東京に来て以降、涼は居酒屋のホッピングマジシャンとして働いているが、日替わりの職場は、それぞれ7ヶ月ぶりであったり8ヶ月ぶりであったり、あるいは初めてであったりする。1年の半分を東京で暮らし、残り半分を福岡で暮らす涼は、毎回のように浦島太郎のような心境になる。7ヶ月前はあった飲食店が今は無かったり、7ヶ月前にいた店員が今はいなかったり、あるいは7ヶ月前のマジシャンがもういなかったり。業界の時間変化は早く、素早い情報収集が、涼の生活スタイルの中では鍵となるのだが、同業者や知人と仲良くしていたのが功を奏し、この数ヶ月の変動を涼は知ることができている。
   おかげで、ブランクを感じることなく仕事ができているわけで、人脈の重要性を身に染みて感じているところだ。
   10年ぶりに乗ったとしても、自転車を自然と運転できるように、ある程度体に染み込ませれば、忘れたりしないし、思い出す必要もない、と涼は思っていて、ホッピングでもその通り体が覚えていて、作業上の苦労は感じずにいる。
   ひとまず、今回も良いリスタートが切れたと言えるだろう。