恋愛関係になってベタベタしていたら、そもそも魂を二つに分けた意味がない

「うん」
「でも、例外はあるよ。
 例えば、イエス・キリスト。
 彼のツインソウルはマグダラのマリアだった。
 彼は彼女の力を借りて、ありとあらゆる奇跡を起こした。
 それはイシスの性魔術と呼ばれているものだ。
 しかし、この秘密の魔術については、これ以上は語らない。
 なぜならあのエデンの園の、りんごの木の前にいる、智天使ケルビムが
 ものすごい形相で、こちらを睨んでいるからね」
「うん」
「それから、もう一つ例外の例を出そう。
 例えば、レオナルド・ダ・ビンチ。
 彼は、ツインソウルである母親をモデルにして、モナリザを描いた」
「うん」
「君がツインソウルである僕(神)へ身も心も捧げるというモチベーションで、
 神社の掃除をしていたように、
 ダ・ヴィンチもまた、彼のツインソウルである母親
 もっと言うと彼と彼の母親が融合した存在であるモナリザを描き出すことで、
 魂の完全体(融合したツインソウル)を想起し、
 キリスト意識(ハイアーセルフ)に繋がり、アカシックレコードにアクセスすることで、
 魂の目的と、この世の秘密を知ることができた。
 そう言う意味で、彼は単なるマザコンではなかった。
 しかし彼は、母親以外の女にはまったくと言っていいほど興味がなかった。
 そう、彼は、魂のパートナーである母親以上に相性の良い女は、
 この世に存在しないことを知っていた。
 だから彼は生涯童貞で、独身だった」
「うん」
「だから、そういう一部の特殊な例外を除いて、
 ツインソウルが現世で肉体を持って出会うことはめったにない。
 遥か昔から、そういうふうになっている。
 それが『大いなる秘密』なんだ」
「うん、わかった」

少年と少女は、抱きしめあって、見つめ合いました。
その時、不思議なことが起こりました。
二人の体が、まばゆく輝きだしました。
それは時を越えた和解でした。
それは互いの経験の統合でした。
それは相反する極性の弁証法的止揚(アウフヘーベン)でした。
それはツインソウルの融合でした。
もしかしたら、それはアセンションと呼ばれるものかもしれません。


少年は少女の手を取りました。
「それじゃ、行こう」
「うん」
二人の体が、中に浮かびました。

そして二人は
仲良く手をつないで
天に登って行きました。


おしまい。

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神楽鈴の巫女8

「火事だ! 火事だぞ!!」
誰かの叫び声で、少女は目が覚めました。
布団をはねのけ、外に飛び出すと
社殿が、紅い炎に包まれていました。
少女は口を開けて呆然と立ち尽くしています。
異常を察知した村人が、わらわらと集まってきましたが、
炎の勢いは強まる一方で、もはやどうすることもできませんでした。

次の日。
全焼した社殿を目の前に、泣き崩れる少女の姿がありました。
なぜなのですか!!!
少女は叫びました。
なぜ、神様は私の生きがいを奪うのですか!!!
 どうして私の母を、どうして私の父を、どうして・・・・
 どうして私をこんなに苦しめるのですか!!!

しかし誰も答えてくれるものはありません。

少女の傍らに居た若者が、
そっと、少女の肩を抱き寄せます。
少女は若者の胸に顔をうずめて、
わんわん声を上げて泣きました。

その後、全てが、若者の計画どうりになりました。

少女は巫女であることをやめました。
そして、若者の妻になることを決意しました。






祝言の前日。
神社に、少女の姿がありました。

今や、境内に建物は一切なく、とても殺風景です。
社殿の燃え残りやガレキは、綺麗に片付けられています。
ただ中央にぽつねんと立つ御神木が、
焼け焦げて痛々しい姿を晒しているだけです。
もと社殿があった場所には、今は小さな祭壇があります。
祭壇の周囲は白い幕が張られ、ちょっとした幕屋になっています。
これが仮の社殿ということなのでしょう。

少女はその幕屋の中にある、祭壇に向かって、祈りを捧げます。
「巫女の仕事も、これで最後。
 今日は、そのことを報告しにきました」
すると、あっさりと、目の前にあの少年が現れました。
結婚おめでとう
少年は静かに言いました。
「ありがとう」
少女はうなずきます。
「・・・・・・」
「それだけ?」
今までありがとう。
 さようなら

少年は踵を返し、去っていこうとしました。
「待って」
「・・・・・・」
「一つ聞きたいことがあるの」
「・・・・・・」
「どうして社を燃やしてしまったの」
「・・・・・・」
「誰かが放火したという噂があるの。
 だとしたら、どうして止められなかったの?
 神様なんでしょ!
 ねえ!」
君が幸せになってくれれば、僕はそれでいいんだ
「そんなの答えになってない!
 なんでなの!
 意味わからない!」
「さようなら」
「なんでそんなこと言うの。
 神様がいなくなったら、この神社はどうなるの?」
「僕の寄り代の御神木も、もうすぐ枯れる。
 だから、もう君に会いに来ることもできなくなる」
少女はまた、泣きました。
少年はそれを黙って眺めていました。
少女はひとしきり泣いて
そしてようやく口を開きました。
「ねえ、今日はあなたのために
 おダンゴを作ってきたの。
 食べて」
「・・・・・・」
「きなこと黒蜜がかかったダンゴだよ。
 あなた、好きだって言ったでしょ」
少年はしばらく考えて
「わかった、いただくよ」
ダンゴに手を伸ばしました。
「今だ!」
少女は少年のダンゴを持っている手を掴みました。
少年の掴んでいたダンゴが、地面に落ちて、
土の上を転がりました。
「てんてことをするんだ!」
少年は叫びました。
「やっぱり!
 以前、あなたは言ったわね。
 自分は神様だから、そう簡単には触れられないって。
 でも、あれはやっぱり嘘だったのね!」
「・・・・・・」
「だって、あなたはダンゴには触れることが出来るのに、
 私には触れないなんて、おかしいもの!」
「・・・・・・・」
「神様のくせに!
 嘘つき!」
「僕は嘘つきなんかじゃない。
 僕は真実を行う者にしか触れないんだ」
「もう、離さないから!」
「・・・・・・」
少女の目に、涙が溢れました。
彼女は少年に抱きついて、胸の中で、泣きじゃくりました。

泣いて泣いて泣いて、
泣き疲れて眠ってしまいました。

少女は夢を見ました。
夢の中で思いました。
「自分は禁忌を犯した。
 ダンゴをつまむ少年の手を掴んでしまった。
 だから、もし、この手を離してしまったら、
 少年は消えてしまう。
 二度と戻ってこない。
 そんな気がする。
 だから、私は、もう、この手を絶対に離さない」

少女が目を覚ますと、少年は消えていました。
少女は泣きながら少年を探しました。
一日中、境内の隅から隅まで探しました。
しかし、どこを探しても、少年は見つかりませんでした。
少女は、焼け焦げた御神木の前で、泣き崩れました。

次の日、結婚式が執り行われました。
少女は終始、暗い顔をしていました。
若者は、そんな彼女を、ずっと気にかけていましたが
どうすることもできませんでした。

少女はしばらくは少年のことが気になって、ふさぎこんでいましたが、
日々の雑多な生活に追われるうち、だんだんと少年の記憶は薄らいで行きました。

つづく。

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2015年05月31日

神楽鈴の巫女7

お花見会が開かれた、その日の夜のことでした。
社殿の裏に、不審な人影がありました。
その人影は、黒い服に身を包み、
紺の手ぬぐいをほっかむりにした、
いかにも怪しい格好をしています。

彼は一人で何か、ボソボソとひとりごちています。
「あのアマ、俺がせっかく寄進した石畳を撤去しやがって。
 よくも俺の顔に泥を塗ってくれたな」
どうやら、この不審な人物は、幼馴染君のようです。
「あのアマ、御神木の根がどうのとか、神のお告げがどうのとか
 ほざいていたが、冗談じゃねぇ。
 それに、今までも、再三、灯篭や狛犬を寄進しているのに、
 恩を仇で返すようなことをしやがって。
 それに、あれだけ結婚を迫っているのに、
 いつまでたっても答えを出さない。
 いい加減、堪忍袋の緒が切れた」
しかし、彼はまだ少女のことを諦めていませんでした。
そう、彼は元来、一途な性格であります。
「あのアマに、俺がどれほど本気か、思い知らせてやる!」
彼は懐から、おもむろに火打石を取り出しました。

彼は一体、何をしようというのでしょう。

若者がしゃがみこんで、火打石を打ち合わせた、その時でした。
「そこで何をしているのだ!」
地響きとともに、ハラワタを揺さぶるような轟音が木霊しました。
心臓が止まるかと思いました。

若者が振り返ると、そこには白い服を着た少年が立っていました。
今の一声は、この少年が放ったものなのか、
にわかには信じがたい、と彼は思いました。
少年は阿修羅のような形相で、彼の前に立ちはだかります。
「何をしているのかと問うておる!」
少年の周りの空気が、怒りの炎で、紅く揺らめいています。
「その火打石を何に使うのかと問うておる!」
少年のものとは思えない、低くドスの効いた声です。
「・・・・・っ!!」
若者はしばらく面食らっていましたが、しかし彼も負けてはいません。
「子どもは家に帰ってママのおっぱいでも吸ってろ」
「私は子供ではない。この社の主だ」
「何を、寝ぼけたことを言っている。
 この社の主は神楽舞の巫女だろう」
「私はこの社の主である神だ。
 お主はその火打石で、この社に放火しようと考えているのだろう」
「な、何を馬鹿なことを・・・」
若者は少年の全身を改めて見て、ハッとしました。
少年の体は、なんと宙に浮いています。
さらには、ぼんやりと白く発光しているではないですか。
頭の後ろには後光まで差しています。
若者は、びっくりして腰を抜かしました。
少年は若者の傍まで漂ってきて、若者の目を覗き込みました。
「お主は今、このように考えているのだろう。
 こいつは本当に神様かもしれない、と」
「・・・・・・」
「そして、今わかったが、
 お主の社殿への放火は、衝動的なものではない。
 計画的なものだ」
「・・・・・・」
「お主はこのように考えている。
 この社は、建立してから、だいぶ年月が経っている。
 雨漏りもひどいし、床も腐ってきている。
 大規模な改修が必要だ。
 いっそ、建て替えてしまったほうが早い。
 建て替えるのなら、いっそ燃やしてしまおう」
「・・・・・・」
「そう、お主は少女を振り向かせるために、この社を燃やそうとしている。
 この社は彼女の生きがいそのものだ。
 少女は毎日社の掃除をして、拝殿で祈りを捧げている。
 それが彼女の人生の全てなのだ。
 それを燃やしてなくしてしまえば、
 彼女は生きる理由を失って、心底落胆する。
 そこにお主の付け入る隙が生まれる」
「そうさ。この社がなくなれば、彼女は俺に泣きついてくるだろう。
 およよ、どうしたらいいの幼馴染君、とね。
 そこで俺が彼女をやさしく抱きしめて、頭を撫でて、こう言う。
 今すぐには、というわけにはいかないが、
 俺が神社を再建する金を出そう。
「そうすれば、彼女はさぞ喜ぶだろうな」
「ああ」
「そして、神社が再建するまでは、うちに来なさい、と言う」
「そうだ。そうして彼女は俺のものになる」
「ハッピーエンドだ」
「どうだ、完璧な作戦だろう?」
「おぬし、地獄に落ちるぞ」
「いやいや。
 むしろ天国に行けるんじゃないかな?
 俺が社を建て替える金を出すと言っているんだ。
 このボロボロの社を立て替えて、新しく綺麗にしてやると言っているんだ。
 神様には、むしろ感謝して欲しいぐらいだね」
「到底、看過できないな」
「なぜだ」
「この社の柱の一本一本には、人々の想い出、
 そして悠久の歴史が刻み込まれている
のだ。
 それだけではない。
 少女がどれだけの情熱を持って、毎日毎日、雨の日も風の日も一日も休まずに、
 この社の手入れをしてきたか、お主は知っているのか。
 この社の床板一枚一枚には、
 彼女の汗と涙が染み込んでいる
のだ。
 そんな彼女の想いを、お主は踏みにじるのか」
「確かにそうかもしれない。
 しかし、古いものに執着していたら、何も進歩しない
 このままでは、この社は、いつまで経っても建て替えられないし、
 彼女もまた、神に仕えることに執着するあまり
 結婚もでず、独り寂しく死んでいくことになるだろう

 それでいいのか、神様よ」
「・・・・・・」
もう、傷だらけの柱や、腐った床板に執着するのはやめよう。
 そんなに歴史や人の想いが大事なら、
 立て替えた社殿の柱に、新しい時代を刻めばいいし、
 彼女は新しい社殿を心を込めて掃除すればいいさ

 もっとも、新しい社殿が建つ頃にはもう、彼女は巫女であることをやめて、
 俺の嫁になっていると思うがな」
「わからず屋め!」
「お前の方が、よっぽど、分からず屋だろうが!」
「わからず屋!」
「というか、なんでお前は、そんなに俺に突っかかってくるんだ。
 ははーん。
 もしかして、お前、彼女のことが好きなのかな?」
「ななな、何を言うんだ」
「ガキのくせに生意気だ」
「ガキとは失礼な、私は神様であるぞ」
「ははーん。
 さては、お前が最近、彼女につきまとっているクソガキだな」
「ななななんのことかな」
「彼女から聞いたぞ。
 彼女の後をこそこそと付けまわって、ダンゴをねだったりして
 ちょっかいを出しているらしいな」
「・・・・・・」
「おまけに、彼女の前でも、自分を神だとか抜かしてるらしいな。
 彼女がどれだけ神様を愛し、崇敬しているか、お前は知っているだろう。
 そんな彼女の気持ちを利用して、付け入ろうとするとは、卑怯なやつだ

「ぐぬぬ」
「おまけに、俺が寄進した石畳を撤去させるよう、そそのかしたのもお前だな!
 彼女の幼馴染の俺に嫉妬するばかりに、きたない真似をしやがって!

