(岡野宏文 豊崎由美 ぴあ)

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豊崎 「山口百恵はドラマの“赤いシリーズ”で白血病のヒロインを演じたけど、明治時代の病気の華というか、美女がかかるべき病は結核だったってことなんでしょうね。その発想ひとつ取ってもいかにベタな小説かがわかるわけですけど。」
岡野 「患ったら助からない代表的な死病って結核だったし、この時代。それに<もう婦人なんぞに――生まれはしませんよ>っていう名台詞に要約されるように、つまり、これは家族制度のしがらみに苦しむ女の悲劇を描いた小説で、それもまたよくありがちなテーマではあるんだよね。」


という徳富蘆花『不如帰』(1900年)から始まって、最後はあの『ハリー・ポッターと賢者の石』(2000年)まで、

岡野・豊崎の、その名も高き「毒舌書評家」コンビが、二十世紀の百年間から十年ごとに十冊ずつ機械的に選ばれた百冊の「ベストセラー」なるものを、選り好みすることなく改めて読んでみて、

「いいものはいい、駄目なものはダメ」と、斬って、斬って、斬りまくってしまおうという試みなのであれば、これが面白くないわけはないのだった。

同じように<赤いシリーズ>でもあるまいしと酷評された『世界の中心で愛を叫ぶ』に対する冷たさに比べれば、『不如帰』に対しては、

豊崎 「にもかかわらず、面白いんですよねえ。」

と「愛」をもって語られたりするところを見ると、この方たちの鑑識眼の確かさが感じられるし、

何より、本を読むのが本当に好きなんだろうなあという思いに、ほんわかとした気分にもなるのだった。

豊崎 「八十年代の掉尾を飾るのが、こんなもんでいいのか?」
岡野 「いいわけねえよ。許せねえ。言ってみろ『許される理由』を。」
(二谷友里恵『愛される理由』)

と世紀も後半になるにつれて、その語り口もますます過激になっていくのは、選ばれるベストセラーの質が明らかに落ちている(これは私たち読者の責任である)のだから、仕方がないにしても

豊崎 「だから、これ、林真理子『ルンルンを買っておうちに帰ろう』の貧乏版なんですよ。」
(林芙美子『放浪記』)

岡野 「一番最後なんか駄目押しするかのように<私にはあなたがある/あなたがある あなたがある>だもの。」
豊崎 「小坂明子か、お前は。」
(高村光太郎『智恵子抄』)

豊崎 「一目逢って<私の口の両側に出来た幽かな皺を見て下さい。世紀の悲しみの皺を見て下さい>だの。そりゃ悲しみの皺じゃねえよ、単なる三十女の加齢皺だよ、かず子(笑)。」
(太宰治『斜陽』)

と名だたる高名作家にまでその舌禍が及ぶのを、「一発芸」として楽しむことができるかどうかが、あなたのこの本に対する評価を分けることになるだろう。

とはいえ、

かつて「クソミソ」にけなしたことを謝罪したいという豊崎の、意外に素直な告白を読むだけでも、この本を手に取るだけの価値はあると、私は思う。

岡野 「トヨザキくんは春樹がマスターの銀座の小さな酒場の常連だったわけだよ。ところが、だんだん客が増え出して、六本木ヒルズみたいなとこに洒落た支店を出しちゃう。なんだよ、と怒ったのが八八年のトヨザキくんだったんだな。」(村上春樹『ノルウェイの森』)

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