2020年12月31日 16:48
コロナ後の世界、よりよい社会に、ビルド・バック・ベター
今年は何といっても、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックを抜きには語れない1年でした。全く予想だにせず、「まさか」と思う出来事でした。お亡くなりになった方に心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、感染されている方の回復を祈るばかりです。一刻も早い収束が本当に望まれます。
この中で異例の速さでワクチンの完成した事は、人類の英知の結集だろうと思います。感染症との戦いに勝利をするためにも世界への早期の普及を望むばかりです。
この未曽有の事態によって世界全体が大変な経済的苦境に陥りました。その対策として各国中央銀行と政府が大規模な金融緩和と財政支出を行い、経済の破綻を瀬戸際で食い止めることができました。まだ苦しい状況ではありますが、経済も少しずつではありますが最悪期を脱し好転に向けて動き出しております。
この苦境を抜け出し、コロナ後の世界が、「よりよい社会」、「ビルド・バック・ベター」となるよう微力ではありますが自身も力を尽くしていきたと思っています。
人類歴史は感染症との戦いの歴史でもありました。100年前にもスペイン風邪が世界を席巻し猛威を振るいました。当時は、第一次世界大戦が終わった頃でした。この時、米国のウィルソン大統がスペイン風邪に罹患していたとのことです。その結果、大戦後のベルサイユ講和会議で指導力を発揮できなかったとのことです。歴史に「もしも」はありませんが、かつてない大戦の悲惨さから、国際連盟の創設を唱えたウィルソン大統領が健康であったらこの講和会議がどう変わっていたのかとふと思ってしまいます。
さて、この講和会議に関して私は昔から一人の男に注目をしていました。その男の名はケインズです。かの有名な経済学者のケインズです。彼は、英国の代表団の一員としてこの講和会議に出席していました。講和会議では、周知のとおりドイツに対して制裁的に巨額の賠償金が課せられました。しかし、ケインズはこのような事を行えばドイツ国民に復讐心が生じてしまい後に禍根を残すと主張し反対しました。それが受け入れないとわかるとイギリスの財務省を辞職し学者に転じました。その後の第二次世界大戦に至る流れをみれば、様々な要素も絡みますが、ケインズの懸念したような状況に陥りました。まさに慧眼というべきだろうと思います。
このように、己の主張を貫き、受け入れないとわかると職を辞すという生き方はよほどの自信と才能、能力がなければなかなかできることではありません。そのような生き方に昔から羨ましさと美学を感じていました。
ケインズと言えば一般的に、有効需要原理が思い出されます。「不況の時には公共工事等、財政を拡大させて需要の喚起を行い、景気を回復させる」ということです。このことは、いわゆる「大きな政府」というふうに政府の役割の拡大と重なり、1960年代、1970年代に政府の財政赤字の拡大の問題が生じました。この結果ケインズのこういった考えが批判されるようになりました。1970年代後半くらいから自由経済を信奉するハイエク、そしてその流れを組むフリードマンらの考えが台頭し、アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権によって「小さな政府」路線が始まりました。いわゆる新自由主義の拡大です。私が20代、30代の時、ケインズといえば割と批判的に言われることが多かったように記憶しています。しかし、ケインズは決して野放図な財政の拡大を言っていたわけではありません。「ワイズスペンディング(賢い支出)」を唱えていました。要は景気回復にとって「効率のいい支出すべき」と言っていたわけです。また、不景気の時は財政を拡大し、景気が良くなれば財政を縮小することも言っていたわけです。
しかし現実の世界では、一旦財政が拡大すればそこに既得権が生まれ、景気が回復してもそこへの支出が減らないといったこと。そして何より財政拡大が単なるバラマキに終始し「ワイズスペンディング」になかなかなってなかったことが大きな問題だったのだろうと思います。これはひとえに政治の責任だろうと私は思います。
また、ケインズは経済を成長させるには「アニマル・スピリッツ(血気)」が必要であるとも述べています。これはこれからの日本の経済の発展になくてはならないものだろうと思います。
さて、晩年のケインズですが、第二次世界大戦後のブレトンウッズ会議に英国を代表して参加します。そこで、米国のハリー・ホワイトと交渉を重ね、戦後のドルを基軸とした為替相場安定のメカニズム、いわゆる「ブレトンウッズ体制」を築くことに貢献します。
現在、コロナ対策で世界の政府債務は第二次世界大戦後を超えて過去最大となっています。今後はこの削減の対策も当然求められてきます。先日テレビの経済番組で、東京財団の小林慶一郎さんが、「20世紀は金融の国際的な協調を行ってきた。21世紀は財政の国際的な協調を行っていく必要がある。グローバルな出来事でできた債務はグローバルに解決する必要がある」と述べていました。とても興味深いお話でした。
