(渋沢栄一 ちくま新書)
『論語』には、おのれを修めて、人と交わるための日常の教えが説いてある。『論語』はもっとも欠点の少ない教訓であるが、この『論語』で商売はできないか、と考えた。そしてわたしは、『論語』の教訓に従って商売し、経済活動をしていくことができると思い至ったのである。
「これからは、いよいよわずかな利益を上げながら、社会で生きていかなければならない。そこでは志をいかに持つべきなのだろう」
武蔵国(今の埼玉県)の豪農の家に生まれ、水戸学の影響から尊王攘夷の志士として活躍していたにもかかわらず、
なぜか一橋家の家臣に転身して幕臣となり、フランス万博に招待された徳川将軍家の随行員として渡仏中に、大政奉還によって後ろ盾を失い緊急帰国、
今度は明治新政府からその経歴を買われて大蔵省に入省、租税制度の改正や貨幣制度の改革に辣腕を揮った。
そんな渋沢が、野に下ることになったのは、財政規律を欠いた支出を強引に推し進めようとする大久保利通ら政府主流とのそりが合わなかったこともあったには違いないが、
当時のわが国は政治でも教育でも、着々と改善していくべき必要があった。しかしなかでもわが日本は、商売がもっとも振るわなかった。これを振興していかないと、日本は豊かになっていくことができない。これは何としても、他の方面と同時に商売を進行させなければならない、と考えたのだ。
「身の程知らずながら学問によって経済活動を行わなければならないという決心で、わたしは商売人になったのである。」
「第一国立銀行」を足がかりに、抄紙会社(のちの王子製紙)、東京海上保険会社(東京海上火災)、日本郵船、東京電灯会社(東京電力)、日本瓦斯会社(東京ガス)、帝国ホテル、札幌麦酒会社(サッポロビール)、日本鉄道会社(JR)など、約470社の会社の設立に関わり、
東京商法会議所(日本商工会議所)や、東京株式取引所(東京証券取引所)の設立にも中心的な役割を果たすことになった、
「日本資本主義の父」・渋沢栄一の経営哲学の基盤となっていたのは、
「商売に学問は不要である」、「金銭を取り扱うことは賤しむべきことだ」という世間一般の偏見に真っ向から立ち向かうことを可能にさせた、
「人の世の中で自立していくためには武士のような精神が必要である」という「士魂商才」の信念だった。
もちろん、武士のような精神ばかりに頼って「商才」がなければ、「武家の商売」は経済の上からも自滅を招くことになる。
ゆえにこそ、「士魂」(=『論語』)には「商才」(=『算盤』)が伴っていなければならないのである。
思うに人の行為がよいのか、それとも悪いのかは、その「志」と「振舞い」の二つの面から比較して、考えなければならない。「志」の方がいかに真面目で、良心的かつ思いやりにあふれていても、その「振舞い」が鈍くさかったり、わがまま勝手であれば、手の施しようがない。「志」において「人のためになりたい」としか思っていなくても、その「振舞い」が人の害になっていては、善行とはいえないのだ。
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『論語』には、おのれを修めて、人と交わるための日常の教えが説いてある。『論語』はもっとも欠点の少ない教訓であるが、この『論語』で商売はできないか、と考えた。そしてわたしは、『論語』の教訓に従って商売し、経済活動をしていくことができると思い至ったのである。
「これからは、いよいよわずかな利益を上げながら、社会で生きていかなければならない。そこでは志をいかに持つべきなのだろう」
武蔵国(今の埼玉県)の豪農の家に生まれ、水戸学の影響から尊王攘夷の志士として活躍していたにもかかわらず、
なぜか一橋家の家臣に転身して幕臣となり、フランス万博に招待された徳川将軍家の随行員として渡仏中に、大政奉還によって後ろ盾を失い緊急帰国、
今度は明治新政府からその経歴を買われて大蔵省に入省、租税制度の改正や貨幣制度の改革に辣腕を揮った。
そんな渋沢が、野に下ることになったのは、財政規律を欠いた支出を強引に推し進めようとする大久保利通ら政府主流とのそりが合わなかったこともあったには違いないが、
当時のわが国は政治でも教育でも、着々と改善していくべき必要があった。しかしなかでもわが日本は、商売がもっとも振るわなかった。これを振興していかないと、日本は豊かになっていくことができない。これは何としても、他の方面と同時に商売を進行させなければならない、と考えたのだ。
「身の程知らずながら学問によって経済活動を行わなければならないという決心で、わたしは商売人になったのである。」
「第一国立銀行」を足がかりに、抄紙会社(のちの王子製紙)、東京海上保険会社(東京海上火災)、日本郵船、東京電灯会社(東京電力)、日本瓦斯会社(東京ガス)、帝国ホテル、札幌麦酒会社(サッポロビール)、日本鉄道会社(JR)など、約470社の会社の設立に関わり、
東京商法会議所(日本商工会議所)や、東京株式取引所(東京証券取引所)の設立にも中心的な役割を果たすことになった、
「日本資本主義の父」・渋沢栄一の経営哲学の基盤となっていたのは、
「商売に学問は不要である」、「金銭を取り扱うことは賤しむべきことだ」という世間一般の偏見に真っ向から立ち向かうことを可能にさせた、
「人の世の中で自立していくためには武士のような精神が必要である」という「士魂商才」の信念だった。
もちろん、武士のような精神ばかりに頼って「商才」がなければ、「武家の商売」は経済の上からも自滅を招くことになる。
ゆえにこそ、「士魂」(=『論語』)には「商才」(=『算盤』)が伴っていなければならないのである。
思うに人の行為がよいのか、それとも悪いのかは、その「志」と「振舞い」の二つの面から比較して、考えなければならない。「志」の方がいかに真面目で、良心的かつ思いやりにあふれていても、その「振舞い」が鈍くさかったり、わがまま勝手であれば、手の施しようがない。「志」において「人のためになりたい」としか思っていなくても、その「振舞い」が人の害になっていては、善行とはいえないのだ。
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