1:「アル・ジャロウ・ワークス」:Al Jarreau Works〜Al Jareau
アル・ジャロウ・ワークス
アル・ジャロウ
ワーナーミュージック・ジャパン
2021-03-24

こちら、日本独自企画盤として、そしてタワレコ限定ではなくって一般流通品として発表となったアル・ジャロウのベスト盤。2019年9月に発表となったタワレコ限定のベスト集とも被ってる楽曲あれど、Disc2に客演分やら日本初CD化などをまとめて、ある意味で権利関係を克服しての意義あるベスト集。CD2枚に全31曲収録です。あっともう1枚のDVDには、1994年発表「Tenderness」の映像が全10曲分収録。こちらもある意味で貴重なんだった〜。

Disc1枚目は、スタジオ作からのコンピ集。時代順に並べています。

1976年発表「Glow」からは1曲収録で、ミディアムな16刻みのM1「Rainbow In Your Eyes(邦題:瞳の中のレインボウ)」(レオン・ラッセル作)は、持ち前のパーカッシブな歌声用いて歌っていく朗らかな響きの楽曲。

1978年発表「All Fly Home」からは2曲収録。アップな16刻みのM2「Thinkin' About It Too(邦題:陽気なダンス)」(Tom Canningとの共作)は、クラヴィネットも鳴り響きつつ、軽やかに歌い飛ばしていく。中盤にギターソロを配して、スローなチキチキ曲M3「All」(Tom Canningとの共作)は、低音域から中音域へとシフトしながら暖かく歌い上げるバラッド調。終盤のスキャットソロは個性しっかりと披露して。

1980年発表「This Time」からは2曲収録。ジェイ・グレイドンによるプロデュースで、ミディアムなサンバ調M4「Never Givin' Up」(Tom Canningとの共作)は、朗らかなメロディを朗々と歌い上げる。サビは大いにキャッチー。そしてエレピ従えて歌い出すM5「Spain(I Can Recall)」(チック・コリア& A. Morenとの共作)は、やはりスティーブ・ガッド(ds)の好演得て、更に引き立つリズミカルな歌声。途中にシンセソロも挟みつつ、初期の代表曲と言えます。

1981年発表「Breakin' Away」からは3曲収録。こちらもプロデュースはジェイ・グレイドン。少しスローなハーフタイムシャッフルによるM6「We're In This Love Together(邦題:奏でる愛)」(Roger Murrah & Keith Stegall共作)は、ジェフ・ポーカロ(ds)を迎えて朗らかなメロディをムーディに歌っていく。しかしサビは殊更キャッチー。同じくハーフタイムシャッフル用いてのM7「Breakin' Away」(Tom Canning & ジェイ・グレイドンとの共作)は、ファルセットを多用しての楽曲。こちらもサビは殊更キャッチーで、スローな3連シャッフルによるM8「Teach Me Tonight(邦題:今夜教えて)」(G. D. Paul & S. Cahn共作)は、ムーディなバラード曲。そもそもはスタンダードらしい。
1983年発表「Jarreau」からは3曲収録。こちらもプロデュースはジェイ・グレイドンで、少しスローなハーフタイムシャッフル曲M9「Mornin'」(デヴィッド・フォスター&ジェイ・グレイドンとの共作)は、A.O.R.の代表曲として挙げられる事の多い楽曲。シンセベース鳴り響くアップな8ビート曲M10「Boogie Down」(マイケル・オマーティアンとの共作)は、ファンキーさ溢れるパーティソング。ミディアムな16刻みのM11「Trouble In Paradise」(グレッグ・マティソン、ジェイ・グレイドン& T. Veitch共作)は、打ち込みも用いながらの朗らかな響きの楽曲。

1984年発表「High Crime」からは1曲収録。こちらもプロデュースはジェイ・グレイドン。エレピと共に歌い出すスロー系M12「After All」(ジェイ・グレイドン&デヴィッド・フォスターとの共作)は、正にA.O.R.な響きのバラード曲。グレイドンの骨太なギターもいい色を添えています。