 あの敷石を調達するのにどれだけ苦労したと思ってるんだ!
 俺の顔に泥を塗りやがって、許さんぞ!」
若者は少年に突進していき、首根っこをつかもうとしました。
しかし、その手は虚しく宙を切りました。
「卑怯だぞ!!!
 正々堂々勝負しろ!!!」
「残念ながら、私は正しい行いをする者にしか触ることはできない
「くそが!!!」
「出来ることなら、私もお主と男と男の殴り合い、
 タイマン勝負をしたかったのだが」
「そうだ!
 俺と勝負しろ!」
「いや、この勝負は、私の負けだ」
「は?」
「正直に言おう。
 お主の彼女を思う一途な気持ちには感服した」
「・・・・・・」
彼女に振り向いてもらうためなら手段を選ばぬ、その大胆さ。
 自分の意思を貫くためなら、神をも恐れぬ、その勇気

「・・・・・・」
私は嘘をつかない誠実な人間にしか見ることができない。
 そして、お主には私が見えている。
 つまりはそういうことなのだろう。
 お主の、彼女を想う気持ちは、本物だ

「そうだ!
 俺は誰よりも彼女のことを大切に思っている!」
「うむ。
 そして、お主も知っていると思うが、私は縁結びの神でもあるのだ」
「ほう」
「そもそも私が彼女の前に現れたのは、彼女を説得するためだったのだ。
 私は彼女にこう言いたかった。
 お主が神様のことをどれだけ好きかということはよく分かった。
 分かったから、自分の幸せを掴んで欲しい。
 そして、お主のことを誰よりも大切に想っている、
 心優しい若者がいることを、分かって欲しい。
 そう諭すためだったのだ」
「・・・・・・」
縁結びの神である私が宣言する。
 お主と彼女は、結ばれる定めだ

 たいへん不服ながら、な」
「・・・・・・」
「だから、放火などする必要はない」
「お前の言葉なんか、信じられないな」
「もちろん、無理に信じろとは言わない」
若者は手の中の火打石を見ながら言った。
俺は運命など信じない。
 運命は自分で切り開くものだ

「そこまで言うのなら、私は止めない。
 お主はお主の信じる真実を、行い給え」

若者の瞳が、月の光を受けてキラリと光りました。
彼の心に、濃紫色の魔光が差し込みました。
「もちろん。
 言われなくても、やるさ」

夜空に、灰色の煙が、もくもくと立ち上りました。

つづく。

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神楽鈴の巫女6

さて、石畳の施工は、雪の影響で、思いのほか時間がかかりました。
石畳が完成し、竣工式を終えた頃には、年が明けていました。

相変わらず、あの不思議な少年は姿を見せませんでした。
いつもと変わらない、新しい年が始まりました。

しかし、ひとつだけ変化がありました。
社殿の脇に、一本の御神木がありました。
この御神木は、樹齢300年を優に超える大樹で、
神の依代とも伝えられ、少女の先祖が代々守ってきた梅の老木です。
その梅が、いつまでたっても花をつけません。

少女は心配になり、ある日、拝殿で神様に祈りました。
「梅の花が咲かなくて心配です。
 なぜ花が咲かないのですか?
 私はどうしたらよいですか?」
しかし答えはありません。
「あの御神木は、村人みんなで守ってきたものです。
 私の先祖も、そして私の父母も守ってきた大切な木です。
 どうか神様、皆のためにも、御神木を守ってください。
 どうぞよろしく願いします」
彼女は涙ながらに訴えました。

少女が、ふと顔を上げると
目の前に、あの少年が立っていました。
少年の姿は、涙に滲んで、神々しく輝いていました。
自分のためではなく、他の誰かのために祈る。
 それは、とても崇高な行為だ

 そして、君は本当に心の綺麗な人間だ」
少年は、どこか大人びた声色で言いました。
「お願い、御神木を守って」
少女は、神でも仏でも少年でも藁でもすがりたい心境でしたので、
この際、少年の正体が何であるかは、あえて考えないようにしました。
「このままでは、あの木は、枯れてしまうだろう」
少年は顔色ひとつ変えずに言いました。
「どうすれば良いですか」
「たったひとつ、あの木を救う方法がある」
「いったい、どうしたらいいの?」
「今年の春に設置した敷石を、すべて取り除くんだ」
「どうして? 今更、そんなことできない!」
「梅が枯れてもいいの?」
「良くない!」
「それでは、敷石を取り除きなさい」
「なんでそんなこと言うの!
 あなた、幼馴染君に、何か恨みでもあるの?」
「そういうことでは、決してない」
「それじゃあ、なんで?」
「木の根というものは、枝が空に伸びるるのと同じぐらい深く、そして広く、土の中に伸びている。
 今回、石畳を設置するために、その根の一部を取り払ってしまった。
 さらに、根の上に石畳が乗り、大部分を圧迫している」
「・・・・・・」
「取り除いてしまった根は、今更どうしようもない。
 しかし、残った根を圧迫している敷石を、取り除くことならできる。
 だから、今すぐ、敷石をどけなさい。
 そうすれば、まだ、見込みはある」
「でも、あの石畳は、幼馴染君が、心をくだいて、寄進したものなのよ。
 その想いを、裏切ることはできません」
「それでは、神木が枯れてもいいのか?」
「良くない」
「それでは、僕の言ったとおりにしなさい」
「でも・・・私・・・一体どうしたらいいの。
 村のみんなには・・・幼馴染君にはどう説明したらいいの・・・
 私はいったいどうしたら・・・」
「僕の目を見て」
少年は、少女に顔を近づけました。
二人の鼻先が触れるか触れないかの距離で、
二人の目が合いました。
「・・・・・・」
少年の目は、まるで万物を見通すかのごとく澄んでいて、
その瞳は黄金色に輝き、少女の意識を明るく照らしました


この時、少女の心の中で、何か変化が起こりました。

それははじめは一つの小さな種子でした。
その種子が、少女の心という大地に落ち、双葉が出て、
太陽の光を浴びてすくすくと育ち、季節が移り変わる度、
姿を変えつつ、ぐんぐんと大きくなっていきました。
そしてついには、あの御神木のように、大地に力強く根を張りました。
その枝はのびのびと空へと広がり、その枝には美しい花をつけました


それは、季節はずれの満開でした。
今や梅の御神木は、失われた時を取り戻すかのように、栄華に咲き誇っています。
少女は満開の花の前で、神様、いや少年に向かって
心から感謝の言葉を述べました。
「本当に良かった。
 本当にありがとうございます」

すぐに、季節はずれのお花見会が開かれました。
村人たちは、御神木の花を見て、歓喜の祝杯を上げました。
「この時期に、花が咲くのは珍しいな!」
「これは神の奇跡に違いない!」

しかし一方で、
「これは何か不吉な兆候かもしれない」
と噂するも者もありました。

つづく。

hiko22 at 23:33|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!

神楽鈴の巫女5

少年が姿を見せなくなって、しばらく経った、ある朝のことでした。
少女がいつものように境内の掃除をしていると、
幼馴染の若者が参拝にやってきました。
「おっす」
「おはようございます」
少女と若者はしばらく談笑していました。
(中略)
「そうそう。今回、寄進する石畳の件だけど」
「はい」
「いつもお世話になっている氏神様だから、とびっきり最上級の石を用意したよ。
 山向こうの石切場から取れる石でさ。手配に難儀したよ。
 たかが石といっても、大名が管理しているから、そう簡単には持ち出せない。
 公儀と大名、別々に交渉するのは大変だったよ」
「・・・・・・・」
「奉行所にはもちろん口利きしてある。
 関所の役人も目をつぶってくれる手はずになっている。
 明日の午前中には資材が届く。
 今、人を集めて運ばせている。
 遅くとも3日以内には運び終えるだろう。
 そうしたらすぐ着工だ」
「なんとお礼を言ったらいいか」
「いや、いいんだ」
「いつもいつも、気をかけていただいて、それに、
 そのような高級な敷石を奉納していただいて、
 本当にありがとうございます。
 私に何かご恩返しが、できることがあればいいのですが」
これで、自分の思う通りの流れになったぞ。
と若者は心の中でガッツポーズをしました。
「そうそう、この前の話、考えておいてくれたかい」
この前の話とは、結婚の話です。
どうやらこの若者は少女に、恩を売っておいて、
結婚を買おうという作戦
のようです。
しかし、少女はうつむいて、言いました。
「私に出来ること、それは
 あなたの日々の健康と安全を祈ることだけです」
「ああ、そうかい」
彼はあからさまに残念そうな顔をしました。
女の子の心は、なかなか思い通りにはいかないものです。
少女はさらに続けます。
「きっと、あなた様の今回の善行を見て、
 神様も喜んでいると思います」

「うん、ありがとね」
不意に、後ろの方から声がしました。
振り返ると、例のダンゴ大好き少年が立っていました。
「ありがとうって何よ」
少女は憤慨しました。
「いや、だから、僕は神様だからね。
 石畳を寄進してくれて、ありがとうって言ってるのさ」
「最近見ないと思ったら・・・相変わらず神様ごっこを続けていたのね」
「いや、僕は正真正銘の神様なんだけどね」
「馬鹿言ってないで、子どもはあっちに行きなさい。
 今、この殿方と
 オ・ト・ナ
 の話をしているのよ」
「ダンゴをくれたらあっちに行くよ」
「ダンゴなんてありません!」
「ねえ、そう言えば、
 最近、ダンゴを作ってくれないけど、なんで作らなくなったの」
「べつに。ただの気分よ」
「明日は作る?」
「当分、作りません」
「えー。
 あのダンゴ好きなんだけどな。
 ねえ、また作ってよ」
「嫌です」

「なあ」
少女と少年の会話に
幼馴染の若者が割り込んできました。
「さっきから、何一人でブツブツ話してるの?」
彼は不審がりながら、少女の顔を覗き込みました。
「この子に、言い寄られて、困ってるの。助けて」と少女。
「この子って誰」
「この子よ」
少女は少年の手をつかもうとしましたが、
その手は宙を切りました。
「・・・え?」
少女はびっくりして、口をパクパクさせています。
少年は無邪気に笑いながら言いました。
「なんせ、僕は神様だからね、そう簡単には触れることはできないんだよ。
 それに僕の姿は心の綺麗な人にしか見えないんだよ。
 そして、僕の声は真実を求める者にしか聞こえない。
 だから、彼には僕の姿が見えていないし、声も聞こえていないよ」
そう言って少年は若者を指差しました。
「なにそれ!」
少女は憤慨しました。
「あなたは、幼馴染くんが心の汚い人だって言いたいの!
 確かにあなたは生意気で傍若無人で礼儀知らずだけど、でも
 そういう他人を中傷することだけは
 言うような子じゃないと思っていたのに!」
「ごめんなさい」
少年はうなだれました。
なんとも居心地の悪い空気が、あたりに漂います。

少女はもう一度若者に「本当に見えていないの?」と少年を指差して問いました。
しかし、若者は首を横に振り「なんのことやらさっぱりだ」という顔です。
そうやら、本当に幼馴染の彼からは、この少年は見えていないようでした。

少女は、少し怖くなりました。
少女は若者の腕にすがり付くと、少年に向かって言いました。
「幼馴染くんは、心の優しい人なのよ。
私のことをいつも気にかけてくれるし、
 それにこの神社にだって、いろいろ寄進してくれている。
 なのにあなたは、どうして、そういうことを言うの!」
「そういうつもりじゃなかったんだ」
少年はうつむいて言いました。
「じゃあどういうつもりだったのよ!」
もしかしたら僕、ちょっと嫉妬しちゃったのかな
「なにいってるのよ!
 わけわかんない!」
「・・・・・・」
少年は、肩を落として、去っていきました。

少女は、あの少年は一体何者だったのかと考えると
少年の顔が、頭から離れなくなりました。

それから、眠れない日々が続きました。
あの日を境に、あの不思議な少年が
少女の前に姿を見せることはありませんでした。
今夜も、少女は布団の中で、少年のことを考えていました。
「あの銀髪に金目の不思議な少年は、一体何者だったのだろうか。
 自分で神様だと言っていたが、本当だろうか。
 確かに、あの子は、普通の人間とは違う
 ただならぬ雰囲気を醸し出していた。
 それに、私が手をつかもうとしたら、
 すり抜けてしまって、触ることができなかった。
 それに、私には見えて、幼馴染には見えなかった。
 もしかしたら、あの子は本当に神様だったのかな」
少女は寝返りうって、そして、考え直しました。
「いや、まさかそんなことはありえない。
 あんな傍若無人で礼儀知らずな神様がいるはずがない。
 きっと妖狐か幽霊のたぐいに違いない。
 仮に、あんな生意気なクソガキが神様だったら、私は巫女をやめます」
しかし、少女はまたしても寝返りをうちました。
「でも、もしかしたら、彼は神の使いの可能性もあるかもしれない。
 どちらにしろ、なにか、ただならぬ存在であることに違いはない。
 そうだとしたら、ちょっと意地悪しすぎたかもしれない。
 私が最後に見た少年の顔、すごく悲しそうだったし。
 ダンゴぐらい、あげればよかったかな」
そんなことを考えているうちに、
少女はいつの間にか、安らかに寝息を立てていました。

