(寺澤盾 中公新書)

trunk 1(木の)幹 2(自動車の)荷物入れ 3(象の)鼻 4 (競技用の男子の)パンツ 5 (旅行者用の)大かばん・・・(『ジーニアス英和辞典』)

<日本人にもっとも馴染みのある「車のトランク」は、「木の幹」とどのように繋がっているのだろうか>

単語の多義性は、過去におこった意味変化が集積して生まれたものなのだから、

多義語が持つさまざまな意味を繋ぐ糸を発見しようと思えば、その語が経てきた歴史的意味変化の道を辿らなければならない。

『英語語源辞典』などを調べれば、「trunk」は15世紀前半にフランス語から借用されたもので、その時には「木の幹」を意味する単語だったことがわかる。

その「木の幹」をくりぬいた形状に由来する「管」(現在は廃義)という意味を介して、「ゾウの鼻」や「トランクス」という意味が派生してきた。

その「木の幹」を削って作った箱を、昔は実際に「収納箱」(現在は廃義)として使用していたことから、「車のトランク」や「かばん」という意味が生まれたのである。

ある単語の意味が変化する場合、もとの意味からでたらめに新たな意味が出てくるのではなく、両者の間には必ず何らかの繋がりがある。

「類似性」(似ているもの)
「近接性」(近くにあるもの)

単語のもとの意味(原義)と、そこから派生した意味(転義)との間には、上記2つの連想関係に基づく場合が多いのだ。

というこの本は、

前著『英語の歴史』(中公新書)において、1500年におよぶ英語の歴史のなかで、発音・つづり、語彙、文法がどのように変化してきたかを語った著者が、

今度は単語の意味変化を取り上げ、その歴史的変遷を辿ってみることで、ばらばらに見える語義をつなぐ「関連の糸」の存在を発見することが、

一見、廻り道のように見えて、英語学習の効率アップにつながるのだということを示してくれたものなのである。(第一、その方が絶対に楽しいしね。)

さて、名詞・動詞・形容詞といった「内容語」の意味の変化について、一通り理解した後で、

議論は、前置詞・代名詞・助動詞など文法的な役割を担う「機能語」の意味の変化へと移り、佳境に入っていく。

・「of」は「所属・所有」より「分離・剥奪」の意味が先
・「you」が単複同形なのは「尊敬の複数」の代用
・「can,may,must」にみる「能力、許可、命令」の意味変化の一方通行性

などなど、興味津々の話題満載なのだった。

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