(堤未果 岩波新書)

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「あの朝街を出て行きながら、一体どうしてこうなってしまったんだろうと私たち夫婦は茫然としながらも考えました」
家を出た一か月後にインタビューに答えたマリオはその時のことをこう語る。
「正直言ってよくわからないんです。一つだけわかっているのは、単に長年の夢が破れただけでなく、自分たちがその前の苦しかった時代よりさらに底辺に転がり落ちたこと、しかもそこからは二度と這い上がれないだろうという現実です」


アメリカの住宅ブームが勢いを失い始めた時、不動産業者が次なるターゲットとして目を付けたのは、貧困ラインぎりぎりの月収があるにすぎないマリオのような不法移民や低所得層だった。

「サブプライムローン問題」は単なる金融の話ではなく、過激な市場原理が経済的「弱者」を食い物にした「貧困ビジネス」に他ならないのだ、と著者は指摘する。

「家が貧しいと、毎日の食事が安くて調理の簡単なジャンクフードやファーストフード、揚げ物中心になるんです。多くの生徒は家が食糧配給切符(貧困ライン以下の家庭に配給される食糧交換クーポン、フードスタンプ)に頼っていますから、この傾向はますます強くなりますね」

学校給食という巨大マーケットを狙って、マクドナルドやピザハットといった大手ファーストフード企業が凌ぎを削る中で、

「国際肥満協会」は、このままいくと2010年までにはアメリカ国内児童の半数以上が肥満児になるだろうと警告している。

ハリケーン・カトリーナの被害で、いまだ路頭に迷っているニューオーリンズの「国内難民」の存在は、連邦緊急事態管理庁(FEMA)を民営化したことによる「人災だ」と言われている。

「自己責任」の名のもとに「自由診療」を増やした医療制度の改革は、その狙い通り保険会社や製薬会社の利益を上昇させたが、それはまた、

無保険のため高額の医療費を払えない貧困層の患者を病院から(これも狙い通り)排除しただけでなく、過酷なノルマと高額の医療訴訟損害保険の負担が医師たちをも追い詰めることになったのだった。

「アメリカでは高校中退者が年々増えており、学力テストの成績も国際的に遅れを取っている。学力の低下は国力の低下である。よってこれからは国が教育を管理する」

という「落ちこぼれゼロ法」という名の教育改革法は、落ちこぼれた貧しい家庭の生徒たちの個人情報を入手し、「奨学金」などの餌を提示して、軍にリクルートするための「裏口徴兵政策」ともいうべきものだった。

「国民の命に関わる部分を民間に委託するのは間違いです。国家が国民に責任を持つべきエリアを民営化させては絶対にいけなかったのです」

本来、公共が担うべきサービスの分野に、利益第一の民間企業が次々と参入することが、いかに民主主義の破壊につながるか。

こうした「格差」と「貧困」の拡大という現象は、もちろんアメリカという「海の向こう」だけに発生している問題ではない。

「役所がひどいなら民営化すればいい」という安易な考えは、小泉改革以後の日本では、むしろ主流の行き方となっているのではなかっただろうか?

「教育」「いのち」「暮らし」という、国民に責任を負うべき政府の主要業務が「民営化」され、市場の論理で回されるようになった時、はたしてそれは「国家」と呼べるのか?私たちには一体この流れに抵抗する術はあるのだろうか?

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