日本国民から全く信用されていない食品の暫定基準値について、どのようにすれば国民に信頼される暫定基準値がつくれるのかを考えてみました。

基本方針は次の3点です。

^貳霧衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度は年間1mSvとする。
 ※外部被曝に加えて呼吸、食品による内部被曝を含めた限度です。
乳幼児や妊婦、成人が全て安全を確保出来る値とする。
出荷時と同じ状態の農産物を測定する。
 ※出荷時に洗わないのであれば、洗わずに測定すること。
 出荷する農産物を全て洗う場合に限り洗ってから測定してもよい。

 これらを念頭において食品の暫定基準値をつくってみることにしましょう。まずは食品から摂取する内部被曝の限度を決めます。

 外部被曝や呼吸も含めて年間1mSv以内に収めるためには、食品から受ける内部被曝は1/3程度に抑える必要があります。

 仮に1mSvを100%とした場合、外部被曝で30%、食事による内部被曝で30%、呼吸による内部被曝で30%、残りをそれ以外からの被曝10%とします。このように考えると自ずと食品から摂取可能な内部被曝の限度は0.3mSv/year程度であることがわかります。

 次に成人と乳児や妊婦で基準値を区別せずにすむよう、最初から乳児を基準に考えます。乳児で0.3mSv/yearを満たすことが出来れば成人であっても妊婦であっても心配する必要はありません。

 上記の考えのもとに暫定基準値を設定すると次のようになります。※年齢別実効線量係数や1日の食品摂取量は下記のエントリとまったく同じ数値を用いました。

水道水及び食品暫定基準の妥当性について
http://blog.livedoor.jp/hirezake_nomitaiyo/archives/1560167.html

正しい暫定基準値のつくりかた

【政府の定めた暫定基準値】
・放射性ヨウ素 (I-131)
 飲料水 300 Bq/kg ※1
 牛乳・乳製品 300 Bq/kg
 野菜類 (根菜、芋類を除く。 ) 2,000 Bq/kg
 魚介類 2,000 Bq/kg
・放射性セシウム
 飲料水 200 Bq/kg
 牛乳・乳製品 200 Bq/kg
 野菜類  500 Bq/kg
 穀類  500 Bq/kg
 肉・卵・魚・その他 500 Bq/kg
 ※1 乳児の放射性ヨウ素の飲料水基準は100 Bq/kg
 ※2 測定対象は流水で洗ってから測定する

【当サイトが推奨する暫定基準値】
・放射性ヨウ素 (I-131)
 飲料水 5 Bq/kg
 牛乳・乳製品 5 Bq/kg
 野菜類 (根菜、芋類も含む。 ) 5 Bq/kg
 魚介類 5 Bq/kg
・放射性セシウム
 飲料水 5 Bq/kg
 牛乳・乳製品 5 Bq/kg
 野菜類  5 Bq/kg
 穀類  5 Bq/kg
 肉・卵・魚・その他 5 Bq/kg
 ※1 乳児、妊婦も同じ基準値とする
 ※2 出荷時と同じ条件で測定する

 外部被曝線量についても上限を年間1mSvの基準の30%を目安とし、0.0342μSv/時≒4.11CPM/時未満とし、生活範囲内にこれを超えるホットスポットがある場合は避難を推奨する。

 呼吸による内部被曝については計算が複雑になるので便宜上、外部被曝と同等程度とし、それ以外の被曝を10%見込んでおきます。

 というわけで、年間1mSvを満たすための暫定基準値と空間線量の上限は下記となります。政府が定めた暫定基準値が最初からこのような制度だったらもっと日本国民の信頼を得られたのではないでしょうか。

●飲料水及び食品の上限値の目安(暫定基準値) 一律 5bq/kg[年間0.3mSv]
 →これを超える飲料・食品は出荷禁止し、費用を国が補償する。(国は東電に賠償請求する)

