(Dキイス 早川書房)

ぼくの名まえわチャーリイゴードンでドナーぱん店ではたらいててドナーさんわ一周かんに11ドルくれてほしければぱんやけえきもくれる。ぼくの年わ32さいでらい月にたんじょお日がくる。(けえかほおこく1――3がつ3日)

<ぼくわかしこくなりたい。>

IQ68で6歳程度の知能しか持たないチャーリイは、その温和な性格と学びたいという意欲を持つことを評価され、「知能を高められる最初の人間」に選ばれる。

長年動物実験のみで研究を続けてきた、その手術を受けることは失敗に終わるかもしれないが、それでも科学に大きな貢献をすることになるというのだった。

眠っている間に終わった手術の後、初めのうちは遅々たる変化しかなかったが、「利巧になるために勉強した時それが身になる」ようになったのだと言われた通り、

様々な訓練や勉強を繰り返し、地道に続けていくうちに、ある日突然、「迷路テスト」で今まで一度も勝てなかったアルジャーノンを負かせるようになっていた。

アルジャーノンとは、チャーリイと同じ手術を受けた結果、前の3倍も賢くなり、ずっと賢いままでいる第1号の動物だという、特別の「ねずみ」だった。

というこの本は、言わずと知れた「不朽の名作」なので、暇人も20数年前には読んでいたわけだが、今回、参加している読書会の課題本となって再読した。

ほぼ2週間、私が経過報告を提出しないというので二―マーはあわてている。シカゴで開かれる国際心理学会はあと1週間に迫っている。アルジャーノンと私は彼の報告の目玉である展示物なのであるから、最初の報告はできるだけ完璧にしたいと望んでいるのだ。(経過報告12――6月5日)

<二―マーが私を実験の標本扱いするのが癇に触る。>

と、IQがみるみるうちに向上していく様を、「経過報告」という一人称の文章をどんどん洗練させることだけで示してしまう、画期的な技巧の冴えに導かれながら、

急激な知能の発達とともに、友達だと思っていた人たちが自分を馬鹿にしていたことや、偉い先生たちが本当は何も知らないことなどに気付いていく物語を楽しんだ。

<教養は人と人とのあいだに楔を打ちこむ(障壁を築く)可能性がある。>――これが、この物語の前半のテーマなのである。

さて、そんなある日、アルジャーノンが突然奇妙な行動に走るようになり・・・チャーリイはあの手術の成果が一時的なものに過ぎないことを悟ることになる。

皮肉なことにその手術の成果によって、今の彼には自分の「悲惨な未来の姿」をありありと思い描くことができるようになっていたのだ。

やがて、自分の書いた経過報告すら読めなくなるほど退化してしまったチャーリイは、昔、親に捨てられ育った障害児学校へ自ら戻って行くことにする。

この世界にあるなんて知らなかった沢山のことを、ほんのちょっとの間でも見られたから、「利巧になる」ための二度目の機会を与えられたことに感謝しながら。

<他人に対して思いやりをもつ能力がなければ、そんな知能など空しいものだ。>――これが再読して教えられた、この物語の後半のテーマなのである。

どおか二―マーきょーじゅにつたいてくださいひとが先生のことをわらてもそんなにおこりんぼにならないよおに、そーすれば先生にわもっとたくさん友だちができるから。ひとにわらわせておけば友だちをつくるのはかんたんです。

<ついしん。どーかついでがあったらうらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください。>

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