
『アズマヤ(AZUMAYA)』は以前は、高松市の中央通りという目抜き通りに面した紺屋町といういい場所にあった老舗喫茶でした。
母の話によると、終戦直後の昭和22年、空襲で焼け野原だった高松市の紺屋町に一軒、ポツンと出来た、おばあさんがやっていたうどん屋さんが、『あずまや』だったのですが、その当時から行列が出来ていたそうです。まあ、考えてみると何もなかった時代だから、そうだったのでしょう。
その後、高度成長時代に入り、高松の街も発展し、『あずまや』は、自社ビルを建てて、その中に『アズマヤ(AZUMAYA)』として開店し、ケーキ販売を始め、喫茶店を併設したのでした。ぼくが子供の頃、ピアノのレッスンの帰りには、母は必ず、『アズマヤ(AZUMAYA)』に連れて行って食事をしたりしましたので、ぼくにとっては、なくてはならない喫茶店でした。
しかも、『アズマヤ(AZUMAYA)』は「香川県立高松高校」からも近く、その前は、香川県の西地区(西讃)方面行きのバス停がありましたので、香川県の西地区(西讃)在住の生徒はみんな、バスの待ち合わせの時、ここで、うどんを食べるということが常でしたので、バスで通学していた人もそうでない人もみんながゆく喫茶店になっていました。
ですから、ぼくは、喫茶店にはうどんがあるものだと思っていたのでしたが、早稲田大学政経学部に入って上京したら、東京の喫茶店にはうどんがないのです。「東京の喫茶店には、ピザやスパゲッティがあるのにどうしてうどんがないんだろう。」何てね、本当に、今にして思えば、田舎者の感慨を持ったものでした(笑)。
が、椎名誠氏は逆でした。かつて、椎名誠氏のエッセイ『地球どこでも不思議旅』の中で、「高松のさぬきうどんの真実・・・・・うどんのある本格喫茶『AZUMAYA』」と書かれているのを読んだ時、ぼくは吹き出していました(笑)。
さて、その「アズマヤ」が、2005年年末に紺屋町から姿を消してしまいました。
「アズマヤ」の奥様と、バッタリ出くわしたのは、2006年の年初、今は亡き母と一緒に、今は『ガスト』に変わってしまった、『バーミアン 栗林店』で夕食をとっているときでした。
「『アズマヤ』です。いつもお世話になっています。私共、破産いたしました。」
旧知の仲なんだけど、いきなり、とんでもないことを話しかけられたので、びっくりしたぼくは、食べていたバンバンジーを口から吐き出しそうになってしまいました。
「えーーーっ。『アズマヤ』さん、いったいどうしたのですか。お店、やめちゃったのでびっくりしてたんですよ。いったい何があったのですか。」
「大阪の極道系の金融会社にビルも自宅も全部取られました。」
「ああー、何か不具合があって借金されてたんですね。」
「ここの不景気でお客様が減って、仕方なく借金地獄に陥りまして・・・・・。」
「それは大変な思いをされましたね。でも、残念ですね。ぼくにとっては、幼少の頃から高校時代までの大切な思い出のつまったお店なので、特に、あの、鰹節だけを使ったうどんのダシは『アズマヤ』さんだけでしたからね。他の店は『イリコ』が多いでしょう。」
「でも、同じことを言ってくれるお客様が一杯いたところに、天の助けでしょうか、『ビジネスホテルパークサイド高松』のオーナーの、元、『モダン屋』の社長様から、『うちの中に入居して再開店されませんか。』と言われまして、いろいろ考えたのですけど、半年後を目途に再開店することに決めました。」
「そうですか。『ビジネスホテルパークサイド高松』は、お部屋の窓から栗林公園が一望出来る、閑静ないいビジネスホテルですよ。是非、頑張って下さいね。」
「有難うございます。ただ、ビジネスホテルの中ということなので、最初はご宿泊客の皆様の朝食からスタートしますけど、そのうち必ず、『アズマヤ』本来の昔からのメニューも全て再開しようと思っています。」
「待ち遠しいですね。開店されたら必ず参りますよ。それと、ぼくの高松高校の同窓生もみんな『アズマヤ』がなくなったことに衝撃を受けていますので、再開店のことは、ぼくの卒業年度の昭和50年卒業の皆様には、必ずお伝えしますから。」
