最近のニュース番組を見ていると、政府や東京電力の発表をそのまま伝えるか、あるいは政府が国民に向かって伝えて欲しいように情報を操作して伝えるか、どちらかしかしていないように思われる。

 特に放射線被曝についての話題ではこの傾向が強い。福島県から人が出ていくのは悲しいニュース。福島県に人が戻ってくるのは嬉しいニュース。本当にそれでいいのだろうか。本当に福島に住み続けることが安全と何の疑問も持たずに報道しているのだろうか。

 外で思い切り遊べない子供達のコメントを伝え、早く思い切り外で遊ばせられるようにしたいものだと締めくくる。そして生産者や観光旅館の窮状を訴え、子供や家族連れの観光客に来て欲しいと訴えかける。業者にも生活はあるだろうが、消費者の被曝リスクについては考えないのだろうか。子供達が今も福島で被曝し続けているのに外で遊べるようになるといいですねで終わってよいのか。

 放射線被曝のリスクや現在の除染の進捗状況、住民の被曝の実態や基準値の妥当性などを独自に調べたり取材したりして掘り下げるようなメディアはひとつも見あたらない。

 おきまりのように、様々な農作物について「検査の結果、暫定基準値を上回るものはありません。安全が確認されたので出荷が開始されます」とアナウンサーが読み上げる。検出された数値はあまり報道されない。

 基準値がいつまで暫定なのか、暫定基準値以下なら本当に安全が確認されているのか、国民が気にしているそんなことにはメディアは興味がないのだろう。

 皆様のNHKも受信料を払っている契約者(一般消費者)の健康などまったく顧みることなく政府や東京電力、経産省の言ったことをそのまま垂れ流している。

 09/26のクローズアップ現代では小金井市の母親達によって校庭の除染が行われたという話題があった。

09/26 NHK クローズアップ現代
「放射能から子どもを守りたい〜母親たちのネットワーク〜」
http://cgi4.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail.cgi?content_id=3098

 校庭を新しい土で覆うことで約0.4μSv/hが約0.1μSv/hに下がって運動会が出来たという内容であったが、司会の女性はこれで安心ですねと全てが終わったかのような論調であった。

 約0.1μSv/hなら年間の外部被曝量は1mSv以下に抑えられるが、表土が風で失われたり運動によって土が荒れるとまたすぐに線量は上がってくるため、このような除染が一時的な対応にすぎず、継続した除染作業が必要となることには触れられなかった。放射線から身を守りながら暮らすことは長い闘いであり、終わりは見えない。

 暫定基準値についても、セシウムだけをクローズアップしてEUや米国と比較して日本の基準値が厳しいというようなフリップを使って解説していた。

20110926クローズアップ現代_放射性セシウムの基準値

※上記以外の国やヨウ素についても知りたい場合は農水省の資料を参照した方がよい。
(参考)放射性核種に係る日本、各国及びコーデックスの指標値(PDF:48KB)
http://www.maff.go.jp/j/export/e_info/pdf/shihyo_0901.pdf

 しかし、ここには大きなカラクリがある。米国やEUはそもそも福島県やその周辺自治体からの農産物、海産物の輸入を制限したり放射線検査証明書を義務づけたりしている。福島県周辺の産地からの食品を制限したり、あるいは検査結果のベクレル表示がきちんと行われているならば、私たち日本の消費者も暫定基準値が高すぎるなどと文句を言うことはないだろう。

 各国の日本産食品の輸入制限の状況は下記で確認できる。

20110929諸外国・地域の規制措置(9月29日版)
(農林水産省)諸外国・地域の規制措置(9月29日版)
http://www.maff.go.jp/j/export/e_info/pdf/kensa_0929.pdf
※なお、こまめに更新されているので下記の農林水産省サイトの「諸外国・地域の規制措置等」という欄から最新の情報を取得することをおすすめする。
(農林水産省)東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う各国・地域の輸入規制強化への対応
http://www.maff.go.jp/j/export/e_info/hukushima_kakukokukensa.html

 また、EUの基準値が日本より高く設定されている理由はもうひとつある。EUサイトで公開されている内容をJETROが翻訳した記事があるが、次のように記載されている。

(JETRO)日本からの輸入食品の放射線検査の許容水準上限を引き下げ(EU)
http://www.jetro.go.jp/world/shinsai/20110411_01.html
基準値は年間の個人の食品の消費の10%がこの値の汚染レベルにある場合を
>想定しており、放射線への暴露が年間で1ミリシーベルトを超えないように
>設定されている。
また、基準値は国際機関(WHO、FAOなど)のガイドラインに
>沿って作られている。

EUがウェブサイトで8日に公開した日本からの輸入食品のQ&A
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=MEMO/11/225&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en(英語)

 日本人がスーパーへ行けば福島、千葉、埼玉、群馬、茨城産の農産物ばかりが並んでおり、日本人の食卓にのぼるのは大半が国産品であることを考えれば、日本国内の流通基準とEUの輸入制限を同列に比較することはおかしいとすぐに気がつくはずだ。

 EUの輸入制限は日本からの輸入食品の割合(10%程度)を考慮した上で、年間1mSv以内に被曝を抑えるという計算のもとに成り立っているのである。日本は単純に規制のベクレル値だけを真似するのではなく、年間1mSvを堅持するという考え方を見習うべきだ。

 そうした事情を考慮すれば他国の汚染として客観的な立場にいるEUや米国よりも、むしろ自国の農産物が汚染されたベラルーシやウクライナを参考にするべきなのかも知れない。

 こうしたことを全く伝えずに「日本より外国の方が基準値が高いんですよ、だから日本の暫定基準値は安全なんですよ」というNHKの論調にはまったくあきれるほかない。

 西日本で生産する食品や輸入食品を活用し、日本の高い検査技術と国民の教育水準を考慮すれば、原発事故の収束と除染にめどがつくまでの間に必ずしも汚染食品を食べなくても健康で文化的な生活を維持することが出来るはずだ。また、これだけの無駄遣いをしておきながら国民の命と健康を守るための費用が捻出できないとは言わせない。

※2011/9/30 輸入食品の検査をせずに野放しで流通させているという報道があった。東京都がいったい何を考えているのかさっぱりわからない。役人は国内の暫定基準などおかまいなしに輸入食品が370bq/kgを超えたら突っぱねればいいだけだ。どこの国でも役人はそのように融通が利かないのが常識。少なくとも検査しないという選択肢はありえない。

(朝日新聞)都が輸入食品の放射能検査中断 国産と異なる基準懸念
http://www.asahi.com/national/update/0928/TKY201109280218.html

 現在の暫定基準値では年間1mSvの一般公衆の被曝上限を守ることは出来ないし、外部線量が高い福島県の周辺地域こそ、より厳しい食品の基準が必要と考える。

 全国のお母さん達の運動により、子供のための新たな基準値を設けるという動きもあるようですが、全ての日本国民を守れる正式な基準値を厚生労働省には一刻も早く改めて頂きたいと考えます。

子どもたちを放射から守る全国ネットワーク
「小宮山厚生労働大臣に、私たち母親の思いをお伝えしてきました」
http://kodomozenkokunet.sblo.jp/article/48179314.html?1317034599
食品放射線基準見直し 子に配慮、より厳しく 首相意向
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201109290137.html