次の日。
少女は祭壇にダンゴをお供えして、祈りました。
「今日は久しぶりに、おダンゴをお供えしようと思います。
 ところで、このダンゴにタップリときな粉がまぶしてあるのは、
 単に私の気まぐれで、少年が好きだって言うから
 作ってあげてるわけじゃないんだからね。
 勘違いしないでよね。
 良かったら食べてください」
しかし、少年は現れませんでした。
「なによ。せっかくこっちから謝ってあげてるのに。
 もう知らない」

つづく。

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神楽鈴の巫女4

さて、少女が16のときのことでした。
朝のお勤めが既んで、神前に貢物を供えていた時のこと。
目の前に、白い麻衣を着た、少年が現れました。

少年は、祭壇の上部にちょこんと腰を下ろしていました。
年の頃は12、3。
その顔は不思議と白く透き通った色をしており、
髪は銀色に光り、目は金色に輝いていました。
顔立ちはヤマト人とは違う人種なのか、どこか浮世離れしていました。

少女はやや現実離れした光景に、我が目を疑いました。
少年の体は、なぜか薄ぼんやり霞んでいるように見えました。
「見間違いかしら」
少女は目をこすりました。
「やあ」
しかし、やはり、少年はそこにいました。
「どこから入ってきたの?
 ここは部外者は立ち入り禁止です」
「バリッバリの関係者ですけど」
どこか聞きなれない言葉遣いです。
「どこから来たの?」
「天国からだよ」
「まさかあなた、自分自身を神様だって言うんじゃないでしょうね」
「そのまさかだよ」
「そのようなことを言われても、信じられるわけ無いでしょう」
「そうかなー?
 でも、君はいつも僕に祈ってるじゃないか。
 どうか神様、私を妻にしてください、ってね」
「ななな、なにをデタラメを言っているのですか!」
「図星でしょ」
少年の心を読んだような発言に、少女は少々面食らいましたが、
しかし彼女も負けてはいません。
「とりあえず、そこから降りなさい」
彼女は少年の座っている祭壇を指差しました。
「祭壇は神聖な場所です!
 腰掛けるなどとんでもない!
 早く降りなさい!
 バチが当たりますよ!」
「えー。それを僕に言う?
 僕はバチを当てる側の存在なんだけどね」
少年は、顔に無邪気な笑顔を浮かべました。
「いいから降りなさい!」
少女は少年の胸ぐらをつかもうと、手を伸ばしました。
彼はバツの悪そうな顔をすると、彼女の手を交わすように
ヒョイっと宙を舞って一回転し、彼女の横に着地しました。
その動作はとても軽妙で、まるで弁慶の槍をかわす牛若丸のようでした。
その少年に向かって、女は怖い顔で念を押しました。
「もう神様ごっこは終わりにしなさい!
 それから、本物の神様に謝りなさい!」
彼女は前かがみになり、少年の顔を近づけました。
「だから、僕が神様だって」
無邪気でクリクリした目が、こちらを見つめています。
「もう、呆れて物も言えないわ。
 どうやったらこんな聞き分けのない子に育つのかしら。
 親の顔が見てみたいわ」
少年はそんな彼女のイヤミなどどこ吹く風で、
祭壇の上のお供え物を物色しはじめました。
「お、ダンゴじゃん!」
少年の目にとまったのは、小さな白いダンゴでした。
ダンゴは三方の上にピラミッドのようにうず高く積まれており、
蒸したてなのか、ほんのり湯気が立っています。
「このダンゴ、君が作ったの?」
「そうよ。
 でも、そんなことどうでもいいから、私の話を聞きなさい」
「いただきんぐ!!」
少年は少女の言うことを無視して、ダンゴに手を伸ばしました。
「こら! 
 それは神様へのお供え物です!
 食・べ・る・な!」
牛若丸はヒョイっと弁慶の一閃を躱すと、
追っ手を避けて、社殿から飛び出し、
近くにあった御神木の幹の上に飛び乗りました。
少年は少女を見下ろしながら
「悔しかったらここまでおいで」
自分のお尻をペンペン叩いて、挑発しました。
「ぐぬぬ」
少年は勝ち誇ったような顔で、
ポイッとダンゴを口の中に放り込みました。
「こらー!!」
少女は、精一杯の威嚇で、げんこつをあげてみせました。
「いっぱいあるんだし、ひとつぐらい良いじゃん!」
「だめです」
「それに、僕はプレーンのダンゴより、
 きな粉のまぶしてあるダンゴの方が好きだよ。
 あと、黒蜜なんか垂らしてくれるとなお良いね!」
少女は完全に堪忍袋の緒が切れました。
「悪い子に!
 やるダンゴは!
 ひとつたりともありません!」
「ケチ!」
少年は捨て台詞を履いて、どこかに消えてしまいました。

それからというもの、彼女が神前にダンゴを供えるたびに、
決まって少年は現れました。
次の日も、その次の日も、ダンゴを狙って少年は現れました。
女は、その都度少年を叱りつけ、追い払っておりました。

少年は何度追い払っても、まるでハエのようにしつこくダンゴにたかるので、
少女はほとほと、業を煮やしておりました。
ある日、少女は、とある名案を思いつきました。
それは、社殿内に誰もいないことを確認し、
内側から鍵をかけて、密室にしてしまうというものでした。
そうすれば、少年は社殿内に絶対に入ってこれないし
もうダンゴを狙われることはない、と。

しかし、少女の計画は失敗に終わりました。
少女が神前にダンゴを供えると、やはり、あの少年は現れました。
「ダンゴちょうだい!」
「あなた、一体どこから入ったの?」
「俺、神様だからね」
「・・・・・・」
「神は森羅万象に宿り、いたる所に存在する。
 だから僕は、どこにでも現れることができるんだ」
「そんなの、信じられるわけ無いでしょ。
 そもそも神様が、こんな生意気で礼儀知らずな
 クソガキなわけがないでしょう!」
「神様に向かって、失礼だなぁ」
「分かりました。
 明日から、最終手段を取ります」

猫を追い払うより魚をのけよ。
少女は次の日から、祭壇に一切、ダンゴを供えませんでした。
その日も少年は現れましたが、ダンゴがないことを知ると、
バツの悪そうな顔をして去っていきました。
そして、その後、二度と現れませんでした。

つづく。

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神楽鈴の巫女3

※今回は『神楽鈴の巫女』とはどういう人間だったか、
 その一生を振り返り、物語風にまとめてみようと思います。
 多少の脚色はあるものの、
 概ね事実に則した内容になるよう心がけました。



むかしむかし、あるところに名も無い神社がありました。
この神社は小高い山の上にあり、辺り一帯の集落の氏神様を祀っていました。
この神社に祀られている神様は、縁結びの神様で、社殿横の梅の御神木を寄り代とし、
子供の姿で、心の綺麗な人の前に現れる
と言い伝えられておりました。

さて、その神社に『神楽鈴の巫女』と呼ばれる少女がおりました。
少女は幼い頃に、流行病で両親を亡くし、頼る親戚もありません。
ひとり寂しく、神社の脇の小さな小屋に暮らしています。

少女は明け方、日の昇る前から起きだして、竹箒片手に境内の掃除を始めます。
(中略)
その顔は晴れやかで、独りぼっちの寂しさなど、微塵も感じさせません。

少女の家系は代々、この神社を守ってきた神主の家系です。
両親も身よりもない今、この神社を守るものは彼女しかいません。
彼女はよわい12歳にして、この神社を守る運命を背負わされたのであります。
女は女手ひとつで、この神社の一切を取り仕切ってきました。

彼女の振るう竹箒を支える、そのか細い腕の
どこにそのような力があるのでしょうか。
健気に日々のお務めに徹するそのさまは、
とても健気で、いじらししゅうてありました。

さて、そんな彼女の姿を遠くから眺めている若者がおりました。
若者の名は、幼馴染君と言いました。
彼は裕福な商家の長男坊で、少女よりもひとまわり上の青年です。

少女は若者に気がついて、会釈します。
「やあ」
彼はさわやかな白い歯を見せて微笑みました。
「おはようございます」
少女は彼のもとへ小走りで駆け寄りました。
少女は背の高い彼を仰ぎ見ます。
「こんな朝早くから、殊勝だね」
彼はそう言って少女の頭を撫でました。
そう、彼にとって、少女は昔から気にかけてきた可愛い妹のような存在です。
「もう子供じゃないんだから」
少女は、うつむいて、はにかみました。
「今夜は年に一度の神楽の日だね」
そう、説明し忘れましたが、この神社では、一年に一度、七夕の日に
神楽の神事が執り行われていました。
ちなみに神楽とは、神に奉納するため奏される歌舞です。

そして、この若者と談笑している、年端もいかない彼女こそ、
今回の神事の主人公であり、独り舞台で神楽を舞う巫女なのです。
ゆえに彼女は皆から『神楽舞の巫女』
あるいは『神楽鈴の巫女』と呼ばれていました。

さて。
少女と若者は、しばらく談笑していましたが、
彼は何か用事を思い出したのか、少女の肩をぽんと叩くと、
「なにか、手伝えることあったら、何なりと言ってよ」
と言い残して、去っていきました。

そう、若者は少女が物心つく以前から、ずっと
身寄りのない彼女を気にかけてきました。
彼は、彼女に、彼ができる精一杯のことをしてきたつもりでした。
もちろん、精神面でも、そして金銭面でも、です。

そして、少女はというと、この若者に絶対の信頼を寄せていました。
「血が繋がっていないにもかかわらず、
 こんな私の面倒を見てくれる。
 実の娘のように可愛がってくれる」
彼女は彼に、大きな恩を感じていました。
だから「いつか、何らかの形で恩返しできたら」と考えていました。

さて、日が暮れ、夜になりました。
今宵は年に一度の神楽の神事が執り行われる日です。
どこからともなく笛の音色が聞こえてきました。
太鼓の音頭に誘われて、神社の境内に、ちらほらと人が集まってきました。
神社の境内には、煌々と松明が灯され、
その光に照らされた社殿が、紅くゆらゆらと揺らめいています。
今、人々が見守る中、境内の中央舞台に、巫女服を着た少女が舞い降りました。
少女は白衣に緋袴という巫女装束に身を包み、
ひらひらとした薄い衣『千早』を羽織っています。
手には鈴のたくさん付いた棒『神楽鈴』を持っています。
彼女は楽器の音色に合わせて、体躯をひるがえしました。
辺りに、鈴の音がシャンシャンと響き渡ります。
時に激しく、時にゆっくりと、彼女は、すり足で舞台場を進みます。
彼女の横顔が、月の光に照らされて、なんとも神秘的です。
まるで壇上に芸能の神アメノウズメノミコトが舞い降りたかのようでした
その小さなアメノウズメは、優雅に舞いながら、天を仰ぎ、
岩戸に篭る天照を、手招きしながら誘い出します。

その光景を、少し離れた場所から眺めている男がいました。
そう、あの幼馴染の若者です。
彼は今、少女の舞を見ながら、物思いにふけっています。

先日のことです。
それは彼が、少女に、改まって話があるといって、
彼女を自宅に呼び出したときのことでした。
彼は意を決して、少女に結婚を切り出しました。
しかし彼女の返事は、あまり色よいものではありませんでした。
彼女はまず「私はまだまだ未熟です」と俯きました。
彼女は続く言葉に詰まりましたが、しかし、続けました。
「少し考えさせてください」
そう言って彼女は正座して、三つ指をつきました。
「私は、こんなに親切にして頂いている、
 あなた様に、多大なるご恩を感じております。
 私は、いつか、あなた様にご恩返しができればと思っております」
「・・・・・・」
「このような身で、あなた様の申し出を
 断る立場にないということも分かっております」
「・・・・・・」
「しかし、私はまだ修行中の身です。
 それに、神社の祭事を奉することができるのは、
 私をおいて他にはいません」
「・・・・・・」
「ですから、今すぐ返事をすることはできません」
彼はその言葉を聞いて、とても落胆しました。

少女が若者との結婚を躊躇した理由。
彼女が若者の前で語った言い訳は、あくまで建前でした。
真の理由は、別のところにあったのです。

女は毎日、日が昇る前から起き出し、
神社境内の掃除をしています。
誰からやれと言われたわけでもありません。
雨の日も風の日も、一日も休んだこともありません。
女にとって、境内の清掃こそが、生きがいでありました。

しかしながら、ここでひとつの疑問が浮かびました。
彼女は毎日毎日、神社の掃除をしていて、
なぜ飽きないのでしょうか。
たかが掃除のために、幼馴染のイケメンとの
玉の輿を躊躇する程の理由があるのでしょうか。
彼女の日々の掃除のモチベーションとは、
いったいなんだったのでしょう。

そうなのです。
実は少女は神様に恋していたのでした。
年頃の女が男に恋をするように、少女は神様に恋していました。
年頃の乙女が男に尽くすように、少女は神様に仕えているのでした。


