(西村淳 新潮文庫)
 
焼けた肉は速攻で口に投入しなければ、たちまち、ほんとにガチガチの冷凍状態に逆戻りしてしまう。

缶ビールは空けてから一分以内に空にしなければただの苦い氷になってしまう。

もちろん、南極だからといって、毎日の食事がこのような格闘技状態なわけではない。

これはあくまで、マイナス40度の屋外で、ジンギスカン・パーティーを行なった場合の説明なのである。

で、なぜ南極で、わざわざ屋外で、ジンギスカンなのか?

そんなことは知ったことではない。

「体に布団を巻き付け、足には重石入りの下駄をはき、両手は軍手の上にオーブンミトンを重ねると大体近い形状になる。」

という重装備で、酸欠で死にそうになりながら、ソフトボール大会をやったり、

はては「ドラム缶」露天風呂で温泉気分を楽しんだりしてしまう人達の心境を、慮ることなど不可能なのである。

それにしても、ある日のメニュー、

<アミューズ> ムール貝のカクテル チリソース
<前菜> ガランティーヌ フォワグラのムース詰め
<スープ> すっぽんとトリュフのコンソメ
<サラダ> フレッシュフォワグラとドーム製レタスのサラダ ソース・ド・アンチョビー
<魚> ラングスティーヌと帆立貝のパイ皮包み ソース・ド・アメリケーヌ
<ソルベ> ブルーキュラソーのシャーベット ダークベリー添え
<肉> 鴨肉のロースト オレンジソース
<デザート> 冷凍イチゴのそば粉のクレープ包み ソース・ド・アングレーズ

畏れ多きことに、牛肉は宮内庁御用達の「米澤牛」の超一級品なのである。

それでも、これといった感慨もなく、実に淡々と、飲んだくれ親父達の集団の胃袋に納まっていくところが、まことに痛快な一冊である。

(2005年8月)

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