奴隷が作ったカカオは使わない! トニーズ・チョコの挑戦 - ビジネススタイル - nikkei BPnet

(以下、日経BPnetの記事内容の紹介)

当ブログの2月15日の記事「メーカーが悪いのか、消費者が悪いのか」で紹介したオランダ人ジャーナリスト、テェゥン・ファン・カェゥクン氏(以下、英語名トニー氏)が、児童奴隷がかかわらないチョコレート会社(トニーズ・チョコロンリー)を自らの手で設立した。

彼は2002年、ある新聞記事で西アフリカのカカオ生産国で奴隷売買が行われていることを知った。人身売買業者から買った子供が、安い賃金で強制的に働かされている。

国際熱帯農業研究所の調査によると、カカオ豆の主要生産国である西アフリカの4カ国、ガーナ、カメルーン、コートジボワール、ナイジェリアで、推定14万6000人の子供がマシェティと呼ばれる幅広の刀を使用して農園の雑草除去作業を行っていた。また推定15万2700人の子供が、農薬散布に従事していた。

トニー氏は2004年3月、「児童奴隷によって栽培されたカカオを原料に使用したチョコレートを食べた自分は有罪である」と自身を告訴した。このときは不起訴処分となった。児童奴隷廃止の活動を続けていたある日、彼は、「奴隷を使用せず適正な賃金を支払っている」ことを証明する「フェアトレード」取得済みの農家で、実際には児童労働が行われていることを知った。

そこで、2005年、彼は自らの手で児童が労働に関わらないチョコレート会社を作った。チョコレートバーの売れ行きは現在も衰えておらず、オランダの多数の販売店で買い求めることができる。2007年2月9日、バレンタインデーを前にして、彼は児童奴隷によって作られたチョコレートを食べた罪で自身を控訴した。この件が前回の記事で紹介した部分だ。控訴審では、西アフリカで少年時代に奴隷として労働を強いられていたKohi Hermann Kamさん(20歳)が証言台に立ち、15歳のときに年間わずか20ユーロ(約3260円)で働かされていたことを証言した。

(記事の内容、ここまで)

ここで、国際熱帯農業研究所の調査レポート(英語、PDF)をよく見てみると、児童労働はよく言われるほど多くなく、待遇もそんなに悪くないように感じられる。以下はレポートの内容(ちょっと長い)である。
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2000年のILO(国際労働機関)の調査によると、世界中で2億1100万人の5歳から14歳の子供が働いている。そのうち、70%が農業部門である。ガーナ、カメルーン、コートジボワール、ナイジェリアのカカオ農園を調査した結果であるが、隣国からコートジボワールに児童奴隷を連れてくる仲介人は昔ほど多くない。コートジボワールでは61600人の大人の労働者に対して、推定で5120人の子供がフルタイムの常勤労働者として働いている。また、ナイジェリアのオンド州では11800人の大人の労働者に対して、1220人の子供がフルタイムの常勤として働いている。

コートジボアールで働く子供への調査で、彼らは全員農園の外から来たことが分かった。3021人(59%)はブルキナファソから、1229人(29%)は同じコートジボワール国内からの出身者である。

コートジボワールで働く子供のうち41%(2100人)の雇用プロセスに仲介人が関わっている。57%の子供が、仲介人と来ることに同意したのはよりよい暮らしが出来ると言われたからで、家族がお金を受け取ったり、彼らの意思に反して連れて来られたりしたと答えた児童はいなかった。また、2100人全員がカカオ農園で働くことを、事前に告げられていた。現在の生活に「満足している」「まあまあ満足している」「満足していない」で答えてもらったところ、仲介人によって連れてこられて来た児童の43%が「満足している」、43%が「まあまあ満足している」、14%は回答なしだった。「現在の労働環境に満足していない」と答えたのはわずか6%だった。

コートジボワールで調査された児童労働者のうち88%は学校に行ったことがなく、残りの12%が初等教育を少し受けたことがあった。これらの子供の親もほとんど教育を受けたことがない(100%の父親、88%の母親が教育を受けたことがない)。

コートジボワールのカカオ農園では、大人の労働者の平均年収は135ドル(約1万6千円)、児童労働者は80ドル(約9600円)である。ナイジェリアでは、大人は205ドル(約2万4千円)、子供は115ドル(約1万4千円)である。62%の子供は賃金を直接もらい、32%の子供は親に賃金が支払われ、6%の子供は彼らを連れてきた仲介人に賃金が支払われている。

賃金の差に関わらず、子供の労働時間は1日あたり平均で6時間9分で大人の労働時間とあまり変わらない。昼間には90分の休憩時間がある。農園主は一般的に児童労働者に住居と食事を与えており、子供と大人で食事回数はほとんど変わらない。しかしながら、食事の提供元が異なっていた。児童労働者のほうがより頻繁に農園主から食事を与えられている。

コートジボワールのカカオ農場の多くは家族経営であり、またコートジボワールの家庭では、家族の絆を持たない子供を含むことがある。これらの子供の多くはカカオ生産を手伝っている。約9000あるコートジボワールの農場で少なくとも1つの生産作業を手伝う子供は推定で1万2千人いる。このうち、18%の子供が全面的にカカオ生産に関わっている。一方で、家族の絆をもつ子供では全体の21%である。

コートジボワール、ナイジェリアの調査地域、カメルーンで推定15万2700人の子供が農薬散布に携わっている。ちなみに、防護用具の使用有無については書かれていない。調査された4カ国で、推定14万6千人の15歳未満の子供がマシェティという刀を使って雑草刈りをしている。

コートジボワールのカカオ農場に住む6〜17歳の子供の3人に1人は、学校に通ったことがない。移住してきたカカオ農園の家族では特に深刻で、33%の子供しか学校に通わない。一方で、地元の農園の子供の71%は学校に通っている。

また、農園主自身の子供は57%が学校に通っているが、血縁関係にない子供のうち学校に通っている子供は45%しかいない。

家族のカカオ農園で働くことは学校の出席率にも負の影響を与える。家族のカカオ農園で働かない子供の学校への出席率は64%に上昇したが、すべてのカカオ生産工程に参加する子供の出席率は34%しかない。

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よく子供がひどい待遇で強制的に働かされていると言われるが、この調査レポートには以下のようなことが書いてある。

・フルタイムの常勤労働者では児童労働者もいるが、大人の労働者のほうがずっと多い。
・仲介人によって連れてこられた子供は、家族からお金で買われたわけでなく、カカオ農園で働くことを事前に告げられ、よいよい生活を求めてカカオ農園にやってきた。
・これらの子供たちのうち86%の子供は、現在の生活に満足している、またはまあまあ満足している。
・彼らは教育はほとんど受けられないが、待遇面は大人の労働者と比べてそれほど悪くない。


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