今週は新聞やTVで、んん?と思うことがいくつかあったので書きます。(1)厚労省が第3期がん対策推進基本計画の策定に向けてたたき台を有識者会議に示したという話題。対策の柱としてがん予防、がん医療の充実、がんとの共生の三つを掲げているという話で、それはそれでありがちなこと、内容は陳腐と投げてもいいことですが、それをNHKが説明してたのにカチンときて。がん予防を言うに「がんにならない為に検診率を上げる」と来ました。安易に原稿書いたのでしょうが、癌にならない為になんて不可能をさもできるように言うウソ、検診しても癌が見つかるだけ、予防でも何でもないウソ、そして検診率を上げれば癌が治るように思わせるウソです。どれもこれもダマシです、どなたでも少し考えれば分かることですが、ああいう場でシレっと読まれるとふんふんと聴いてしまうというヒトの癖をついての策略です。こういう流れを無理やりに作ってがん検診率、これが福祉国家の指標なのでしょうきっと役人にとれば、だけを上げようとする。検診して癌を見つけてその後は知らぬのです。欧米では肺癌の検診などは死亡率の改善に全く効果がないというデータを受けてもうやってないのです、それ根拠にして近藤さんががんもどき理論を書き、新しい本が次々に出るのです。つまり検診して早く見つけて治療しても、検診などせずにそのまま知らん顔していた人の死亡率に違いがないのです。早期発見早期治療と耳タコに聞きますが、その効果についてはまったく不明なことなのです。飲むヒアルロン酸と同じこと、そこまでは正しいんですがその後は知らん、です。飲んでバラバラのアミノ酸に分解された元ヒアルロン酸が再びヒアルロン酸に再合成されてさらにそれが傷んでいる肩や膝に届くなんてのは大嘘でしてね。だからTVの宣伝もきっとパッケージの表記にもそんなこと言いませんし、書いてないです。それと同じです、早期発見早期治療まではできますわね確実に、でもその後には言及しないでしょう?そうしたら治るんですか?治療するから死期が早まる人が多いのは近藤さんならずとも皆知ってますから。癌にならない為に検診率を上げる。大ウソです。(2)4月13日の産経新聞記事です。記事は、最近増えてきたという郵送によるがん検診を採り上げてデメリットも大きいのですと注意喚起するものです、内容は変哲のない正論モノなのですが、がん検診のもたらすメリットとデメリットという表が別にあってそれにカチンと来ました。がん検診のメリットの一番ががん死亡の減少、二番ががん患者のQOLの向上、三番ががん患者の医療費の削減と並んでました。がん検診してがん死亡は減少してないのですよ、上記した通り。早期発見早期治療の効果は思うほど(全然)ないのが現実です。がん患者のQOLが向上する?どういう意味でしょうね。QOLとは quality of life 生活の質と訳されてます、楽しく生きられるか、他人の世話にならずに生きられているかという質の問題。同じような基準にもう一つADLがあります、これは activity of daily life 寝たきりじゃないか、ちゃんと歩けるか、食事はできるかという、より低次元の基準。がんと知ってQOLが向上しますか?全く他人事です、自分ががんと知ってさらに精力的に生きられる筈がないですね。こんなことを平気で書く奴は自分ががんになったらヘロヘロになるんでしょうが。さらにはがん患者の医療費の削減がメリットと来ます。どうして?がん治療に今以上に金が要り用になるじゃないですか。これも早期発見早期治療信仰の空念仏でしょう。早く見つければ早く処分できて早く治ると信じてるんでしょうこの書き手は。とんでもない。一旦医者に捕まると死ぬまで放してくれませんよ、金はずっと要ります。デメリットを並べる前にメリットの全てが大ウソという代物でした。(3)文藝春秋の今月号(5月号)、飲んでも無駄な薬リスト、です。週刊現代か?鳥集(とりだまり)某という、週刊誌やこの文藝春秋によく書いている医療ジャーナリストの筆ですが、週刊現代や他の近藤さん張りの現代医療批判モノ並みの煽り文章です。依拠するデータをずらりと2ページに亘り提示してますが、全て米国のものです。風邪には抗生物質は無用とかPSA検査やコレステロール薬の不要さ、CTやMRIを無闇に撮影するな、コンドロイチンやグルコサミンなどのサプリメントの無用さなど何年も前から誰彼が言っていることの繰り返しで、目新しいものは少ないのですが、認知症例に対する抗精神病薬の投与、脳外科の手術手技へも言及しており、彼は米国の文献を紹介しているだけという御簾の向こうで知らん顔で済むのでしょうが、こういう記事が素人さんを十分に迷わせて更に苦しめるという因果を知らぬじゃないでしょうにと憤るわけです。開業医現場での安易安直はここで私も批判していることですが、現場での汎用薬を実名で危険物扱いする週刊現代ほどではないにせよ、こういう衒学くさささえ匂わせる批判モノは素人さんには危険でしょうね。そう思うわけです。もちろんちゃんと反論するだけの知識と信条を持っていれば日頃の診療に支障はないわけですが。