1986年発表「L Is For Lover」からは2曲収録で、プロデュースはナイル・ロジャース。シンセベース鳴り響く少しスローな跳ね系M13「Tell Me What I Gotta Do」(トム・キーン、M. Himelstein & ジェイ・グレイドン共作)は、アーバンな響きに包まれたナイティな楽曲。中盤のギターもスキャットの掛け合いは粋なモノ。そしてアルバムタイトル曲となるミディアムな16刻みのM14「L Is For Lover」(D. Gamson & G. Gartside共作)は、カリプソ風味もサビに加えての大人のポップチューン。

1988年発表「Heart's Horizon」からは2曲収録。主たるプロデュースは、ジョージ・デューク。まずはスローな3連シャッフルによるM15「So Good」(P. Vale, M. Water & S. Schifrin共作)は、デヴィッド・サンボーンの歌伴得て、ムーディでソウルフルなバラード。最大のヒット曲らしい。そしてスラップ鳴り響くミディアムな跳ね系M16「All Or Nothing At All」(ボビー・コールドウェル& D. Matkosky共作)は、洗練されたファンクチューン。

1992年発表「Heaven And Earth」からは1曲収録。プロデュースはナラダ・マイケル・ウォルデンで、スローなチキチキ曲M17「It's Not Hard to Love You」(ナラダ・マイケル・ウォルデン、Sally Jo Dakota, S. Jett & ケヴィン・ウォルデン共作)は、打ち込み多用されてる中、女性コーラス隊も交えてシルキーに展開するバラード曲。

Disc2枚目は、ライブ音源やアルバム未収録曲、客演分らをまとめています。

まずは1977年発表のライブ音源「Look To The Rainbow」収録曲で、パーカッシブなボイスパーカッションから始まるM1「Take Five(Live)」(ポール・デスモンド作)。デビュー初期の音源ながらも完成された表現力に舌を巻く。

煌びやかなシンセ鳴り響いて始まるアップ系M2「Carry On / フローラ・プリム」(ジョージ・デューク作)は、フローラ・プリム(vo)の1979年発表作のアルバムタイトル曲。躍動的なリズムの中、どことなくブラジリアンテイストなメロディをデュエットしていく。トーキングドラムに奔放にスキャット加えての後奏は、アルの独壇場。

ミディアムな16刻みによるM3「Closer To Your Love(12" Long Version)」(Tom Canning & ジェイ・グレイドンとの共作)は、1981年発表「Breakin' Away」収録曲のシングルバージョン。イギリス限定での発売のようです。

M4「Your Precious Love(Live) / アル・ジャロウ&ランディ・クロフォード}(アシュフォード&シンプソン)は、1982年発表の名作ライブ音源「Casino Lights」収録曲。実はここでアルの存在を知った私。スローで静かな3連シャッフルの中で大人の丁々発止を聴かせてくれる2人です。ギターソロはラリー・カールトン。

小気味よいアップ系M5「Girls Know How」(キャロル・ベイヤー・セイガー、デヴィッド・フォスター&バート・バカラック共作)は、映画「Night Shift」サントラ収録曲。鉄壁の制作陣得て、朗々と歌い上げます。

少しスローな跳ね系M6「I Keep Callin'」(Tom Canning & ジェイ・グレイドンとの共作)は、1983年発表「Jarreau」のカセットにのみの収録曲。賑やかに絡むブラス隊や軽妙なムーグ従えて、小気味よく歌っていく。転調後のボイスパーカッションソロは圧巻。

シンセベース鳴り響いて始まるアップ系M7「Raging Waters(Dance Mix)」(ジェイ・グレイドン&ロビー・ブキャナンとの共作)は、1984年発表「High Crime」収録曲のリミックス音源。12インチシングルとして発表されたモノで、初CD化らしい。更に先鋭的にまとめ直されています。

1984年発表のライブ音源「In London」収録曲でミディアムな8ビートによるM8「Roof Garden(Live)」(Tom Canning & ジェイ・グレイドンとの共作)は、Aメロはほぼボイスパーカッションしてコミカルに歌い飛ばして。終盤の男性コーラス隊従えての丁々発止は本当に楽しげに。

シンセベース鳴り響いてのアップ系M9「One Shot」(Clif Magness & Glen Ballard共作)は、1988年発表「Heart's Horizon」制作時に録音し、シングルのカップリング曲として披露された小気味よいファンキーチューン。