少女の神への想いは、なから狂信的なものがありました。
少女は、こう考えていました。
両親がなくなったのも、全て運命で、神が仕組まれたことだ」と。

傍から見れば、神がこのような酷い仕打ちをするだろうかと疑問に思うでしょう。
普通の人なら、このような悲惨な目にあったら、神に落胆して、
信仰心を失ってしまうように思うのですが、しかし彼女は違いました。
それどころか、彼女はむしろ、その出来事があったからこそ
「自分は仕事に従事できる」と考えていました。
そして、両親がなくなり、兄弟もおらず、
自動的に自分が神社の跡を継がねばならなくなり、
結婚という逃げ道が狭められたことで
「神は自分を必要としてくれている。
 神から自分しかできない仕事を与えられたのだ」
と考えていました。
さらに、彼女の胸は「自分は神から選ばれたんだ」という
選民的自尊心で満たされてもいました。

もちろん、彼女は純粋な人間です。
毎日、謙虚な気持ちで、神に祈っていました。
私は神様のことを考えると、
 胸が熱くて熱くて、張り裂けそうになります。
 神様は、私の想いを、わかってくれるでしょうか。
 神様に私の思いは、届くでしょうか。
 いや、私の想いなどなど届くはずもない。
 私ははちっぽけな人間です。
 そんなちっぽけな人間の自分ができることは、
 この神様の家である社を祓い清めることだけ

そんな想いで、彼女は毎日、境内にホウキをかけ、
社殿の床を磨いているのでした。

とまあ、彼女の本心はそのようなものでした。
彼女が若者の結婚の誘いを保留にした理由も
わからなくもありません。

つづく。



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2015年05月26日

神楽鈴の巫女2

今回は前回に引き続き
『神楽鈴を持った巫女』について調べていこうと思う。

山が見える。
いくつもの山が連なっている。

山の木々は紅葉し始めている。
季節は晩夏といったところか。

山の麓に、人里が見える。
ポツポツと人家が点在し、田畑も見える。
時代は江戸時代ぐらいか。

場所はどこだろう。
詳しい場所は分からないが、どこかの片田舎といった感じ。

その村の真ん中には、一本の道が通っている。
道はもちろん舗装されていない。
黄土色の土が剥き出しの道で、
よく踏み固められているが、ときおり砂埃が舞っている。
道の幅は大八車がギリギリすれ違える程度の広さだ。

その道が、先ほどの山の麓まで続いている。
山の麓に、石の階段が見える。
その階段は何百段もある長い階段で、
二百年ぐらい前にできたものだろう。
その階段が山の頂上へと続いている。

山の頂上には神社が立っている。
神社は築二百年ぐらい。
大きさは中程度。
全体的に茶色いイメージ。
赤くはない。

鳥居は石でできている。
その鳥居をくぐり、境内に入る。
足元を見ると、石畳が敷かれている。
両サイドには石で出来た灯篭。
狛犬は・・・ないように思える。
そして、目の前に本殿が見える。
本殿は大社造で、屋根は桧皮葺。
祭神はおそらく天津神系・・・
おそらく天照、そしてアメノウズメだろう。

ところで、この神社は実在する(した)神社ではないかもしれない。
私の心の中にある神社、もしくは霊界の神社のようなものかもしれない。

そして、この神社は、以前も霊視したことがある。
確か『巫女服を着たキツネ』がいた神社だ。
『巫女服を着たキツネ』は、以前このブログでも紹介したことがある。
彼女を一言で表現するなら
『今生の私に霊能力を授けてくれているらしい、とてもありがたい存在』である。

私は「そういえば」と物思いに耽る。
「あのキツネはよく、人家の屋根の上に登って
 周りを見渡すのが好きだったな」
そんなことを考えながら、ふと本殿の屋根に目をやると
案の定というか、なんというか、やはりあのキツネが屋根の上に乗っていた。

キツネは巫女服を着た少女の姿で、大棟のところに、ちょこんと腰掛けている。
顔には狐の面をかぶり、手には金の扇子を持ち、足には天狗下駄を履いている。

キツネが小袖をひらひらさせながら
「ひさしぶりじゃのう」と手を振ってきたので、私は礼をする。
「いつもありがとうございます」
キツネは「うむ」と扇子を持った手を胸に当てて、胸を張ってみせた。
「でも、今回用があるのは、あなたじゃないんです」
キツネは「なんだ」と残念そうに肩を落として、シュンと下を向いてしまった。
こどもか。
なんてわかりやすい神様なんだ。



そうそう。
この神社に来た目的は『お狐様』ではない。

私は境内を見渡す。
境内の左隅の方に、一人の巫女さんがいる。
そう、彼女こそ、今回、私がこの神社に来た目的。
すなわち『神楽鈴の巫女』さんだ。

彼女は今、神楽鈴を竹箒に持ち替えて、
境内の落ち葉を掃除している。

私はしばらく彼女を観察する。

どうやら彼女は一日の大半を掃除に費やしているようだ。
日の昇る前から起きだし、境内を竹箒で掃き掃除。
朝日が登る頃には、外の掃除を終わらせ、社殿の中に入る。
それから建物の窓という窓、戸という戸を全部開け、
柱や梁の埃を払い、床の拭き掃除をする。

とても感心だ。

しばらくして、社殿内部はピカピカになった。
これで掃除は終わりか。
と思いきや、これで終わりではない。
彼女は、おもむろに、懐から神楽鈴を取り出す。
そして神楽鈴をシャンシャンと鳴らした。
何をやっているのだろう。
「空間を清める」
どうやら、神楽鈴の鈴の音で、悪い霊や、
汚れたエネルギーを祓い清めているようだ。

こうして、彼女の巫女としての一日が始まる。

そして、たいへん殊勝なことに、彼女は巫女の仕事をする傍ら、
暇を見つけては、掃除をしている。
だからこの神社の境内にはチリひとつ落ちていない。
口うるさい姑さんも降参するほどに、
すみずみまで完璧にピカピカなのだ。

その他に、彼女を一日観察していて気がついたことを書いていく。
まず、彼女はとても無口な性格だ。
一日を通して、他人とほとんど会話しない。
そして人との接触を極端に避ける。
このようなことから、彼女がこの神社に居着いた理由も見えてくる。
おそらく、彼女は下界の喧騒を避け、
人付き合いなどの煩わしさから解放されたかったから
この神社に引きこもっているに違いない。
そして、どうやら彼女は内心、こう思っているらしい。
下界の者は穢れている。
 穢れている者と接すると、私も穢れてしまう。
 だから、下々の者とは関わりたくない

そういうことらしい。
だから彼女は、この神社にこもって、
そして、ひたすら掃除を続けている。

「はあ」
私はため息を付いた。
ここまで来ると完全に病気である。
彼女はとてつもない、潔癖症だ。

しかし「それにしても」と私は思った。
毎日掃除ばかりして、よく飽きないものだ。
感心するを通り越して、呆れてしまう。



私が、そうため息をついた、その時だった。
突然場面が切り替わった。

時間が巻き戻るのがわかった。


これは、彼女が16歳前後の時のことである。
16歳の彼女は、やはりというべきか、境内の掃除をしている。
目をらんらんと輝かせて、床の拭き掃除に精を出している。
彼女は今、掃除をすることに至高の喜びを感じている。

なぜ、そんなに掃除することが楽しいのか。
毎日毎日、同じ場所の掃除を繰り返して、なぜ飽きないのか。
そのモチベーションはどこから来るのか。

どうやら、彼女が掃除をする理由は、
「潔癖症だから」という理由だけではないようだ。

私は彼女の体の中に入った。
そして、瞬時に理解した。
そう、彼女は「神様に、恋している」のだ!!!

彼女にとって、神様とは理想の存在そのものであり、
もっと言うと理想の異性像そのものなのである。
神様は時に最愛の彼のように優しく、時に敬愛する父のように厳しく、
彼女の心の内をすべて見通して、
それでいて彼女の全てを無条件に愛してくれる、
そして決して裏切らない、
いつまでも変わらない永遠のアイドルなのだ。


彼女には、下界の男はすべて汚い狼に見えていた。

彼女は、年頃の乙女が男の子に恋するように、神様に恋していた。
そして年頃の乙女が愛する男性に尽くすように、
彼女は、ほとばしる情熱を、神に仕えることを通して、捧げていたのだ。


そう、彼女はこう考えていた。
「穢れた人間である私が唯一、敬愛する神にできること。
 それは、神の家である社と、境内をきれいにすること。
 穢れを祓い清めることこそ、私の生まれてきた目的であり、使命なのだ

そう考えていたのだ。
だからこそ彼女は徹底的に、誠心誠意、掃除をするのだ。

彼女は単なる潔癖症ではなかった。

もっとも、彼女がもっと年をとって、大人なると、
残念ながらというべきか、
次第に彼女は現実的になっていった。

彼女は年をとるに従って、次第にこのように考えるようになった。
「私はこの神社をずっと守っていかなければならない。
 もちろん、私が死んだ後も守っていかなければならない。
 したがって、私はまったく気が進まないが、
 世継ぎが必要だ。そのために子孫も残さねければならない。
 そのためには結婚もセックスも必要だ。
 その相手は神様と、までは行かないまでも
 誠実なイケメンが望ましい。
 なおかつ神社の改修のお金を出してくれるような
 裕福な家の旦那様が望ましい」
とまあ、そうなってくるわけだが。
これ以上、話を続けるのは野暮というもの。
多くは語るまい。



さて、それでは、『神楽鈴の巫女』という人格が
今生の私に及ぼした影響について、いくつか書いていく。

まず、一つ目。
私は良く手を洗う。
多い時には一日10回以上洗う。
外から帰ってきた時、料理をする前、お手洗いの後はもちろん、
書き物をしたり、勉強したり、読書をする前にも必ず手を洗う。
それから、勝負事の前にも、必ず手を洗う。
これは心情的には、神社で参拝する前に手を洗うのと同じだ。
それから、二つ目。
外出するとき、あるいは人に会うときは必ずシャワーを浴びる。
これも、神前に拝する前に、心身を清めるための禊と
同じ感覚でやっていることだ。
それから、三つ目。
部屋が片付いていないと落ち着かない。
私は元来、面倒くさがりやなので
掃除はあまり好きではないのだが、
反面、部屋が片付いていないとイライラして仕方がない。
だから、寝る前には必ず部屋を整頓し、掃除機をかける。
疲れていて掃除ができないときには、最低でも枕元を整理する。
これも、彼女の影響だ。
それから、四つ目。
自分の部屋に他人のものを置きたくないこと。
特に、他人のエネルギーが放射しているものを置きたくない。
そういうものが部屋の中にあると、
気が散るし、心が落ち着かない。
それから、五つ目。
最近、神棚を設置したこと。
つい先日、なんとなく気分で、自分の部屋に神棚を作ろうと思い立った。
早速、近所のホームセンターで、板と棒を買ってきて、
神棚を載せる基礎の部分を作った。
そして基礎部分が完成し、あとは神棚を買いに行けば完成というところで、
なんと、玄関先に無造作に神棚が置いてあるではないか。
聞けば、この神棚は母親が何日か前に、
閉店する家具屋から安く譲ってもらったものとのこと。
もちろん、これは私が神棚をつくろうと思い立つ以前のことだし、
母親と申し合わせていたわけでもない。
だから、その時は、こんな偶然があるんだなと驚いたわけだが、
もちろん、偶然なわけがない!
それから、六つ目。
仏壇に野菜の種を供えてお祈りすること。
私は趣味で家庭菜園をやっているのだが、
なぜだかわからないが、種を植える前に、
仏壇に供えるのが常になっていた。
仏壇に種を供える理由が、自分でもよくわからなかったのだが、
今ようやく理由がわかった。
『神楽鈴の巫女』は豊作祈願をするとき、
作物の種を神前に供えてお祈りしていたのだ。
その影響で、私も無意識に仏壇に種を供えていたというわけだ。
もっとも、種は仏壇ではなく、神棚の方に供えるべきだということなのだが、
つい最近まで神棚がなかったので、それは仕方あるまい。
よくよく考えてみると、確かに、種を仏壇に供えても、
ご先祖様はお困りになられてしまうという話だ。

以上。
そういうわけで、『神楽鈴の巫女』が
私の今生の人格に及ぼした影響は計り知れない。

つづく。

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神楽鈴の巫女1

目の前に25歳ぐらいの巫女が現れた。
手には鈴のたくさん付いた棒を持っている。
(後で調べてみると、これは「神楽鈴」と言って、
 巫女が儀式の時に使う道具らしい。)

それから、彼女が着ている巫女服が印象的だ。
上はシンプルな白衣なのだが、
さらにその上に、ヒラヒラした薄手の白い布を羽織っている。
(これも、後で調べてみると、どうやら「千早」と言って、
 主に儀式の時や、神楽舞で着る服のようだ。)
それから、下は明るい緋色の袴を履いている。
袴の裾は地面につくかつかないかぐらいの長さだ。

それから、髪は真っ直ぐで、つややかな黒髪。
そして、とても長い。腰ほどまである。
その髪を背中あたりで一纏めにしている・・・
白い包帯のような布をグルグルと巻いて縛っている。
そして髪全体が、まるで無重力状態であるかのように、
ふっくらと空気をはらみ、ふわっと横に広がっている。

前髪はパッツン。
眉毛の上の辺で、真っ直ぐに切り揃えられている。

顔は色白で、妖艶。
輪郭はしゅっと細く、美形。
目は細め。
口には真っ赤な朱。
口元は固く引き結ばれており、
口数が極端に少ないという印象を受ける。

突然、彼女が腕組みをした。
そして、とても、怖い顔になった。
どうやら、彼女は私に対して、
腹を立てているようだ。
なぜだろうか。

次の瞬間、彼女は宙に浮かんだ。
それと同時に、彼女に後光が差し始めた。
まるで純白の太陽が彼女の後ろで輝いているかのようだ。
眩しくて思わず目を覆いたくなるほどの光。
黄金の鋭い針のような光線が
放射状に回転しながら、彼女を照らしている。

