(堤未果 岩波新書)

人々は今、首をかしげている。オバマ政権が大きな政府であれば、なぜ二極化はますます加速しているのだろう。株価や雇用は回復したはずなのに貧困は拡大を続け、医療、教育、年金、食の安全、社会保障など、かつて国家が提供していた最低限の基本サービスが、手の届かない「ぜいたく品」になってしまった理由について。かつて「善きアメリカ」を支えていた中流層や、努力すれば報われるという、「アメリカン・ドリーム」は、いったいどこに消えたのか。

市場こそが経済を繁栄させるという理論を振りかざし、あらゆる国家機能を次々に市場化していくブッシュ政権の「規制緩和」の政策によって、

本来、公共が担うべきサービスの分野にまで、利益第一の民間企業が次々と参入することが、いかに民主主義の破壊を巻き起こすことにつながったか。

という、アメリカにおける驚くべき「格差」と「貧困」の拡大という現象の実態に迫って見せた、

『ルポ貧困大国アメリカ』

「チェンジ」を掲げて躍進したオバマの「政権交代」に希望を託した国民たちの目の前に、リーマン・ショック後のアメリカが「むしろ悪化した」貧困大国の姿を曝け出す失態を演じることになったのは、

彼らを飲みこもうとしているのが、「キャピタリズム(資本主義)」などではなくて、「コーポラティズム(政府と企業の癒着主義)」だったからだ。

という、過去30年の間に著しく様相を変じてしまったアメリカの実体経済の真の姿を浮き彫りにして見せた、

『ルポ貧困大国アメリカ2』

世界をリードする「強い農業」という政府の号令のもと、伝統的な中小の農場は次々に傘下に組み込む大企業によって、工場式農場に切り替えられ、農業従事者は気がつけばパートタイム労働者へと貶められていく、

「株式会社奴隷農場」のシステム。

「全米の食卓に安くて新鮮な食べ物を」という表向きのスローガンの裏で、巨大な独占企業による寡占化が進む食品業界では、急速に進む垂直統合が食の工業化を推進し、小規模有機などの存在を破壊する。

「巨大なる食品ピラミッド」の存在。

毒性の強い農薬とセットで売られたGM種子により、途上国の農業の未来をライセンス料で縛り付けることに成功したアメリカは、最高の外交武器を手に入れたことになる。

「GM種子で世界を支配する」という脅威。

市場原理が持ち込まれた教育現場では、公立学校が次々に高収益のチャータースクール(営利学校)に置き換わっていったと同じように、全米の自治体の9割は今後5年以内に財政破綻すると予想されている。

「切り売りされる公共サービス」という矛盾。

「選挙とは、国の支配権をかけた、効率の良い投資である」という企業の意思表示が、強大な力となって州法さえ動かしてしまう。

「政治とマスコミも買ってしまえ」というALEC(米国立法交流評議会)。

あらゆるものが巨大企業に呑み込まれ、株式会社化が加速するアメリカにおいて、果たして国民は主権を取り戻すことはできるのか?

これは著者畢生のルポシリーズの完結編なのであり、「アベノミクス」に浮かれはしゃぐ日本の近未来を予言した、覚醒を促す指針ともいうべき書なのだ。

経済界に後押しされたアメリカ政府が自国民にしていることは、TPPなどの国際条約を通して、次は日本や世界各国にやってくるだろう。・・・
しかけられているのは、多様性に対する攻撃なのだ。


(2013年8月)

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