(加藤陽子 新潮文庫)

つまるところ時々の戦争は、国際関係、地域秩序、当該国家や社会に対していかなる影響を及ぼしたのか、また時々の戦争の前と後でいかなる変化が起きたのか、本書のテーマはここにあります。

<戦争はきまじめともいうべき相貌をたたえて起こり続けました。>

というこの本(2010年度小林秀雄賞受賞)は、1930年代という暗い時代の日本の外交と軍事を専門とする東大教授が、

神奈川の名門・栄光学園の中高校生(歴史クラブのメンバーが中心)を相手に、5日間にわたって繰り広げられた集中講義の記録なのであり、

日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変、太平洋戦争と、明治以来立て続けに日本が戦ってきた戦争について、

国の主導者や一般国民が、それぞれに「戦争」を選んできた、その論理の道筋を、様々な「問い」を用意することで跡付けて行こうという、まことにユニークな試みなのである。

「日清戦争で国家予算の三倍もの賠償金を得た後、日本国内の政治においてはなにが最も変わったか?」

三国干渉における弱腰外交への強い不満から、お上だけに政治を任せてはおけないとばかりに普通選挙運動が盛り上がり、初めての政党内閣が誕生した。

「巨額の戦費を負担しながら賠償金が得られなかった日露戦争後には、日本の国内ではなにが変化したか?」

時限立法だったはずの増税が戦後も継続したことにより、納税額の枠がある選挙有権者が1.6倍に増え、政治家の質が地主階層から実業家へと変質した。

などなど、ちょっと意外な質疑回答が、わかりやすいイラストと、世界的に著名な歴史上の人物の証言などを交えながら、繰り広げられていくのだが、

さすがに最終回ともなると、少数精鋭の優秀な生徒たちからの逆襲もなかなかのもので、

「日本とアメリカには圧倒的な戦力差があることはわかっていたのに、どうして日本は戦争に踏み切ったんですか。」

などという、時の昭和天皇ですら悩まれていたに違いない、事の本質に迫る質問も、飛び出してきたりして、

なるほど、歴史を学ぶということは、「問いの立て方」を学ぶことなのだと、確信することになるのである。

「日本軍は、戦争をどんなふうに終わらせようと考えていたんですか?日本軍の最終目的が知りたいです。」

ひょっとしたら、ノープランだったのではなんて、おじさんも思っていたんだけど・・・

地続きのヨーロッパとは違いますし、核兵器の戦争の時代とは違いますから、とにかく相手国の国民に戦争継続を嫌だと思わせる。このような方法によって戦争終結に持ち込めると考えていた。冷静な判断というよりは希望的観測だったわけですが。

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