
思い起こすと、トンカツ専門店に生まれてはじめて行ったのは、まだ、18歳の大学生の頃、新宿西口の京王線に向かう地下街にはじめてオープンした「サボテン」でした。
当時、ぼくは中野区野方の下宿に住んでいました。東京に出て来て、生まれてはじめて食べた東京のソバ屋のうどんの不味さに呆れて、これは泥水にスパゲッティーが浮かんでるひどいものでうどんじゃない、と思ったり、濃い味付けの煮物は、野菜の色が明確でないので人間の食べるものじゃないと怒ったり、お魚が食べたくなった頃、野方駅の近くに出来た居酒屋のランチの刺身定食に、蛸しかついていなかったので、これはお魚じゃないよ、これが刺身だなんて詐欺だよ(笑)なんて感じたりする毎日でしたので、基本的に、食事は安く学食か、ラーメン屋さんですませていました。
当時、マクドナルドは本当に不味かったので、ぼくは、ハンバーガーアレルギーに陥っていたのですけど、野方に、はじめて開店したモスバーガーで食べた「テリヤキバーガー」は、感動的に美味しかったので、そこだけは行くようにしていました。若い人達には信じられないでしょうけど、昭和50年は、そのような時代でした。携帯もコンビニもCDも24時間のファミレスもDVDもなかった頃でしたから。
でも、周囲の人達がしゃべっている共通語を習得しなくては友人も出来ないと、早稲田大学のクラスメイトのM君に相談したら、彼は、新潟の出身で、変に訛っていたので、どーしようか、と真剣に悩んだりしていました(笑)。
その頃、高松高校時代の同級生のK君(彼は趣味でヴァイオリンをやっていた友人でした。)から、「東京に来て日が浅いけど頑張ってるか。」と、連絡があって会いました。彼はとても優秀な奴で、現役で東大の法学部に受かっていましたけど、ぼくにとっては音楽の友人だったので、「いいね。何か合わせようよ。」と言ったところ、「いい曲見つけたんだよ。君にピッタリだと思うから、それを合わせよう。」ということになって、ピアノレンタル出来るところを彼が捜してきて合わせました。
この時の彼のお奨めの曲が、フランク作曲の「ヴァイオリンソナタ」でした。ぼくにとっては、生まれて初めてのフランス近代室内楽曲でした。第4楽章のカノンの響きに生まれてはじめて接して、ぼくは直ちにとりこになってしまいました。その後のぼくのピアノ演奏や作曲において決定的な影響を及ぼしたのは、この曲でした。
と・こ・ろ・が、彼が捜してきたピアノレンタル出来るところ、というのが、新宿西口の高層ビルの上にあった「新宿西口ヤマハ」だったのです。なかなかいいグランドピアノを置いていて、高層ビル街を眺めながら演奏出来る素敵なところだったのだけど、レンタル代が、1時間3000円と、ものすごく高かったのです。まぁ、この経験から、ぼくは、東京で安くピアノをレンタル出来るお店を本格的に捜し出すような努力をはじめましたので、よかったんだけど・・・・・。
仕方なく、1時間で合奏を切り上げて、K君と新宿駅に向かいながら、二人で、東京に出てきてからの、食事の不味さ等の不満をしゃべっていたところ、彼から、「新宿に安くていいお店が出来た、って友達から聞いて来たから、そこ行こうぜ。」との提案があって、入ったのが、新宿西口の京王線に向かう地下街にはじめてオープンした「サボテン」だったのです。
ロースカツも美味しかったと思うんだけど、ゴハンとキャベツがお替り自由というのが気に入りました。まぁ、まだ18歳だったからなんだけど、ぼくはキャベツを8回、ゴハンを5回もお替りして、おなか一杯になったので、東京の食文化全般に対する認識まで変わってしまいました(笑)。
「K君、さすがに東京はすごいな。こんなお店、高松にはないよ。美味しかった。」
以来、毎月一回、彼と、フランク作曲の「ヴァイオリンソナタ」を、新宿で落ち合って合わせました。「新宿西口ヤマハ」は高かったので、ぼくが捜してきた、新宿三丁目の「コタニ楽器」で合わせるように変更したんだけど、合奏の後、新宿西口地下街の「サボテン」に食べに行くことは、ずっと変更になりませんでした(笑)。
