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先日、伊豆長岡温泉の三養荘に行ってきた。

三養荘は、昭和を代表する建築家・村野藤吾の最後の作品とされている。4万2000坪という広大な敷地に、岩崎家の旧別邸である本館と、村野藤吾の作品である新館が木々の中に点在している。
新館は一泊二食付きでお一人7万5000円〜という高級温泉旅館だ。

伊豆長岡温泉はかつて殿方の楽園として名を売っていたようだが、三養荘にはそんな気配はまったくない。三方を山に囲まれ、そんな俗世間とは完全に切り離され、別世界を築いている。高級旅館に恥じぬ凛とした空気と、桃源郷のように滞在者を優しく包み込む穏やかな時間がそこにはある。

リピーターが多く、しかもほとんどの人は連泊だということだが、お金に余裕があるならば、ここで過ごす日常とは切り離された時間は、さぞ心をリフレッシュさせるだろうな。

1019b僕が泊まったのは、新館の「梅枝」という部屋。二間続きの和室があり、2メートル幅の広縁を隔て専用庭がついている。大浴場もあるが部屋のお風呂がまたいい。源泉掛け流しで、露天風呂ではないが、二方向に窓がついていてそのひとつを開け放つと開放感たっぷり。伊豆石が床と腰に張られ、壁は檜のとてもステキなお風呂だ。

建築的には数寄屋造り。天井は低く抑えられ、障子や窓の建具は桟の細いとても繊細なつくり。柱も細く見せるために丁寧に面取りされていた。
宿の方にいろいろな部屋を見せていただいたが、床や建具のデザインなどがそれぞれ違っていて、見るのに飽きない。

1019cただ、じつは三養荘は村野藤吾の作品とされているが、彼が関わったのはスケッチと模型まで。設計監理はその弟子たちの手による。そのために見る人が見れば(僕ではない)、村野建築とは微妙な差異があり、完全さに欠けているという。やや腰高であったり、ディテールの線が太かったりするのだという(僕にはわからないのだが・・・)。

とはいえ、建築的な評価は高く、建築に携るプロの方はもちろん、これから本格的な和風の家もしくは部屋をつくりたいという人には、ほんとうに参考になるはずだ。

1019d食事は宿泊料金に見合った豪華な会席料理で、とてもおいしかった。
今回は取材で行ったためにあわただしく、贅沢な時間を満喫したというところまでは実感できなかったのだが、いつの日か自分の時間で三日ぐらい逗留してみたい。そんな夢を描いたのだった。