●外部被曝線量の上限値の目安(空間線量)  0.0342μSv/時≒4.11CPM/時[年間0.3mSv]
 →原発事故前から浴びていた自然放射線量を年間1.0mSv程度とすると、これに
  上記の外部被曝線量を加えた1.3mSv/年[0.148μSv/時≒17.79CPM/時]程度が
  避難の基準になってきます。ただし、呼吸による内部被曝をほとんど考慮する
  必要がない地域ではさらに0.3mSv/年程度増えても人工放射線量を
  年間1.0mSv以内に抑えられるのではないかと考えます。

 私は汚染地域の食品を買わない主義ですが、上記を満たせるものだけを検査の上で出荷してくれるなら東北だろうが北関東だろうがどこの産地のものでも出荷してもらって構わないと考えています。ちなみにチェルノブイリの被害に苦しむベラルーシでは今なお子供達が甲状腺ガンや白血病に悩まされており、子供に37ベクレル/kg以上の食品を与えてはいけないことになっています。

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NHK チェルノブイリ原発事故その10年後
http://www.youtube.com/watch?v=SUP035x9d84#t=11m24s
>事故現場から200km以上離れた村で子どもの23%が白内障や失明
>同じ村では84%以上に不整脈がみられる。
>80%の子どもが胃炎や肺の疾患を持っており、特に12-15歳がひどい。
http://www.youtube.com/watch?v=SUP035x9d84#t=12m53s
>子どもには37ベクレル/Kg以上の食品を与えてはいけない。

※日本の暫定基準は放射性ヨウ素だけで2000ベクレル、
セシウムも含めると2500ベクレル/Kgまで摂取可能。
ストロンチウム他の核種は基準値すらないのが現状です。

 それから、そろそろ原発事故から半年が経過して半減期8.04日の放射性ヨウ素(I131)についてはほとんど検出されなくなってきました。半減期50.53日の放射性ストロンチウム(Sr89)と半減期2.06年の放射性セシウム(Cs134)はもうしばらく検出されると思いますが、これから先は半減期28.74年の放射性ストロンチウム(Sr90)と半減期30.04年の放射性セシウム(Cs137)との長い闘いが始まるのです。

 放射性ヨウ素(I131)を放射性ストロンチウム(Sr90)に置き換えた新暫定基準値も作成してみたところ、年間1mSvの30%に被曝を抑えるには一律3bq/kgが限度となりました。Sr90の方がI131よりも比較的影響が大きいため被曝上限を低くする必要があるのです。

暫定基準値の妥当性_20110907_Sr90Cs137

 政府の定めた暫定基準値に放射性ストロンチウム(Sr90)の値が決められていないのが不思議でなりません。また、飛散した放射性物質はヨウ素、セシウム、ストロンチウムだけではないからです。プルトニウムやウラン、コバルトやキュリウム他の様々な放射性物質については検査すらされていないのが現状です。

 したがって放射性ヨウ素や放射性セシウムを個別に規制するのではなく、放射性核種にかかわらず3bq/kgを超えたら出荷させない等の規制が本来望ましい形なのだと思われます。

 また、繰り返しになりますが検査時に検出されないような操作をしては意味がありません。流水で洗ったり、他地域産のものと混ぜたり、内臓を取り除いたり、皮を剥いだり精米してから検査するなど、出荷される商品と異なる状態にして検査するなどの詐欺的行為が行われている現状では、検査結果そのものの信頼性にも疑問がつけられてしまいます。

 科学的、医学的に安全といえる基準値で検査をすること、そして出荷する商品と同じ状態で検査すること、基準を超えるものは全て出荷しないこと、これが出来ないと消費者の安心は取り戻せないでしょう。

 繰り返しになりますが、政府には現在の暫定基準値の見直しを強く求ます。

2011年10月02日追記

 このエントリで求めた暫定基準値のあるべき姿は3-5bq/kgとなりましたが、奇しくもドイツ放射線防護協会が提言している子供4bq/kg,成人8bq/kgと近似する結果となりました。

 被曝量を年間1mSv以下に抑えるという原点をはずさずに基準値を決めると結果としてこのような基準になるということが示されるよい例と思いますので参考までに紹介しておきます。

(ドイツ放射線防護協会)
日本における放射線リスク最小化のための提言
http://icbuw-hiroshima.org/wp-content/uploads/2011/04/322838a309529f3382702b3a6c5441a31.pdf