「有難うございます。でも、本当にね、高松高校卒業生の皆様には感謝しています。皆様が応援してくださることが、一番の心の支えになっています。」
こうして、『アズマヤ(AZUMAYA)』〔〒760-0073 香川県高松市栗林町1-3-1 ビジネスホテルパークサイド高松(ビジネスホテルパークサイドタカマツ) 1F TEL 087-837-5555〕は、2006年の夏に、栗林公園の中央通を挟んだ東側の真向かいの『ビジネスホテルパークサイド高松』の一階に再開店しました。
元気だった母と一緒に早速行きました。その後、少しずつ、「アズマヤ」本来の昔からのメニューやケーキも再開し、現在にいたっています。
メニューには、現在、『Sanuki Noodle うどん』として『アズマヤのうどん』『おろしうどん』『カレーうどん』『ざるうどん(夏限定)』『しっぽく(冬限定)』の5種類のうどんがあります。
「アズマヤ(AZUMAYA)」は、『ローゼ』と『クリームぜんざい』の二種類のスイーツが有名でしたが、これを組み合わせた、「デザートセット・うどん+ローゼorクリームぜんざい」(1050円)がお奨めです。
特に、『ローゼ』は、シュークリームの中に フルーツとソフトクリームが一杯盛ってある独特のスイーツで、ぼくも大好きなのですけど、高松出身の方にはファンがたくさんいます。小さい頃、石井ルリ子先生のピアノのレッスンの帰りに、母は、必ず、ぼくを連れて、「アズマヤ」に一緒に食べに来てくれました。ぼくは、いつも、『ローゼ』を食後におねだりしていましたが、その日のレッスンがうまく行った時には、必ず、母がオーダーしてくれましたので、本当に、今日のぼくにとっては忘れられない大切なお店なのです。
さらに、「アズマヤ(AZUMAYA)」の、『ホットドッグ』は、コールスローとカニのフリットの入った独特の風味なので、この、ファンもたくさんいます。というのも、このホットドッグを、ここのかやくうどんと一緒にいただくと、抜群に、よく合うからなのです。
掲載写真は、「アズマヤ(AZUMAYA)」の、『アズマヤのかやくうどん』(525円)〔かけうどんに竹輪、アゲ、蒲鉾、海苔、薄焼き玉子、椎茸、ネギが華麗にトッピングされた、本鰹の鰹節だけのダシのかやくうどん〕、です。
ても、生粋の高松人(大体、祖父母の代から高松市内に住んで暮らしている人達のこと)同士の会話では、親戚でもない旧知の親しい方と久しぶりに出会った時でも、出会い頭に、「私共、破産いたしました。」なのですが、それで、OKなのです。
讃岐弁で言うなら、「破産したっていろいろあったんやろうから、かまんでないんな。」と思っちゃうのです。そして、そういうことも正直に包み隠さずに言って下さったんだから、できる限り、応援してあげないといけないな、って感じるのですよ。
こういう、昔から育まれた、地域コミュニティーのしっかりした人間関係に、「個人情報保護法」なんて無用の長物なのです。みんなで助け合って生きてゆこうよ、という精神が根っこにあるのですから、スタンフォード大学あたりで始まった、多民族国家のアメリカ式の、成果主義、派遣労働、勝ち組と負け組という考え方、などは、高松で人間が生きて生活するにあたって、全く、不必要なのです。そればかりか、支店の多い高松市内に、『楽天』とか『ライブドア』のような看板の、それぞれのグループ会社が出てきていることを、生粋の高松人は全員、景観が悪くなるので、さっさと引き上げてもらいたいと思っています。
まあ、こういう考え方について、霞ヶ関が反対ならば、香川県は日本から独立してもやってゆけますよ。額に汗して労働し、手打ちうどんを作っているうどん職人さんにとって、M&Aなんでどーでもいいことですし、東京や大阪方面から大勢、讃岐うどん店に押しかけてくる、あつかましい、顧客を、香川県に外務省があれば、シャットアウト出来ますからね。第一、農協と漁協はいずれも香川県内では健在なので、十分、自給自足出来るのですよ。
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