そして、後光が差すのと同時に、
彼女の背が、みるみる大きくなっていく。
最終的に20メートルぐらいになった。

ここで、私はひとつ、思い出したことがあった。

神様は総じて、背が高いということだ。

以前調べた時、天照は日本を覆うほどの大きさだったし、
阿弥陀如来は頭が雲の上に隠れて見えなかった。

私の目の前にいる巫女も、大きさが20mぐらいあるので、
それなりの神様であるということだ。
敬意を表さなければならない。

さらに、彼女の左後ろ、おおよそ肩の上の位置に、
おたふくの仮面をかぶった巫女が見える。
このおたふくの仮面の巫女は、以前見たことがある。
そう、アメノウズメだ。
アメノウズメは日本神話に登場する神様で、
天照大神が天の岩戸に隠れた時、岩戸の前で踊りを踊った巫女だ。

どうやら、この目の前の巫女は、
アメノウズメの守護を受けている。
つまり、彼女が言いたいこと、それは
「私は、それなりに信仰を得ている神であり、
 アメノウズメの代弁者であるので、敬意を表しなさい」
ということだ。
そこで私は思った。
「虎の威をかる、なんとやら。
 自分の威厳を示すような神なんて、大した神じゃないな」
まあしかし、そんな言葉は、口が裂けても言えない。
ともかくも、私が彼女を少し軽視しているのは確かだ。
それを察して、彼女は今、大きくなったり、
後光を差して見せたりして、自分の威厳を示しているのだ。
やはり、ここは、謝っておかねばならるまい。
「大変申し訳ございません。
 謹んで、お詫び申し上げます」
と私は言った。

このような存在には、相手が仮にどのような存在であっても、
常に謙虚さと畏敬の念を持たなければならない。
さもないと、つまらないところでつかっかかっていて、
全然話が進まない。

それでは、たいへん僭越ながら、
この神様はいったいどのような神様であるか。
調べさせていただくことにしましょう。

つづく。

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2014年10月03日

前世一覧(2014.10.03現在で思い出したもの)

※・以下は霊視した第一印象のビジョン
 「」内は特定できた者のみ、その生での名前または愛称、
 ()内は司る性格や象徴・歴史または今生に及ぼした影響


●魂の前世
・紫色お目々くりくりデカ頭宇宙人「オリオン星人」
 (第六次元、第六のチャクラ、第三の目、宇宙船、宇宙戦争、母星と文明の滅亡、
  子供心、女、弱さ、孤独、周囲からの不理解、処女受胎、人体錬成、アセンション、
  地球上で輪廻する霊の救済をしてやっているという傲慢さ、キリスト、魂のロンダリング、
  知的好奇心旺盛、科学と理性の盲信、愛を低次の欲求だとして疎かにする心、
  核技術や遺伝子組み換え技術への警鐘、宇宙人の魂と地球で輪廻する霊の対立)


●守護神、御神縁、または守護神に関係する前世(影響が強い順)
・杖をついた光り輝く白髪老人「AM THAT AM」(我が神、蛇の杖、二極性の統合、キリスト意識)
・十二単のお多福「」(天照、日本サーバー、羽衣、現実は心の鏡、お天道様が見てる、目、金字塔)
・麻衣を纏いて大剣を携えたる男「日本で二番目に古い帝」(二のつく彦、肉体の基礎、天叢雲剣)
・金剛禅僧「ボディサットヴァ」(慧、虚空蔵、パーラミッタ、如来、克己、質素、前世と真理の探求)
・茨の冠の戦いと守護の天使「古き友」(ギリシャローマ神話、エルサレム神殿、アーク、救世、王)
・巫女服と玉串のキツネ「御狐様」(巫女、イタコ、霊能力、清め、榊の枝、金扇、忠犬、契約、親子)
・ギリシャの哲学者「」(数学、論理的思考、集合的無意識、ソクラテスの問答法とヘーゲル弁証法)
・羽ペンと本を携えたキリスト教使徒「インマヌエル」(福音記者、伝統主義、聖書編纂と写本普及)
・指先光線メス外科医「医療チーム」(アスクレピオスの杖、針灸、人体や経絡の智識、治癒の奇跡)
・ファラオとその姉「アメンアテン」(アンクアテン、トート、イクナートン、統合、第八チャクラ、矜持)
・6つの羽の智天使「ケルビム」(契約の箱、生命の樹、禁断の果実、究極の秘密、封印、狛犬)
・ターバン黒髪と髭の砂漠の民「」(ゾロアスター、善悪二元論、7つの性質、感謝、天使の羽、拝火)
・大翼の天使「ダイダロス」(イカロス、ギリシャローマ、シチリア、発明、迷宮、パスタ魚介類大好き)


●守護霊に関係する日本での前世(時系列順、細字は他の項目とダブっているもの)
・神話時代の二番目の帝
・古墳時代の渡来人「ハタ、シン」(土木技術、文字文化、機織り、製鉄、儒教、豪族、古墳)
・古墳時代の皇族と巫女「」(豊鍬入姫命、伊勢神宮、邪馬台国、東の果て、天照、三種の神器)
・飛鳥時代の皇族「」(先住系と朝鮮系の民族融和、天皇派閥の統一、古事記と日本書紀)

・平安時代の公家と尼
・平安時代の公家「」(在原行平、和歌、稲葉山、左遷、蟄居、不遇、出世派閥争い、浄不浄)
・平安時代の役人「少納言モトチカ」(5才で税の帳簿の偽り指摘し元服、父の失策の尻拭い)

・平安時代の禅僧
・鎌倉時代の山伏「」(求聞持法、祈祷、狐、天狗、登山、野草や木の実の採取、無償の愛)
・鎌倉時代の公家「」(崇徳院、呪、修羅の鬼、恨み辛み、大乗仏教、王が民に民が王に、決別)
・鎌倉時代の弓矢武芸者「幸若」(狩り、肉食系男子、ハングリー精神、野菊、南朝、公家)
・室町時代のワビサビ茶坊主「」(村田珠光、俳諧、自然観察、素朴、謙虚さ、カフェイン酔い)
・戦国時代の武将「」(忠義、大義、勝鬨飯、毘沙門天、卍、日の丸、花菱、忍者、山城、男色)
・江戸時代中期の薬問屋番頭「六」(秤算盤帳簿、几帳面、前世人格の分類、カルマと金銭の管理)
・江戸時代中期の漁師「」(海、あさり、舟、釣りへの興味、逆をつく天邪鬼さ、手ぬぐい)
・江戸時代中期の大工「」(工作、接ぎ木、かんな、Minecraft、実家が建設業、小学生で建築)
・侍「ゴロツキ浪人」(辻斬り、難癖、ゆすりたかり、道場破り、用心棒、仕置人、天誅、睨み目)
・旅館の女将と極道の女「女将」(恫喝、声のドス、経営、給仕、仕切り屋、元締め、丁半賭博)
・江戸時代後期の浮世絵師「」(月岡芳年、山水画、水墨画、幽霊画、版画、漫画アニメ)
・幕末の志士「」(山岡鉄舟、明治天皇、南北朝時代の天皇家のカルマ、無血開城、天叢雲剣)
・明治時代の詩人「」(若山牧水、小説、同人誌、詩、前世の物語を本にしたいという欲求)


●守護霊に関係する海外での前世
・契約の箱を担ぐヒゲ男「」(ユダヤ、幕屋、神輿、三種の神器、ヘルメスの杖、わっしょい、わっせ)
・頭痛持ちのワイン好きな作曲家「」(指揮、作曲は幻聴を楽譜に書き込むだけ、バイオリン、オケ)
・赤いチャイナ服の龍踊り劇団長「ハオエン」(教師、面倒見の良さ、子供好き、演舞、手に職)


●血縁に関係する前世
・酒飲みグウタラおやじ「母方の実家の分家」(朝寝朝風呂朝酒、身上潰し、怠惰、反面教師)

●ツインソウルに関係する前世
・薄紅色の羽衣の天女「織姫」(魂の伴侶、イシスの性魔術、癒し、アセンション、天竺)
・平安貴族の歌詠み尼「十二単の姫君」(天照大御神、和歌、物語、日記、結婚、子孫繁栄)
・フランス貴族のお姫様「」(ブルボン家、マドモアゼル、シングルマザー、純粋で一途な恋、男は狼)
・神楽鈴を持った巫女「」(アメノウズメ、ツインソウル、神楽舞、祓い清め、滅私、理想と現実)


●その他の海外の前世(時系列順)
・ターバン中肉中背男「アモール」(落ち着きの無さ、ひげ、不貞、浮気、離婚、駆け落ち、私刑)
・タロット占いババア「魔女」(ピコデラミンドラ、カバラ、霊感、魔女狩り、悪魔や狐との契約の忌避)
・中世欧州快楽殺人鬼「伯爵」(ドS、拷問、痛みと恐怖の悦び、異常性癖、強姦、悪魔、ドラキュラ)
・アンデスのインディオ「」(ヤギ、リャマ、アルパカ、マッシュドポテト、山、ごく普通の平凡な幸せ)
・北欧ハードボイルド時計職人「ミスター」(機械修理、腕時計、ミクロンの精密さ、0コンマの正確さ)
・砂漠の少年兵「アラン君」(盲信、仲間意識、ゲームとしての殺人、戦争と殺人兵器への嫌悪)
・大型客船の航海士「」(絶叫、猪突猛進、事故的非日常を面白がる狂気と不謹慎さ、錯乱、勇敢)
・地中海諸島日光浴オヤジ「キャプテン」(横ボーダーのシャツ、グラサン、休暇、海賊、財宝)

・中南米バーテンの女「姐さん」(ドラック、タバコ、酒、カード賭博、女性的性の悦楽、直前の生)
・お調子者の白人男「金髪野郎J」(大仰なジェスチャー、ケセラセラ、俳優、ダンス、ナンパ、遊び)
・小学校教師の白ひげ黒人「」(宇宙と宇宙人への興味、科学、人種差別、事故死、平凡な幸せ)
・ロシアの白人金髪女ダンサー「」(ウクライナ、モデル、フィギュアスケート、ダンスレッスン)
・近代北欧老人ホームぼけ男「じじい」(心臓病、ボランティア、肉体の掛け持ち)


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2014年09月24日

アンデスのインディオ

足元に黒い土が見える。
それから、ゴツゴツした黒い岩石が見える。
周りに、草や木は一本も生えていない。
この土壌は火山性の堆積物が積もって出来たものだ。
そして、この土地はとても痩せた土地だ。

ここはどこかの火山の山麓だと感じる。
標高はかなり高い。
霧で視界がとても悪い。

私はなぜここにいるのだろう。
そして、私は誰だろう。

自分はインディオだと感じる。
しかし、インディオにしては肌が浅黒い。
もしかしたら、私はインディオと黒人との混血かもしれない。

自分の外見を観察しようとするが、できない。
自分の顔を、思い出せない。
なぜだろう。

どうやら、私は「鏡を見たことがないので、元から自分の顔を知らない」ようだ。

私の体型は痩せ型。
身長はかなり高い。
手足がひょろ長い。
髪は短く、天然パーマだ。

住んでいる場所はどこだろう。
ペルーの山岳地帯だ。
石を積み上げた家に暮らしている。

主食はヤムイモだ。
あるいはキャッサバと呼ばれるような長芋だ。
どのように食べるか。
芋は、適当に皮をむいて、乱切りにして、
ゆでて、すりつぶして、練って、マッシュドポテトにして食べる。
あるいは、すりつぶしてから火を通しているかもしれない。
芋を調理するときには、すりつぶして、よく練るのがポイントだ。
練りが甘いと、パサパサして美味しくない。
だから、よく練らなければならない。

それから、私はリャマとヤギを飼っている。
仕事は、羊飼いのような仕事をしている。

それでは、時間をさかのぼって、
若い頃を見てみる。
私が14歳ぐらいの頃のことだ。

目の前に、12歳ぐらいの女の子が現れた。
彼女は私の家の近所に住んでいる女の子で、私の幼馴染だ。
身長は私よりも一回り小さい。
体型はやや痩せ型。
肌は浅黒い。
おそらく黒人か、黒人の血が入っているインディオだろう。
顔はたまご型、目は少しタレ目、瞳は真ん丸、唇が厚い。
髪は茶色に近い黒。
髪型はセミロングで、すごいくせっ毛だ。
横髪はドレッドヘアーにし、ビーズのような髪飾りをつけている。
服は、色とりどりの糸で編んだ、ペルーの民族衣装を着ている。
その上に、赤い生地に白い線の模様の入ったポンチョを羽織っている。

彼女は、石の上をぴょんぴょん飛んで、こちらにやって来る。
彼女がジャンプするたび、ポンチョがふわっと広がり、ヒラヒラとなびく。
その様は、まるでムササビが木から木へ飛び移るかのようだ。

彼女は今生の知り合いか。
わからない。

私は彼女に対して、どのような思いを抱いているか。
少々恥ずかしいが、ありのまま、思ったことを記す。
私は彼女の胸が気になって気になって仕方がない。
もちろん、それは決して、いやらしい意味ではなく、
純粋な知的好奇心から来る思いだった。
そう、12、3歳ともなれば、男女の体の違いを意識し始める年頃だ。
私はまず自分の胸を見、それから彼女の胸を見た。
私の胸にはない、しかし彼女の胸には二つの小さな膨らみがある。
その膨らみがあることが、私は不思議で不思議で仕方がない。
私は、彼女の胸をもっとよく観察したいと思う。
できれば、服の上からではなく、直接見てみたいと思う。
そして、直に触ってみたいと思う。

