19日(日)朝のNHK「サキどり」を見て、「これが本当の商売だ」と気付かされた。

 

安売りの先に・・・

 

 戦後日本に「流通革命」が起きた。

 先鞭をつけたのは、大阪で「主婦の店・ダイエー」を開いた中内功だった。

 その後、次々にスーパーが生まれた。

 さらに、鈴木敏文が、米国から「セブンイレブン」を導入、コンビニエンスストアが全国に広がった。

 そのことで、個人商店が圧迫され、過去20年に全国の個人商店は半減しているという。

 品ぞろえと安さで、スーパーやコンビニが客を奪っていった。

 中内は「生産者が価格を決めるのではない。価格を決めるのは消費者」と言い、安値競争にまい進した。

 生産者に「この価格以上では買わない」と言い、安値競争についていけない生産者はどんどん潰れて行った。

 これを続けていくのが正しいのか?

 

本当の流通業とは何か?

 

 今回の「サキどり」の主役だった安井さんの父は、スーパー経営者で、安く売ることで頑張ってきた。

 安井さんは、「このままでは大手に負けて、店はつぶれる」と考えた。

 そこで、こだわりの商品を作る全国の生産者と連携して、それを売っている。

 普通スーパーやコンビニは各商品について欠品無しが原則。「そこで全部買える」を目指す。ところが、「こだわり商店」は入荷がないことも起きる。仕入れは卸売市場ではなく、宅配便での直送。

 もちろん値段が高くなる。そこで安井さんが力を入れているのが、お客さんとのコミュニケーション。開発中の食品を試食してもらい、意見を聞く。もちろんそれは生産者にフィードバックする。

 私は、10年以上前、メディアビジネスの将来像として「不特定多数から特定中数へ」というコラムを書いたことがある。

「こだわり商店」は常連客で成り立っている。お客さんとの信頼を大事にしている。

 結局のところ、商店は生産者と消費者を「信頼」でつなぐコネクティングポイントだ。

 

「お客さんを作る」とは

 

 従来、産業社会は、メーカーが主役で、消費者は「客体」でしかなかった。

 ところが、よく考えてみると、「お客様のために作る」のが本筋だ。

 それを忘れ、「安かろう、悪かろう」に走ると、企業は潰れる。

 一番賢いビジネスは、お客様に価値を認めてもらい、高く売るビジネスだ。

 私は、日本経済新聞のネット事業を拡張するときに、「他社に絶対勝てる」と言い切った。

 それは、日本で最高の読者を抱えているからだ。その読者のニーズに対応できれば、会社がつぶれることはない。

 飲食店でも同じだ。常連客が高くても信頼してきてくれれば、いつまでも続く。

 ということで、「お客様を育てる」のが正道だ。「こだわり商店」はそれをやっている。

 

「ゆいトレ」で“信頼の流通”にチャレンジ

 

 昨年夏から、私たちは「ゆいトレ」という新しい流通にトライしている。

 ネット上に「ゆいトレマガジン」を掲載し、私たちが見つけた「こだわりの商品」を紹介している。

 ミソは、「物語」

 生産者、商店主の「思い」を文章にして、それに共感して買ってもらおうというものだ。

「心の流通」と言ってもいいだろう。

 すでに、東大阪の低温焙煎コーヒー、龍野の羽毛布団などを紹介している。

 大量生産・大量流通・大量販売・大量消費は欧米から来た経済合理主義の産物だ。

 日本は古来から「心」「信頼」を大事にしてきた。

 ネットが発達したからこそ、その「信頼のビジネス」を取り戻したいと思っている。

 

 http://mag.yui-tr.jp/index.html

 

 (2017219日 第35話 おわり)

 

 16日夜のワークショップに参加したK君。一昨年、私の文章講座で学んだ子。1年半で大きく成長していました。


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 K君へ

 

木曜(16日)の夜はお疲れ様。大人に混じって、とてもいい話をしてくれました。

 

 あなたの話していた「60歳で大学院に入り、また勉強して、新しい仕事を始めたい」は、私のことだと思いました。

 私は、新聞社に入って、初めの約20年は記者として、後半の18年は、「電子新聞」という新事業に向かっての社内起業家をしていました。

 53歳の時、慶應大学に招かれ、「ネット時代のメディアと経営」をテーマに、7年間、教授(非常勤)をしていました。

 この7年間、半分は勉強でした。

 私は大学で哲学を学んだので、経営学は、いろんな企業の経営を取材した経験はあっても、基礎を学んでいなかったのです。

 國領二郎という、ハーバード大学で博士号を取った、日本を代表する経営学者の講義に潜り込んで、基礎的な文献を猛烈に読みました。1日、朝から晩まで一心不乱に900ページ読んだこともあります。

