(Mリヴィオ 早川書房)

1917年、最大スケールで見れば宇宙は不変かつ静的であると確信していたアインシュタインは、自分自身の方程式で記述される宇宙が、自分の重みで崩壊しないようにするため・・・自身の方程式に新しい項を導入した。

一見するかぎり見事な解決策となった斥力的重力=「宇宙項」。

それは、宇宙が膨張していることを真っ先に予言する栄誉を失わせただけでなく、後に自らそのアイディアを取り下げざるを得なくなったという意味で、

「我が生涯で『最大の過ち』だった。」

(という歴史上有名な台詞をアインシュタインが述べるのを聞いた、というガモフの証言は実は創作だと著者は結論しているが・・・)

「融合遺伝」(両親の特徴がペンキを混ぜ合わせるように融合して子に伝えられる)という仮定のもとでは、自然選択のメカニズムは期待どおりに作用しえない、

という点を完全に見落としてしまった、「進化論」のダーウィン。

地球のマントルが対流するという、予期せぬ可能性の指摘に耳を傾けようともせず、地球内部の熱伝導は一様だという仮定に固執し、

地球の年齢を実際の50分の1に推定してしまった、物理学者のケルヴィン卿。

タンパク質の構造解明における画期的な成功を過信し、低品質なデータとわずかな研究期間というやっつけ仕事で、

三本鎖のDNAという誤った結論に至ってしまった、化学者のポーリング。

宇宙マイクロ背景放射の観測により、ビッグバン理論が単なる仮設から実証された主流の座についたことが明らかになっても、定常理論を支持し続け、

不自然で信じがたい説明を繰り出して「単なる変わり者」とみなされた、天体物理学者のホイル。

というわけでこの本は、真に偉大な数人の科学者が犯した、意外な過ちと、それがもたらした予期せぬ影響を追いながら、

最終的には、発見や革新へと繋がる道は、過ちという想定外の道筋で作られることもある、ということを証明してみせようという試みなのである。

1998年、ふたつの天文学者チームがそれぞれ別個に、宇宙の膨張がこの60億年間で加速し続けていることを発見した。

それは、あの宇宙項から期待されるような何らかの種類の斥力が、宇宙の膨張を加速させていることを示唆していた。

宇宙項によって静的宇宙が実現すると考えたことは、悔やまれるミスであったかもしれないが、だからといって、

方程式の表面的な美のために、宇宙項に恣意的にゼロという値を代入して、宇宙項を取り去ってしまったことは、

自身の理論の一般性を制限してしまったという意味で、方程式の簡素化のために払った高い代償となったと言わねばならない。

<アインシュタインの本当の過ちとは、宇宙項を取り去ったことだったのである!>

本書で説明している過ちはいずれも、何らかの形で、大発見への橋渡し役を果たした。だからこそ、「偉大なる失敗」と読んでいるわけだ。・・・5人の犯した過ちは、科学の進歩をさえぎっていた霧を振り払う、きっかけのような役割を果たしたのである。

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