え〜と内的臨死体験をしました。
実は十四日に撮影を終えた、わたしは十六日の朝五時まで【幽】連載を三十枚程度書き、そのまま高田馬場から郊外のスタジオへ拉致され、「ここで撮れ!」と撮影をさせられました。
そして帰宅したのが午後七時過ぎ。
みなさん、撮影って言うのはね。監督と撮影と照明と録音部は絶対に寝れないんです。美術とか製作とか出演者の仮眠っていうのはあるけれど、演出・撮影部はないんです。
ですからえんえんと「スタート」「カット」「OK」、「スタート」「カット」「OK」を繰り返すのですが、こちらは不眠時間が三十時間を既に過ぎていたので、かなり頭がロブ・ゾンビになっているわけですね。
しかも撮っているのがゾンビですから。ますます判らなくなり、「よ〜い!スタート」でウガーっとゾンビの子を噛みに行ったら。
「監督、それは僕がやりますから」
と諭された四十四歳の誕生日でした。
それにしても彼女は偉かった。
メゲナイ、ショゲナイ、ナカナイの三ない運動推進係のような女の子でした。
なにしろ朝からずーっと死ぬほど死ぬような目に遭ってるのに夜中の四時に
「今、丁度、十時ぐらいの感じがする!」とセットで叫んでいましたから。
若いっていうのは、それ自体、核爆発なんだなぁと思わせる一瞬でした。
最期まで〈悲鳴〉をしっかりやれただろうかと思案しているところなど、私にとっては至宝のような娘っ子でしたな。
それとゾンビ・カトー。天才特殊技巧師カクセイの作による死蝋ゾンビは延々と
ゾンビのまま二十時間ほど過ごし、さっそうと帰っていきました。
礼儀正しく腰低王のカトーは腐ったゾンビのままでも「いえいえ。僕は結構です」とか「あ、じゃちょっと。ここで休ませて戴いて」などと実に奇っ怪な味を現場に残していったのです。凄いぞ!カトー!
というわけで二日の間に連載と脚本とコンテを二本分挙げて五日間の撮影合宿。
もう撮影撮影でお腹パンパンです。