私が彼女に、そのことを伝えると、彼女は一言
「気持ち悪い」と言った。
交渉決裂だ。
彼女は両腕で覆い隠すように胸元を押さえ、そして俯いた。

私は、己のデリカシーの無さを恥じた。
私はもう、彼女にこのようなセクハラはしないと誓った。
しかし、一方で、私の彼女の胸に対する興味は募る一方だった。
だから、私は毎日のように、彼女に交渉した。
もちろん、間接的に、である。
プレゼントをしたり、デートに誘ったり、
ありとあらゆることをして彼女に気に入られようとした。

そして、最終的に、私は彼女の胸襟を開くことに成功した。

程なくして、彼女は妊娠した。
私は両親からこっぴどく叱られた。
そして私は、責任を取ることになった。
私は彼女と結婚した。
私たちは、山の中腹に、小さな石積の家を建てて、そこで暮らし始めた。
最終的に、子供は4人出来た。
私はヤギとリャマを飼って、生計を立てた。
貧乏だったが幸せな家庭だった。
私は70歳ぐらいまで生き、痩せて衰弱して死んだ。
私の人生は、平凡な人生だった。
しかし幸せな人生だった。

それでは、この前世が今生の私に及ぼした影響は何か。
1、高い山の上にいる夢をよく見ること。
2、マッシュドポテトが好きなこと。
3、アルパカが好きなこと。
このようなことだ。

今回は以上です。
ありがとうございました。

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2014年09月16日

中世フランス貴族のお姫様

目の前に紫色のドレスを着た初老の女性が現れた。

年は70前後。
身長は155センチ前後。
体格はやや痩せ型。
服装はドレス。
このドレスは中世のヨーロッパの貴族が着ているような種類のものだ。
ドレスの色は濃い紫色と、白もしくは薄紫色。
材質は絹とレースだ。
髪は白髪の混じったブロンド。
髪の長さは、ショートカットか、
あるいは長い髪を三つ編みにして、まとめて団子状にしている。
また、人前に出るときは、白い毛色のカツラをかぶっているかもしれない。
外出するときは紫色の日傘をさし、白いシルクの長手袋を着用する。
彼女は日焼けすることを極端に嫌っている。
それから、頭には、紫のバラの花飾りを付けている。
顔には年齢を感じさせるシワが、刻まれている。
そのシワを隠すように、化粧をべったり、している。
白粉に、口紅。
それから、頬に朱を入れている。

彼女は一体何者か。
「マドモアゼル」と聞こえた。
どう言う意味だろう。
後で調べてみると「マドモアゼル」とは
フランス語で未婚の女性のことを指す。
つまり、彼女は未婚のフランス人であるらしい。

それから、彼女の後ろに、廊下が見える。
この廊下はとても長い。
全長は、おそらく50メートル以上ある。
幅は10メートル程。
廊下の片方には大きな窓があり、そこから明るい日の光が指している。
窓の外には、とてつもなく広い、平らな草むらが見える。
その草むらは森に取り囲まれている。
そして、森の向こうに、小さく、三角屋根の時計台が見える。

それでは、先ほどの、廊下に戻る。
廊下の窓を背にした反対側の壁には、大小様々な絵画が飾ってある。
絵画の下にはアンティークの椅子がずらりと並んでいる。
天井には宗教画のようなものが描かれており、
そこから豪勢なシャンデリアが下がっている。

この廊下は、どこかの宮殿の廊下だ。

ここは、どこの宮殿だろう。
後で調べてみると、この宮殿は
フランスにあるフォンテーヌブロー宮殿
という宮殿に似ていることがわかった。

さて、その廊下の真ん中で、先ほどの彼女が
手をパチパチ叩いているのが見える。
「はいはいはいはいはい。
 みなさん、注目してください」と聞こえた。
どうやら、手を叩きながら「はいはいはい」と連呼するのが、彼女の癖のようだ。
すると、彼女の周りに、若い娘たちが集まってきた。
人数は5〜15人。
人数にばらつきがあるのは、
おそらく日によって集まる人数が違うからだ。
娘たちの年齢は6歳〜18歳ぐらいか。
娘たちは、皆、ドレスを着て、化粧をして着飾っている。
どうやら、彼女たちは皆、貴族のようだ。
そして、彼女はその娘たちに向かって、何やら演説を始めた。
演説の内容は「人生訓」のようなものだ。

どうやら彼女は、家庭教師のような仕事をしているようだ。

それでは、彼女はいつの時代に生きていたか。
何か、時代を特定する手がかりはないか。
「テニス」
と聞こえた。
後で調べてみると、テニスは8世紀から
フランス貴族の間で流行り始めたらしい。
したがって、彼女が生きたのは8世紀以降、
特に8世紀に近い年代であろう。

それでは次に、彼女の若い頃を見てみる。
彼女が15歳前後の頃のことだ。

彼女が先ほどの宮殿の、廊下の椅子に座っているのが見える。
服装は、黄色と白いレースで編んだドレスを着ている。
髪はブロンド。
長い髪を、後ろでまとめている。
容姿はそれなりに整っている。
目はキリッとしている。
瞳の色は、やや明るい灰色。
頬はリンゴのように赤い。
そしてソバカスがある。
それから、目の下に泣きボクロがある。
ちなみに、このそばかすとホクロは
彼女にとってコンプレックスになっているようだ。

彼女は、椅子に座って、足をプラプラさせながら、窓の外を眺めている。
「毎日が、退屈で退屈で仕方がない」と感じる。
彼女は靴のつま先をくっつけたり離したりして、コンコンと音を立てている。
それから、両足の裏を交互に床に叩きつけて、パタパタさせている。
その音が、いつも廊下に響いている。
これが彼女の癖であるらしい。

彼女の日課は、女友達とおしゃべりすること。
それから立食&ダンスパーティーに出ることだ。
「人付き合いは大事だ」と彼女は言う。
「そして、パーティーには必ず参加しなければならない。
 病気だろうが何だろうが、這ってでも行かなければならない。
 なぜなら、パーティーに参加しないと、必ず影口を言われる。
 それどころか、あらぬ噂を流されるかもしれない。
 だから、女友達を監視するため、パーティーには必ず出席する」
彼女はとても世間体を気にしている。

そして、私は、彼女を通して、
女社会の恐ろしさを垣間見た気がした。
「女は女で大変なのよ」と彼女は言う。

しかし、私に言わせれば、男も男で大変なのだ。
当時の男性貴族は、国中を駆け巡って、
戦争や政治関係の調整をし、忙しく働いていた。
身分の低い男性は肉体労働もする。
そして、兵役もある。
戦争が起これば、命懸けで戦わなければならない。
「その点、女は何もしなくて良いから、楽。
 私は女に生まれて、本当によかったわ」
と若い彼女は語る。

場面が変わって、
女の子数人が、とても楽しそうに話しているのが見える。
その中に、先ほどの彼女もいる。
彼女は、ときたま口に手を当て驚いてみせたり、
「きゃー」と黄色い悲鳴をあげたりしている。
彼女たちは、一体どんな話しをしているのだろう。

私は彼女の体の中に入った。

私たちは今、恋愛話に花を咲かせている。
一人の背の高い女の子が、
得意げに自分の恋愛経験を語っている。
この女の子は、ここに居る誰よりも経験豊富な女の子で、
私のお姉さんのような存在だ。
ただし、血のつながりは、そこまで強くない。
彼女は私の遠い親戚だ。
年は自分よりも2、3歳年上だ。
彼女は今生の知り合いだろうか。
なんとなく、中学の同級生のM子さんに似ている。
ただし、これは雰囲気が似ているだけで、
本人ではないかもしれない。
ただし、M子さんは、同じフランスの貴族で、
私は彼女と同じ時代に生きていたように感じる。

さて、先ほどの場面に戻ろう。
私達の話題はめぐりめぐって、
男女の夜の営みについての話になった。
「男の人とするソレは、すごく気持ちが良いものよ」
と先ほどのお姉さんが、赤裸々に語る。
私はドギマギしながら「肩もみとかのマッサージよりも、気持ちがいいの?」と聞く。
私はソレを経験したことがないので、お門違いなことを言ってしまう。
「そんなの、比べ物にならないくらい、気持ちがいいものよ」
お姉さんは、笑いながら答える。
「ソレは、食べ物を食べたり、眠ったりするよりも
 満たされるものなの?」と私。
「そうよ」
「ソレをするにはどうしたらいいの?」
「まずは、カッコイイと思う男の人を見つけることよ」

場面が切り替わった。
純白のドレスを着た彼女が見える。
彼女の周りに、お花畑が見える。
彼女は、お花畑に舞う色とりどりの蝶と戯れながら、
胸に手を当て、目を静かに閉じ、物思いに耽っている。
彼女の胸は、とても熱く切ない想いで、今にも張り裂けそうだ。

それはそれは情熱的な恋だった。

それでは、相手は誰か。
目の前に、とてもハンサムな男性が現れた。
服装はチョッキにズボン。
服の色合いは黒に近い、深い緑色。
服のデザインは、中世ヨーロッパの貴族が着ているようなものだ。
頭に白い毛色のカツラをかぶっている。
カツラの前髪は真ん中分けで、横の毛は数段に分けてカールしている。
顔形はとてもハンサム。
目つきは凛々しく、瞳は薄い灰色で、透き通っている。
笑顔は爽やかで、えくぼが可愛い。
彼は気さくでナンパな性格だが、決してプレイボーイではない。
純粋で誠実で、真摯だと感じる。

しかし、それは彼を観察している私
もとい彼に恋している彼女の主観であって、
本当は違うかもしれない。

それでは、彼は今生の知り合いだろうか。
なんとなく雰囲気が親友のS君に似ている。

うーん。
今生では男同士なので、なんだか、とても複雑な気分だ。

さて、話を戻そう。
ともかく、彼女は彼にメロメロだった。
彼女は完全に、彼のいいなりになっていた。
彼が甘い言葉で彼女を誘惑すると、
彼女は何も警戒することなく、彼にホイホイついて行った。

彼女は、夜な夜な、彼とベッドを共にした。

ここで彼女は初めて、あのお姉さんの言っていたことがわかった。
「愛し合うということは、とても素晴らしいことだ」と
心と体で実感したのだ。

さて、彼女の言う「愛し合うことは素晴らしい」というのは
大変結構なことだ。
しかし、とろけるようなラブロマンスには、
たいてい大きな落とし穴があるものだ。

ここで私は「赤ずきんが狼に食べられる」というイメージを見た。
そう。
純粋無垢な彼女は、哀れ下衆男の毒牙にかかり、その餌食となってしまったのだ。

程なくして、彼女は妊娠した。
彼女は自分が妊娠したことを、彼に伝えた。
すると、彼は「そんなものは知らない」と言った。
それからというもの、彼は彼女にそっけない態度をとるようになった。
彼は彼女と顔を合わせるのを避け始め、次第に二人の距離は遠のいていった。
そして、ついに、彼女がどんなに泣こうが喚こうが、
彼は彼女に一見たりとも会ってくれなくなってしまった。

彼女の恋は一気に冷めた。
それはもう、摂氏100度の沸騰状態から、
氷点下100度の凍結状態にまで、一気に急降下した。
そして、彼女は悟った。
私は騙されたんだ。
 あの男はただ、私とやりたかっただけなんだ。
 甘い言葉で私を騙して、自分の欲望を発散させるだけ発散して、
 用が済んだら、はい、さよなら。
 私はボロ雑巾のように捨てられてしまった。
 彼は、私のことも、お腹の子供のことも、全く愛していないんだ


彼女は彼を憎まなかった。
しかし、自分自身の愚かさを憎んだ。


彼女は程なくして、一人の赤ちゃんを出産した。
この望まない出産によって、彼女の経歴に、傷が付いた。
ゆえに、彼女は一生独身で、結婚することはなかった。
だから彼女は「マドモアゼル」なのだ。
そして、彼女はこれ以降、男を愛することはなかった。

それでは、彼女の生んだ子供に注目する。
男の子だ。
5歳ぐらいの時を見てみる。
身長は110センチ前後。
体格は、やや太り気味。
瞳は灰色で、黒目の部分がまん丸で大きい。
顔つきは、どことなく父親の面影を感じる。
服装は、緑色の服に、白いズボン。
頭には白い毛色のカツラ。
カツラの前の毛は真ん中分けで、
横の毛は、数段に分けてカールしている。
服装も、父親にそっくりだ。
そう、彼は顔形から服装まで父親と瓜二つだ。

もしかしたら、彼女は意図して、
子供に、父親と同じ服を着せているのかもしれない。
そして、もしかしたら、彼女は、心のどこかで、
まだあの男のことを愛しているのかもしれない。
そう、自分と子供を捨てた、憎くて仕方ないはずの、あの男のことを・・・。

女は、なんと愚かな生き物だろう!!
そして、なんと愛おしい生き物だろう!!!