 とても勉強になりました。

 いま、社会起業家として、ベンチャー企業を経営できているのは、この学びがあったからです。

 

 友人の母親で、Y.Kさんという女性がいます。

 彼女は3人の娘を育て、ずっと専業主婦でしたが、60歳の時、長崎大学の大学院に入学し、社会福祉の修士号を取りました。また3冊本を書きました。

 それが評価されて、65歳から70歳まで5年間、仙台の女子大学の教授をしていました。彼女の最終講義を仙台まで聞きに行ったのですが、感動的でした。

 

 あなたのお母さんは今、大学院で学んでいますが、人間は学び直すことで何度も生き返ることができると思います。

 大事なことは、「好奇心」「向上心」です。「目標を持ってチャレンジすること」です。

 

 あなたが通っている三鷹の探究学舎の宝槻幸伸さんとは2年前の夏に知り合いました。その前年、ネット上で「息子三人を高校に行かせないで、京大に入学させたオヤジ」の話が話題になり、彼の著書も読みました。三鷹の友人が月一回、日曜に開いている「朝活」に彼が現れたのにはびっくりしました。

 その年の12月、探究学舎で私の文書講座をやりました。またいつかやるかも知れません。

 

 私は、子供のころから好奇心いっぱいで、小学校では図書館の月間貸出冊数がずっと1位でした。

 世界地図を開いて、南極、北極、アフリカなど、アムンゼンやスタンレーの探検記を読むのが大好きで、世界地図の地名を小学4年で全部覚え、地球のことはわかったので、「理科年表」を買って、宇宙のことを調べ始めました。そこで、「宇宙誕生の謎」を知りたいと、天文学者を志していました。空想科学小説も大好きで、特にハインラインが好きでした。

 

 母が「他の子どもの半分でも勉強したらいいのに」と嘆いていましたが、本当に机に座って勉強するのが嫌いでした。でも、小学校から中学まで、ずっと成績はクラスのトップでした。要するに「強要される勉強はしない」けれど「好きなことは自分から進んで学ぶ」ということで、宝槻さんの探究学習を50年以上前にやっていたというわけです。

 中学・高校の頃は、「先生の知識は古い。最新の知識はこれだ」とか、平気で言う生意気な生徒でした。でも「正しいことは正しい」という信念がありました。

 

 あなたは今14歳。ちょうど子供から大人になる時期・・・「自分の人生をどうしようか」と期待と不安が一挙に襲ってくる時期です。

 でも、人生ってどうにでもなるのです。

 ただ、「目標」と「希望」はなくしてはいけません。それに向かって一歩一歩努力すれば、いつか花が咲きます。

「プロになるには1万時間」という言葉があります。1365日で10年で3652日。10年間、毎日3時間打ち込めば、プロになれる。

 私は高校の頃から文章を書き、新聞記者になって、万に近いほどの記事を書いた結果、文章を指導する仕事をしています。

 そのくらい打ち込めるものを見つけて下さい。

 

 1415歳前後で、絶対やっておくことは、「視野を広げる」ことです。本を読み、いろんな体験や旅行をして、人々がどんな思いで生きているか、それも世界中の人が。

 また、宇宙の成り立ち、物質の中身、生命の不思議、哲学や宗教のことなど、深いことを探索していくのも大事です。

 あらゆることを皮相的に見ないで、「なぜ」「どうして」と背景をえぐるような見方をしてください。

 

 14歳・・・ちょっと早いかもしれませんが、視野を広げるために3冊の本をお勧めします。

 

1)14歳の君へどう考えどう生きるか』(池田晶子著、毎日新聞社)

 

==本の紹介から=

 なぜ人は生きるのか? 何のために、生きるのか? 混乱しきったこの世界で、君はどうやって生きていけばいいだろう。「友愛」「個性」「社会」「戦争」「言葉」……いま、考えておきたい16のこと。迷っている心に、自ら考える力を。確かな言葉でつづられた<人生の教科書>

 

 若くしてがんで亡くなった池田さんですが、とても優しい心の持ち主で、この本は大人に読ませてもジーンと来るものがあります。私は「幸福」の章が好きです。

 