いずれにせよコロナ後の世界は様々な課題が山積みですが、私も今後も研鑽を積んでいき、少しでも問題解決に貢献できるよう微力ではありますが力を尽くしていきたいと思っています。1年間大変お世話になりまして本当にありがとうございました。
皆様、ご健康に気を付けてお過ごしください。そしてよいお年をお迎えください。
この中で異例の速さでワクチンの完成した事は、人類の英知の結集だろうと思います。感染症との戦いに勝利をするためにも世界への早期の普及を望むばかりです。
この未曽有の事態によって世界全体が大変な経済的苦境に陥りました。その対策として各国中央銀行と政府が大規模な金融緩和と財政支出を行い、経済の破綻を瀬戸際で食い止めることができました。まだ苦しい状況ではありますが、経済も少しずつではありますが最悪期を脱し好転に向けて動き出しております。
この苦境を抜け出し、コロナ後の世界が、「よりよい社会」、「ビルド・バック・ベター」となるよう微力ではありますが自身も力を尽くしていきたと思っています。
人類歴史は感染症との戦いの歴史でもありました。100年前にもスペイン風邪が世界を席巻し猛威を振るいました。当時は、第一次世界大戦が終わった頃でした。この時、米国のウィルソン大統がスペイン風邪に罹患していたとのことです。その結果、大戦後のベルサイユ講和会議で指導力を発揮できなかったとのことです。歴史に「もしも」はありませんが、かつてない大戦の悲惨さから、国際連盟の創設を唱えたウィルソン大統領が健康であったらこの講和会議がどう変わっていたのかとふと思ってしまいます。
さて、この講和会議に関して私は昔から一人の男に注目をしていました。その男の名はケインズです。かの有名な経済学者のケインズです。彼は、英国の代表団の一員としてこの講和会議に出席していました。講和会議では、周知のとおりドイツに対して制裁的に巨額の賠償金が課せられました。しかし、ケインズはこのような事を行えばドイツ国民に復讐心が生じてしまい後に禍根を残すと主張し反対しました。それが受け入れないとわかるとイギリスの財務省を辞職し学者に転じました。その後の第二次世界大戦に至る流れをみれば、様々な要素も絡みますが、ケインズの懸念したような状況に陥りました。まさに慧眼というべきだろうと思います。
このように、己の主張を貫き、受け入れないとわかると職を辞すという生き方はよほどの自信と才能、能力がなければなかなかできることではありません。そのような生き方に昔から羨ましさと美学を感じていました。
ケインズと言えば一般的に、有効需要原理が思い出されます。「不況の時には公共工事等、財政を拡大させて需要の喚起を行い、景気を回復させる」ということです。このことは、いわゆる「大きな政府」というふうに政府の役割の拡大と重なり、1960年代、1970年代に政府の財政赤字の拡大の問題が生じました。この結果ケインズのこういった考えが批判されるようになりました。1970年代後半くらいから自由経済を信奉するハイエク、そしてその流れを組むフリードマンらの考えが台頭し、アメリカのレーガン政権、イギリスのサッチャー政権によって「小さな政府」路線が始まりました。いわゆる新自由主義の拡大です。私が20代、30代の時、ケインズといえば割と批判的に言われることが多かったように記憶しています。しかし、ケインズは決して野放図な財政の拡大を言っていたわけではありません。「ワイズスペンディング(賢い支出)」を唱えていました。要は景気回復にとって「効率のいい支出すべき」と言っていたわけです。また、不景気の時は財政を拡大し、景気が良くなれば財政を縮小することも言っていたわけです。
しかし現実の世界では、一旦財政が拡大すればそこに既得権が生まれ、景気が回復してもそこへの支出が減らないといったこと。そして何より財政拡大が単なるバラマキに終始し「ワイズスペンディング」になかなかなってなかったことが大きな問題だったのだろうと思います。これはひとえに政治の責任だろうと私は思います。
また、ケインズは経済を成長させるには「アニマル・スピリッツ(血気)」が必要であるとも述べています。これはこれからの日本の経済の発展になくてはならないものだろうと思います。
さて、晩年のケインズですが、第二次世界大戦後のブレトンウッズ会議に英国を代表して参加します。そこで、米国のハリー・ホワイトと交渉を重ね、戦後のドルを基軸とした為替相場安定のメカニズム、いわゆる「ブレトンウッズ体制」を築くことに貢献します。
現在、コロナ対策で世界の政府債務は第二次世界大戦後を超えて過去最大となっています。今後はこの削減の対策も当然求められてきます。先日テレビの経済番組で、東京財団の小林慶一郎さんが、「20世紀は金融の国際的な協調を行ってきた。21世紀は財政の国際的な協調を行っていく必要がある。グローバルな出来事でできた債務はグローバルに解決する必要がある」と述べていました。とても興味深いお話でした。
いずれにせよコロナ後の世界は様々な課題が山積みですが、私も今後も研鑽を積んでいき、少しでも問題解決に貢献できるよう微力ではありますが力を尽くしていきたいと思っています。1年間大変お世話になりまして本当にありがとうございました。
皆様、ご健康に気を付けてお過ごしください。そしてよいお年をお迎えください。