彼女はしゃがんで、我が子の服装を正す。
「ちゃんとしなきゃダメじゃない」
「うん!」
この子は、とても元気がいい。
そして、一箇所にじっとしていられない性格だ。
だから彼は、ソワソワしながら、
しばらくは彼女のされるがままになっていたが、
もう辛抱たまらんとばかりに、彼女の手を振りほどき、
走ってどこかに行ってしまった。

場面が切り替わって、一番最初に戻った。
紫色のドレスを着た初老の彼女が、
若い娘たちを集めて、説教をしている場面だ。
「だから」と彼女は言う。
男は羊の顔をしていても、心は狼なの。
 だから気をつけなさい。
 甘い言葉に惑わされて、心と体を許したら、
 私のように(不幸に)なってしまう

彼女は、このように、若い娘たちを諭している。

彼女の人生は、他人から見れば不幸なものだった。
男に騙され、妊娠させられ、経歴に傷をつけられた。
周りはどんどん幸せな結婚をし、
近隣諸国の王子様とくっついて玉の輿をしていく中、
彼女は尻軽女だと陰口をたたかれ、結婚もできず、
一生ひとりぼっちで、シングルマザーとして辛酸を嘗めたのだ。
しかし、彼女は自分の人生が不幸だとは思っていない。
ただ、ひとつの教訓として、自分の身の上話を、
後輩の娘たちに聞かせているのだ。
「自分と同じ道を歩んだら、後悔することになるかもしれない」と
若い娘たちを諭しているのだ。

さて、彼女が今生の私に及ぼした影響は何だろうか。
まず、高校時代、テニスに興味を持ったこと。
それから、漫画「テニスの“王子様”」が好きだったこと。
それから、フランスと宮殿に興味があること。
そして、紅茶が好きなこと。
3時のティータイムを、欠かさないこと。
このようなことだ。

それでは、なぜこの前世が出てきたのか。
それは、私の戦国時代の武将の前世とのバランスをとるためだ。
私の武将の前世は、前にも書いたが、
一時期、女を忌み嫌い、侮蔑していた。
この前世とバランスをとるため、彼女が出てきたのだ。

かの武将の言うように、女は強かで欲深いかもしれない。
しかし、今回の彼女のように、清楚で一途な女もいる。
そのような女は、下衆な男に騙される。
そう、男の中には、女を性欲のはけ口としてしか見ていない男もいる。
あるいは、かの武将のように、女を政略結婚の道具としてしか見ていなかったり、
跡取りを産ませるための機械だと捉えたり、
ステータスやアクセサリーとしか考えていない男もいる。


男も男だが、女も女なのだ。
そして、女も女だが、男も男なのだ。

これは、そういう教訓なのだ。

今回は以上です。
ありがとうございました。

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2014年09月12日

江戸時代後期の大工

目の前に紺色のハッピを着た老人が現れた。

身長は155センチ前後。
体格は中肉中背。
髪型はチョンマゲ。
髪は、ほぼ白髪になっている。
顔は長面。
目はつり上がっており、眼光は鋭い。
口は固く引き結ばれている。
いつも強く顎を噛み合わせており、
常に歯ぎしりをしているようだ。
鼻の下と顎に、白いヒゲをはやしている。
上着は紺色、もしくは黒色のハッピ。
下は黒いピッチリしたズボン、もしくは白い半ズボンを履いている。
足には足袋と草鞋を履いている。

全体的な印象からして、
時代は江戸時代後期だろう。

彼はいつも腕を組んでいる。
いつも眉間にしわを寄せていて、険しい表情をしている。
口数は少ない。
彼には頑固一徹という言葉がぴったりだ。
こと仕事に関しては、自分の考えを絶対に曲げない。
そして、弟子には、とても厳しい。
いつも弟子に罵声を浴びせかけている。

彼は弟子を褒めることは、しないのか。
いや、褒めないということはない。
彼が弟子の仕事を一人前だと認めた時には、
一緒に呑みに行き、黙って酒を注ぐ。
しかし、言葉で直接、褒めることは、しない。

彼は冷たい人間ではない。
弟子が仕事以外のことで悩んでいる時には、
話を聞いたり、手助けしたりする。
彼はただ、口数が少なく、表情が怖くて、頑固なのだ。
だから、よく誤解される。
しかし、彼の心の中には、熱い炎が燃えている。
そして、なによりも「義理」と「人情」を大切にしている。

彼の仕事へのこだわりは何か。
まず一つ目。
「釘を使わない工法」。
すなわち「接ぎ木」である。
木に溝を掘り、穴を開け、それをパズルのように組み合わせていく。
複雑な接木をした時・・・木と木がぴったりはまった時は、何とも言えない感慨がある。
それでは、釘を使わないで建てた家の良さとは何か。
まず、地震に強い。
そして、建て替えや増築の時、解体が簡単で、
木材を再利用できるというメリットがある。
それから、仕事へのこだわり、二つ目。
「間取りのこだわり」。
収納は部屋と部屋の間に作らなければならない。
なぜなら、これは防音対策になるからだ。
そしてこれは、無駄な壁の数を減らす効果もある。
さらに、日光をより多く取り入れる、木材を節約する、
そして空気(気)をより多く通すことにもつながる。

彼は、どんな家を建てていたか。
おそらく、彼の専門は長屋だ。
長屋は同じ造りの建物を、
横につなげて作っていけば良いだけなので、設計が楽だし、
何も考えないでどんどん建てられるのが良い。
彼は、設計士(デザイナー)というよりは、現場作業員だ。
つまり、彼は新しい独創的な建築物を創造するよりは、
ただひたすら決まった作業を、繰り返しこなすタイプの人間だった。
だから、彼は宮大工や、設計が得意な大工には、一目置いている。
彼は「自分は、まだまだ未熟だ」と言っている。

彼の若い頃を見てみる。
彼がまだ10代中盤の頃のことだ。
彼はある大工の弟子になって、修行をしていた。
彼は毎日ひたすら雑用をやらされている。
材木を運んだり、荷揚げしたり、
水汲みをしたり、飯の準備をしたり。
大工道具には指一本触れさせてもらえない。
そして、常に罵声を浴びせかけられている。
これは、彼にやる気と根性があるかどうか、
見るために、あえて厳しくされているのだ。
だから、彼はある程度理不尽なことでも、耐えなければならない。
彼はそんな厳しい修行を積んで、
棟梁から技術を盗み、そして独立した。

それでは、次に、
先程から気になっていたことを、聞いてみる。
なぜハッピを着ているのか。
理由はいくつかある。
まず一つ目。
単純に「粋だから好き」だ。
そう、彼は「江戸っ子」なのだ。
ハッピは「江戸っ子の正装」なのだ。
二つ目。
彼は「祭りが大好き」だった。
彼は祭りがあるとすっ飛んでいって、
飛び入りで参加し、神輿を担いだりした。
三つ目。
彼は「火消し」をやっていた。
彼は大工という仕事柄、火消しの仕事を引き受けていた。
大工には縄張りがあったし、火消しにも縄張りがあった。
その縄張りの中では「他人に好き勝手にはさせない」。
そして「建物のことは俺に任せろ」
「俺には大工として、建物を立てた責任があるんだ」という気概があった。
それから、当時の消化は「火事場の周囲の延焼しそうな建物を解体する」
という方法でなされていた。
家を解体するときの注意点として
「なるべく木材を再利用できるように解体すべき」というのがあった。
だから、家の構造を知らない連中に、下手に壊されると後が大変なのだ。
そこで、建物の構造を知っている彼が「俺がやる」と出張っていったのだ。

ちなみに、大工仕事の時に着ているハッピと、
火消しの時に来ているハッピは別の物だ。
なぜなら火消し専用のハッピで大工仕事をするのは「縁起が悪い」からだ。

それでは、火消しはどのようにやっていたか。
先程も書いたが、基本は、延焼しそうな建物を解体することだ。
他には、軒先に常備されていた防火用水の桶を使っての
バケツリレーのようなこともやっていた。
それから「木製の手動のポンプ」も使っていたかもしれない。
ただし、このポンプは、あまり使えなかった。

ときに、火消しといえば「纏(まとい)」である。
彼は、どのような「纏」を使っていたか。
「纏」の種類がわかれば、どの地域(組)に属していたかが、わかるはずである。
彼の所属していた組の「纏」は横から見ると丸い形。
上から見ると、正三角形の各辺を内側に凹ませたような形。
下にはイカの足のようなビラビラが付いている。
ただし、このイメージは別の人生のものかもしれない。
いまいち釈然としない。

もう一度、尋ねる。
彼はどこの組に所属していたか。
「め組」と聞こえた。
彼は「め組」に所属していたのだろうか。
いや、もしくは「ひ組」か。
すると「へ組という組みがあったら、嫌だなぁ」と聞こえた。
これはどういうことだろう。
「へ組」という組はないのだろうか。
後で、調べてみると、「へ」は「屁」を連想するので、
良くないということで、代わりに「百組」と呼ばれていたらしい。
もしかしたら、彼は「百組」かもしれない。
だとすれば彼が住んでいた場所は、
芝、高輪、泉岳寺(町田、品川に近い場所)かもしれない。
ただ、確証はないので、今後、もう少し調べていこう。

それでは、この前世の人格が今生の私に、
どのような影響を及ぼしているか。

そういえば、思い出した。
今生で私が小学5年生の頃のことだ。
廃材を利用して家を建てたことがあった。
家といっても、1.5畳ほどの小さな小屋である。
小屋を建てるための廃材は、近所の建設途中の民家から調達した。
学校からの帰り道、毎日のように、その民家に通った。
そして、建設作業中の大工に交渉して、曲がった釘と、
ゴミ箱に入っている木材の端くれをもらってきた。
そして家に帰ってきて、トンカントンカンやるのが日課だった。
小屋は完成するまで、2ヶ月ぐらいかかった。
この小屋は、長年、物置として使っていたのだが、
数年前、シロアリが湧いてしまい、止むなく取り壊した。
ちなみに、なぜシロアリが湧いてしまったかということだが、
それは、土台をしっかり作らなかったからだ。
「地固めをして、要石を置く。
 これは家を建てる上での、基本中の基本だ。
 これをやらなかったから、この小屋の寿命は短かったのだ」

それから、この前世が今生に及ぼした影響の二つ目。
私は二十歳前後のころ、ある建築業者で、
別荘の掃除のバイトをしていた。
その時に、彼の影響が強かったようだ。
まず、建築業者に興味を持った事自体が、彼の影響だ。
それから、私はバイト中、地下足袋を履く必要がないにもかかわらず、履いていた。
周りの仕事仲間が皆、運動靴や長靴を履いている中、である。
これもまた、彼の影響だ。

それでは、今回はここまで。
ありがとうございました。

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2014年09月10日

戦国時代の武将「」その5

目の前に、背の高い武士が現れた。

服は濃い紫色の和服。
頭には黒い小さな烏帽子をかぶっている。
身長はかなり長身で、170センチはある。
体はガリガリで、頬がこけている。
出っ歯で、頬骨が出ている。
目は小さく、キョロキョロしている。
頭はチョンマゲで、月代の部分はキレイに剃っているが、
ややハゲかけており、横髪はボサボサで、少しやつれている。

彼は、戦国時代に生きた、とある武士である。
彼は小高い山の上の城(小屋)の主である。
彼は男色を好み、女を嫌っていた。

そう、彼は心の底から女を嫌っていた。
その理由は、以下のことである。
まず、一つ目。
彼は「女は腹黒く欲深い生き物だ」と考えていた。
「女は男に寄生して生きる魔物だ。
 そして戦に行って命もかけていないのに、まつりごとに口を出す。
 権力や財産もいっちょまえに要求する。
 そして色気でもって男を篭絡し、言いなりにする。
 だから女は気に食わない」と思っていたのだ。
なんという偏見か。男尊女卑にも程がある。
そして二つ目。
「私の前世は、僧侶だった。
 したがって、深層心理で、女との貫通は罪であると考えていた。
 ゆえに、私は女との接触を極端に避けていた」いうこともある。
それから三つ目。
「山城にこもっていたので、女と接する機会があまりなかった」という理由もある。
それから、四つ目。
「当時の女が、体のラインを強調するような服を着ていなかった。
 したがって、私が女を性的な目で見ることはなかった」
これはどういうことか。
我々が「着物を着た女」に性的に興奮しないのと同じだ。
もし、彼の周りにいた女が「ビキニの水着」を着ていたり、「ミニスカート」を履いていたら、
彼は女性に興味を持ったかもしれない。
そして、五つ目の理由。
彼は男色を「幼い頃から殿に仕込まれていた」のだ。
だから、性欲の発散のために、女を必要としていなかった。

彼が20前後の頃のことだ。
前述のとおり、彼は女が心底嫌いで、
従って結婚など全く眼中になく、一生独身でも構わないと考えていた。
「山の上の小さな小屋で、一生一人で暮らしていこう」
そう思っていた。
「自分は結婚して、子孫を残さなくても構わない。
 そのせいで、例え、お家が断絶しようとも、知ったことではない」
そのように考えていた。
(ただし、彼はおそらく次男であり、
 家を継ぐ義務は、なかったと思われる。)

しかし、そんな彼に、あるとき転機が訪れる。
婿養子の話が舞い込んできたのだ。
「ある家の子供は、みんな女の子ばかりで、
 跡取りの男の子がひとりも出来なかった。
 このままでは家が断絶してしまう。
 だから、誰かその家に婿養子として入り、
 家を継がなければならない」
「だから、継いで欲しい」ということだった。
この話を持ちかけてきた人物は、具体的に誰かはわからない。
しかし、その人物は、彼が「恩」と「義」を感じている人物だ。
その人物は、彼の父親と親しかったかもしれない。
その人物は、彼の家臣の年配者か、あるいは上司か、そのような人物である。
だから彼は「無下に断ることはできなかった」のだ。
もし、自分の家を継ぐとか継がないないという話なら、
彼は初めから、そんな話に興味はなかった。
「そんなものは放っておけば良い」のだ。
しかし「恩」と「義」を感じている人物から
「継いでくれ」と言われたら、断れない。