そんなこんなで、ぼくの中で、フランク作曲の「ヴァイオリンソナタ」と、「サボテン」のキャベツは不可分になってしまいましたので、フランク作曲の「ヴァイオリンソナタ」を誰と合わせても、「サボテン」のキャベツの歯ごたえが感じられるようになってしまいました(笑)。これはいけないんじゃないか、って思ったこともあったんだけど、その後出会った著名な音楽評論家が書いていた、「音楽は五感で感じて演奏すべきだ。」という名言から、「ぼくのフランクはこれでいいのだ。」と、前向きに考えるようになりました(笑)。
さて、14年前に高松にUターンした頃は、東京の「サボテン」も、大阪の「かつ梅」も、まだ、高松には来ていませんでしたけど、既に40歳前になっていたぼくは、別にトンカツ専門店がなくてもOKだったし、フランク作曲の「ヴァイオリンソナタ」もいっぱいいろんな人達と合わせた後だったので、そのままだったら、忘れ去ってしまっていたかもしれないですね(笑)。
が、そうはなりませんでした。
10年前の、母が叔母の家に遊びに行ったのでのんびり出来た、とある日曜日のことでした。高松市の玉藻城のそばのサウナでゆったりしてお腹がすいたんだけど、そこにはうどんしか置いてなかったので出て、高松市丸ノ内界隈をブラブラしていた時のことでした。
『本気豚食(ホンキートンク)』という看板が目につきました。何だこれは、と思って、本気で豚を食べるお店というネーミングに吹き出していました。何だかよくわかんないけど、豚肉を食べさせるお店だと思って、ここで食べよう、と入って行きました。すると、驚いたことに、ここは、開店したばかりのトンカツ専門店だったのです。
びっくりして、懐かしくなって、ゴハンとキャベツ食べ放題の定食をいただきました。ああ、やっと、高松にもトンカツ専門店が出来たんだ、と思い嬉しくなりました。
トンカツ専門店については、なぜだか、高松への支店進出は遅かったです。大阪の「かつ梅」がゆめタウン高松にやって来たのは7年前でしたし、東京の「サボテン」は、12年前に徳島に支店を出していたのですけど、JR高松駅にやって来たのは5年前でした。
そして、『本気豚食(ホンキートンク)』は5年前に、香川県庁の向かいに支店を出しましたので、以来、ぼくは、県庁前店が近くて便利なのでこちらを愛用しています。
さて、『本気豚食(ホンキートンク)』のおすすめは、ロースカツ、ヒレカツといったスタンダードなものもいいのですが、野菜巻きですね。アスパラ、ニンジンなどのいろんな野菜、チーズ、梅干を豚肉で巻いて揚げているものです。
また、このお店は、キャベツにかけるドレッシングの種類がとても豊富です。
さらに、テイクアウト出来る、「カツサンド」が美味しいのでも有名です。
母も、『本気豚食(ホンキートンク)』県庁前店、が気に入って何回かつれてゆきました。野菜巻きがあっさりしているので気に入っていましたけど、母がこのお店に行きたい理由の最大のものは、周囲で食べている人達が、ゴハンやキャベツをいっぱいお替りしていることでした。そういうのを見ていると食欲が湧くと言って喜んでいました。
「あの隣の子、また、ゴハンお替りしたで。ようけ食べるの。香川大学の学生かいの。」と言いながら、母もキャベツをお替りしていました(笑)。
『本気豚食(ホンキートンク)』県庁前店(高松市天神前6-34村瀬ビル新館1F 087-837-2201)は、オフィス街からも近いので、お昼の弁当の注文も受け付けています。
営業時間は、平日11:00〜21:00 土曜11:00〜14:00 (定休)日曜 となっていますが、弁当の注文は9:00〜受け付けています。
「特選ロースカツ」(750円)を筆頭に、「しそ巻きカツ」「野菜巻きカツ」等、12種類のメニューがあり、定食(200円プラス)にすると、ご飯とみそ汁、漬物がつきますが、ランチタイムは、200円は要らないようになっています。ご飯と、キャベツお替わり自由で、トンカツソースは洋食と和風の2種類、キャベツにかけるドレッシングは、10種類あります。
掲載写真は、『本気豚食(ホンキートンク)』の「しそ巻きカツ定食」、です。