ピアノから始まるスローなチキチキ風M10「Compared To What」(ユージン・マクダニエルズ作)は、1996年発表「Best Of Al Jareau」収録の新録曲2曲の1曲。クラシックスのカバーらしく、リズムは途中から倍テンし、小気味よく進行する中で雄弁に歌っていく。

スローな3連シャッフル曲M11「You Send Me / ハイラム・ブロック」(サム・クック作)は、ハイラム・ブロックの1987年発表作「Give It What U Got」収録曲。ブルージーなギターで始まりつつ、歌に入れば聴きやすいメロウなバラード曲となる。

マーカス・ミラーのスラップ鳴り響いてのミディアム系M12「Somehow Our Love Survives / ジョー・サンプル」(ジョー・サンプル&マイケル・フランクス共作)は、ジョー・サンプルの1989年発表作「Spellbound」収録曲。サンプルは歌伴に徹しつつもリリカルなピアノを披露するナイティな楽曲。

崇高な男女のハーモニーから始まるスロー系M13「Do What You Do / ゲイル・モラン」(ゲイル・モラン)は、ゲイル・モランの1979年発表「I Loved You Then…I Love You Now」収録曲。アップな8ビートも加わって高音と低音によって見事なハーモニーを披露する。

最後は、M14「The Chiristmas Song(Chestnuts Roasting On An Open Fire)」(メル・トーメ& Robert Wells)は、1982年に発表したシングルから。知られたクリスマススタンダードを暖かい歌声用いて歌っていく。こちらも初CD化だそうです。

さて、Disc3は、前述の通り、1994年発表「Tenderness」の映像です。面子は、マーカス・ミラー(b)を音楽監督、エリック・ゲイル(g)、ジョー・サンプル(p)、ニール・ラーセン(kbds)、フィリップ・セス(kbds)、スティーブ・ガッド(ds)、パウリーニョ・ダ・コスタ(perc)、パッチェス・スチュワート(tp)に、Jeff Ramsey(back-vo)、Sharon Young(back-vo)です。そしてゲストにデヴィッド・サンボーン(a-sax…M8)。

まずはスローな3連シャッフル曲M1「Try A Little Tenderness」(J. Cambell, R/ Connelly & H. Woods共作)で幕開け。中盤にサンプルのエレピソロを挟めど、終始雄弁に歌っていくアル。ボイスパーカッションから始まる少しスロー系M2「You Don't See Me」は、喰ったリフをマーカスが繰り出しつつ、そこに絡む形でアルの歌。

ピアノにゲイルの鳴きのギター絡んで始まるスロー系M3「Your Song」(エルトン・ジョン作)は、知られたメロディを雄弁に歌っていく。抑えたバック陣は歌伴のお手本(特にドラム)。スローなチキチキ用いてのM4「Summertime」(ジョージ&イラ・ガーシュイン、D. & D. Heyward共作)は、バック陣に対しての思い入れを語るアルの映像が挿入される。

スローな3連シャッフルによるM5「Go Away Little Girl」(G. Goffin & キャロル・キング共作)は、静かに囁くように歌い進めていく。その響きはロマンティック。またCDでは1曲目であったM6「Mas Que Nada」(J. Ben作)は、ホントに名演。終盤のボイスパーカッションソロにおいては、溢れんばかりの笑顔をパウリーニョにガッド御大。演ってる当人たちも心震えての時間だと映像で実感です。

スローなハチロクによるM7「Dinosaur」(マーカス・ミラー& R. Scharf共作)は、静かに進行するバラード曲。ベースソロも挟みつつ、全体の抜いた感が心地よく響いて。セルフカバーとなるゆったりワルツのM8「We Got By」は、デヴィッド・サンボーンを迎えて。アコースティックな響きを前面にまとめ直しています。

スローなチキチキ曲M9「Wait For The Magic」(T. Urbanos作)は、同じく静かに進行するバラード曲。サンプルのピアノソロ、その後の歌伴はセンスに溢れて、最後はゆったりハチロクによるM10「She's Leaving Home」(レノン&マッカートニー共作) 。ブラシ用いて静かに進行も、節々にアルのインタビューの台詞が重なり、「この作品〜ハイライト」と述べる。確かにそうです。