彼は、こうして、とある家に婿養子として入ることとなった。
そう、彼は、ある女の子と「嫌々、結納することになった」のだ。

それでは、その女の子に注目してみよう。
年は10歳前後。まだ子供だ。
身長は130センチ前後。
前髪は眉毛の上で綺麗に切り揃えられている。
横髪は耳の下ぐらいの長さに切りそろえている。
後ろ髪は腰まで伸びている。
顔貌はそれなりに整っている。
大人になれば美人になるだろう。
笑うと、えくぼが出る。
八重歯が可愛い。
服は、桃色のダボダボの和服を着ている。
なぜ服がダボダボなのかというと、この服は彼女の正装であり、
たいへん高価なものであり、そう簡単に何着も作れるものではない。
だから、彼女が成長しても着続けられるように、わざと大きめに作ってあるのだ。
彼女はとても元気が良い。
いつも走り回っている。

そして、これが、彼にとって「運命の出逢い」だったのだ。
彼は彼女を一目見るなり、すべてを悟ったのだ。
この出会いは、生まれる前から、仕組まれていた。
どうして自分がこの家に生まれ、女嫌いになり、山城にひきこもり
婿養子の話を持ちかけられ、彼女に出逢い、結婚するのか。
その全てを理解したのだ。
全ては、仕組まれていた。

彼は思った。
「この世の全ての女は嫌いだ。
 たったひとり、彼女を除いては」
それほどまで深く、彼は彼女を愛した。
浮気など、とうてい考えられない。
だから、彼は側室を持たなかった。
「これが愛なのだ。
 愛こそが、全てなのだ」
と彼は言う。

さて。
彼女は今生の知り合いだろうか。

わからない。
しかし「いずれ出会う存在」である。
あるいは「もうすでに出会っているが、
 そういう存在であると認識していない存在」である。
そして、私と彼女が出会った時、
彼女は既に別の男性と結婚していて、子供もいるかもしれない。
だから「変な期待はしないほうが良い」ということである。

彼女について、もう少し調べてみる。
彼女は私の「左側」にいる存在である。
目を閉じれば「いつも」いる。
私と彼女は「手をつないで」いる。
「当たり前過ぎて、その存在に気づかないほどに、当たり前に」いる。
「彼女は私がこの世に存在している理由」である。
「存在しているだけで神に感謝する存在」である。
それが彼女である。

物理次元で出会うまでもない。
私は彼女とずっと一緒にいる。
そう、「この宇宙が始まってから、終わるまで」
ずっと一緒だ。

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鎌倉時代の山伏「」

里山が見える。
季節は晩秋だ。
紅葉も終わり、広葉樹の葉はすっかり落ちてしまい、
木枯らしが吹き荒れている。
もうすぐ冬がやって来る。

その里山の、ヤブの中から、ゴソゴソと物音がする。
何だろう。

ヤブの中から、ひょっこりと、山伏姿の男が現れた。

年は40歳前後。
身長は150センチ前後。とても小柄だ。
体格は、痩せ型。
しかし、足腰はかなり鍛えられており、しっかりしている。
顔つきは、頬骨が出て、角張った顔付き。
目は細め。
鼻は低い。
頭は角刈り。
全体的な印象から、
彼は朝鮮民族の血を引いている可能性が高い。

服装は山伏装束。
上はクリーム色の鈴掛。
下は白い袴。
手には白い手甲。それから、数珠を持っている。
ひざ下から足首にかけては脚半、もしくはサラシを巻いている。
サラシはきつく、何十にもぐるぐる巻きにして、スネの部分を守っている。
この、スネの部分を保護することが、とても大事だという印象を受ける。
足には、わらじを履いている。
肩には、カゴか、背負子(しょいご)を背負っている。
ちなみに、ほら貝は持っていない。
それから、頭巾と結袈裟はつけていない。

彼はどんな人だろう。

彼がカゴを背負って、野山を駆け回っている姿が見える。
ほとんど休憩せず、ものすごい勢いで走り回っている。
急坂や、岩がゴツゴツした場所も何のその。
足場が悪い場所でも、彼は一切躊躇しない。
彼は、足をどこに指せば体が安定するか、
どれほどまで体重をかけても大丈夫かを、瞬時に判断している。
視線は足元と左右を行ったり来たりし、
道端に生えているキノコや、木の実を常に探している。
食材を発見した場合、休憩がてらに、採る。
「キノコはサルノコシカケが嬉しい」
このきのこは、薬になるので、高く売れるのだ。
「木の実は栗が嬉しい」
そう、彼は栗が大好物だ。
採った食料は、布の袋に入れて、背中のカゴの中に放り込む。

彼は一日中、走る、採る、走る、採るを繰り返している。

それから、彼は常に耳をそばだて、
同業者や動物などの獲物が立てる音を聞き逃さない。
そう、彼は狩猟もやっていたかもしれない。
ただし、彼は肉はそこまで好きではない。
「肉は、冬場、本当に食べるものがなくて、
 飢え死にそうになった時だけ、食べる」
彼は、狩りを、主に毛皮を取るために行っていた。
また、獲物は里に持って行き、生活用品や塩などと物々交換していた。

それから、彼は各地に点在する神社を周り、
祈祷のようなことをしていた。
彼が数珠を握り、呪文を唱えているのが見える。
これは「虚空蔵求聞持法」と呼ばれるものかもしれない。
彼の持っている数珠は、1つの大玉と、107の小玉で構成されている。
彼は数珠を手に持ち、大玉の部分に指を当てる。
そして、呪文を一回唱えるごとに、数珠の玉を一つずつずらしていく。
指が再び大玉の部分まで到達し、数珠が一周すれば、
すなわち、呪文を108回唱えたということになる。
さらに、彼が数珠を片手に一つずつ、計二つ持っている姿も見える。
これはどういうことか。
「右の手の数珠が一周する度に、左手の数珠の玉を一つずらしていく。
 そして左手の数珠が一周した時、
 すなわち108×108=11664回、呪文を唱えたことになる。
 これを100日間続け、呪文を約100万回唱える。これを何十回も行う」
彼は生涯、これをずっと繰り返していた。

彼のこの祈祷は成就したか。
「成就した」
彼は死んだ後、地蔵になった。
地蔵とはすなわち、虚空蔵菩薩の化身である。
そして虚空蔵とは、アカシックレコードのことである。

そう、彼はアカシックレコードを読んで、
全てを知ることができたのだ。

ただ、彼はそれで満足しなかった。
彼は真理を「知る」だけでは不十分だと考えた。
彼は真理を「解き明かしたい」と考えた。

その強い意志が、私の魂、この宇宙人の魂を呼び寄せたのだ。
以前の記事で書いたが、私の魂は宇宙人である。
そしてこの宇宙人は第6次元の存在である。
すなわち、この宇宙人は第6のチャクラ(第三の眼)を
中心に活動している存在である。
そして、この宇宙人は「理性」至上主義者であり、
「理性」こそ最も優れた性質であると考えている。
(もちろん、「愛」よりもである。)

まとめると、山伏である彼は、アカシックレコードを読んで真理を知るだけではなく、
更にそれを宇宙人の高度な科学技術と「理性」で分析したいと考えているのだ。

さて、話を戻そう。
この山伏はどこに住んでいるか。
「山奥の小さな小屋で暮らしている」

家族はいるか。
「一人の老婆と、一緒に暮らしている」
その老婆に注目する。
年は70歳前後。
身長は140センチ前後。
背骨が曲がっているので、本当の身長はよくわからない。
服装は、紫色のボロボロの服。
髪は白髪の混じった長い髪を後ろでまとめている。
目はタレ目。
口はすぼまっており、歯はほとんど抜けてしまっている。
顔全体はしわしわで、黒く薄汚れている。
頬がしもやけで、赤くなっている。

この老婆は今生の知り合いか。
よくわからない。
ただ、彼女は、山伏に、とても感謝している。
なぜか。
山伏とこの老婆は、血は繋がっていない。
にもかかわらず、彼は彼女の世話をしている。
彼は彼女のために、毎日食材や薪を採ってきている。
採ってきた食材は、囲炉裏で料理して、二人で食べる。
彼女は、彼が食べ物をとってきてくれることを、とても感謝している。
彼もまた、老婆の笑顔を見ることが、何よりも嬉しかった。

それでは、なぜこの二人は、二人っきりで、山奥で暮らしているのか。
「病気による差別、老人への迫害、もしくは異民族への差別」
そのようなものが背景にあっただろう。

つづく。

hiko22 at 02:36|PermalinkComments(0)TrackBack(0)clip!

2014年09月06日

白ひげの黒人教師

目の前に白いヒゲを生やした黒人が現れた。

身長は170センチ前後。
中肉中背。
年齢は60歳前後。
白髪の混じったヒゲをはやしている。
ヒゲは長さ1センチぐらいに丁寧に切りそろえている。
それから、度の強い、黒縁メガネをかけている。

服装は、かなり明るい灰色のスーツ姿。
それから、白い中折れ帽をかぶっている。

時代は、1970年代。
場所はアメリカ南部の田舎だ。
まだ黒人差別が根強く残っている地区だという印象を受ける。

彼は何をしていた人だろう。

教壇に上がって、教鞭を振るっているのが見える。
彼は小学校の先生だ。
教えているのは小学3年生ぐらいか。
やや男子と黒人が多い。
皆、真剣な顔つきで、先生の講義に耳を傾けている。

科目は何を教えているのだろう。

地球儀が見える。
地球儀といってもすごく小さい。
ソフトボール大の地球の模型、それからピンポンボール大の月の模型
それがワンセットになっているタイプの地球儀だ。
彼はこの地球儀を自分の机の上に飾っていた。

彼は宇宙に興味があった。
だから、大学(高校?)では理科を専攻した。
そして、理科の先生になったのだ。

彼は結婚しているだろうか。

彼と奥さんが二人で食卓を囲んでいるのが見える。
奥さんに注目する。
彼女も彼と同じ黒人だ。
年齢は20歳前後の、若いころを見てみる。
髪型は、肩まであるドレッドヘアーを、
ピンクの髪留めで後ろに固定している。
まつげが長い。
お目目はパッチリ。
唇が厚い。
スタイルは抜群。
お尻をフリフリして、彼を籠絡(笑)している姿が見える。
彼女はとても明るい性格だ。
彼女は今生の知り合いだろうか?

知り合いではない。

それでは、先ほどの、二人の食事の場面に戻り
もう少し観察する。
二人は何を食べているのだろう。
「ステーキだ」
味はどうだろうか?
「妻の料理は絶品だ」
彼の奥さんは、家政婦の仕事をしている。
だから、料理もうまい。
料理以外の家事も卒なくこなす。
とても良い妻だ。
ただし、最近少し太ってきた。
それが玉にキズだ。
彼女の体重は80キロを超えている。
少し痩せなければならない。

彼らに子供はいるだろうか。

「二人いる。
 娘と、息子の二人だ」
この二人も今生の知り合いではないようだ。

彼の人生はとても平穏な人生だったが、
とても充実した人生だった。

死の場面を見てみる。

彼が60歳ぐらいのころのことだ。
彼はいつものように職場に向かうため、車を運転している。
車は白い小型のアメ車。
年式はかなり古い。
彼の乗った車は、ある交差点に差し掛かった。
すごく嫌な予感がする。
突然、左側からトラックがすごいスピードで突っ込んできた。
トラックは、とても車高が高い、タイヤが8コぐらいついた、超王型車だ。
彼の乗った車は、トラックの下敷きになり、ぺしゃんこになってしまった。
彼は車に乗ったまま、左手を挙げ、叫びながら、気を失った。

彼は病院に運ばれた。
すぐに、緊急手術が行われた。
医者が彼の腹を開ける。
内蔵、特に下腹部がぐちゃぐちゃになっている。
これはもう、助からない。
彼は亡くなった。

葬式の映像が見える。
墓場に彼の入った柩が運ばれてきた。
柩の前で、妻が泣いている。
子供たちも、下を向いて悲しんでいる。
葬式の参列者はかなり多い。
教え子たちも沢山いる。

彼は、たくさんの人々に見送られて、墓に埋葬された。

「残してきた家族のことが心配で心配で仕方がない」
彼は腹を抑えながら私に訴える。

その前に、あなたのそのお腹の傷を癒しましょう。
私は彼に、湯治のため、露天風呂に入るように勧めた。
少し染みるかもしれませんが、すぐ良くなりますよ。
「そんなことをしている場合ではない、早く家族のもとへ戻らないと」
あなたは死んだのです。
その事実を受け止めてください。
「それでも家族が心配だ」
家族は大丈夫です。
娘さんも、すぐに良い結婚相手が見つかります。
息子さんも成人して、自立していきます。
奥さんも、あなたの残してくれた遺産と、保険金があります。
ですから、大丈夫です。
「そうか」
はい。
それに、天国に行ってからも、下界の様子を見ることができます。
そして、天国から家族を導くこともできます。
「・・・・・・」
あなたが成仏することが、家族が望んでいる、何よりのことだと思います。
「そうか。
 どうもありがとう」
そう言って彼は天に登っていった。

自分が無残な死に方をして、苦しい思いをしているのに、
まず家族のことを心配する。
彼は立派な人だなと、私は涙した。

それでは、今回はここまで。
ありがとうございました。

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