2)君たちはどう生きるか』(吉野源三郎著、岩波文庫)

 80年も前に書かれた本ですが、「生きる」ということがどういうことか、とてもいいストーリーで書かれています。

 

3)137億年の物語宇宙が始まってから今日までの全歴史』(クリストファー・ロイド著、文藝春秋)

==本の紹介から=

137億年の歴史を42のテーマで語る。歴史を点ではなく、つながりで考える。西洋が中心ではない。アジア、南アメリカ、少数民族、イスラム、等々多元的な視点で理解する。地球的な規模で人類の文明も相対化する。豊富なイラストと写真で旅するように歴史を感じる。科学と歴史、その接点を考える。

 

前半は、物理学、天文学、生物学、後半は世界史・・・これを読めば、宇宙が始まって現在までに何が起こって、次に何が起こりそうか・・・よくわかります。

 

以上です。

 

とにかく、今の時代は面白いこと、好きなことに夢中になっているのが大事です。

人生は一生、「自分探し」ですが、遊んだり学んだりしているうちに、自分がどういう仕事に向いているかがわかります。

私は、学生時代に「遊びは仕事、仕事は遊び」で行こうと決めました。

新聞記者になったのですが、仕事が辛いと思ったことはありません。「いい感じで遊べてるな」といつもニコニコしていました。そういう「心の余裕」も大事です。

 

ということで、長々と書いてきましたが、人生をたっぷり楽しんで下さい。

 

                     以上

17日、日比谷図書文化館で開かれた、第13回電子ペーパーシンポジウムに出席した。その備忘録。

 

電子書籍は「書籍の電子化」

 

 一番興味深かったのは、専修大学の植村八潮教授の「“電子書籍”の市場拡大と概念拡張」のプレゼンだった。

 植村教授によると、最近の若い人の中に、新聞の読み方を知らない人がいるという。

 新聞は右上から左下に向かって読んでいくが、タテの罫線があると、そこから右下に続きがあるというルールになっている。

 ところが、読み方を知らない人は、罫線をまたいで読もうとしたり、罫線のところで止まってしまう。

 こういう傾向を新聞社も薄く感じていて、昔は複雑なレイアウトだったのが、今は箱型に記事を組むスタイルが多くなっているという。

 また、「電子新聞」といわれるものは、紙の新聞のレイアウトをそのまま電子化したもので、読者は狭いスマホの画面を点眼鏡のようにして見ていく。その場合、記事がどのように流れていくかの知識がないと読めない。

 結論として、植村氏は「今起きてるのは、紙の文化をそのまま電子化したもので、電子時代のリテラシーはまだ本格化していない」と語った。

 

「オールデジタル」表現への予兆

 

そんな中で、注目は「COMICO」というスマホで読むコミックだ。

 紙のコミックは紙面を大胆に使ってコマ割りをしているが、COMICOは小さなスマホの画面で読むため、タテにスクロールするように描かれている。

 また、植村氏は、78年前に流行したケータイ小説について、「荒っぽい表現で、『あんなのは小説じゃない』という人もいるが、ケータイの画面で読むことに最適化した新しい表現形態の先駆だった」と評価する・

 現在の20代は、子供のころからケータイ文化で育った人たち。その人たちは、紙文化の強烈な刷り込みがない。そこで、やがて彼らの間で、「紙の電子化」を脱した「電子に最適化した表現」が出てくると植村氏は期待している。

 

21世紀の共感文章術』の立ち位置

 

 拙著『21世紀の共感文章術』は、「20世紀は文章全部を読んでくれたが、情報氾濫の21世紀は冒頭で引きつけなければ読んでもらえない」と感じて書いたものだ。

 この表現方法を高く評価してくれる企業のおかげで、この文章術を実践するLoco共感編集部には注文が相次いでいる。

 私が10年ほど前から「メディア変化の時代は終わった。これからはメッセージを変える時代だ」と言ってきたことは、植村氏のプレゼンと共通する。

 そういう時代なのに、新聞社、出版社はまだまだ紙の文化から離れることができない。

「デジタルとは何なのか」という意味では、まだ1合目か2合目程度だろう。

 某雑誌の注文で、来週から「デジタルメディアの将来像」という論文を書くが、そこでは、現在の新聞社・出版社の幹部からみたら信じられない世界を描くことになる。

 という意味で、植村氏の話に大いに励まされた私だ。

 

2017218日 第33話 おわり)

 

 

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