(竹村公太郎 PHP文庫)

これほどまで徹底してショートカットしたのか。これほどまで北海道の技術者たちは蛇行部を嫌ったのか。
それまで全国各地の河川改修の図面を何百枚も見てきたが、これほど強い執着、いや執念を感じさせる図面に出会ったことはなかった。


石狩川河口にある「川の博物館」に、建設省河川局時代の先輩技師を訪ねた著者は、かつて蛇行していた石狩川と現在の直線化された石狩川の図面を見つめながら、内心たじろいていたのだが・・・、

「なぜ、これほどショートカットしたと思う?」と聞いてきた先輩に、わかりきったことを今さらと思いながら、

「洪水の流下能力をあげるためでしょ」とそっけなく応じた私に、

「それだけじゃないんだよ」と優しく諭すように返ってきた答えは、全く思いもよらないものだったのである。

<「地形」を見直すと、まったく新しい日本史・日本文化が見えてくる!>

ベストセラーとなった <前作> に続く第二弾は、今度は歴史だけでなく、日本人の心情や勤勉性の謎にも迫ってしまおうという「文明・文化編」の14題。

たとえば・・・

<なぜ日本は欧米列国の植民地にならなかったか>
―日本には欧米人の欲望をかき立てるものは何もなく、逆に恐怖させる自然災害が嫌というほどあった。―

<日本人の平均寿命をV字回復させたのは誰か>
―ロシア革命で不要になった毒ガス用の液体塩素を水道水の殺菌に転用したのは東京市長の後藤新平だった。―

<日本の将棋はなぜ「持駒」を使えるようになったか>
―険しい地形と湿地帯のため「歩いて担ぐ」日本人は、持ち運ぶ将棋の駒を「立像」から「平型」に変え、それが敵味方の区別を色ではなく向きで表すことを可能にした。―

というわけで、冒頭の先輩からの回答は、以下のようなものだった。

「ショートカットは石狩川の川底を下げるためだよ。川底を下げて石狩平野の地下水を下げたかったんだ」

つまり、石狩川の流速を速めて川底を洗掘させることで石狩平野の地下水を下げ、「泥炭層」の不毛の地を肥沃な稲作地帯に生まれ変わらせたことになる。

石狩平野に今も残された数多くの三日月湖は、北海道の未来がかかる石狩川の治水という困難な使命に、果敢に挑んだ土木技術者たちの執念の証だったのである。

100年後の北海道は今の東北から関東の気温になり、北海道の全域で稲作はもちろん、ありとあらゆる農作物が収穫できる。
日本は北海道という穀倉地帯を手に入れることとなる。北海道は東北6県と北関東3県を合わせた広大な土地である。間違いなくこの地が日本の未来の食糧を支えていく。
北海道は弥生時代を持たなかった。その北海道は新たな弥生時代に入ろうとしている。
大正、昭和の執念の石狩川ショートカット、そのショートカットが北海道の弥生を準備してくれた。


(2014年8月)

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