2018年12月30日 13:23

三権分立、米中貿易戦争、民主主義

 7月に、法務省の法務資料展示室で開催された「明治150年」特集展示を見に行きました。民法、刑法といった我が国の司法制度の確率に向けた先人たちの取り組みに感じ入りました。特に、当時の司法卿江藤新平が提出した「司法職務制定」は行政権と司法権を分離し、日本に三権分立を確立しようとするものでした。「法による支配」を目指した江藤新平の志を強く感じました。学生時代に、彼を取り上げた司馬遼太郎の「歳月」を教授に勧められて読んだことを思い出しました。江藤新平は佐賀の乱の後、非業の最期を遂げますが、彼の志は脈々と生きていると強く思いました。
 ところで、この三権分立について、興味深いエピソードがあります。これは、私が県議会議員時代に私の先輩で大変お世話になり、現在も何かと私のことを気にかけてくれている井上幸春先生(現福岡県みやこ町町長)から聞いた話です。
 塚本三郎民社党委員長が訪中した時、当時の中国の最高実力者小平さんと会談した際に、三権分立を知らなかったとの事です。そこで、塚本委員長が教示をしたとのことでした。(井上先生は塚本先生の秘書を長年務めていたので、このエピソードだけでなく塚本先生に関わる話は色々と拝聴をさせていただきました。)
 毎日新聞の政治記者として活躍した岩見隆夫さんの平成25年2月2日の「近聞遠見」というコラムにこの一件が紹介されています。そのコラムによると、次のような事です。
 訪中した塚本委員長に小平氏は、何度も「アメリカは大統領と議会と裁判所の三つの政府ある。どの政府を信用したらいいかわからない。日本もアメリカの悪いとことをまねしないようにしてください。」と繰り返しました。そこで、塚本委員長は、「閣下、見苦しいから、もうそういう主張はおやめなさい。日中平和友好条第1条は〈内政不干渉〉を約束している。閣下は約束違反第1号になりますよ」と声を荒げました。小平氏はやっと矛を収めたとのことです。帰り際、小平氏は塚本委員長を出口まで見送り、「今日はじめて日中間の政治のやり方の違いがわかった。時々北京に来て教えてください」と言ったとのことです。
 我々が当たり前と思っていることであっても、国の政治体制が違えばこうも違うものかとこの話を聞いて感じ入ったものです。
 話は、変わりますが、今年の大きなニュースとして、「米中貿易戦争」が挙げられます。この話は、ご承知のとおり単に「貿易、通商」に関することだけではなく、ハイテクの覇権等をかけた「国家安全保障」に関わる争いとなっています。しかし、ことはこれだけにとどまらず、「資本主義」、「民主主義」といったいわゆる西側先進諸国の体制と「国家資本主義」、「一党独裁体制」といった体制の戦いとなってくるのではと言われています。この行方はポスト平成の時代に避けては通れない大変重要な課題なのだろうと思います。
 ここで、米国の作家・地理学者であるジャレッド・ダイアモンド氏の指摘がなるほどと思わせます。(日本経済新聞2017年11月28日 時論 人類史から見通す近未来)  
 ジャレッド・ダイアモンド氏によると、「中国と欧州は1400年代には経済的に同等に近かったが、その後欧州は中国の先をいった」とのことです。その理由は、「中国には統一の強い王朝があり、欧州には多くの国が群雄割拠していた。『統一』は強みにもなるが弱みにもなる。強みは一人の指導者の下で大きな事業が実現し、経済が飛躍することだが、一方指導者に問題があった場合には、国全体が危機にさらされやすい」とのことです。
 具体的に言えば、「1430年代には中国は世界最大の艦隊と大きな船舶を持ち、中国の船舶は東南アジアや中東を越えてアフリカに到達した。しかし、明の洪武帝の時代になると最高位についた皇帝が艦隊は金の無駄遣いと決め、海禁政策や朝貢貿易に舵を切りました。一方ヨーロッパでは、艦隊が金の無駄遣いだという国王もいたが、有用な出費だと考えた国王もいた。コロンブスは後者の考えだったスペインの国王の支援を得て大西洋を渡った。それによって新世界を欧州は発見することができた」と。そして、「中国はさらに巨大になるだろうが、歴史上、一度も民主主義を経験していない。このことは中国にとって致命的である。一党独裁による政治は意思決定のスピードは速いが、多数の意見を戦わせる機会が少なく、民主主義国家のように新しいことを試すことが難しい。総合力で米国に追いつくことは難しい」と述べています。
 なかなか含蓄のある指摘であると思います。民主主義は手続きを重視し、時間がかかりともすれば面倒くさいという側面もあるのかも知れませんが、大事に守り精度を高めていかなくてはならないのだろうと思います。 こう思っていると、やはり、かの英国の大宰相であるウィンストン・チャーチルの言葉が頭に蘇ってきます。総選挙で労働党のアトリーに敗れ、下野したときの言葉です。「民主主義は最悪の制度である。しかし、他の制度を除けば・・・」チャーチル一流のユーモアある言葉だなと思います。
 今年1年大変お世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。そして、来年、そして平成の次の時代がすばらしい時代であることを心からお祈り申し上げます。


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