(新井紀子 東洋経済新報社)

AIがコンピューター上で実現されるソフトウェアである限り、人間の知的活動のすべてが数式で表現できなければ、AIが人間に取って代わることはありません。・・・コンピューターの速さや、アルゴリズムの改善の問題ではなく、大本の数学の限界なのです。

「だから、AIは神にも征服者にもなりません。シンギュラリティも来ません。」

と、その理路を整然と解き明かしてみせてくれる、この気鋭の数学者が、

「なんだ、じゃ、AIに仕事を取られて失業するっていうのは嘘か。」

と、ホッと胸をなでおろそうとした私たち凡夫の民に、安心するのはまだ早いとばかりに突き付けてみせた、暗黒の未来図。

人間の仕事をすべて奪ってしまうことはないにせよ、多くの仕事がAIに代替される未来が、目の前に迫っていることは事実だが、

たとえそうなっても、AIでは代替できない新たな労働需要が生まれて、余剰労働力はそちらに吸収される?

いいえ、残念でした。

「AIでは対処できない新しい仕事は、多くの人間にとっても苦手な仕事である可能性が非常に高い。」

というのが、<東ロボくん>と名付けた人工知能を我が子のように育て、東大合格を目指すチャレンジを続けながら、ついに桜散った数学者の冷徹な読みなのである。

著者が同時並行して実施してきた、日本の中高校生の「読解力」についての大がかりな調査と分析によれば、

現在の日本の中高校生の多くは、詰め込み教育の成果で表層的な知識は豊富だが、中学校の教科書程度の文章の意味を正確に理解できていないことが判明している。

「あれ?AIと同じではないか?」

過去問やウィキペディアといった活用可能な知的資源を、最先端の数式処理で検索するだけでは、読解力と常識の壁を乗り越えることができず、

結局、東大合格を断念したとはいえ、<東ロボくん>の最終的な偏差値は57.1で、MARCHや関関同立に合格できる程度の実力には到達していたのである。

教科書も読めない現在の日本の子どもたちが、そんな強力なライバルに太刀打ちできるとでもいうのだろうか?

折角、新しい産業が興っても、その担い手となる、AIにはできない仕事ができる人材が不足するため、新しい産業は経済成長のエンジンとはならない。一方、AIで仕事を失った人は、誰にでもできる低賃金の仕事に再就職するか、失業するかの二者択一を迫られる――。

<企業は人不足で頭を抱えているのに、社会には失業者が溢れている>

という「AI恐慌」の未来予想図を提示して見せることが、しかし、この数学者の本旨ではない。

最後に提示される<一筋の光明>を、ぜひあなたもご一読いただきたい。

ヒントは<読解力>なのである。

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