1903)うなされる。41905)うなされる。6

2009年01月19日

1904)うなされる。5

後ろを振り向けば、初恋の早見優似の女子大生の娘までが、
「ヒロちゃん(実際そう呼ばれていた)がそんなつまらない子だとは思わなかったわ。」と、私に白い目を向ける。
いたたまれなくなって、喫茶店を後にして、道を渡ると先ほどの銭湯のオッサンに変わり、何故か薬師寺が消防団員姿で雪掻きをしていて、「早く店へ帰れ!」と声をかけられた。

店に戻ってみると、店の中はがらんどうになっていて、店のガラスには、
「閉店」
と墨で書かれた半紙が貼られており、驚いて中に入ると、機材はすっかり撤去され、たった一つの長机が置いてあるばかり。
そこには父と母が並んで座っている。

店はもうやっていけなくなったと涙ながらに語る母の横で、死んだはずの父はここに座れと私を促す。
13年ぶりに見た父の風体は、さほど変わってはいなかったが、声だけがついこの間亡くなった牟田悌三そっくりになっていて、私は驚いた。

「最近、どうなの?」
と聞く私の声を父は無視して、
「お前なあ、音楽とか美術とか商店街とか、あんなつまらんことに現をぬかしてる間に、とうとう店をダメにしやがって…。」
と嘆く。

言葉のない私に、父は「まあいい。」とつぶやく。
長い沈黙のあと、父はこう切り出した。

「いいか、最近奴が俺らのところに来るようになったよ。」

どうも父は現実に数年前に亡くなった、自分の弟弟子であり、当初この店の共同経営者だった人のことを言ってるらしい。
奴としか言わないが、何となく言いたいことは勘でわかる。



hiro_s1976 at 07:32│Comments(0)ぼやき節 

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