(磯田道史 新潮選書)

「加賀百万石の算盤係」=「加賀藩御算用者」猪山家の家計簿が発見された。

そこには収入(俸禄)はもちろん、饅頭一つ買っても記録した帳面が、完全な形で36年分も残されていた!

そこから想定される当時の武家の暮らし向きは?

年収は二世帯同居で、収入合算して1230万円。
抱える借金が2500万円、金利は年利18%!
「借金が年収の二倍」で利子の支払いで年収の3割が消えてしまう。

「これではやがて破綻する。」

というわけで、猪山家は借金整理を開始する。

妻と母が個人財産の「着物」を、父は「茶道具」を、本人は「書籍」を売り払っている。
これで合計1000万円を捻出。

「元金4割返済、残りの借金は無利子十年賦」を条件に折衝、成功を収めている。
まさに「民事再生法」の世界である。

しかし、猪山家は何故このような苦境に陥ってしまったのか?

祝儀交際費や儀礼行事の支出がずば抜けて多いのである。

それは「武士身分としての格式を保つために支出を強いられる費用」=「身分費用」である。

たとえば猪山家では「民事再生」中にもかかわらず、家来・下女を雇っている。

家来・下女の給金はさしたる額ではないが、住込み・賄い付であり、お供やお使いをすればその都度「駄賃」収入があった。

そして、その合計はご主人様の月々の「小遣い」よりも多かったと思われるのである。

つまり、江戸末期の武家という商売は「身分収入」に比べて「身分費用」のかかる割の合わない商売であったのだ。

一転、明治に入ってからの後半部分は、

没落する士族階級の中で「算術」という技術を武器に海軍に出仕し、出世を果たした猪山家の、

「我が子も続け!」と言わんばかりの「受験戦争」にも似た「教育問題」がテーマとなり、これもまた興味津々。

「ご当地本」というだけでベストセラーになったのではないこと保証の一冊である。

(2003年5月)

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